#灰は藹々に戯れる

どんなに痛くても

笑顔で手を振らないと、

さよならの音色が濁ってしまう。

夜の静寂を満たす月光は

僕の恋心と、よく似ている

普通に会話をしているときだって

言葉を通して、

あなたの心に触れている。

貴方を想う夜だけは救われたから。

どこを探しても居ないのに

瞼の裏にはまだ君が住んでいて

現実から背けるように

また目を閉じた

あの記憶の桟橋に、ただ君が佇んでいる

白鷺が掬う波も

煌めきのまにまに揺蕩う

心という感度を狂わせることで

勝手に亡れたつもりでいる。

ちぎり落とした実のように

いとも容易く

私に堕ちてくれたのなら

貴方のための言葉を綴るよ。

よく見ていて。

君の綴りが心地好くて、その筆の先で眠ってしまいたい。

むかしむかし、あるところに

貴方は私を置いていったの。

花瓶に挿した運命が

なにかを言いたげに

ただ、じっと見据えている

あの本棚の隙間に

君との詩集が残るはずだった

二人をつなぐ、拙い橋

君が切り落とそうとしても

僕は必死にしがみついて

その心に辿り着いてみせる