実話恋愛小説
〈ドケチ〉
第1話
おれは、、
26年間付き合った
お菊と
地元のおもちゃ屋の
デュエルルームで
別れ話をしていた
(※デュエルルーム・・・おもちゃ屋内にある、子どもが遊戯王などのカードゲームの対戦をするために設けられた部屋)
おれとお菊は同じテーブルにつき
向かいあって座り
さきほどから
10分ほども無言の情態が続いている
他のテーブルには
小学生や中学生がカードゲームをしているのだが
こちらをチラチラとみており
明らかにゲームよりもこちらを気にしているようだ
重苦しい沈黙が続く
長い沈黙を破り、
おれがまず、口を開いた
おれ
「お菊ばあ、、、」
お菊
「なんだぃ」
子ども達は一斉にこちらをみた
おれ
「もう一度、やり直さないか」
お菊
「むりだぁ」
一人のこどもが
ばふぅっ、となにか食べていた菓子を吹き出し、それを手でおさえ、周囲の友達に、小声バカっと言われて頭をはたかれた
また、別のこどもは走ってこの場から離れた、そして、店を出ていこうとし
出入口の自動ドアが開くと、同時に
あひゃひゃひゃ!と
破裂するような笑い声を張り上げたが
自動ドアがしまるとその声は
聞こえなくなり
また店内に静寂が戻った
おれはつづけた
おれ
「お菊、、なぜだ、、おれの、、どこが、、ダメだっていうんだ、、?」
お菊
「おめーは変わった」
おれ
「なにが、、おれはなにも、、」
お菊
「LINEの既読はつかねーし」
「そのくせわしのことは束縛する」
「おめーはかわっちまった」
「荒野で他のおどこと話すだけで嫉妬するようになった」
「おめえにわしの未来をあずけることはできねぇ」
「おめぇにわしは幸せにできね」
おれ
「お菊、だからそれは!、、最近、おれが仕事で忙しいから、、、!」
お菊
「おめ、仕事とわし、どっちが大切だ?」
おれ
「くっ、、それは、、、!」
お菊
「それみろ」
「そんなことではわしのハートをつなぎ止めて置くことはでぎね」
「おめは乙女ごころをぜんぜんわかっていねぇ」
そのとき俺たちのほうに
店の店長らしき男がやってきて
声をかけてきた
おもちゃ屋の店長
「あ、あの、お客様、、」
「ここはカードゲーム専用の席でして、、他にこの席を使いたいこども達も、、」
お菊
「じゃーーかしゃあ!!!!!」
店長と、そしてこども達の肩がビクッと震えた
お菊
「年寄りは大切にするもんだべ」
お菊
「店長、、」
「あつーい、茶を一杯たのむ」
店長
「えっ、、!?あの、、!?」
おれ
「店長、、すんません、、!」
「お菊は言い出したら聞かない性格で、、」
「お茶お願いします」
お菊がそちらを
みもせず、叫んだ
お菊
「わっぱぁ!話きいとったろ、」
「茶ぁ用意しよぉ!」
「あと、おめぇら!竹馬でもして外で遊んでこぃ!いいわげぇもんが!」
「わしら今恋の話ばしちょるけん、そといって遊んでこぉ!」
こどもたちは
その言葉を受けて
店長とおれの顔を交互にみて
どうしたら良いのかと
指示をまっている
沈黙
お菊が続けて
口をひらく
お菊
「ちょうどええ、ワシ風呂入りたいわ」
「この店風呂ある?店長風呂沸かしてくれん?」
「入ってくわ」
おれ
「店長すみません、風呂、、、
あとで料金払うんで、、お願いします!」
店長
「は、、まあ、、、まあ、そこまでいうなら、、ぼくの自宅の風呂でよければ、、」
おれ
「たすかります!」
お菊
「恋って難しいもんやなー!」
「お茶は用意せなあかんは、風呂は用意せなあかんは、」
おしまい
後日談
二人は結局別れなかったという
お菊は最初から別れる気など無かった
ただ若い彼氏や、周囲を勝手気ままに、振り回すのが好きなだけなのであった
おもちゃ屋を別れ話の場所に選んだのも
お菊であり
その理由は
たんにお菊のきまぐれ
ここ使わしてもらお
の一言で決まる
おれがいくら説明しても
ここはおもちゃ屋であり
そういう話をするような場所ではないと
いっても
お菊は
なにがだめやこっちゃ
店やろ?
なら大丈夫や!
となんの根拠もない
いつものお菊の判断
によって決められたのだった
完
この話に続きはありません
あしからず