「転校してきた猫森くん、かっこよくない?」
「えぇ~雰囲気だけじゃん?」
「うわ、あなたとは分かり合えない!もう知らない!」
「ごめんってば、でもそういうのを好きな子もいるんだろうっていうのはわかる、現に雛花ちゃんが狙ってるみたいだし」
「ほんとに?そしたらもう私のチャンスないじゃん、雛花ちゃんかわいいもんなああ」
「雛花ちゃん彼氏いるけどね」
「え?」
*
「そういえば七葉ちゃんと一輝くん、別れたんだって、七葉ちゃんに他に好きな人ができたとか」
「あーーまじで?一輝くん記念日とかそういうの気にしなさそうだもんね、愛情不足ってトコですかね」
「ですね、女心を理解するっていうのは第1ミッションよ」
*
「ところで夢見ちゃんと冴凪くんって絶対両片想いだよね?」
「いやそれな?!早くくっついてほしいよ、私が今一番推してる2人」
「青春だああああ羨ましすぎる」
ああ、五月蝿いな。
🂱 ・ 🂱 ・ 🂱 ・ 🂱 ・ 🂱 ・ 🂱 ・ 🂱 ・ 🂱 ・ 🂱 ・ 🂱 ・ 🂱 ・ 🂱
❁❁❁❁❁❁『I'm in wonderland』
❁❁❁❁❁❁❁❁story A
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みんなみんな、愛に飢えている。貼り付けられた笑顔の下は血眼。彼氏彼女が出来なければ生きていないも同然なのか?学生の青春には恋愛が必要条件だなんて誰が決めたのだろう?
皆の求める青は、これでもかというくらい彩度を上げられて、もはや安っぽいものとなってしまった。それに気づいているのは僕だけなのか。
僕がこうなってしまったのは、変なプライドのせいだった。恋と呼べる感情は何回か経験しているのに。それは自分に笑顔を貼り付けることすら許さない上に、あらゆる行動を起こすときには決まって邪魔してきた。
ゴミはゴミ箱、念には念を、想いは心の内へ。鍵は二重にかけておく。そんな風に生きてきて、気づいたら多感といわれるお年頃になっていただけだった。
身近な色恋沙汰には軽蔑の視線を向けるという術しか持っていなかった。その軽蔑も純度100%ではない。彼らに対する軽蔑に限らず、そんな自分への軽蔑なんていう面倒な異物も含んでいた。そして、羨望も。
どうしたらその過程まで辿り着けるのだろう。誰かに愛されるということを知りたかった。そもそもそんなことをこの捻くれ者が思っていても許されるだろうか。
みんなみんな、狂っている。愛に飢えている。
そうやって心の中でほざく僕が、一番愛に飢えていたというだけの話。
_We Are All Mad Here .続
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