#君のいない世界で笑う

｢本当に2人は似てるね｣



もう、幾度となく言われてきた





僕と弟は双子で顔がそっくり


親でも間違う程だった







だからといって性格も同じという訳ではなかった





弟は本当に人に好かれる人間だった


いつも前向きで活発な人柄だった






それに比べ兄である僕は


常に消極的で人と関わるのが苦手だった









｢お前の兄ちゃんいっつも本読んでるな｣



学校でクラスの目立つグループの1人が

そう言い放った





嫌味も含めた言葉に居心地が悪くなった





『そーなんちゃ、やけん俺と違って頭良くて


いつも親から見習えーって言われて！』




笑ってそう言って

僕の方へ大きくブイサインをしてきた時から





弟は僕の中での英雄であり憧れだった







そんな弟を病魔は襲ってきた


がんだった




発見された時には既に末期で


余命1ヶ月と宣告された







どうして弟なんだ


どうて僕じゃなく弟なんだ


どうして、どうして、どうして




その思いでいっぱいだった







辛い、悲しいそんなことより


何も出来ない自分の無力さが悔しかった






毎日涙が止まらなかった





でも、弟は



『まだ1ヶ月もあるんやけん、どっか行こうや

くよくよしちょる時間勿体ないわ！』




どこまでも前向きだった







1番辛いはずの弟がこれ程にまで


前向きに頑張っているのだから


自分も一緒に頑張ってみようと心に決めた









弟が行きたいと行ったところには


どこにでも行った






弟はずっと笑っていた




元気だった頃と何も変わらない


無邪気な雲ひとつないような笑顔で


ずっと笑っていた






余命の1ヶ月があっという間にすぎても


弟の笑顔は変わらずそこにあった






それを見ているともう病気は消えたのだと


そう錯覚してしまう程だ






でも現実はそう甘くはなかった







初夏の蒸し暑い日


弟の状態は急に悪化した








その日から蒸し暑い部屋に冷房もいれず


僕は声を押し殺しながら泣いていた






このまま弟がいなくなったら



そんな事をずっと考えながら










病院で弟はいつものように笑っていた



『兄ちゃん、俺らさ顔そっくりやん？


やけんどっちがどっちかわからんやん？


兄ちゃんが泣いてたら俺が泣いてるのと一緒


兄ちゃんが笑ってたら俺が笑ってるのと一緒





最後までずっと笑顔でいようや

そんで、皆に俺と兄ちゃんの笑顔見せたろう！



約束で？』






その日から僕は涙は流さなかった


弟を支えてくれている人の為に


笑顔でいると約束したから







2人でした約束はこれが最後だった












1ヶ月後





世間は七夕1色に染っていた





学校の授業で七夕の短冊が配られた




｢大学合格祈願！｣


｢インターハイ出場！｣


｢勉強無くなれ！｣




皆の短冊にかっこいいなあと思いながら


シャーペンを動かす







｢これ、どういう事なん？｣



後ろから覗き込んできたクラスメイトに

こう答える



｢僕が笑ってたらな、

あいつも笑ってるって言うのと一緒なんよ｣




クラスの皆が察して暗い顔をした



｢そんな顔したらアイツ怒るよ

アイツが怒ったら俺も怒るのと一緒やから

倍で怒られるもんで？そんなん嫌やろ？｣




｢なんや、それ、ややこしくて

もう笑えてくるわ｣





皆の笑顔を

窓から入る風がなぞっていく








短冊

『ずっと笑っていられますように』

キミがそばに居るなら良いと思ってた

でも

キミを幸せにするのは


僕じゃなくてもいいんだね

失ったものを数えられるほど


余裕なんてなくて


考えないようにする事が出来るほど


器用じゃないの

ねぇ、笑えるよ
君を失ってしまえば
少しは楽になれるなんて
あの頃の僕はどうかしてた

君のいない世界で笑うには
僕にはまだ早すぎたみたいだ

君を失ったら苦しさだけ残った
どうしてかな？どうして…
僕はあの時、素直に
謝れなかったんだろう

夢でまた君に出会えた

ずっとそばにいたかった

ねぇ


君は今どこにいるの

こたえて

離れないで

行かないで

そんな願い、もうとっくに捨てた










はずだったのになぁ

さっきしたばっかなのに何なんだって感じですが、タグ紹介です。


♯君のいない世界で笑う


解釈、使用、自由です。

遅くなるかもですが、使ってくださった方には贈り物させていただきます。

是非使ってください。

真実を知ることが幸せとは限らない

「努力して、努力して、いつ報われる？」


もう、笑えないよ