はじめる

#迷霧の連弾

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全248作品・


迷霧の連弾
232/260

それならば

キミの望みどおりに

キミのことをボクが忘れる

キミとのボクの間に

友情が存在するのなら

友だちとして

もうキミが辛い想いを

しなくても良いように

ボクは行動すべきだ

けれども友情とは違う感情が

ボクのこころにあった

そんなことを

ひとりでブツブツと

呟いていたら

保健の先生は

キミのことが好きだから

恋をしているから

忘れるなんてイヤだよね

そう言ってボクのこころを

弾けさせた

ボクは赤い顔で

そんなことはありません

そう言い返したものの

自分の気持ちに抗えず

ウソですとすぐに撤回した

同じ夕焼けを・2025-01-11
迷霧の連弾


迷霧の連弾
244/260

立ち尽くすボクの視界に

まだ秋を終わらせたくない

赤トンボが舞い込んで

自分が大地に

立っていること

そしてキミにボクのこころを

伝えるために

ここにいることを

思い出させてくれた

ボクはゆっくりと

顔を水平に戻して

キミと正対した

キミは真っ直ぐに

ボクを見つめている

ボクはウロウロする目で

自信なさげに

キミを見ていてる

ふたりの間を

取り持とうとしているのか

引き離そうとしているのか

赤トンボが割り入って

一瞬空中で静止して

空の彼方へと

飛び去っていった

キミはその赤トンボを

愛おしそうに

目で追っている

そしてキミの方から

話し始めた

同じ夕焼けを・3日前
迷霧の連弾


迷霧の連弾
241/260

キミはボクの方を向いた

何か言おうとしていた

キミが言葉を

発するより先に

ボクは場所を変えたい

キミに問いかけた

キミはどうしてと

ボクに尋ねた

どういう結果になっても

後悔したくないから

この荒涼とした教室より

生き物たちが

命の輝きを放っている

そんな場所で

ボクの気持ちを伝えたい

自分のこころを

青空のように

正直に伝えた

少し沈黙が漂い

ふたりは動けなくなった

いたたまれなくなったボクは

学校の裏山の頂上で

話したいんだ

叫びにも似た強めの口調で

キミに告げた

同じ夕焼けを・2025-01-14
迷霧の連弾

これらの作品は
アプリ『NOTE15』で作られました。

他に248作品あります

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迷霧の連弾
238/260

翌日は前日のように

穏やかな空ではなかった

秋風が来るべき冬の

手を引いているように

疾走していた

白銀色の雲が

空を滑るように流れて

雲の隙間から光の筋が

スポットライトのように

大地に突き刺さっていた

教室に入ると

もう合唱コンクールは

遥か遠い過去の出来事のように

みんなの意識の奥底に

しまい込まれていた

目前に迫った期末テスト

その先に待ち受ける

高校受験が

みんなのこころを

羽交い締めにしているようだ

そんな風合いをよそに

今日の日射しのように

隙間から覗き込むように

キミに眼差しを送る

キミはいつもと変わりない

もうキミのこころは

すでに決まっていて

秋の大空のように

動かすことは

できないようだった

同じ夕焼けを・2025-01-13
迷霧の連弾


迷霧の連弾
247/260

キミを忘れることは

キミを想い続けるよりも

簡単なことだった

忘れてしまう哀しみは

いつか時間とともに

薄れてゆく

でも想い続けることは

キミのことをこころの表面に

貼り付けておく必要がある

キミを想うたびに

キミのこころを知りたくて

でも知ることができなくて

苦しむことになる

キミは友だちから

離れることができなくて

苦しんだ経験を持つ

だからボクには

そんな想いをさせたくない

キミの思いやりが

ボクを冷たく

突き放している

それでもボクが

それをできないのは

キミがボクのことを

決して嫌ってはいない

もし嫌っていたら

頭を下げるほど

ボクに忘れてとは

告げることはしないはずだ

同じ夕焼けを・2日前
迷霧の連弾


迷霧の連弾
226/260

ワタシは卑怯者だから

アナタには許して欲しいとは

思ってはいない

許されるとも思っていない

ただアナタには

ワタシのことは

どうか忘れて欲しい

多分アナタは

科学の授業が終わって

ワタシがもうアナタに

無関心になったことに

傷ついているはず

合唱コンクールで

あの素晴らしい愛をもう一度

その曲に出会ったことで

ワタシはアナタに

あの曲の主人公のように

淋しい想いをさせてしまった

ワタシとこころ通うこと

アナタにはもう叶わない

それはアナタのせいじゃない

ワタシが勝手にこころ通わせ

突き放しただけだから

だからもうワタシのことは

忘れて欲しい

そう言ってキミはまた

深々と頭を下げた

同じ夕焼けを・2025-01-09
迷霧の連弾


迷霧の連弾
231/260

保健の先生の考えに

共感したくない自分がいた

成長は生きる上で

大切なことなのに

成長によって

幼い頃から続いていた友情

それが呆気なく崩れ去る

その一方で

成長が未熟だから

その現実を受け止められない

何も考えずに

漫然と中学校生活を

過ごしてきたボクには

無縁のような現実

いずれにしても

現実にキミが哀しんでいる

その哀しみから

抜け出すことができず

哀しみに浸かっていることが

正常であることに

疑いを持たないように

キミは自分を戒めている

そんなキミを救いたい

そう思うのは当然と考えていた

でも現実には

ボクたちは中学校を卒業したら

別々の進路を歩むだろう

キミに寄り添えるのは

もう数ヶ月しかない

同じ夕焼けを・2025-01-11
迷霧の連弾


迷霧の連弾
229/260

次第にボクは

こころも体も落ち着いた

保健の先生は

優勝おめでとう

ボクたちの

合唱コンクールの成績を

讃えてくれた

あの素晴らしい愛をもう一度

とても良かったよ

先生はそう言ってくれた

その曲のお陰で

キミの苦しみを

知ることができたんだ

勢いそのままに先生に言った

事情を知らない先生は

とりあえず順を追って

話してくれるかな

はやるボクを

落ち着けるように

優しく言った

ボクは先ほどの

キミとの出来事を話して

キミが一年生の時に

保健室に来た理由と

先日合唱コンクールの練習中

保健室に来た理由が

関連していることを伝えた

同じ夕焼けを・2025-01-10
迷霧の連弾


迷霧の連弾
235/260

それなりにという形容が

気になったので

やはり煮え切らないでいたら

保健の先生は

ここに相談に来たからには

先生の言うことに

従いなさい

とうとう命令を下した

ボクはため息をひとつ吐き

分かりましたと

しぶしぶ頷いた

それでヨシと先生は

ボクの肩を叩いて激励した

でも緊張するなあ

素直に弱音を吐いて

お守りでもあればなあと

こころを落ち着かせるように

ひとり言を呟いたら

先生はちょっと待って

そう言って

ルーズリーフを用意して

何かを書き始めた

ボクは緊張を解くための

呼吸法か何かを

書いているものと

先生がペンを走らせる様子を

黙って見守っていた

同じ夕焼けを・2025-01-12
迷霧の連弾


迷霧の連弾
242/260

カサカサと

落ち葉を踏みしめる音が

山の中にふたつ響き

鳥たちが慌てて

木々の枝から

飛び立っていた

足音のひとつは

危なっかしいほど

ぎこちない音を立てていた

キミの前を歩くボクは

自ら山頂に行くことを

望んでいたのに

緊張で足が上手く運ばない

キミの足音を聞く限り

平常心を保っているようだ

もうキミのこころは

昨日から揺いではいない

そう思わせるほどに

キミはしっかりとした

足音を響かせていた

キミの表情を確かめたくて

振り向きたかったけど

それをすると

キミは踵を返して

逃げ出してしまいそうで

ボクのこころは怯えていた

同じ夕焼けを・2025-01-14
迷霧の連弾


迷霧の連弾
243/260

足元に絡む

落ち葉を置き去りにして

ボクたちは

山頂の広場に着いた

教室ほどの広さのそこは

こんもりと木々に囲まれて

景色を見下ろすことは

できなかった

見えるのは空だけ

雲が逃げ去った空は

ただ青いだけで

仰向いて空だけを

見つめていたら

青色の世界しか見えず

自分の居場所が

分からなくなって

空の中で迷子になっている

そんな錯覚に陥って

この中学校生活で

迷子になってしまったのは

友情に置き去りにされた

キミなのだろうか

何も考えずに過ごして

卒業後の自分の姿が

想像出来ないでいる

ボクなのだろうか

キミが傍にいることを

忘れてしまって

それを考えずには

いられなかった

同じ夕焼けを・2025-01-14
迷霧の連弾


迷霧の連弾
234/260

そんな都合良く

事が運ぶとは思わないよ

いっそのこと先生が

キミを保健室に呼んで

ボクの代わりに

好きだと言っていたよと

伝えてくれれば良いのに

ボクはやはり消極的だった

そんなボクに

保健の先生は業を煮やして

両手を腰にあてて

前傾姿勢で顔を突き出して

この意気地なしと一喝した

キミのこころは

ありふれた慰めの言葉で

救われないんだよ

思いがけないような

幸せと思わせる言葉が

キミには必要なんだよ

たとえキミがアナタのことを

好きではなくても

自分を好いてくれる人が

いるということを知ったら

それなりに嬉しいものだよ

ひと息にまくしたてた

同じ夕焼けを・2025-01-11
迷霧の連弾


迷霧の連弾
250/260

自分の意気地なしが

悔しくて仕方なかった

どんな結末になろうと

ボクのこころを

伝えようと決めた

その意気込みは

キミの優しさを前にして

消沈しそうになった

今のボクに縋れるモノは

保健の先生から授かった

お守りだけだった

あんなにこころを込めて

モミジの透かし模様が

浮かび上がる便箋を選んで

書き写したのに

書かれている内容が

混乱した頭から

弾け出されてしまった

キミに渡す前に

内容を確認したかった

でもキミの前で

それを開くことは

してはならない

だからボクは

キミに断ってから

体を反転させて

キミに背を向けた

同じ夕焼けを・1日前
迷霧の連弾


迷霧の連弾
246/260

風の音も加勢して

ボクのこころは

焦燥感で溢れそうだ

何か言わないと

何か答えないと

キミに先に話されて

ボクは予定が狂って

どうすれば良いか

もう何も考えられなかった

キミはボクの答えを

待つことはなく

話を続けた

ワタシとの想い出を

抱えていても

キミのこれからの人生に

何の助けにもならない

それよりも自分が

未来に向かって

階段を確かに昇れる

そのために必要なこと

それだけを追い求めて

それ以外は

踏みにじって

生きることを考える

それが人間として

正しい生き方なので

ワタシの存在は

忘れて欲しい

同じ夕焼けを・3日前
迷霧の連弾


迷霧の連弾
237/260

先生は改めて

その文章の大事な部分を

丁寧に説明してくれた

ボクはその部分を

何度も読み返して

この文章の登場人物を

キミとボクに置き換えたら

まるでボクたちのために

作られた曲

そんな感覚に入り込んだ

今すぐキミに渡したい

合唱コンクールの余韻で

感情が鋭敏になって

本当の自分の気持ちを

何のためらいもなく

さらけ出せる今この時に

そんな想いを馳せていたら

一番大事なことは

この紙をそのまま

渡さないことだからね

キミの手で

気の利いた紙に

こころを込めて

キミのことを想って

書き写すんだよ

当然のことだけど

鈍いボクは

そんなことさえも

気にかけていなかった

同じ夕焼けを・2025-01-12
迷霧の連弾

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