はじめる

#嫁入り

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全5作品・

~宗時と阿国~



「太刀を持って参れ!大太刀じゃ!」


宗時は腹に据えかね


息巻いて叫びながら


城の中をあちこちにと


足早に歩き回る。




「と、殿っ」


宗時の後を追うように


家老は彼の顔色を窺った。



「殿、何をなさるおつもりで」


「……戦じゃ」


「い、戦ですと…!?落ち着かれなさいませ、何故、その様な」


「浅間の奴め、阿国を嫁に寄越せと言いおった!」


「妹君をですと?それはまた……何とも急な。しかし殿、浅間殿と言えば我らと比べれば兵数も領地も上。こちらは痩せた土地ばかりで糧も満足に用立てられるとは思えませぬ。とても太刀打ち出来るとは……」



家老は白く長い眉の間に


皺を沢山蓄えた。




宗時は


一度は押し黙ったが


憤怒も冷めやらぬ。



「ならぬ。……阿国を嫁になど、絶対にならぬ」


「殿……」



家老は半ば諦めた様に息をつくと


厚い雲がかかった曇天を見つめた。




***


「阿国……」


宗時は阿国の首筋に


鼻先をこする。



「兄……様」


阿国は兄と呼びながらも


熱く潤んだ目を宗時に向けた。




「兄などと、儂を呼ぶな……血の繋がりはないのだから」


「宗……時様」


「それでよい」



切なそうに微笑むと


宗時は阿国の唇を


一思いに吸い上げた。



行灯のあかりが


小さな離を温もりに満たすと


衣擦れの音がひとつして


二人はより密着し


より抱き締め合った。




抱き締められると


その身も心も幸せに満ちる……



阿国は、吐息とともに


妖艶な声をひとつあげた。



すると宗時は


実に愛しそうに


笑んでこう告げる。




「阿国は何時も愛らしい」


阿国は潤む瞳を伏せ


奥ゆかしく笑った。



「阿国、良いか」


啄むような口付けを


繰り返しながら


宗時は熱く息をつく。




「……喜んで」



阿国は身体を明け渡すかの様に


宗時の首に腕を絡めて


その逞しい胸へと顔を添わせた。



宗時は阿国の柔らかい身体を


優しく貪りはじめる。





小さな離で


二人の愛は大きく燃えた。



いつも通りの、夜だった。





二人は兄と妹だった。



しかし、阿国は幼き日から


人質にと


他国から養子に出された子で


宗時とは何ら血も繋がらぬ。



宗時も阿国も


年齢を重ね青く成長する頃には


心惹かれ合うようになり


父、宗達が亡くなってからは


なし崩しのように


愛を分け合うようになった。



しかし、若と呼ばれた宗時は


今や一国の主。


いかに血の繋がりがないとはいえ


阿国は、宗時の妹だ。



これが、許されぬ愛である事は


二人も疾うに理解している。



羽根をひらいた孔雀のように


着物がふわりと広がって


あられない姿で息を整える阿国を



腕枕で支えた宗時は


その髪の毛を撫でた。



すると、阿国は


涙をぽろぽろと零し始める。



「何故泣く……?」



そう、問いつつも


宗時は浅間重吉の元へ


嫁に行くことが


嫌なのだろうと思い


阿国をきつく抱き締め言った。




「……大丈夫だ、阿国を嫁になどやるものか。約じゃ、戦をしてでもそなたを守る。」


愛しい者を守る。


それが愛と父に繰り返し教えられた。


しかし阿国は


未だ涙を流し続けると


呆然と宙を見つめ震える声を絞る。




「いけませぬ……」


「何がじゃ」


「無益な戦など……阿国は嫌にございます」


「無益なものか、阿国を守る為ならば」



宗時が声を荒らげると


宗時を睨むように見つめた阿国も


声を張った。



「阿国の為ならば、国をも犠牲になさいますか……戦ともなれば何千の兵が、民が苦しみましょうか。それに……」


大きく目を見開き


呆気にとられた宗時の顔を


目の当たりにすると


幼き日の想い出が噴く。



この国へ貰われたばかりの頃は


一時の友国とはいえ


やはり敵国の娘。


冷遇を余儀なくされた阿国を


傍で優しく支えたのは宗時だった。



ずっと小さな時から


慕い続けた、阿国の恋。



無くしなくない、幸せ。




「……宗時様も討死ぬやもしれませぬ」



「儂は……!」



「阿国は……例え宗時様が生涯の兄となっても……貴方には生きてほしい」


「……阿国」


「阿国は……浅間様の元へ行きまする」



宗時は零れる阿国の涙を


何度も何度もその温かな指の腹で


拭い続ける。



阿国は嗚咽を堪えると


震える唇を無理やりに引き上げ


にっこりと笑った。



「ねぇ、兄様……どうか阿国のわがまま、聞き届けて下さいましね」



「阿国……っ」



宗時の頬には


とうとう大粒の涙が伝う。



何故、離れねばならぬのか


何故、こんなにも愛しいのに。



言葉にならない想いを力いっぱい


抱き留めることで阿国に放る。





一心に伝える声なき愛を


一心に受け止めた阿国は


もはや戦にはならぬと安堵した。



「兄」はいつでも


阿国の願いを聞き届けてくれる、


優しく、強き人だったから。





「阿国、国を出ようか」


その様な戯言


叶わぬと知りつつも


紡がずにはいられなかった。



「どこへ行きましょうか」


「そうじゃな……そう言われると迷うではないか」


眉を下げた宗時に


くすくすと阿国は笑う。



「何処でも良いです、共に居られるのなら」


「阿国……儂はそなたを心底に慕う」


「阿国もです」


堪らず、阿国の小さな唇に


宗時は口付けをくれてやった。


もうひとつ


もうひとつと


終わりなきそれを繰り返す。


息を吸うことも忘れ


ふたりは深く、


これまでに無いほど


激しく求め合った。



月の綺麗な、夜だった。






この愛は今宵で終わるのだろう。



それでも



例え二人が引き裂かれても


例え二人に他の誰ぞの子が産まれても


例え二人が年老いても


例え二人を死が分かつ時が来たとしても



この瞬間の愛は永遠なのである。




愛の華は永えに咲き誇り


次の世にその全てを賭ける。



実を結ぶ、その日を


毎夜、恋しく、夢に見て。



***


|ョ´д`*)


朝からこんな内容でごめんなさい笑



忙しくて小説になかなか手をつけられず


書く気も失せていたのですが


ふと、書きたいなと思った題材が


これでした。



久々なので、まあーひどいもんです


これから徐々に


復帰出来たらいいなあと思っているので


リハビリ作品


多めに見てやってくださいね笑



それでは今日も


コロナに気をつけて


頑張りましょう(*´ω`*)




幸介

ひとひら☘☽・2020-08-09
幸介
幸介による小さな物語
小説
独り言
笑顔
ポエム
殿
時代小説
好きな人
好き
叶わない恋
嫁入り
いつかきっと
辛い

いくつもの、いくつもの季節を超えて
長い長い冬も終わりに近づいて

あぁ!日差しが綺麗だね💖
空の高さが、果てしなく見えるね💕

ずっとずっと待ち望んでいたこのとき
あたしはついに貴女の元へ
あたしはついに貴女の元へ

ミミィ@歌い手:板谷ミミィ・20時間前
嫁入り
貴女
貴女へ
最愛のあなたへ
あなたと生きてゆきたい
生命の価値はあなただけ
心に浮かぶのはいつだってあなたのこと
女の子同士の恋愛
手に手をとって未来へと
あなたを永遠に愛しています
あたしは永遠にあなたのもの

嫁入りや 島に向かって 袖振りし
麗し娘に 人集りは泪

宵咲硝・2021-08-05
憂の短歌
嫁入り
離島

これらの作品は
アプリ『NOTE15』で作られました。

他に5作品あります

アプリでもっとみる

他に5作品あります

アプリでもっとみる

その他のポエム

独り言
994438件

想い出の欠片
2953件

ポエム
529573件

好きな人
317609件

450082件

辛い
180763件

自己紹介
93806件

恋愛
194903件

トーク募集
83479件

苦しい
58954件

思い出の欠片
335件

死にたい
95022件

人間関係
11962件

片思い
182878件

片想い
225573件

59004件

寂しい
33842件

36276件

同性愛
26277件

失恋
106429件

会いたい
45308件

すべてのタグ