「君さぁ…もう大丈夫なの?」
テレビ見ながら
笑ってる君を見つめて聞いてみた。
あんなに辛そうで
あんなに苦しそうだったのに
帰宅後は嘘みたいに
明るくて優しくて。
「えー、なんすかぁ?」
って私の問いかけに
笑顔でとぼける。
もう!
またこれ無理してる
って思ったけれど
息を吐いて心を落ち着ける
心がいっぱいのとき
私もよく無理に笑ってた
それを指摘されることが
とても嫌だったんだ
無理に聞かない
君を信じようって
思ったけれど
私がいるよ
って、せめてそう伝えたくて
迷ったあげく君の手をとった
ピクンと君の動揺が
伝わったけれど
あえて知らない振りをして
「ね、この人さ」
って君が見つめるテレビ画面に
うつる芸能人のことを笑って話した
あれこれ話していた君だけど
だんだんと表情が曇ってきて
「先輩、もう寝るすか?」
ってやたらと聞いてきた
「んー寝ないよー」
って私、何度か言ったけど
あまりに君が
しつこいもんだから
「寝てほしいのか」
って聞いたら
「……逆っすよ」
って君、つぶやく。
君に向き直って
頭を撫でる
「先輩」
って君。
「ん」
って私。
「ずっと側にいてほしい」
って君。
「いるよ」
って私。
「カズ、あのね」
って
「君、昼間、俺だけが
幸せになってしまったって
言ったよね」
って
「自分もあの時
死ねればよかったのに
って泣いたよね」
って言葉続けた。
君はうなずいて
私の顔を涙目で見つめる。
「お父さんと
お母さんとこに
いたかったんだよね」
って
「あの日見たみんなが
頭から離れないんだよね」
って
言ってみた。
私の言いたいことが
君に伝わるかとても恐くて
唇が震えたけれど
「うん、うん……」
って君はうなずいて
私の肩に頭を預けてくれて
少しずつ
ゆっくりゆっくり
心の中に溜まったもの
吐き出して
こどもみたいに泣いた
お父さんお母さんのこと
あの日見たものとひとたち
君が怯え続けるそれに
胸が締め付けられる
君の背中をなでながら私
我慢しなくていいよ。
って本音は
あえて心の中に沈めた
我慢することないんだから
本当のこと言えよ!
私が聞くって言ってるじゃん
って言うのは簡単。
でもそれは
伝えてしまえば想いの
押し付けになってしまう
それよりも私の想いを
君がわかってくれたら
君はかならず私に
心を預けてくれることを
嬉しく思うし
心を見せて
心を抱き締めさせてくれることが
心から愛しいと感じる
君の側にいるだけで
君の変化に気づけことは
恵まれてる今だと思うから
これからも側にいる
たとえ君から紡がれる言葉が
どれほど悲しいものでも
どれほど間違ったものだと思っても
君を否定したりしないから。
君を受け入れるから。
だから、これからも
私の側にいてね
力になりたい
君が私に幸せをくれたように
私が君を救ってあげたいの
2017/10/11