からだの声を聴こう
警告じゃなくて
心配してくれてるのだと
すべて変換できたなら
やさしい手が見える
蝶番・2025-10-22 #つなごう #diary* #simply
そうは言ってもスライドする指
代わりを探すその目は多分がらんどう
蝶番・2025-08-19 #diary* #self-portrait
風を避けると歩くのは朝になる
ようやく散歩する時間が取れ
足を延ばした先には
数年前に切り倒されたカブトムシの森
真っ平らになっていた場所に林立する枯れ木で
新たな林が作られていたと知った
つくしを探しながら歩を進める
なずな、ホトケノザ、オオイヌノフグリ…
蕾を開こうとしているタンポポひとつ
お目当ての垂直はまだのようだ
遠くから人声
遅れて打球の音が響く
頬に当たる感触で
風速も測れるようになった
限界値であることを確認し踵を返す
車も増え始めた
ピピートゥトゥトゥ
行きに聞こえた
特徴的な鳥の鳴き声はもうない
朝と午前の境目は七時半というところか
水仙、クリスマスローズ…と
家々の植栽を冷やかしながら
帰途につくマスク越しの鼻先に
くっきりと甘い香りが絡む
思わず振り返ると
沈丁花が裏庭にひっそりと佇んでいた
白い花房を前に足が止まる
香りが姿より先に現れるのは
沈丁花にくちなし、金木犀…
どれも季節を知らせる花だ
鋭角的な香りに愁いを含む
そのイメージは、先日足跡を消した
美しい人を思い浮かばせた
はっきりと漂う甘い香りが
手では決してつかめぬように
春の別れはいつもより物悲しく
うずうずと胸を絞る
不意に初夏めいた風に背を押され
離れる瞬間わたしは目を閉じた
光、声、ぬくもり、香り…
たくさんの星が彼女の上に降りしきらんことを
蝶番・2025-03-23 #sketch* #diary* #scenery*
重たい湿気に絡みつかれ
思考はまるで保てない
でも嫌じゃない
ぬるい気だるさは笑みを含んで
ほどかれる原色の花
蝶番・2025-09-10 #self-portrait #diary* #scenery*
自分より大切な存在を手にしていた
胸吹き抜ける風
途方に暮れる
悲しくて
たぶん幸福なんだろう
蝶番・2025-10-07 #diary*
芙蓉はついに数個
色褪せた花弁が
夏が去り秋が巡ってきたことを告げる
手紙はまだ届かない
宙ぶらりんの自分を保ち
努力し続けるのは静かな情熱
心に火を絶やさずにいたい
蝶番・2025-10-14 #diary* #simply
黄アゲハが何度も頭上に円を描く
くるくる、くるくる
どこかで羽化できたのだと
小さく手を上げてみる
まだ新しい光 手元には虹
シオカラトンボがすいっと横切り
薄青の空に遠く飛行機雲を見つけた
蝶番・2025-08-15 #sketch* #diary*
太陽が起きる前に歩く
継ぎ目に油を注したように
なめらかになる身体
今日は左手 明日は右手
少しずつ変化をつけ
律しながら朗らかなエチュード
蝶番・2025-06-16 #simply #diary*
秒針よりも速くこぼれ落ちる日々に
親愛なるものに囲まれたい欲求と
すべては無に帰すのに、という脱力感が
左に振れ右に振れ
同じくらいの力で引っ張り合い
均衡を保つのを眺めている
困ったような呆れたような顔で
蝶番・2025-08-10 #simply #diary* #self-portrait
悪いことと最悪は防げた安堵が
次から次へと押し寄せて
気持ちが追いつかないまま手を上げる
ただ眺めるように
でも足は止めない
そして整理のつかない部屋に
グレーの海面がさざ波立つ
ゆっくりと静かに
気持ちを乗せない灰面が
わたしを無音でなでていた
蝶番・2025-07-16 #海を眺めて #scenery* #diary*
過去の美しさに凍える
過大評価だったと翻す
乾いた安堵
ずっと同じところを廻っている
この感覚も繰り返している
鈴の音が小さく聞こえた
瞬間に何かは蒸発し
記憶そのものも消失する
蝶番・2025-04-25 #diary* #recollection
真摯でありたい気持ちと
身軽こそ良しとする声に
いつまでたっても立ち止まる
胸に挿された小さな印
心細く所在なげに
でも矜持をまとって
蝶番・2025-09-30 #心に浮かぶのは #diary* #self-portrait
待ち望んでいたバケーションは
手持ち無沙汰に色あせて
気づけばいつかのシガーブルー
コントラスト片手にまた潜れる
蝶番・2025-08-14 #diary* #recollection