『片割れ時の神様』
「僕には感情が無い。」
『起立___礼』
日直の声が響き渡る
『________』
『________』
耳を塞ぐ
名前を知りもしないクラスメイトが
騒ぐ 騒ぐ 騒ぐ
まるで僕を嗤っているようで
この時間が1番嫌いで。
SHRが終ってからも抜け出せないまま
いつもこの時間は独りの筈だった
今回だけは違っていた
『_独りなの?』
新学期が始まってから
誰とも話さなかった僕は
違和感を感じ後ろを向くと
窓際のカーテンの側で君は居た
誰だろうか
他に教室に人は居なくて
僕に話しているということは解った
でも見たことも無い人で
転校生など来ていない筈で。
「誰、ですか」
露骨にそんなことを聞くのも失礼だが
気になって堪らなかった。
『誰でしょう。』
少し置いて出たのはその応えだった
僕は俯く
駄目だ、話せない
そう思った時に下校のチャイムが鳴った
今がチャンスだ、と思い鞄を取る
「僕はこれで失礼します。」
後ろを振り返ろうともせず_
僕は立ち去った
________
『曖昧だね』
『成瀬くんって何時も暗いよね』
其ればかりなんだ。
もううんざりなんだ。
死んでしまいたい、すっきりしたい
もう飛び降りれば_
「死」なんて直ぐそこなんだから。
________
次の日もまた次の日も
SHRが終ってからも教室に居残っていた
また君は居た
いつも通り、何も喋らずに。
ひっそりと佇む君の瞳は
いつでも此方を向いていた
時偶、話すことはあったものの
そのまま時間は過ぎていくばかりで
「××」
『なーに、玲於くん』
下の名前で呼び合うようになってから
僕達は僕達を隠した
_僕は感情が無いなんて言えない
_私は神様だなんて言えない
翔びたいと思ったのも
死にたいと思ったのも
君が堪らなく愛おしいからで。
_実行開始
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はじめて下の名前で呼ばれたのは
いつだったかな。
くぐもった声、君の声
そうだ、
玲於くん。
________
「玲於くん、」
私は問い掛ける
一緒に居れるなんて夢にも思わなかった
『なに、××』
好きだよ、なんて言えなくて
「何にもない。」
後悔ばかりなんだ、いつも
でも今は違う
2人で空に駆けて
一緒に笑い合おう
「この夕焼けの空で」