#ヤドカリ

いつだって

小さいなりにボクは生きてきた。





ボクが大好きな海で最後を。

カリカリせずにヤドカリになろう!w

宿借りは家を作ることにこだわり屋さん

見てみて！
ヤドカリがいるよ
わぁ～！！
あれ？
隠れちゃった

寄居虫が僕に話し掛けた

「ちょいとそこの」

殻の中から見上げる様に
ちょこんと僕の隣に坐る

「こんな所で如何したね」

眼下の広大な水溜りを見ながら
僕は答えた

「此の海を見てるのさ
此処は一等綺麗に見えるから」

「ふうん、そうなのか」

寄居虫は僕と同じ様に
其の景色を見ようと
目を伸ばしていたので
僕が掌に乗せてやる

寄居虫は感嘆の聲をあげ
掌から落ちそうになりながら
沢山の足を右往左往動かしている

其の感触に擽ったさを憶え
ケラカラと笑う

潮の薫りもが鼻を擽る

暫くそうして戯れると
寄居虫は云った

「やあやあ、
愉しんだ愉しんだ
有難う
それじゃあ、
また此の景色を見たいから
明日も此処に来ておくれよ」

僕は少し考える
けれど寄居虫は
僕の返事を待たずに帰って行った

「仕方ない」

僕の一等好きな海と
一つに成るのは
未だ、先でも良いだろう

あの少し強引で小さな友人に
また此の景色を見せる
小さな約束が出来たのだから

僕は小さく笑い家路を急ぐ

『一人と一匹の出逢い』