⚠こちらは、文豪ストレイドッグスの夢小説です。
文スト創作キャラの金子みすゞさんが、宮沢賢治くんに恋愛感情を抱いている描写があります。苦手な方は、お気を付けください。
こちらは、【おはようの恋心】の続編ストーリーです。こちらを読んでからの方が、分かりやすいと思います。
今回、ストーリーに、金子みすゞ先生の作品、『折紙あそび』を引用させていただきました。
ご了承ください。
【この空の向こうに】
前編
日曜日。
賢治は、みすゞの部屋の扉をノックした。
「みすゞさん、来ましたよー」
そう賢治が言うと、扉がゆっくりと開く。
「お、おはようございます、賢治さん…」
出てきたみすゞは、まだ寝間着姿だ。
「あれ、今起きたんですか?」
賢治が首を傾げる。
「いえ、その…」
「取り敢えず、入ってもらえますか…?」
みすゞは恥ずかしそうに、賢治を部屋に入れる。
「…あれ、これ」
賢治は、部屋の机の上にあるモノに目がいった。
「折紙、ですか?」
赤、青、黄。様々な色の折紙が、机の上にのっている。
「はい…。実は、賢治さんが来るまでまだ時間があったので、棚を整理してたんです。そしたらこれが出てきまして…」
みすゞは続ける。
「それで、少し熱中してしまって…。寝間着姿で、申し訳ありません。」
みすゞはペコリと頭を下げる。
「いえいえ、大丈夫ですよー!あ、よかったら折紙、僕にも教えてもらえますか?」
ニコリと賢治は微笑む。
「えぇ、勿論です…。昔、母から教えてもらった折り方があるんです。ちょっと待っててください。」
みすゞは、赤い折紙を出し、机の上へ置く。
賢治は、床にしゃがみこみ、みすゞの手元にある赤い折紙をジッと見つめる。
すると、みすゞは小さな声で歌い出した。
それと同時に、手が動く。
あかい、四角な、色紙よ
これで手品をつかいましょ。
私の十のゆびさきで、
まず生まれます、虚無僧が。
みるまに化ります、鯛の尾に
ほらほらぴちぴちはねてます。
鯛もうかべば帆かけ舟
舟は帆かけてどこへゆく。
その帆おろせば二艘船、
世界のはてまで二艘づれ。
またもかわれば風ぐるま、
ふっと吹きましょ、またまわしましょ。
またもかわってお狐さん、
コンコンこんどはなんに化きょ。
そこで化けます、紙きれに、
もとの四角な色紙に。
なんて不思議な紙でしょう、
なんて上手な手品でしょう。
「こんなのです。」
折り目のついた赤い四角い折紙を、賢治に見せる。
「おぉ!とても素敵です!そんなお歌があるんですねー。僕にも教えてください!」
賢治は、目を輝かせ言う。
「はい!まずは…」
みすゞは、折り方を賢治に教えていく。
二人の会話は、途切れることはなかった。
「お、敦さんと鏡花さん、任務終わったみたいです!」
賢治が、携帯に来たメールを確認する。
「では、そろそろ行きましょうか。」
二人は、立ち上がり、部屋から出る。
そして、二人に示された待ち合わせ場所に向かって行った。
「そういえば、プラネタリウム。今は何のお話をやっているんでしょう。」
みすゞが、ふと気になったことを賢治に聞く。
「今は、秋の星座の神話を紹介しているらしいです。楽しみですねー!」
「そうなんですね!楽しみです。…あ、あれは敦さん達では?」
みすゞは、ベンチに腰掛けている二人を指差す。
「お、本当です!おーい、敦さーん!鏡花さーん!」
賢治、手を振りながら二人の方へ走っていった。
「あ、賢治くん、みすゞちゃん!」
「任務お疲れ様ですー!プラネタリウム、楽しみですね。」
にへ、と賢治が微笑む。
鏡花は、うんうん、と首を縦に振っている。
「任務、すぐに終わらせた。凄く楽しみ。」
「ふふ。では、さっそく行きましょうか。」
みすゞがそう言うと、敦と鏡花が、ベンチから立ち上がる。
四人は、プラネタリウムが行われる会場へと、歩き始めた。
「んー、ちょっと並んでるなぁ。もう少しで入れるかな?」
敦が、短い列の先を見ながら呟く。
「まだ、開演まで三十分ほどありますし…鏡花さん、お手洗い済ませておきましょうか。」
みすゞが鏡花に言う。
「了解。二人は、先に席の方行ってて。」
鏡花がそう言うと、敦と賢治は「はーい」と返事をした。
そうして、四人は会場内へ入っていく。
みすゞと鏡花は、お手洗いを済ませに行っていた。
ジャーと、洗面台の蛇口から、水が流れる。
「デート、上手くいきそう。」
「本当ですね。プラネタリウム、楽しみですねー!」
ふふ、とみすゞは笑う。
すると、
「ねぇ、貴女達。」
と、急に、後ろから声がかかった。
二人は、バッと振り向く。
そこにいたのは、スラリとした女性。
「あら、驚かしてごめんなさい。私、ここで星を廻す仕事をしてるのよ。つまり、ここの従業員。怪しい者じゃないわ。」
女性は続ける。
「貴女達、男の子と一緒にいたわよね。…もしかして、デート?」
女性は、ニヤッと笑いながら二人に聞く。
みすゞと鏡花は、一度顔を見合わし、頷く。
「やっぱり!今からの公演でしょ?星を廻すの、今回は私が担当なの。ぜひ楽しんでいってね。」
ニコリと女性は微笑む。
そして、お手洗いから出ていった。
「…何だか、変わった方でしたね。」
みすゞは、呆けた顔をしながら呟く。
「本当に…。あ、そろそろ行こう。二人が待ってる。」
もう少しで、プラネタリウムが始まる。
二人は、ワクワクしながら戻って行った。