#バンパイヤと呼ばれて

絶不調のなか
死んだように眠り続け
時間の感覚が麻痺してる

ひと口運んだスープの中に
小さな野菜があった
その花のエピソードを思い出す

マリーアントワネットが好んで
髪に飾ったらしい美しい花

いまも何気にいただく食物は
人知れず美しい花を咲かせてる
古の花々に思いを馳せ
夢にまどろむ

一日中、病院にいた日だった

世の中には　まだ見ぬ苦痛に
耐え忍ぶ姿ばかりだった

辛いね、の一言が軽すぎるから
ただ静かに見守るだけだった

車椅子の子が笑いかける
思わず手を振り返す
付き添う人が会釈した

その瞬間だけでも、お二人が苦痛から解放されたまえと切に願う

私の仲間たちは一人、ひとり
束縛から解かれ旅立って行った

戻って来ないところを見ると
案外、居心地が良いのかもね…
そう思える日だった

遠くに見える山の頂に
帽子をかぶったように雪が積もる
きっと雪はそこまで来ている

夏の暑さは苦手だが
冬の寒さも大の苦手だ
短い春と秋が束の間の楽しい季節

苦手な冬だが、良い事もある
アレルギー物質が極端に少なく
空気が澄んで深呼吸が楽になる

青白く光る雪の世界は
どこか神秘的で美しく
穏やかな月明りを頼りに少しだけ散歩したりして

新雪の上に大の字で
寝っ転がって星月を見上げたら
死ぬには最高だなとクスッと笑う

人生はいつも想定外
予期せぬ連続ばかりで
喜怒哀楽で退屈してられない

覚悟を決めてる時ほど
焦らして、試されてるようで
油断した頃にそっと手を握るだろう

皆の者、死は平等
生き急ぐことなかれ