#移ろいゆくモノ

あたり前だと思っていたことが

あたり前ではなく

幸せだったことに気づく

近くて遠い過ぎ去りし日の軌跡

始まりがあれば終わりの時がくる

何も残さず過ぎ去ってゆく風のように

渾沌の中から生まれた愛は

やがて具象となってあらわれる

都合よく色づけされたそれは

最初のモノとは別のモノとなって

凍てつく空間は動く気配もなく

静まり返る水面には漣すらない

絶対的静寂が支配する冬の記憶

風立ちてゆれる秋桜

どんなに吹きさらされようと

優美な容姿は乱れることなく

ただしなやかなに舞う

まるで僕の心を

見すかしたかのような

大いなる落日のきらめき

2023年はいろいろ

お世話になりました

みなさまに

穏やかで幸せな

2024年が訪れますように

水色の風が吹きぬけると

画面がスクロールしたように

晩秋の空がひらけた

錯綜する時と空間

きらびやかな大都会も

あでやかに咲き誇る花も

刹那の賜だからこそ美しい

声なき鳥が音もなく羽ばたく

うつろな空に溶けこむように

黒き点はみるみる小さくなり

やがて跡形もなく消えさった

高く澄みきった紺碧の空

冬の乾いた空気が梢をゆらす

小さな命が待ちわびる春はもうすぐ

青から紅に移りゆく薄暮の空

時間がとまったような光景に

佇む僕は考えることをやめた

混沌の闇が晴れ光の海がひらける

いま幕をあけた美しき春

透明な風が通りすぎてゆく小径

季節の便りを携えた木洩れ日が

冬の訪れを告げる

時が止まったような

或る晩秋の午後

時に音をたてて燃え盛り

時に熾火のように静まる

いつも気まぐれな心模様