私のSoloは誰より先生に届いて欲しい
もう、あの時の私の音はない
いつも自分の音に自信がなかった
弱い柔らかい音しか出せないことが
私から自信を奪っていった
どれだけ向き合っても
いつも手元で鳴る音は柔らかい音
先輩みたいに自信を持って
はっきりした強い音を出したかった
レッスンの先生にも指摘されて
自信なんて持てなかった
オーディションで先生に選んで貰えて
出場できたアンサンブルコンテストも
先輩たちの中で1人1年生だった私が
足を引っ張った
アンコンメンバーの先輩達はいつも
私に気を使って声を掛けてくれた
練習中でも会場でもずっと
同じパートの先輩が守ってくれた
それなのに
あと1点で届いた夢の金賞に
私のせいで届かなかった
そう何度も自分を責めた
審査員からの感想のプリントには
私の鍵盤のことが沢山書かれていて
私の中でほんの少し残っていた自信は
完全に消えた
それでも
ここで諦めたらダメだって
次に向けて必死に練習した
それからも
クリスマスコンサートの
ソロオーディションで
自信が持てなくて音が出ずに落ちた
校内ソロコンテストで
緊張で失敗して負けた
何度も辞めたいと思った
何より演奏することが辛くなった
それでも辞められなかった
教室も家も大嫌いだった私にとって
吹奏楽部だけが居場所だったから
居場所をなくしたくなくて
吹奏楽を続けた
ミーティングをするようになって
仲の悪い私たちの学年は
全然話がまとまらなくて進まなくて
学年代表ももう辞めたいと思った
そんなときに先生が寄り添ってくれた
どうしたらいいか一緒に考えてくれた
話を聞いてくれた
先生のおかげで心に余裕が持てて
学年代表も頑張れた
もう一度楽器にもちゃんと
向き合えるようになった
何があっても先生に話せるから
大丈夫だって思えた
そんな時に先生の異動が決まって
終業式の前日
異動する先生たちの名前を
親から見せられた時
その場に泣き崩れた
何度も「嫌だ」と繰り返した
春休み先生に会える数日間
毎日先生と話した
最後の時間は
離れたくなくて
先生が無理やり閉めた校門越しに
沢山の話をした
本当の最後だから
普段はちょっと素っ気ない先生が
たくさん話してくれた
「次のアンコンは貴方がみんなを
引っ張って行ってあげて」
「部長になって
それで吹部を支えてあげて」
「ドラムはきっと
貴方なら出来ると思うからお願いね」
「アンコン1年生1人でよく頑張ったね」
「学年代表もみんなのために
一生懸命頑張ってくれてありがとう」
先生は私が誰かに認めて欲しかったこと
全部認めてくれた
次先生に演奏を聴いてもらえる時は
もっと上手くなっていたい
その一心で春からずっと
必死に頑張ってきた
課題曲と自由曲が決まって
自由曲のSoloが決まって
チャンスだって思った
Soloを先生に聴いて欲しい
聴いてもらえるか分からないけど
それでも先生のために演奏したい
4ヶ月間それだけを思って頑張ってきた
先生の言葉が自信に繋がって
私のコンプレックスだった音が変わった
努力を積み重ねて
前よりずっと綺麗な音になった
今の私の音を先生に聴いて欲しい
1年生の時の私とは違うって知って欲しい
上手くなったって思って欲しい
だから先生に届くって信じて
本番も全力で頑張ります