誰かのどっかに残らない
声を
私はのせた
声をのせた
音をのせた
葉をのせた
拍をのせた
ちっちゃな全てをのせた
風にのって
空にのってった
遠く遠くを私は眺めた
雲が流れる様をみた
葉桜が散る様をみた
世界の色が変わる様をみた
たくさんのことが
後ろへ後ろへ流れてく
たくさんのことが
前から前から流れてくる
尽きない片割れに
腹が脹れ始めた
けれど
止まり方はのせてなかった
見慣れた街並みに
挨拶をする
無表情で冷たい街だ
空の色まで真っ青だった
ところどころに落ちていたモノ
名前は忘れた
拾うことを躊躇した
でも
拾った
落しモノをのせた
ひとつひとつ色が違って
ビー玉の欠片のようだった
ちいさくちいさく
砕かれたビー玉のようだった
拾っても拾っても
転がっていた
だから
拾った
のせた
重くなった背中
陽の光を拒む落としモノ
のせきらない落としモノ
のせ忘れたモノがあった
のせてしまったモノがあった
名前は忘れた
都合のいいモノ忘れ
拍がとまった
葉がとまった
音がとまった
声がとまった
止まり方を覚えてしまった
時計の針を動かしてしまった
たった一秒が
とても遅かった
止まり方は動かし方と
一緒だった
のせたモノが落ちていく
砕けてく
ちいさくちいさく
ちっちゃくちっちゃく
たくさんのことが
前へと前へと流れてく
たくさんのことが
後ろから後ろから流れてくる
今日ものせる
明日ものせる
意味も
何もかも忘れたけど
声をのせる
知ってる声を
知らない声を
忘れた声を
忘れない声を
消えた声を
消えない声を
見える声を
見えない声を
誰かのどっかに残らない
声を
私はのせた