#君の背中を見つめて（仮）

後ろから見てもどこから見ても

すぐに君を見つけてしまって

私は心底君が好きなんだろうなと

見つけた時によく思う


かっこいい って

面を向かって君に言った日から

もう三日が経ってしまう

あの日から君とは話せていなくて

目が合うこともなくって

寂しい…なんて思ってしまう


君を見つけるだけで嬉しくなる

あの頃の私に戻りたい

だってあの日から

君に触りたいなんて

欲が強くなってるから




昼休み

君と話した階段を降りていたら

君が後ろから声を掛けてきた


"あの、、さ、えっと…"

あの日みたいに吃りながら

なにか発しようとしている


"ど、したの、？"

私も吃り気味に話し掛けたら

"今日一緒に、帰りませんか"

目をキョロキョロさせながら

耳を真っ赤にさせながら言う君は

｢かっこいい｣より｢かわいい｣で

大きく見えた君が今は小さく見えて


"だめ、ですか…？"なんて

もじもじして可愛く言ったから

"いいよ"と少し笑ってしまった


どんなお話ができるかな

なんて気持ちばかりで

午後の授業は頭に入らなかった

君の背中は大きくて

いざ男の子と認識してしまう


そしたら凄く

ドキドキしてしまって

上手く話せない


君は私の話をしゃがんで

一生懸命聞いてくれるけど

それでもまた緊張してしまって

君を心配させてしまう


"君がかっこいいのがずるいんだ"

なんてツルッと滑らせてしまえば

君は顔を真っ赤に染めて

"き、キミもかわいい、です"

なんて吃りながらも伝えてくれた


私も耳が熱い

そしてふたりの沈黙の時間

階段近くのチャイムが鳴った

君はバッと頭を下げて

顔を真っ赤に染めたまま

教室に向かって走って行った

放課後

チャイムが鳴ってからも

私はボーッと前だけを見ていた

すると後ろの方から名前を呼ばれた

君の声だとすぐにわかった


"少し…待って"

と目を見て言えば

"うん、何分でも待つよ"

とスマートな答えが聞こえた


流石に何分も待たせる訳には

いかないからと

手際よく身支度をした


"ごめん、待たせて"

と廊下にいる君に駆け寄り

"全然大丈夫"

と笑って歩き出す君の隣を歩く


待ちに待った君との帰り道

お互いの家を知らず

いつもの帰り道を聞いてみれば

お互い逆方向の帰り道と知った


""ぁ…""

ふたりして言葉を失ってしまい

どうしようかと悩んでいると

君が手を差し出してきた


"送って、いきます"

"手を、繋ぎませんか…？"

夕明かりのせいか耳が赤い君が

そっぽを向きながら言ってきた


驚きながらも恐る恐ると

手を伸ばして君の手に重ねた


程よくザラザラしていて

いかにも男の子って感じの手に

私はドキドキしていた

校門を出て私の帰り道を歩くふたり

私からしたら不思議でしかない

隣にいる君と目が合ったりする度

ふたりしてそっぽに目をそらす


駅に着いて一度手を離す

"ほんとに…送ってくれるの、？"

熱い顔を下に向けながら君に問う

"うん…だめ、かな、？"

頬は赤く染まっている

でも真剣そうに私に向かう


"ううん、いいよ…嬉しい"

サッと口元を押えた君を見て

不思議に思いつつも切符を買った


電車に乗ってふたりで揺られる

今まで無かった帰り道に

少しパニックを起こしている


近くに君がいて

しかもまた手を繋いでいて

緊張しないはずがない


心臓の音聞こえてないかな

手汗でベタついてないかな

君も緊張とかしてるのかな

なんて口には出さないが

頭の中で繰り返されている



最寄りに着いてバイバイかと思えば

"…送るって、言ったから"

頑なに意見を変えない様子を見せた

私の家を知りたいのかな なんて

少しだけ下心あったりも…？

とか思っていたけれど


家に着いたら

"じゃあ、また明日"

と照れくさそうに帰って行った


"少しだけ…期待したのにな"

なんて零した言葉は

背中を見せて歩いていく君には

届かない距離だった