はじめる

#警察

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全108作品・



入りっぱなしだった、


透明の、小瓶。



「また、全部……なくしちまっ、た」



日に透かして振ってみれば


たぽんたぽんと小さく鳴った。




「もう……いいよな」




全て、失くした気になって


ぽつり、と独白を続ける。




「もう、充分……だよな?」



硝子と硝子がぶつかる音がした。



小瓶の中の


青酸カリを見つめる。




俺は少しずつ、


唇を近付けていった。




【Looking for Myself~分岐にゃん編~第十話 友紀目線 あの夜】





「ありがとう」



その言葉を残して



マヤは家を出ていく。



一度も振り返らずに。



「待っ……」



待ってくれ



その言葉すら伝えられず



バタンという重厚な音が



俺の耳を劈く。




“ありがとう”



……六花が笑顔で告げた、



掠れ霞んだ最後の言葉と



マヤの想いが重なり合う。




手元に残った、


六花のパーカーと


あの夜着ていたマヤのワンピース。



抜け殻の様なそれは


俺の心をひどく締め付けた。






___あの夜


マヤに声を掛けたのは


鉄橋の上に見た彼女の姿に


心が、揺さぶられたからだ。








***



マヤを拾った夜


俺はいつもの様に


河川敷の高架下にいた。



最早、日課だったのだ。



四年前、磯辺大二郎の


遺体が発見された、


全ての始まりの現場を


向こう岸に眺めながら


生と死の狭間を


右往左往することが。



あの時、上の決定に背かず


多少のことには目を瞑って


磯辺の死を自殺で処理すれば



六花やクロはああならずに


済んだのかもしれない。



後悔のどん底でそう思えば


身は切られるように痛めど


肝心の生命は


俺の胸で拍動を繰り返している。




その矛盾が心を



焦げ付かせる程に苦しかった。






リュックサックには


違法に取り寄せた、


青酸カリの小瓶が入っている。



いつも、今日こそは


今日こそは、そう思ってた。



ふと、月が見たくなって


頭上を見上げて、驚いた。





白い、ワンピース


少し、赤茶けた髪の毛。


欄干の上に、マヤがいた。



息を飲む。


一瞬……高校の時に


クロと喧嘩したと言って


家を飛び出してきた、


六花の姿と重なったのだ。





虚ろな目。


頬に流れる涙。


辛そうで


苦しそうな姿。


そして口元に蓄えた、


諦めの笑み。



1発でわかった。



あいつは、俺と同類だ。



死にたくて、死にたくて


死ぬ事が出来ない……意気地無し。





「おーい、そこのお前。パンツ見えてるぞ」



どう話しかけていいかわからず


そんな卑屈めいた言葉を


皮肉な笑みと共に投げかけた。





別に……生命を


助けようと思っていたわけじゃない。



ただ


死ぬ事で、互いの願いが報われ


互いの心が救われるなら


それもいい


そう思っただけ。





「死ぬんだろ?早く来い」



鉄橋下の川に飛び込んで


マヤに声をかけた時


わざと挑発的に


言葉を捨てた。



まさか本当に


飛び込んで来るとは


思いもしなかった。





俺が何の躊躇いもなく


そこから身を投げる姿を見て


自殺を思いとどまるなら


それでいいと思っていた。



混在する生と死への想い。


俺はあの時


マヤを見つめながら


自分の生き死にと


向き合っていたのかも


しれなかった。






「ちゃんと……死ぬから!!」





そう叫んで空を仰ぎ、



見ていなさいよとばかりに


水の中に吸い込まれていくマヤを



目の当たりにした時



心の何処かが軋んだ気がした。



見ごろしにする事も出来た。


そうしてやれば


楽になれるだろうと思っていた。



なのにあの瞬間


“助けて”


誰かがそう


俺の耳元で囁いた。



“お願い、助けてあげて”



“ゆき……っ”



ともき、という名を


ユキと愛らしく呼ぶ六花の声で


そう聞こえたのは


気の所為だったろうか。




気がつくと俺は


マヤを助けていた。



人を……助けてしまった。



そんな、資格が


何処にあるというんだろう。






六花を死なせた。


クロを半死人にした。



一番、守りたかったものを


手放した瞬間の絶望が


体中を覆う。




そんな俺に人助けなんて


できるわけがない。



きっとまた、失敗してしまう。



本当は誰も、亡くしたくないのに。







「ねえ、あなた……名前は?」


「黒須世名」






俺のような人間が


誰かを救えるわけがない。




クロだったら救えたはずだ。



ねじ曲がって歪み切った思考が


俺に、親友の名を……語らせた。





***



誰もいなくなった部屋。


転がった自傷道具。


ふらつきながら


ベッドに身を投げる。



布団に吸い込まれていく体。


夕日を浴びて煌めく埃。



ごろんと、寝返りをうった。


数時間前まで


このベッドにあったはずの


抱き枕……その温もり……マヤ。




夜、悪夢にうなされ飛び起きた時


側にあいつがいてくれるだけで


安堵に胸を撫で下ろした。



四年前の事件から


わずか数分の睡眠を繰り返し


睡眠不足に喘いでは


規定量以上の睡眠薬に手を出した。



恐らく俺は


ひどい薬中だったのに


あいつを抱き締めると


薬を飲まなくても眠れる



俺は正常だとすら


錯覚するほどに調子はよかった。



「ま、や……」



いつもマヤがいた、


左腕が空っぽで



気がつけば


涙が溢れ出す。




また、無くしてしまう。



この急くような感情は


なんだろう。



汚泥の中で


もがき苦しみながら俺は


そっとリュックに手を伸ばす。



入りっぱなしだった、


透明の、小瓶。



「また全部……なくしちまった」



日に透かして振ってみれば


たぽんたぽんと小さく鳴った。




ドラマのように青酸カリを飲んで


すぐに死に至るわけではないが


致死量を飲み干せば


いずれゆっくりと死に至る。




「もう……いいよな」




全て、失くした気になって


ぽつり、と独白を続ける。




「もう、充分……だよな?」



硝子と硝子がぶつかる音がした。



小瓶の中の


青酸カリを見つめる。




俺は少しずつ、


唇を近付けていった。


20センチ


10センチ


5センチ、4センチ



次第に近づく死の香り。



甘酸っぱいアーモンドの香りが


鼻をさした。



瓶に口づける。



あとは


瓶を傾けるだけ。


ゆるゆると、死んでいくだけ。



手も唇も身体さえ震える。



死にたくない。



そう叫ぶのは、誰だ。


心の声に耳を塞ぎ



いざ、飲み込もうとした時だった。





“友紀、さん。生きて……?”




マヤの絞り出す様な声が、聴こえた。




その途端、


俺は青酸カリの入った小瓶を


怯えるように


手のうちから放り投げる。


小瓶はあえなく割れ


中の青酸カリは部屋に散った。



襲う不甲斐なさに俺は


阿鼻叫喚した。



「くそ、くそっ、くそっ!」



髪を掻き乱し


髪の毛が抜ける程引っ張りあげて



そのまま拳を膝へ振り下ろす。



鈍い痛みが膝を襲うも、



俺は構わず外へと飛び出した。






「マヤ……っ、マヤ、行くな……、待って、待ってくれ……」



足元が覚束無い。


涙で前が見えない。



マヤをなくしたくない



その感情に、突き動かされ


俺は、夜に差し掛かった空をかぶり


マヤを探し始めた。

ひとひら☘☽・2020-06-11
幸介
幸介による小さな物語
LookingforMyself
LookingforMyself~分岐にゃん編
それだけでいい
独り言
刑事
警察
病み
死別
独り言
小瓶
青酸カリ
片想い
好きな人
ポエム
辛い
苦しい
抱き枕
好き



「……マヤッ」



友紀さんが、叫ぶ。


悲痛な声に


私の眉は顰められた。




元気で、いてね



私は、背を押されるがまま



パトカーに乗り込んだ。





【Looking for Myself~分岐にゃん編~第十二話 離別】



友紀さんと……一緒にいたい。


彼の身体に縋ろうとしたその時だ。



「そいつぁ出来ない相談だな」



その声に振り返ると


昼間会った楠木さんが


煙草をふかして立っていた。



「楠木……さん、どうして」


友紀さんの声に答えず


私の元へ歩み寄った楠木さんは


私を見下ろしてこう言った。




「新山まやちゃんだろ」


「え……?なんで、私の、名前……」


「ご両親が心配しているよ」


「え?」



父と母の顔が……脳裏を掠める。



「捜索願届が出されている」


「捜索……願い?……嘘、だよ」



心配するわけがない。


出ていけと言われた。


ずっと学校にいけない私のこと


邪魔だと思っていたはずだった。




今更、何?




こめかみに


玉の汗が浮かんだ。



友紀さんは


私の肩を強く抱き直し


楠木さんに物言った。



「学校へ行けなくなったマヤの話も聞こうとしなかった親です……それどころかきつく当たったと聞きました」



両親のところに居た時の


息苦しさが心を掠める。



何気なく吐露した両親への愚痴を


彼は覚えていてくれた。



友紀さんの脇に


押し付けられた、


耳が聴く、彼の鼓動。



涛々と急く鼓動は


まるで私を追いかけるかのようで


少し、切ない。



楠木さんは


ポケット灰皿で


煙草をもみ消すと


こう、告げた。




「その子は未成年だ。何をするにも親の決定が必要になる。それがどれ程、理不尽でも、だ。お前も刑事だったんだ、わかるだろ」


「……それは、そうですが」


「杉浦。下手したらお前、誘拐罪で逮捕だ。俺もそんな事はしたくない」



誘拐……罪?



友紀、さんが?


彼がいなかったら


私はそれこそ


生命を、落としていたのに。




俄に信じ難い言葉に


彼の横顔を見やる。



友紀さんの眉間には


皺が寄った。



険しい顔だ。



「ちが、違います……っ、私、家出したんです、それで友紀さんの家に置いてもらっていただけで、誘拐なんて、そんなこと……!」



私が思わず、声を張ると


楠木さんは腰を折り


私と目の高さを合わせて息をつく。




「それでも、未成年を成人が家に囲うことがあれば、世間や法の判断は“誘拐”そうなってしまう」


「そんな……」



あまりのことに


声も出ない。


目の前が暗くなる。



雑踏も聴こえない。


周囲の楽しげな笑い声も


遠く聴こえた。



「楠木さん」


苦悶の表情で、彼が呼びかける。




「それでも俺は……、こいつを針のむしろの様な両親の元へ、学校へ帰したくは……ないです」


「冷静になれ、杉浦。お前らしくもない」



厳しい楠木さんの声。


風が、まるで口笛でも吹くように


音を立てて耳元を通り過ぎて行く。



友紀さんは


拳を握りしめ、眼差し強く


楠木さんを見つめると


こんな一言を吐露した。




「楠木さん……俺はもう、後悔したくない」


「……じゃあ、どうするんだ」



諦めに顰められた眉。


への字に曲がった口元。


楠木さんのため息と共に


吐き出された言葉に


友紀さんは私に向き直る。





「マヤ……帰ろう、俺たちの家に」



俺“たち”の家……。


その言葉は彼が見せた、


離れたくない、の


意思表示にさえ聴こえる。



心臓が苦しくなる程


彼が、恋しい。



このまま縋りたい。


一緒に帰りたい。



でも。


楠木さんを見やると



「君は“家”に帰るんだ」



やたら優しくそう言って


手を差し伸べられた。




「マヤ……?」



私は、楠木さんの手のひらに



自らの手を重ねる。



横目に見た友紀さんの


唖然とした顔が胸をじくじくと刺す。




「友紀さん……私、帰るね」



「なん、で」



友紀さんを犯罪者に


するわけにはいかない。



本音を沈黙というオブラートに包んで


私は精一杯の笑顔を友紀さんに向ける。



彼の顔は


まるで、泣き出しそうだった。



うまく笑えていないかな。


そうだよね。


本当はずっと一緒にいたいもん。




「さあ、まずは署にいこうか」



重ねた手を


楠木さんは強く握り締める。



手錠をかけられるより


きっと重たい鎖を施された。


「はい……」



理解のない


あの家に、


帰る……


そう思うと


じんわりと涙が浮かんだ。





「……マヤッ」



友紀さんが、叫ぶ。


悲痛な声に


私の眉は顰められた。




元気で、いてね



私は、背を押されるがまま



重たい一歩を何度も繰り返し


道端にとめられていた


パトカーの後部座席に


楠木さんと共に乗り込んだ。




走り始めたパトカーの車窓に


とりどりのネオンが


尾を引いて駆け抜けていく。



後ろを振り返れば


友紀さんが立ちすくむ姿が


網膜に焼き付いた。



堪えきれず、溢れ出した涙は


呼吸さえも、私から


奪い去っていくようだ。



息が出来ないほど


唇を噛み締めて泣いた。


両手で顔を覆い


泣きじゃくった。



楠木さんは言う。



「辛い決断をさせてしまってすまない」


温かな言葉が胸を尽く。



「よく杉浦を、守ってくれた」



頭をぽん、と一度


叩くように撫でられる。



その手のひらの重みが


彼と重なって私は余計


声をあげて泣き頻った。

ひとひら☘☽・2020-06-19
幸介
幸介による小さな物語
LookingforMyself
LookingforMyself~分岐にゃん編
刑事
離別
サヨナラ
本音
苦しい
これはきっと雨のせい
独り言
辛い
好きな人
警察
パトカー
保護
鼓動
未成年
こども
境界線
誘拐
誘拐犯
辛い
幸せ
ポエム

【ForGetMe~クロとユキ~六花の章 第十一話忍び寄る邪心】




「黒須さん、また明日ね」



「うん、お疲れ様!」



私は、黒須六花。


交通課の女性警察官だ。



もっぱらスピード違反や


駐停車禁止車両を取り締まるのが


私の誇り高き、仕事。




署を出たところで同僚と別れ


帰路を歩む。



車通りの多い道を選ぶ…



最近、いつもそうだ。



すっかり暗くなった街灯の下。



タイヤとアスファルトが


擦れる音で空気を震わせながら


ざー、ざー、っと通り過ぎては


走り去っていく。





「あ、今の車……20キロスピード違反だ」


スピード違反の切符ばかり


切っていると


対抗してくる車が何キロで


走り去るのかわかるという、


特殊スキルが身についた。



「あー、もう!あんなにスピード出してたら危ないんだからねっ」



運転手には


届くはずもない忠告を


私は夜空に響かせる。




体育の成績がいつも



“頑張りましょう”



だった、私。



何処へ行っても


一番どんくさかった私が


警察官になって


いかついお兄さんや


変態さんを躱しながら


業務にあたり点数減点や


罰金を言い渡し切符を切ってる。




これってすごい事だ。




元々、曲がった事が嫌いな私は


存分にその正義感を


発揮出来る今の仕事が


性に合っているらしい。








でも……時としてそれが


裏目に出ることもある。




ヴヴヴヴヴヴ……


ハンドバッグの中で


スマホが振るう。



反射的に肩が震えた。


バッグの中が


ライトで煌々と照らされる。


動悸。


焦燥。


目に映る、文字。





__非通知。



嫌だ、嫌だ、恐い。



幾ら警察官になって


国民の安全の為に働くと


耳にタコができるくらい


聞かされていても


こういう時、恐怖は


虫が湧くように零れ落ちる。




震える手が


スマホに伸びるのは


きっと……自分自身に


負けたくないからだ。




「も、もしもし」


いつものようにスマホアプリの


ボイスレコーダーを起動させ


通話ボタンをタップして


私は細い声を押し上げた。




ザー、ザー、という


車の転がる音に交じる息遣い。




「…………今日は元気………ない、ね……?」



ボイスチェンジャーを使った声


高音の機械音になっていてもわかる。



これは男だ。



まとわりつく様な声が耳に障った。



「……夜道は……危ない…よね、六花ちゃんは……女の子だもんね……スカートはやめた方がいいね。元気で、てきぱき仕事してる警察官の六花ちゃんは……表の顔だもんね……そんな格好していたら…悪い狼にあっという間に……食べられちゃ、うよ?だって……本当は弱くて弱くて弱くて弱くて弱くて…」



なんなの…この男


冷や汗が、ツッと背を伝う。



「い、いいかげんにしてください」


私が威勢よく声を張ると


男は一段と気疎い声をあげて


私の耳の奥に


その言葉を突き刺した。




「ああ……あああぁ、今すぐにでも、ころしたい」



「やっ……やめなさい、脅迫罪ですよ!」


理性の欠片もない。


焦燥に駆られた私の喉は


干からびて張り付き


声を金切らせた。



そんな私の戦きを


男は嘲笑う。



くすくすくす、


忍笑いが次第に大きく



ははははは


爆ぜるような音になり


私の耳を汚した。



我慢の限界だ。


慌ててスマホを切ると


私は辺りを見回しながら


足早に自宅のあるアパートに向かった。




あの男が


どこの誰なのかわからない。



でも、嫌がらせが


はじまったその頃は


勇んで駐停車違反の車を


取り締まっていた頃だった。


もしかしたら


交通法違反者の中に


男がいたのかもしれない。



現に男は


非通知で電話をかけてくる度


警察官、と執拗に言葉にした。



いつも、どこかから


不快な笑い声を響かせて


見張られている…


そんな恐怖が在った。






兄や彼は刑事課所属の警察官。



相談しようと思えば


いつでも相談出来る間柄。



だからこそ、


遠のくのかもしれない。



兄はちょっと


とぼけた刑事だし


彼は風来坊に見えて


実はとても心配性。



今は彼らは


事件を抱えている。



大きな事件に


発展しそうだと


この間、ぽつりと


兄が電話で漏らしていた。



こんなストーカーごときの事で



心配をかけるわけにはいかない。





私は警察官。



交通課だって


術科訓練は一通りやってる。



逮捕術なんか


得意だったんだから。



いざとなれば


どうにでもなる。




ストーカーなんて


やっつけてやる。



大丈夫


大丈夫



大丈夫よ




だって相手は素人だもん。





強く、心に言い聞かせる言葉は


とても頼りなく


まるでひとひらの木の葉のように


ひらひらと心の底へ積もっていく。



ふと、彼、友紀を想う。



助けて……。


呟きたかった本音は


伝えずに私は無理に笑った。




「明日は、友紀の家に押しかけちゃお」



本当は


すぐにでも会いたかった。


会って、あの力強い腕で


抱いて欲しかった。


耳元に口付けて


大丈夫だ、って


俺が守るから、って


言って欲しかった。


安心して眠れよって


穏やかな笑顔の友紀が


見たかった。



でも



「今日は、がーまん!」



態と声を弾ませて


やっと、見えたアパートへ歩を進める。




その先で見たのは


私の部屋の前に置かれた、


花束だった。




無数の白薔薇……



友紀かとも思ったけれど…


彼はこんな手の込んだサプライズを


するような人では決してないし



何よりも


その茎は全て手折られていた。




あの男かも……しれない。





べそをかきながら


家の中に入り、白薔薇の


花言葉の意味を調べて


愕然とした。




茎のついた白薔薇の花言葉は純潔




手折られてしまえば


その意味は反転し




____。




確実に、エスカレートしていく、



拭いようもない、恐怖。





「友紀……っ、お兄ちゃん……っ」





否応なく打ち付ける動悸に


私はとうとう、頭を抱え涙を零した。

ひとひら☘☽・2020-05-23
幸介
幸介による小さな物語
ForGetMe~クロとユキ~
刑事
警察
事件
未解決
ホームレス
私の本心
独り言
自傷行為
ストーカー
脅迫
好きな人
友達
腐れ縁
ポエム
辛い
恐怖
怖い

これらの作品は
アプリ『NOTE15』で作られました。

他に108作品あります

アプリでもっとみる

【ForGetMe~クロとユキ~杉浦の章*第十六話 ジ・エンド】





「動くな!!」



腹を裂かれまさに目の前で


息耐えんとする六花しか


目に入らなかった俺の耳に


クロの声が届く。




我に返って正面を見れば



柏沖亮が斧を俺の後方に向かって


振り投げる寸でであった。




「や、やめ!!」



俺の声は無惨にも散りゆき


斧は俺を掠めて


何度も円を描きながら後方へと


飛んでいく。



ゴッ、ガンッ


やがて鈍い音がして


何かが崩れ落ちた……。




「ひゃ、ははっ、命中だっ」



狂った笑い声をあげた亮は


まるで無邪気なこどものように


手を叩いて喜んだ。



俺がすぐさま、後方を振り返ると


首の根元に斧を突き刺したまま


階段に仰向けて痙攣する


クロの姿が見える。







「く……ろ、りっ、か……」





腕の中で冷たくなっていく六花


倒れたままバタバタと震え続けるクロ


目の前にある光景が


とても現実のものとは思えない。




どく、どくと、生者の音が


高鳴る度に


俺の心は死んでいく気がした。



「あ……ああ、あ」


細く吐かれる息と共に


否応なく喉が叫ぶ嗚咽。



その声に反応しゆっくりと……


照準を合わせた柏沖亮は



獲物を見つけた禿鷹の様に


眼孔見開き、俺に告げた。





「つ、ぎ、は……杉浦さん、ね」




弾む言葉が物語る…


柏沖亮は、コロシを


楽しんでいる。



突風が吹き抜ける如く感じる危機感が


脳内で鳴り響いた。




動け


動け


動け……っ!








生への執着が


俺の体を遂に動かした。



視線は柏沖亮に預けたまま


抱きかかえていた六花の頭を


床にゆっくりと寝かせ


ホルスターに入った拳銃に手をかける。




柏沖は棚の上に


無造作に置かれた凶器の数々を


指先でなぞりながら



「ど、れ、に、し、よ、う、か、な」



微笑を唇に蓄えながら


物色をするとやがて


鉈を手にして腰を落とした。





臨戦態勢だ。




よく研がれた鉈が光る。



柏沖亮は間合いを詰めながら


大きな舌を出すと


鉈の平の辺りをゆっくりと舐めた。



「大丈夫、そんなに怖がらないでよ、ねえ、杉浦さん。世名さんはあっという間にやっちゃったから、杉浦さんはじっくりやってあげるよ」



その裂ける様な口角に身が震う。



汗が伝い


拳銃を握る指先が濡れた。



間合いを詰められれば後退り



拳銃を使うか組み合うか


チャンスばかりを窺う。



急がなければ


二人の生命ももはや危ない。



イキ
熱れる室内に頭が濛々とした。



柏沖亮は饒舌に語る。




「俺、知ってるよ。あんた六花ちゃんの彼氏でしょ?……俺の可愛い六花ちゃんに手ぇ出したんでしょ?」



その言葉でぼんやりとしていた、


六花のストーカーが


柏沖だったのだとやっと知った。



一か八か賭けよう……。



俺は平常を装い


六花の盾になるように


前へ進み出ると


とうとう柏沖に告げた。




「お前が見つけるよりずっと前から、六花は俺のもんだけどな」


「じゃあ杉浦さん、あんたさぁ嫌われたんだよ、六花ちゃんに。六花ちゃんは今は俺の事が好きなんだ」


「……何を根拠に?」


「俺がちょっと停めてた車をさ、駐停車違反って言って窓をノックしたんだ。笑ったんだよ、可愛い顔で俺に笑いかけたんだ。色仕掛けたんだよ俺に」


俺は大袈裟に鼻で笑う。


「色仕掛け?は、馬鹿馬鹿しい。大方お前が哀れに見えて失笑したんだろ」


「あ…われ?」



柏沖の顔つきが変わる。




「柏沖、お前鏡見た事はあるか?ブッサイクな面しやがって。そんな容姿した男に六花が靡く?」


わざと噴き出して笑った。


怒りからくる震えを


体の底へ追いやって高らかに笑った。



柏沖亮を眼孔で捕らえたまま


笑いあげ、言った。






「ありえないね」






その声が響くと


柏沖亮はみるみると怒張した。



荒がる呼吸で怒りを逃すが


一向に留まることの無いそれを


俺にぶつけるべく


とうとう叫び声を張った。




「あんたに、なにが解るんだあああ!!笑うな、笑うなああ!」



まるで別人の様に目を吊り上げ


鉈を振り上げた柏沖亮は


俺に向かって突進してきた。






怒り狂い我を失う


この瞬間を待っていた。






透かさず俺は、


ホルスターから拳銃を引き抜き


柏沖目掛けて夢中で引き金を引く。






バンッ、バンッ





足を狙った二度の発砲音に



倒れ込んだ柏沖亮は



その痛みに悶え、暴れ狂う。



「あ、ああああああ、う、うったな、よくもうっ、痛……っっつあ」



「4時47分、殺人未遂及び公務執行妨害逮捕」


俺はすぐさま手錠をかけ


更に落ちていた結束バンドで


柏沖亮の足を束ね拘束した。




動けないと悟るや、


これからの自らの行く末を


案じたか柏沖の声色が変わる。



「やめ、やめろ、やめろ!生かすな、やれ、やれよっ!」



身勝手な懇願が腸を煮え繰り返らせ


俺は呼吸を荒らげた。



「うるさい!本当は今すぐにでもその頭ぶち抜いてやりたいが、相応の罰を受けてから逝け!どうせ死刑だ!」



「罰……?し、けい?」



「お前みたいな殺人鬼、誰が生かしておくか馬鹿野郎」




そう吐き捨てると目を見開き


涎を垂らした柏沖亮は


気力も無くしたか


抵抗ひとつしなくなった。







戦意喪失…






ジ・エンドだ。






「クロ!六花!!」



俺は、ふたりの元へ。



凄惨な状況を見れば


馬鹿でもわかる…。



漂い始める、死。



脳裏を掠めるのは


二人の笑顔。




“杉浦、お前なぁ!”



“友紀、大好き”




額を叩かれた時の優しい痛み。



愛くるしく笑う六花への愛しさ。





幻が虚しく再生された。



涙が……止まらない。





二人とも亡くすかもしれない


恐怖を心の底で握り潰して





「生きろ……生きろクロ、六花っ!」




俺は、応急処置を続けた。










はるか遠くの、果て


救急車とパトカーのサイレンの音が


聴こえる、その時まで。

ひとひら☘☽・2020-05-29
幸介
幸介による小さな物語
ForGetMe~クロとユキ~
刑事
事件解決
独り言
事件
恋の沼
生死の狭間
サイレン
パトカー
辛い
生きろ
サイコパス
逮捕
好きな人
ゲーム
辛い
友達
友情
恋人
警察
凄惨
ポエム
苦しい

【ForGetMe~クロとユキ~第十四話 スマホ】



河川敷に


よくもここまでと言うほどの


パトカーが止まっていた。




暗がりに……無数の


赤色灯の光が折り重なっている。



「クロ、早く行くぞっ」


車を停めるなり杉浦は


ドアをあけて


衛のテントへと駆けていく。



杉浦はきっと焦っていた。



想いは俺も同じだ。




やけにまとわりつく様な


空気を感じながら


ブルーシートをくぐると



先に行ったはずの


杉浦の背中にぶつかった。



石のように動かない。




「おい、杉浦、こんな所で止ま……」



止まるなよ、


咎めようと身体をずらすと


想像を絶するような光景が


目前に広がっていた。



「な、んなんだよ……これ」



そこには


高水敷の縁から


河に流れ落ちる夥しい血。



辺りを立ち込める、異臭。



ブルーシートを捲る科捜研の人間。


その視線の先にあるのは


腹が異様に


落ち窪んだ柏沖衛の遺体だった。


頭には毛髪すらなく


頭蓋骨が剥き出されている。



俺だって刑事だ。


殺人事件現場に


臨場した事も何度だってある。



刑事になってはじめての臨場だって


ぎりぎりで嘔吐は堪えたのに



……なんだ、


この腹の底から込み上げる不快感は。





「…クロ、杉浦」


苦虫を噛み潰したような顔を


していたであろう俺たちに


楠さんが声をかける。



「ガイシャな、腹を切り開かれて、内部は河へ投げ捨てられてある。頭の皮も剥がれているようだが、今のところ残骸は見つかってない。ここまでひどいと逆に滑稽だよ」


楠木さんは、眉を顰めながら


大きく息を吐き出した。



滑稽と言っておきながら


顔はどうだ。


切羽詰まって見える。




俺たちは、喉を鳴らして


唾液を飲み込み、体内から震えた。



俺たちの漫然とした捜査が


この事件の


引き金になったのではないか



出さなくていい被害者を


出してしまったのは……


俺たちではないのか。




現場の凄惨さが


そんな思考に火をつける。



目が回るようだった。




「楠木」


簡易的な検死を終えたのだろう。


楠木さんと同期の検死官


笹谷 努が


俺たちを見つけて声をかけた。



「ガイシャ、もしかするとトリメチルアミン尿症かもしれないな」


「トリ……なんだって?」


「トリメチルアミン尿症。所謂、魚臭症だね。ほら、この異臭、鉄の匂いだけじゃないだろう?すえた魚の臭い、こいつがトリメチルアミン尿症患者の特徴でね」



魚臭症……


柏沖衛、亮に共通した匂いの正体。



「この病気って、遺伝はしますか」


俺が聞くと笹谷さんは


唸りをきかせて言った。



「遺伝子変異による病気だからね、そう言った要因はあると言われているけど、なんせ患者数が少ないから。まぁ、詳しい検査をしてみなけりゃわからないけど」


「何か気になることでもあるのか?」


楠木さんの眼光にさらされた俺は


杉浦に口を開かせる。



「息子の亮も同じ匂いがしたんです。六年前の事件も、衛か亮……どちらかが磯辺宅へ押し入ったのだとすれば、冴が残したサカナツリという言葉は…もしかしたらこの匂いがそう思わせたのでは、と」


「なるほど、有り得る線では有るな」


楠木さんが渋く頷いたその時だ。


近辺の交番に務める巡査が


敬礼と共に近づき、言った。



「自転車が見つかりました」


「自転車だと?」


「はい、堤防の上です。その近くの草むらからはスマートフォンも見つかっています、来ていただけますか」


「ああ、わかった」



俺たちがそちらへ移動すると



なるほど。



黒い自転車が


まるで人だけが忽然と


消えたように倒れていた。




しゃがみこんでよくよく見ると



血痕もべったりとついている。



「犯人が乗り捨てたのか…?」


「現場のこんな近くに、か?」


「何の為に?」


「……さあ?」



杉浦と言い合い


首を捻った。





「お、おい!クロ!杉浦!!」



鑑識が写真を撮り終えた、


スマートフォンの方から


普段の落ち着きを欠いた楠木さんの


焦燥極まる声が聴こえる。



何事かと顔を見合せ


楠木さんの元へ急ぐと



「これ……お前ら、だろ?」


「え……?」



目を細める隙もなく


突きつけられたのは



スマホ画面。



トップ画像に


設定されていたのは


俺と、杉浦が


酔っ払って寝坊ける写真。




ドクン


心臓が、おかしい。





見覚えのある桃色の手帳型


スマートフォンケース。



気をつけろっていうのに


いつもスマホを所構わず


落としてしまうから


角がぼろぼろだ。




杉浦が誕生日にプレゼントした


小さなテディベアのストラップ。



俺が就職祝いに買ってやった、


クマのイヤホンジャック……。



可愛いクマが大好きな、


六花の……スマホ。





「い、妹、のスマホ……です」


なんとか口にした一言に


杉浦はギリッと歯を食いしばる。



「クロ、お前の妹、交通課だったな?連絡は」


「は…い、ひ、昼からとれ…」



情けない。


声が張り付いて


唇が震える。


声に出来ない。



「わかった、お前らはここに」



楠木さんの指示を遮って


咆哮のような杉浦の


叫び声が耳に響いた。




「クロ…!行くぞ!六花を助けに行くぞ!」




六花を


助ける



その言葉に


虚ろな眼は開かれた。




「あ、ああ……っ!」


「あ、おい!クロ、杉浦待て!上の指示を待…」



楠木さんの声は


遠ざかる。



俺たちは六花を助ける為


その痕跡を追うべく


柏沖の自宅へと向かった。

ひとひら☘☽・2020-05-27
幸介
幸介による小さな物語
ForGetMe~クロとユキ~
繋がり
救出
遺体
独り言
小説
物語
自宅
仕事
刑事もの
警察
刑事
事件
恋の沼
辛い
好きな人
仲間
バディ
相棒
友達
想い

【ForGetMe~クロとユキ~第十話疑惑の一致】



ササササ……ッ


風が走る。


生温かな風は


肌に吸い付くようで


心地が悪かった。




杉浦は、堤防から


磯辺のテントを見下げる。



何かを沈思する様な面持ちの杉浦に倣い


俺も磯辺のテントをぼうっと眺めた。



未だ張られた規制線が生々しい。




「クロ、行くぞ」



突然そう言ったかと思うと


風のように走り出した杉浦に


俺は声を投げかけた。




「あ、おい、杉浦待て」


「どんくせぇな、早く来いよ」


「お、お前がいつも勝手なんだからな!」


「あーそうかい」



薄ら笑った杉浦は



どうした事か


磯辺のテントを


横目に通り抜けると


仏の名がレフト社長の


「瀬崎大造」と言った、



スルメを噛んでいたおっさん


もとい、じいさんのところへ


一直線に向かっていく。



一体……何を考えているんだ。


杉浦の頭の中が、わからない。




「よう、じいさん、元気かい?」



杉浦の呼び掛けで


テントの奥から


這い出してきた男は


やはりスルメを噛んで


俺たちを凝視した。



「ああ、なんだ…刑事さんらかい……確か、黒須さんと、杉浦さんだ」


「その通り、よく覚えていたな」


男がへらぁっと笑うと


テントの中を指差した。



覗き込むように視線をやれば


あの日の聴き込みで渡した、


黒須世名の名刺と


杉浦友紀の名刺が


無造作に貼られていた。





「じいさん、そこのテントの大造さんなぁ」


「……犯人でもわかったかい」


「いや、名前がな大造さんじゃなかったよ」


「……そうかい」


僅かな間が


胸を叩く。



なんだ、この違和感。


俺は顎を撫でて黙り込んだ。



「なあ、じいさん」


「なんだい」


「じいさんの名前、なんて言うんだっけな」



確か初日に名前を聞いた時は

はきはきと

シカ ノブオ
志賀喜夫と語った。



しかし、男は


くちゃくちゃと


不愉快な音をさせながら


スルメを噛みつつ、


ずいぶんと時間を稼ぐ。




「………志賀……喜夫」


眉が動く。


眉間には皺が蓄えられた。



ずいぶんと弱々しい声で


自信なさげに呟いた名。



生まれた時から


ずっと付き合い続けている、


言わば相棒のような氏名。


尋ねられた時


こうも、悩んで口にするだろうか。



その名が嘘だとしたら?



何故、嘘をつく?



俺達が警察だから


警戒しているのか?




もしそうだとしても


警察に虚偽の報告をするという事は


疑われて然りだろう。



俺がその穴を突こうと


口を開いた時だ。



杉浦が後ろから俺のケツを蹴り飛ばす。




反動でテントの中に飛んだ俺は



事もあろうにスルメ男の土手っ腹に


頭を突っ込む形になってしまった。




「な、何すん……!!」



杉浦を振り返り文句のひとつも言おうと



息を吸い込んだその時、



ある匂いに気が付いた。






魚の臭い……?






杉浦は何も言うな、と



言わんばかりに目を伏せ


男に言葉を投げかけた。



「なあ、じいさん」


「ん?なんだい」


「じいさんは何でホームレスなんか始めたんだ?」


「……事業に失敗してね」


「どんな事業だ?」


「……もうずいぶん昔の事さ。忘れたねぇ」


「へえ……そうかい。でも、おかしいな」


「え?」



舐めるように睨めく杉浦は



言葉を繋ぐ。



「このテントにゃ、真新しい生活必需品がたくさんだ。それに……このスルメイカ」



そう告げると杉浦は


男が噛んでいたものを取り上げ、



事もあろうにその歯で


噛みかけのスルメを噛みちぎる。



「何気に珍味って高い、よなぁ?それがほら、あんなに積み上がってら。あれは一体、いくら分だ?そんなに好きかい?」



杉浦の指先を辿れば


確かにテント内の端に


堆く積まれたスルメイカの


袋が窺える。



男を覗き込み


意味深に告げた杉浦の言葉は


男の目をまるで


魚のように泳がせた。



しどろもどろに


途切らせながら


男は言い訳がましく言葉をはく。




「市の……ボランティア団体の情けもあるし、ごみ捨て場漁ったらお宝も結構、あるもんだ。それに、微々たるもんだが収入だってあるんだよ。その金をそいつに使ったって、いい、だろ?」


「へえ、そうかい」



杉浦はそう言い


ゆっくりと立ち上がった。




そして踵を返すと


後ろ手に手を振る。




「まーた来るわ、じーさん」



わざとらしく、


軽快にステップを踏んで


遠ざかる杉浦を


何も言葉を発せぬまま


必死に追いかける。



その時、ふと振り返った男の顔は


絶望にも似た色を蓄えていた。




「す、杉浦…」


名を呼んだ杉浦の顔は


何時になく怒りに満ちている。



「なんだよ」


「ど、どういう事か説明しろよ」


「あー?自分で考えろバーカ」


「悪かったな、考えの及ばない馬鹿で」



唇を尖らせて


自分の至らぬ点を認めれば


嘲る様に鼻で笑った杉浦は


こう、告げた。



「あのじいさん、事業に失敗したなんて嘘だ」


「う、嘘?」


「何らかの理由であそこに住んでる。大方、誰かからの援助を受けてな」


「え、援助……」


「何を根拠に…っ」


杉浦の後を追いつつ、


言葉少なに疑問をぶつける。



杉浦は呆れた様なため息をつき


俺に教えてくれた。




「テントの中にな、あったんだよ」


「あった…?何が」


「郵便物さ」


「ゆ、郵便だと?」


「さあ、住所も持たないじいさんがどうやって郵便物を受け取るんだろうな」


「宛名は……なんて」







核心を急くと


杉浦は勿体ぶった笑いをひとつ作って



こう、言った。




カシオキマモル
「柏沖 衛様」



「か、柏沖!?」



「あのじいさん、恐らく柏沖の親父だよ」



言葉を失った俺のこめかみから


ツツッ、と汗が伝ったが




磯辺の教え子とも言える柏沖亮と


ホームレスとなった磯辺の隣人が親子。




偶然とするには


出来すぎた事象。


高まる期待に心臓は脈動を打った。




杉浦は珍しく自分の手帳を開くと


何やらボールペンで文字を書き始める。


覗くように凝視すると


杉浦のもつペンの先は



【柏沖】カシオキと共に


【志賀 喜夫】と


男が語った名前を書き出した。



「なんだ?」



「まだ気付かないのかよ、相当の馬鹿だな」



杉浦は俺の頭を


ボールペンで弾くと


再び手帳に書き込んでいく。



「しか のぶお。喜の字を音読みに直して入れ替えると」


「かし、おき……」


「一度目は忘れないようにそうやって自分の名前と関連付けた偽名を俺たちに語ったんだろうが、二度目は戸惑いが生じたな。ざまあみろ」


杉浦は皮肉って笑う。



こいつ、ここまでの推理を


あの短時間滞在しただけの


じいさんのところで……


いや、違うな


きっともっと前からだ。



「杉浦……お前、亮のところを出た時点で、あのじいさんと亮が繋がっていると睨んでいただろ」


「ああ、確信は持てなかったがな」


「一体どうして」


俺が首を捻って尋ねると


杉浦はこう言った。



「匂い、だよ」


「あ…そういえば、じいさんから魚の匂いが」


「お前は昔から鼻炎だからな。近づかないと気付かなかったろうが、あれと同じ匂いが柏沖亮のところでもした」


「亮のところでも?……なんでだ」


「それは知らんな」


「なんだ、知らねえのかよ!」



杉浦はあっけらかんと


そう言うと笑みを蓄えて


後頭部で手を組み空を見上げる。



「でも、ようやく見えた、手がかりだ。逃さねえ」


「早速、上に報告だな」


「おー」




漆黒に染まる空を仰いで


俺たちは淡い期待に肩を組んだ。

ひとひら☘☽・2020-05-22
幸介
幸介による小さな物語
ForGetMe~クロとユキ~
刑事
警察
事件
未解決
ホームレス
私の本心
独り言
自傷行為
好きな人
友達
腐れ縁
病み
ポエム
辛い

みなさん こんばんは

いつも心配かけてしまって
本当にごめんなさい(>_<)

あの日 死ぬつもりだったけど
自殺相談窓口に相談したら

警察に通報するよと脅されて?

思いとどまれました…

次は誰にも相談せずに実行する予定

みぃ★🐷ヘッダー必読🐷・2020-07-31
死にたい
自殺未遂
未遂
相談窓口
警察
通報

昨日のフラッシュバックの原因は

このアプリで男の人に

裸の写メ見せてと言われたのが原因

このアプリは出会い系でも
アダルトサイトでもないんですよ

下心丸出しの男性たち

女性達を食い物にするのは
私が絶対に許しません

そういう写メを要求するのは
完全なる犯罪行為です

警察に通報します
あなた方は捕まりますよ?

お忘れなく

みぃ★🐷ヘッダー必読🐷・2020-12-14
犯罪行為
写メ要求
警察
通報
許しません
男性たちへ
性犯罪
サイバー犯罪
わいせつ行為
リベンジポルノ
犯罪
許せない
いい加減にして
フラッシュバック
トラウマ
死にたい

毎回思うんだけど、警察官ってかっこいい。
(特に制服が)

隣のクラスの同級生の野球部に恋した女の子・2021-04-28
警察官
警察

★死にたい人へ★

ODして大量服薬して
自殺未遂した場合は

救急車だけでなく警察も来ます

そして家族達も事情聴取されます

私の母は警察に責められて
大変だったそうです

自殺・自殺未遂は家族にも
迷惑・負担が大きいものなんだと

痛感しました…

もう家族達に迷惑・負担をかけない
私になりたいです

☆お母さんへ☆
いつも心配・迷惑かけてて
本当に ごめんなさい

傷つけて裏切ってばかりで
親不孝で ごめんなさい…

もう二度とバカなマネはしません

みぃ★🐷ヘッダー必読🐷・2020-07-20
死にたい人へ
警察
自殺未遂
救急車
OD
大量服薬
伝えたいこと
事情聴取

お母さんに現行犯で見つかって
塩素消毒液と薬、没収された

警察に自殺しそうだから
保護して貰う話も出たけど
泣きながら却下した

頭冷やすために

一人旅しろって言われた
だから、明日からしばらく
家出と言うか放浪の旅に出る予定…

誰か泊めて(笑)

みぃ★🐷ヘッダー必読🐷・2020-10-16
死にたい
自殺未遂
放浪の旅
警察
保護
一人旅
放浪の旅
現行犯

替え歌特集!

(。>ω<)ノあー癒やされるんじゃ~^
(°”・ω・)何に?
(。>ω<)ノ○どか
(°”・ω・)…まどマギでも見たら?

タイトル
ツールピカっとハゲキュアTouch!!

ツールピカっと!ハゲで癒やしたい
キミとツルピカっと♥️ハゲキュア!

ハゲキュア!
ハゲキュア!
ピカッピカッTouch(タッチ)

頭の向こう
広がる肌
剥げだしてくトコロ

光もあって
輝きあって
ハゲてるって感じ!

毎日ピカピカハゲになるね
大事なみんなを笑わせてあげるの…
一緒に!

ツールピカっと!
子供にハゲと笑われる頭は
最強なんだから!

ツールピカっと!
この頭は運命
感じる、でしょ!?
親たちの遺伝に
ハゲが隠れてる

ツールピカっと!ハゲで癒やしたい
キミとツルピカっと♥️ハゲキュア!

ひまたん(。>ω<)丿・2021-10-16
替え歌
ヒーリングっどプリキュア
また髪の話ししてるの?(´・ω・`)
花寺のどか
キュアグレース
可愛い
お持ち帰り
特別な夜
狙い
行ったら
警察
捕まった
可哀想
ハゲ
ポエム
ヒーリングっどプリキュアTouch!!

また警察きた。

何もしない癖に来るな。

透・2020-10-18
独り言
警察

今日来た警察

警察「その体の傷は、大丈夫?」

私「はい、大丈夫ですよ」

警察「ほんとに?」

私「はい」

警察「何かあったらすぐに言うんだよ?」

前に警察が来た時

警察「その傷どうしたの?」

私「親……」

警察「そっか」

私「(泣いてる)」

警察「では、私達は帰ります」

警察なんか役に立たねーだろ。

透・2020-10-18
独り言
警察

これは私の独り言


「9月1日」
この日は自殺者が多い。


去年の8月31日
私は友達と心中をしようとした。

学校は、友達に休むと連絡して
誰にも言わずに友達のいる
県に向かった。
朝8時過ぎに駅に向かって、
12時くらいにその子の
最寄りに着いた。

駅まで迎えに来てもらって、
カラオケに1時間行ったあとに
ドラッグストアに行って
薬を買って友達の家に行った。

部屋にはロープが
ぶら下がってたり
薬の瓶が置いてあったりした。

少し話をしてから
薬に手をつけた。
10錠、20錠、30錠…と、
だんだん増やしていった。

2人でベットに寝て、
1時間くらいしてからかな。
何も考えられない
くらいふわふわした。
立つのもやっとで、すぐ倒れる。

それが21時くらい。
家にはいつも
18時には帰ってるから
親から心配と怒りのLINEが来た。

「何時だと思ってるの?」
「早く帰ってきなさい」

視界がぼやけてて
上手く読めない。
友達も同じだから読めない。

親に私の部屋に
行くように送った。
来る前にドアの近くに遺書を
置いてきたから。

少ししてから、
電話がかかってきた。
親と、友達と…警察からだった。
少し動揺しながら
友達と相談した。

「帰りたくない、死にたい」
「早く死の、飛び降りたい。」
友達は意識はちゃんとしてたから
「まだパキりきれてない。」
「もう少し飲むから」と言った。

けど、
もしこれで死ねなかったらと
突然頭によぎった。

友達に迷惑がかかってしまうし、
もしかしたら
警察に捕まるかもしれない

私は当時16歳の高校1年生。
友達は22歳の大学生。

LINEの内容を全部消して、
荷物を整理しながら「私帰る」
そう言った。

「帰らないで。一緒にいて」
そう言われたけど、
ごめんねしか言えなかった。

最後にハグをして、
「死にたかった」と
泣き叫んだらしい。

ここら辺の記憶はあまりなくて
この後、
親に電話して警察に連絡し、
警察に迎えに来てもらった。

薬をたくさん飲んだと話したら、
救急車に乗せられて熱を測ったり
血圧を測ったりした。

「もう体が薬を吸収してるから
水分をとって出すしかない。」
救急車の中で
警察から取り調べがあって
スマホとカバンの中を
確認されたが
事前に消してあったから、
何も出てこなかった。

それから3時間くらい
警察署にいた。
親が迎えにきたのが
夜中の1時くらい。

家に着いたのは
4時くらいだった。
2日ほど薬が抜けなかった。

何日か経ってから
児童相談所の人が家に来た。

「もうしないでください」
そう言われて終わった。


心配も迷惑も沢山かけて、
申し訳ないとは思ったけど…
友達と一緒にいれた時間は
すっごく幸せだった。

空月・2023-08-26
君との思い出
8月31日の夜に。
9月1日
友達
自殺
自殺願望
自殺未遂
自殺行為
警察
死にたい
経験談
死にたい人へ
つらい
苦しい
生きる意味
これは私の独り言

他に108作品あります

アプリでもっとみる

その他のポエム

独り言
1006011件

大切にしたいこと
1073件

ポエム
535347件

好きな人
321777件

自己紹介
95269件

辛い
183975件

453315件

トーク募集
85193件

死にたい
96772件

恋愛
197415件

苦しい
60470件

好き
198298件

37775件

片思い
184698件

寂しい
34422件

消えたい
31271件

タグお借りしました
18844件

片想い
227099件

大好き
95226件

叶わない恋
52685件

人生
44348件

すべてのタグ