「優しい嘘②」
(オリジナルショートストーリー)
週末の午後、暖かい日差しに包まれた
公園で仲の良さそうなカップルが
備え付けのオープンカフェ
で日向ぼっこでしていた。
彼氏「気持ち良い場所だね」
彼女「うん、とっても暖かくて、開放的で」
暫く、公園のほっこりした雰囲気に
無言で癒される2人。。
すると突然、彼女の方から話し出す。
彼女「ねえ。。私達が出会った日のこと
覚えてる?こんな雰囲気の公園だったよね
もう都市開発で取り壊されちゃったけど」
彼氏「ああ、そうだったね、あの公園とっても雰囲気良かったのに残念だよ」
彼女「私が当時仕事で大きなミスをしちゃって泣きながら1人でおにぎり食べてたとこ、声を掛けてくれたんだよね」
彼氏「そうだったね、俺もお昼でお弁当食べてて、急に大きな声の泣き声が聞こえたからびっくりしたよ(笑)」
彼女「大丈夫ですか?どうされましたか?って。あの時、とっても落ち込んでた時期だったから、知らない人でもちょっと嬉しかった」
彼氏「泣いてる人をほっとけないよそれにあんな大声で泣いてたら、誰だって普通声かけるって(笑)」
彼女「あれが私達の出会いの始まり、実は今日で丸4年経つの知ってた?」
彼氏「えっ!」
驚きを隠せない彼氏、内心ちょっと焦ってる、明らかに覚えてない人の反応だ。
彼女「やっぱり。。○○(彼氏)はいつも記念日とか大切にしてくれないんだから。。」
畳み掛けるように彼女は言った。
彼女「○○(彼氏)がそういうことに無頓着なのは知ってるから別に良いんだけどね、でも2人が出会った日ぐらい大切にして欲しいな」
彼氏「ごめん。。。」
気まずそうに彼氏が言う。
彼女「じゃあ5年目の記念日はディナーぐらい奢ってね、それで4年分の記念日忘れてたのチャラにしてあげる(笑)」
彼氏「わかった、約束するよ、毎年寂しい思いさせてごめんね。。」
彼女「ホント?やったー!ディナーね!美味しいとこ連れてってね!」
彼氏「もちろん、素敵な思い出作ろうね」
彼女「でぃなぁっ♫でぃなぁっ♫」
嬉しそうにはしゃぐ彼女。
時折、雲に隠れた太陽が顔を出すと公園内が暖かい日差しに包まれた。
辺りを見渡すと、色んな人が午後の公園を満喫してる。
バルーンアートで遊ぶ少女☘️
隣のテーブルでは
似たような年代のカップルも
お茶を飲んでくつろいでいる☘️
ストリートライブをしている若者☘️
バスケをしている青年たち☘️
園内を掃除している年配の清掃員☘️
大道芸のピエロもいる☘️
彼女と優しい雰囲気の公園に包まれて
癒しのひととき。。
公園に備え付けの時計塔がオルゴールと共に3時を告げる。
すると。。ストリートライブをしていた若者たちが急に緑黄色社会のMela!を大音量で演奏し始めた!
彼女の大好きな曲だ。
彼女「わぁ!あたしこの曲大好き!」
なんて言いながらご満悦で音楽を聴いている。
ストリートライブをしている若者達の近くまでさっきまで芸を披露していたピエロが近づい来て急にリズムに合わせて踊りだした!!
彼女「え!即興!?なにこれ!すごーい!!」
と喜ぶ彼女。
何事か??とピエロの周りにギャラリーが
集まり出す。
バルーンアートで遊んでいた少女が彼女の前まで駆け寄り、さっきまでのぎこちない手つきから、一変してテキパキと風船で何かを作っている
風船花束だ、それを彼女に差し出す。
彼女「え!これ私にくれるの!?嬉しい!ありがとう!!」
彼女のまん丸な可愛らしい目がますます丸くなった。
ピエロが踊りながら、さっきまで
バスケットで遊んでいた青年に向かって
「こっちにおいで」と手招きしている
青年たちは少し困惑した後、急に走り出し
バク転をしながら踊りの輪に加わる!
気がつくと年配の清掃員も踊りの輪に
加わっている。
すぐ隣にいたカップルも楽しそうに
踊りの輪に加わる。
ギャラリーの中の何人かはピエロに誘われ
一緒に踊っている。気がつくと踊りの集団は
数十人と増えていった。
彼女「え!みんな踊ってる!!なにこれ!!どうなってるの!?」
彼氏にびっくりした表情で問い掛ける。
彼氏「俺も行かなきゃ。。。」
小声で呟く彼氏。「え!?」と聞き返す彼女。
その瞬間、彼氏は踊りの最前列の真ん中に
飛び出す!!
運動神経の鈍い彼氏は明らかに周りの人と比べると上手く踊れていない。
それでも彼氏が誰よりも全力で踊っているのは見て分かる。覚悟をもった真剣な目付きで踊りながら彼女を見つめている。
自分の目に映る光景に驚きを隠せない彼女。
汗だくになりながらも踊りを止めない彼氏。
食い入る様に、彼氏の踊りを見ていたら
突然、彼女の両サイドから、懐かしい声が彼女の名前を呼ぶ。
その顔ぶれは彼女の学生時代の友達、社会人になってからの友達、地元の親友、中には海外に移り住んだ親友まで居る。
彼女「みんな。。。」
うっすらと涙目になる彼女。勘のいい彼女は
私の為のサプライズだと気づく。
しばしの間、旧友、親友に囲まれる彼女。
囲まれた先に赤いレッドカーペットが敷かれている。そのさらに先に息を整えた、さっきまで踊っていた彼氏が。
「さあ。。行っておいで」
背中をそっと推される彼女。
レッドカーペットを通り、彼氏の元まで向かう彼女。真剣な面持ちの彼氏。
彼氏「○○(彼女の名前)、ずっと今まで待たせちゃってごめん、幸せにする、結婚しよう。ずっと隣にいて欲しいんだ」
片膝をついて、婚約指輪の箱を開ける。
彼女「はい。。」
涙を浮かべ、笑顔で応える彼女。
ギャラリーたちから自然と拍手が
沸き起こりたくさんの祝福の言葉を受ける。
数名のギャラリーたちは
その素敵な出来事に涙を流して祝福している。
彼氏「驚かせちゃったね、ごめんね」
優しく微笑み、彼女の頭をそっとポンポンする。
彼女「うん。。」
大粒の涙を流す彼女。
でも、その涙は幸せな表情に包まれていた。