#彼女もち

《あの子》になりたい訳じゃない

君の《好きな人》になりたかっただけ

彼女がいる

そう分かったところで

止められる好きじゃなかった

【Real Me 性別のない人～第十六話～千祐目線(Ⅲ)湧き出すもの】




｢……ん｣


カーテンから漏れる朝日に


揺り起こされる。


最悪な目覚めだ。


頭は痛いし、目は開かない。


身体はだるいし、咳もある。



｢あー…だり……水……｣



重たい目をこじ開けて


俺は混乱状態に陥った。



目を開けた先には


すー、すーと


寝息を立てて眠る、


想の顔があったのだ。



瞬時にここが


俺の部屋であるかどうかを


確認すべく跳ね起きる。



兄貴のところからもらった、


古いテーブル。


その上に転がった空き缶と


プレステ4のコントローラー


カーテンレールに


無造作に引っ掛けられた、


上着のハンガー


きったねえ電子レンジ。




｢お……俺の部屋、だよな｣



確認が済むと


俺は再びベッドへと


視線を投げた。



やっぱり、想がいる。


俺の隣に。


俺と同じ布団の中に。





すー、すー、


気持ちよさそうに


眠りやがって。



｢まつ毛、長ぇ……女みてぇ｣



どちらかといえば


勝ち組に入る顔立ち。


所謂、イケメンって


やつなんだろうが



どうしてこんなにも俺には


可愛らしいと感じられるのか。



重くだるい腕を動かし


額にかかる前髪を撫で呟いた。




｢お前……何でここにいんの……？｣



想の頬は

ｽﾍﾞ
赤ん坊のように滑やかだ。



はっきりしてくる脳。



そうか、俺は昨日


一人では帰れないほど


疲れ果て


打ちひしがれていたんだ。



長年、想い過ぎた恋が


終わったような気がしてた。





想が、駆けつけてくれた。



想が、抱き締めてくれた。



想が、俺を家まで運んでくれた。





想に…




救われた。




｢ありがとな…想｣




｢ち……ひろ……さ｣



ぽつりと呟いたありがとう。


その言葉に応えるように


寝言で俺の名を呼ぶと


想の下向きになったまつ毛は


涙に濡れていく。




｢何で……泣くんだ……想｣



心臓にぎゅっと


潰されるような痛みが走る。



胸を押さえながらも



想の髪を撫でる手を



止めることが出来ない。



すると、想は濡れたまつ毛から



ツッと涙を零しながら


こう、寝言泣いた。




｢……す、き｣



｢……え｣



ど、どういうことだ



心臓が跳ね上がる。



頭に血が上り


全身の毛穴が


開いた気がした。



途端に


かっと熱くなる身体。




｢やっべ……し…心臓壊れるッ｣



暴れ馬のように


跳ね駆け回る鼓動


視界すら歪むような衝撃



柄にもなく俺の目は潤み


手のひらは震え出す。


ふつふつと


込み上げるのは


大きすぎる程の


想、恋しさ。



湧き上がる愛しさに


俺は多分に戸惑う。




｢そ、想……｣


指先を震わせながら


俺は想の唇につん、と触れる。



その時。


｢……ん、｣


想のお目覚めだ。


俺は慌てて、


手のひらを引っ込めた。



一方想は、


目を完全に開くと


途端に焦り始めた。



｢はっ、えっ！？あ！やばっ、俺寝ちゃっ……｣



飛び起きた想の顔が


反動をつけて俺の目の前で止まった。



至近距離…。


時間が止まる。



身を引くでも


目を逸らすでもなく


想を見つめた。



締め切られた室内に


外で鳴く鳥の囀りだけが


響き渡る。




｢あ、あの……千祐、さん｣



俺の様子がおかしい事に


戸惑いながら


想は、俺を呼びあげた。



熱っぽい目で


俺を見上げる想に


思わず伸ばしそうになる腕を


必死に堪え


俺はようやく視線を揺らす。



｢あ……お、はよう｣


｢おはようございます…あの｣


｢…ん｣


｢身体…大丈夫、っすか｣


｢あ……なんともな｣



格好悪いところは


見せたくない。


その気持ちが勝り


軽口を叩こうとすると


想は見るからに


訝しげな表情で



｢失礼しますっ！！｣


そう声を張り上げ


勢いづけて


ごちん、と額を


ぶつけてきたのだ。



｢いっ……｣


酷い頭痛に加えて


額がぶつかった衝撃が


ぐらぐらと視界を揺らす。


｢あー！やっぱり熱っ、あるじゃないっすか!!｣


｢おま……頭、痛く、ねえの？｣


｢え？別になんとも｣


｢石頭かよ…｣


｢えー？｣


俺が額を押えて突っ込めば


想にはころころ、


可愛らしい笑顔の花が咲く。



こんな笑顔……


見慣れているはずなのに


いちいち鼓動は忙しない。



…困ったな。


俺が想を見つめていると


何を勘違いしたのだろう。


想は自分の姿を省みて


寝ている間に乱れた服と


寝癖頭を押さえながら


焦り出した。



｢はっ、あ……あの！寝ちゃってすいませんっ、送り届けたらすぐにお暇するつもりが、なんか、寝ちゃいましたっ｣


｢なんか寝ちゃいましたってなんだよ｣



言い訳がなんとも愛くるしい。


俺が笑みを漏らすと


想も、眉を下げて笑った。



｢想｣


どうしても触れたくて


仕方がなくなった。



まさか


抱き締めるわけには


いかないから



せめてもと俺は


手のひらを想の頭に乗せ


優しく、撫でて



｢ち、ちちち千祐さん…｣


｢いつも、ありがとな。想にはいつも助けられる｣


触れた言い訳を、そんな言葉で括った。


この言い訳に嘘は…ない。





千祐さん、好き


あの言葉はなんだ


あの言葉は本当か？


聞きたくて堪らなかった。


けれど想には


彼女がいるから


きっとあれは何かの


間違いだ。



俺はそう決め込んで


僅かばかり尖った唇を隠そうと


勢いよく布団へと潜り込む。



すると想は


笑み声を響かせた。



｢そうそう、今日は寝てて下さいね。俺、朝ご飯、作ります！｣


｢は！？おい！｣



せっかく入った布団を跳ね除けて


立ち上がった想を見上げる。



｢俺、厨房の仕事、ホールより好きっす。家でも料理しますし、待っててください、美味しいの作りますから！｣



想は、朝から元気いっぱいだ。



俺はその姿に癒されて


赤らんだ顔を隠そうと


再び布団を引き寄せた。




ふつふつと


湧き上がるもの。



もう知らないふりなど


出来ないほどに


心から溢れては零れている。



これは……新たな恋の予感。




｢よりにもよって彼女もちの年下男かよ……｣



俺は布団の中で


小さく小さく、呟いた。



【Real Me 性別のない人～第十六話～千祐目線(Ⅲ)湧き上がるもの(終)】

優しいあの子を

清らかなあの子を


蹴落としてまで






貴方の椅子に

座ろうとは思わないわ

｢今日どーする？｣
｢彼女と約束出来た。ごめんなアズ｣


君に名前呼ばれるのが
こんなに切ないなんて。


最初に約束してたのは
私だよ？

君からLINEが来ただけで

こんなにも嬉しいんだな。

好きな気持ちは

簡単には消えてくれないんだな。

雑草は花になることを望み

雑草は花にはなれないことを知った

彼女なんて捨てて
❤❤❤私のとこにくればいいのに

先生

私先生に卒業する時伝えたい気持ちがあります

だから、私だけを見てほしいんだ

わがままだよね

だって、先生彼女さんがいるもんね

分かってるけど、0.1%にかけたいんだ

もしかしたら0.1%もないかな

でも、気持ちだけでも伝えさせて

彼女がいる貴方には
きっと私は渡すことができないかな

素直になれないのは、


君に嫌われるのが怖いから

知ってたよ。君に彼女がいるって。

ごめんね、君とLINEしてるだけで嬉しくて
舞い上がってる私なのに

マイハニーとか、彼女可愛いとか言われたら

けっこー心に来ますよ。

全く。やっぱり君は乙女心わかってないなぁ。

どんだけがんばっても

君にとって私は常に2番だから＿＿＿

バカになるほど君が好きだった。


だから今度は


バカになるほど嫌いになりたい。

もし自分が1年早く生まれてたら自分の人生は変わっただろうな