【 籠の中の姫】
彼女は囚われの身
籠の中の姫です。
彼が眠っています。
気持ちよさそうな寝顔です。
時々、突発的に
びくんっ!と跳ね動く姿が
可愛くて彼女は微笑みました。
普段良いようにやり込められている彼女。
こうも彼に無防備に眠られてしまうと
彼女の悪戯心に火が燻り始めます。
彼女はそっと彼に近づいて
脇の下をこちょこちょ。
「んっんんん…ったはっ」
今度はお腹に頭を乗せてみます。
「ぐっ……おも」
「失礼ね、裕貴のおなかだって堅くて枕としては零点なんだから!」
思わぬところで女心を傷つけられて
彼女は少しだけ口を尖らせました。
今度は服をめくっておへそをこちょこちょ。
「……へそ……蚊に喰われ………かゆ」
蚊には食われていません。
彼女の攻撃に合っています。
お次は首筋をなぞります。
「ん…っ、は……や、やめろ、ボスは渡さない」
ボスは彼の飼っている猫の名前です。
一体夢の中で誰に何をされているのでしょう。
夢の中で猫を人質に、
首筋を撫でられているなんて
彼女はヤキモチの湖へ一気にダイヴ。
「……ねえ、そろそろ起きない?」
彼女は、彼の胸をくりくりと
指先で遊びながら
彼の耳元で囁きました。
彼は無反応です。
いよいよ寂しくなってきて
彼女は彼の唇に
小さなKissをしました。
すると、突然
きつく抱き締められ
彼の舌が口の中へ滑り込んできます。
絡みつくような熱いキスを終えて
彼女は彼を見つめました。
彼はしっかりと目を開いて
勝ち誇ったような顔をしていました。
なんだかとっても恥ずかしい。
彼女は降参、と言わんばかりに
目を逸らしました。
すると彼は言います。
「人の寝込みを襲うとは、いい度胸だなあ?千夏」
「は、…はい」
「今俺に何したんだ?」
こうなってはもう彼女は彼の籠の中。
「えっと…どこから起きておいでで?」
「千夏が言うんだよ、俺に何をした?」
「むぅ…」
「むぅ、じゃないだろ」
恥ずかしさにどうにかなりそうですが
彼女は彼にすんなり従うことにしました。
「ま、…まずは脇の下をくすぐりました」
「ほう」
「それからお腹に乗りました」
「おう」
「それから首筋をなぞって…」
「うん」
「寂しくなって…キス……しました」
「いや、その下りわかんねーし?」
「ボスを人質にとられてたんだよ!」
「なんだそれ」
彼は一頻り笑って
彼女をぎゅっと抱き締めます。
温もりが伝わって
彼女はもう溶けてしまいそうでした。
「なあ」
彼が言います。
「ん」
「俺とキスしたかった?」
「うん…」
「1回で足りたわけ?」
また意地悪な質問をする…。
でも彼の質問に正直に答えれば
「ううん、足んない、もっと」
「いい子」
蕩けるような甘い時間が待っている。
彼女は囚われの身の姫。
幸せという名の籠の中
彼というナイトに今宵も愛されるのです。