偽りの人形・2021-05-12
人形の独り言
それは 動かない
名前が無い
主に裏切られ 捨てられた
哀れな人形さ
アキが好き。
だから、名前を付けて。
アキト…とか
漢字はあなたが考えて?
亜希、璃、明記、昭…
ねぇ、どれにしようか?
何をしてるんだ?
「私達は、こうするしかないの」
こんな事して良いと思ってるのか?
「先生を呼びたいならそうすれば良い」
「ただ…」
なんだよ
「秘密を守るなら、鍵をかけて」
🔒
笑っているのに
悲しんでいるのに
怒ってるのに
みんなは私を「無表情」だと言う
「お高くとまってる」らしい
そんなイメージがついてから
知らずに無表情でお高くとまってる
雰囲気になった
本当の私は
イタズラやモノマネ大好きで
機械にそこまで詳しくないし
歌い出したらマイク離さないし
変顔爆笑上等で
誰かに甘えたい
まだまだもっと眠ってる
血には弱いけど
私にも感情はあるんだよ
あなたの手が
私に触れた感触が
思い出せなくなって久しいのに
わずかな断片から
柔い痺れを感じ始める
指先から
爪先から
これ以上
何も感じたくない
ここからどこかに逃げ出したいと
ずっと嘆いていた
だから全部捨てて
逃げようと思う
上手くいくかまだ分からない
だけど
このままでもいたくない
私の家族は
愛する人に
全てを吐け出せた?
私はあなたが少し
ほんの気持ち
安心しながら嘔吐しているのを
夢の中で見上げていた
吐くまではどこまでも苦しいけど
空っぽになると安心するんだよね
指を突っ込んでまではしなくとも
つわりなんて無くたって
苦しい時は迷わず吐いて
ここなら私しか見てないから
あなたを求めて小さく呻くと
あなたは大層優しく意地悪く
私の意識を曖昧にしてくれる
与えられた褒美を貪って
一つまた一つと罪を重ねる
「あぁ、なんと甘い罪なのか」
彼女の手記は
そこで途絶えている
この感情の内圧で
美味しいご飯が
炊ければいいのに
抗えない眠気の様に
水を飲みたい
風に煽られる炎の様に
小さくなりたい
具合が悪くて
早退しようとしてた
そんな時
先生と話す転校生の先輩
私の方を見て
爽やかに笑う
違う制服
若干日に焼けた肌
優等生らしい話し方
確か
こんな時期だった
梅を見ると
若くして亡くなった
伯母を思い出す
赤子の私の命の恩人
母を思い出す年頃になれば
真夏の白い花を
思い出すのだろうか
ひりつく乳房の先
あなたがいたと
意識する夜更
冷えた指先は
優しく輪郭を撫で
慰めるも静寂の部屋
淡く甘い胎の底
声の無い嬌声に
響くのは呼吸だけ
薄く見開く目と口は
だらしなく開く
ただの器
愛を受け入れるだけの
あなただけの
赤い肉
呼吸をする度に痛む左胸
吸い付かれるように甘い
喰われるように息を呑む
不思議な気持ち
あぁ
あなただからね
鼓動の度に疼く胎と胸に
毒を含んだ煙を吸込む唇
何にもしてやれないから
持て余してるの可哀想?
せんせー
私を眠らせた後
ナニしてたの?