こーく・2024-08-12
秘密
和歌
葉隠れに 散りとどまれる 花のみぞ
忍びし人に 逢ふ心地する
この気持ちは決して
貴女にバレてはいけない
あらざらむこの世のほかの思ひ出に
いまひとたびの逢ふこともがな。
降り続く
雨の音のみ
聞こゆるは
閉ざされし世の
深き溜息
意味
降り続く雨の音だけが聞こえてくる。まるで、閉ざされてしまったこの世界が深くため息をついているようだ
色褪せし
記憶の欠片
拾い集め
一人黄昏に
佇むばかり
意味
色褪せてしまった過去の記憶の断片を、一つ、また一つと拾い集めて。そしてただ一人、寂しい黄昏の中で立ち尽くしている。
見し夢は
現に消えし幻か
嘆きのみ残る
夜の静寂(しじま)に
意味
あの美しい夢は、現実の世界に消えてしまったのだろうか。まるで幻だったかのように。ただ、深い悲しみだけが、静まり返った夜の闇の中に残っている。
蜘蛛の巣の
かかる夕暮れ
物憂げに
動かぬ影は
わが身に似て
意味
寂しく蜘蛛の巣が張っている夕暮れ時。もの憂いげにじっと動かないその影は、まるで今の私の姿に似ているようだ。
縁あらば
後の世こそは
先駆けて
名をば告げなめ
君や呼びなむ
もし縁があったら来世こそは
誰よりも早く真っ先に私の名前を君に伝えよう
そうすれば君は私を「 」と呼んでくれるのかな
君なくて
梅さえ春を忘れなば
いづれの木にか
鶯鳴かむ
あなたが居ないせいで
梅までもが春を忘れてしまったなら
鶯は一体どの木の枝で
泣けばいいのでしょう
ちはやふる
神と人とを繋ぎ来し
玉の緒絶えて
露と散りけり
神と人との絆を結び繋げていたあの方の
命が絶え、露の様に散ってしまった
花ならで
その実を君に
贈りせば
けふの別れも
あらざらましを
桃の花ではなくて
不老不死をもたらす桃の実を
あなたに贈っていたら
今日の別れも
きっと無かったのに。
灯(ともしび)の
揺るる影には
亡き人の
面影偲び
涙枯れ果つ
意味
揺れる灯火の影の中には、もうこの世にいない大切な人の面影が浮かんでくる。その姿を偲び、涙が流れ、やがては枯れ果ててしまうほどに、深く悲しんでいる。
朽ち果てし
社(やしろ)の隅に
佇(たたず)めば
聞こえぬ声の
胸にこだます
意味
すっかりと朽ち果ててしまった古い神社の片隅に一人佇んでいると、実際には聞こえるはずのない懐かしい声が、私の胸の中に寂しく響いてくる。
流れ流れて
辿り着くとも
一所おれぬ
世の哀しさに
言の葉遊びて
波打ち際に
我が憂きは
払ひえずとも玉ははき
憂き人の行く
道を清ませよ
私の辛さを払うことは出来なくても
あの人の死出の旅路は綺麗に洗い清めておくれ
乱れ散る
玉かとぞ見る
涙かな
我がかきやりし
黒髪のうえ
砕け散った水晶に見えたんだ。
貴女の黒髪に落ちた僕の涙が。