#いつもあなたに

はぁーーー、
いつもあなたに
ドキドキさせられる

目が合ったら笑ってくれる
席が離れても話しかけてくれる
帰るときに手を振ってくれる

席が離れたからこの想いも
消えてくれると思ったのに...

逆に想いが強くなっちゃうよ

病院から帰宅し、疲れが押し寄せてきた。




怪我をして、利き手と利き腕が
ほぼ動かなくなってしまった。

可能性は低いが、最悪の場合、これ以上動くようにはならないかもしれないとのこと。


今までも何度か、手が動かず、生活に支障が出る思いは経験してきた。

しかし、今までは治る見込みがあった。
だいたいでも完治する期間がわかっていた。
不自由なのは、その期間だけ。

今回はその期間がない場合もあると
言われた。


そのことに対して、
全く何も思うことはないと言えば嘘になる。
だけど片手がほぼ動かない生活が
また始まるということ自体には、
私はほぼ不安を感じなかった。



『大丈夫か？・・痛むのか？』

彼が少し心配そうに声をかけてきた。

痛くはないよ。
むしろ、ほとんど感覚がないの。
なんていうか・・肩の先に腕の形の石が
ついているみたいな感覚かな。
そう言うと、彼は私の動かない手を
両手で包み込んでくれた。

『君の手、少し硬いし冷たいな。
・・大丈夫だ。きっと治るさ。
動けない分、オレが支えるから。』

うん。ありがとう。

私は申し訳ない気持ちと、
別の不安な気持ちが湧き上がってきた。
そんな気持ちが顔に出ていたのか、
彼は私の頭を撫でた。

『やっぱり・・不安なのか？
確かに手が動かない生活なんて、
不安にならない方が無理だよな。』

私は、首を横に振った。

『じゃあ・・何が不安なんだ？』

私は握られている手を動かそうとしてみた。
しかし、少し指が動いた程度だった。

動かないことを改めて痛感し、
別の不安がさらに大きくなる。



片手が動かない生活は、そんなに不安じゃないの。少しずつ、もう片方の手で大抵のことはできるようになったから。


ただ・・あなたの手を握り返せない。
両腕で抱きしめることができない。
もし、それがこれから先、
ずっとって思うと、嫌だなぁって・・。



彼は一瞬、ぽかんとした表情をした。
そして、私の頭をクシャクシャと、
さらに撫で回した。

『いきなりそういう可愛いこと言うなんて
・・反則だろ。』

私にはその意味が分からなかった。
ただ真面目に、本当に不安に思うことを
そのまま言っただけなのに。


『まだオレの手を握り足りないのか？
これ以上握られたら、
心が握りつぶされそうなのに。』

私は少しむくれて言い返した。

それは私の台詞でもあるよ。
あなたこそ、どれだけ私の心を熱くしたら
気が済むの？
いつもあなたに想ってもらえてると感じるたびに、その気持ちを行動で出していかないと心が破裂してしまいそうで大変なんだからね！

『わかった、わかった！
とりあえず、お互いさまなんだなってことが、よくわかったよ。』

彼は照れ隠しをしながらも、
私の動く方の手を握ってくれた。

そして、私も彼の手を握り返す。
握り返せることの幸せを改めて感じた。

『・・オレも握り返してもらった方が
嬉しいな。』

私も。やっぱり嬉しいよ。
・・私、ちゃんと治療とリハビリ、
　　　　　　　　　　　頑張るね。



最初は、不運な怪我をしたと思った。

でも、思いがけないメッセージを
お互いに伝え合えるきっかけになった
幸運なことなのかもしれない。

よく頑張ったねって。

嫌な事があって、それに耐える私。

それに貴方は気づいて。

二人になって頑張ったねって。

私の頭をなでてくれる先輩。

二回も1日に貴方から助けられた。

嫌な事を忘れるくらい。

貴方が笑わせてくれて。

安心させてくれて。

先輩、ありがとう。

大好きです。