東風・2024-07-05
ティーカップヌードル
創作
老若男女が駆けてゆく
赤の他人もこの時は
1つのチームのように
滑稽に群をなして走っていく
僕は抜かされぶつかられながら
1人その中を歩いていた
梅田にも蝉の声が鳴り響いていた
ビルしかないこの街で
一体どこで誰に想いを届けようとしてるのか
小さい頃からよく思ってたことがある
蝉は1週間しか恋愛ができないんだろうか
だとするとあまりにも気の毒ではないか
思わず耳を塞ぎたくなるあの騒音も
彼らの焦りから来ると思うと
同情したくなる
すきなひとできた
スマホの通知欄をまた確認して、ため息をつく
たった1回遊んだだけだ
それでも、彼女との先を思い描いていたし
純粋に幸せを願ってやれない自分がいる
蝉2匹分の小さな恋だったけど
その分想いは常に溢れそうだった
初めて会ったのに
誰にも相談できなかったことが
すらすらと話せる人だった
いじめられてること、進路に迷ってること
全部真剣に聞いてくれて
でも明るく笑い飛ばしてくれた
お互い小さい頃から
勉強ばっかさせられていた
でも君は自分で道を切り開いていた
自分にはないものに憧れて
自分の手には届きそうにないものに
執着することが愛なんだと悟った
おそろいで買った
しまえながのキーホールダーを見て
お互いに似てるねって言い合ったこと
パスタ上手く食べれなくて
制服汚してたこと
帰りたくないなって言って
わざと鈍行に乗ったこと
僕たちは無法者であって
この街にとことん浮いていた
気づけば夜景を見下ろしていた
あのときで最後と知ってたなら
もっとお洒落したし
もっと触れ合ってたのにな
出会いと別れが交差して
流行の波が人々から平穏を奪う
そんな街を君は愛していて
僕は置き去りにされてしまった
宝石箱のような夜景
おそろいだったキーホールダーを投げ捨てる
蝉の声がどこかで弱まった
愛する君が愛した街へ