風が呼んだ消えかけの音
木々が揺らぐより
夏の虫が語るより
美しく哀しい音を聞いた。
葉桜が街を彩り
数日の大雨が止み
風鈴を飾る手前
そんな季節がやって来た。
湿気ばかりがしつこく
夏中盤に比べれば
まだまだ未熟な日照りに
僅かな苛立ちを感じていた。
日焼け止めを塗ったばかりの
腕に違和感を感じながらも
足を進めた。
取り壊しが決まった廃ビルを前に
辺りを見回す。
関係者以外立ち入り禁止
そんな看板を掲げながらも
無防備な入口
一歩踏み出してしまえば
人影もなければ
生活感もない場所
時は、経過するものだと実感。
錆びた階段を音を立てながら
上がっていく。
可愛げのない不細工な音を。
案外、風通りがよかったが、
埃っぽさは漂っている。
見慣れたはずの景色が
過去と現在とで違い
映画のセットの中にでもいるよう。
進む足は止めない。
屋上は、鉄板のように熱い。
だから、その手前で止まる。
屋上階段手前で右に曲がると
4つの部屋が並ぶ。
一番、端の部屋に手をかける。
鍵がかかる心配もあったが、
いらぬ心配だった。
少しぎこちない音を立てドアを開く。
何もなかった。
当然といえば当然のこと。
宿題を広げた木の机
壊れて安定しないパイプ椅子
思もえば、愛着のあったモノは、
たったその2つだけ。
あとはテキトウなゴミが
そこらで転がっていた。
クーラーも扇風機もなんもない
狭い部屋に夏休みの宿題を並べる。
シャーペンさえ握らない手で
ジメジメとした空気を扇ぐ。
右も左も人だかりの街並みに疲れ
フラリと寄ったビル。
小さな雑貨屋
古い本屋
大した店もないが
人の出入りが少なく心地よかった。
屋上階段手前に
4つの部屋が並んでいた。
何となくで埃多そうな
端の部屋に手をかけた。
その日から毎日のように寄った。
何かをする訳でも
何でもなかった。
ただの暇つぶしで
ただの暇だった。
何も気にしなくていい。
自分も
他人も
何もかも。
いつものように黒いリュックを背に
ドアに手をかけた。
木々が揺らぐ音が聞こえた。
夏の虫が語る音が聞こえた。
しかし、どの音よりもか細く
美しい音が耳を通った。
かけた手を引っ込めてから
静かに階段を降りた。
聞いてはいけない
居てはいけない
そんな圧迫感を必死に抑えた。
一日空けてから
再び、ビルへと足を向けた。
木々が揺ぐ音も
虫が語る音も
消えたというのに
あの音だけは耳にへばりついていた。
手をかけて数分後、
思いっきりドアを開けた。
いつも通りの景色が広がり
肩の荷がおりた。
相変わらず進まない手は
ジメジメとした風を扇ぐ。
彼女はあっさり、登場した。
そう物語の主人公のように。
ドアに手をかけまっすぐに
見つめる瞳は、ちいさく揺れていた。
見ている方が汗をかくような
黒い長袖のパーカーを纏い
伸びっぱなしのような髪を下ろしていた。
怯えていた彼女を
手招きした。
自分だってビクついた癖に
彼女に大人な対応を見せていたのは、
彼女の怯えが
何にも勝っていたからかもしれない。
彼女の歌を聞きたいと言った。
直球だ。
初対面で得体の知れない自分の
願いを彼女は受け入れてくれた。
あの音だった。
美しい音が耳から体中を巡る。
巡りきるとツンと目頭が熱くなる。
哀しい音だった。
美しさで囲った哀しい裏を
覗いてしまった。
彼女と仲良くなりたかった。
時が経ってしまう前に。
彼女を残したかった。
大きな時の中に。
名前を語らない彼女に
名前をつけた。
彼女の毎日を綴った。
時の中に。
窓に映る狭い青い空を背景に
彼女を残した。
風を扇ぐばかりだった手に
スマホを握り
宿題を広げた机に
2人分のカフェオレを置いた。
小さなスマホに含まれた
大きな世界で
彼女は瞬く間に大きな星となった。
歌なんて大嫌いだった。
歌えば飛んでくる破片が
酷く痛かったから。
何をしても責め立てられるから。
哀しかった。
救われる価値もないのに
救われたいと願ってしまうことが。
逃げ道途絶え、
叫び声も消される。
意味無く生かされた命が
輝く訳もなく
ただ、時が過ぎて欲しかった。
早く早く、終わりの瞬間が欲しかった。
人を避けて見つけたビルには、
小さな雑貨屋
古い本屋
人がたかる場所もなく心地が良かった。
階段を上がれば上がるほど
静けさが広まった。
ふっと止めた足が向いた
4つ並ぶ部屋の端に手をかけた。
木々が揺らぐ音
夏の虫が語る音のみが
耳を通った。
何もしなかった。
暑さも寒さも感じなかったし、
どこよりも心地よかったから。
何もせずに窓を見つめた。
小さく切り取られた青い空に
安堵感が生まれた。
音を立ててみた。
消えてしまいそうな音を。
風にのって飛んでいきそうな音を。
誰の耳にも止まらぬような
そんな音を。
葉桜が街を彩り
数日の大雨が止み
風鈴を飾る手前
そんな季節がやって来た。
私の名付け親が
数年前に時から消えてしまった。
私の名が沢山の人に知られても
彼の名が広まることは無かった。
あのビルの取り壊しが決まった。
錆びた階段に
昔の景色が上手く重ならない。
時が早く過ぎてしまえばいいと
心からそう思っていた。
遅すぎる時を酷く恨んだから。
けれど、時はいつしか
早く経ってしまった。
大きな大きな時が
大きく大きく巡った。
私は、時に刻まれた。
彼が望んだことだった。
彼が救ってくれた。
救いの価値だとか関係なしに。
時がこれからも巡る。
巡ることを止めることは無い。
だから、私も足を進める。
時から消えようと
私に残る彼を心に留めながら。
え、なにこれ( '-' )
途中からわけわかめ( '-' )
だいたいね
小説にする気無かったのに
書くからだよ( '-' )
最初の4行が気に入って
続き書いたら
終わりわかんなくなって( '-' )
は?( '-' )
中身スっかスかの
ヘンテコなやつー( '-' )
いやだぁ( '-' )
よし、寝よ( '-' )✨