#対

"一緒に、楽園へ還りましょう"


少女は最愛の片割れと共に
手を取り合い歩いていく


病的な白磁の肌と緋色の瞳
雪のように白い髪
少女は青年の柔い髪を弄び
青年は少女の小さな唇を撫でる


侘しい谷底を目前に
少女と青年は畏怖の念を持たず
唯々神々の聲を聴く


"…貴方はまだ、来てはいけない"


盲目の少女は眉を下げ
背後の男に愛と接吻を遺して
楽園へと旅立つ



＿＿＿遺された男は、少女の腕飾りを握り締め
紙人形のように舞った少女を想い、遠くへ吼えた

平和と戦争

それは対をなす


そんな世界に挑むのは





辛い過去を背負う小さな創造神でした

悲しみの底に呑まれた僕は

もう誰のことも信じられない










それでも私は貴方のことを

今でも大切に想っています

｢もういいのか？｣

｢あぁもう十分だよ。｣

｢気が狂ったか？｣

｢そんなことは無いさ、ただ僕は今まで君を隠しすぎた｣

｢俺を隠してきただと？｣

｢そうだよ。生まれてから23年君と元に過ごしてきた。俺は陽、君は陰としてずっと隠してきた。けどもういいんだ。｣

｢なぜ今なんだ。俺はお前の陰としてずっと見てきた。
お前は他人に必要とされてる。そんなお前がいなくなって何になると言うんだ。｣

｢必要とされることに疲れたんだ。俺じゃなく今度は君に頑張って欲しい。僕の分までとは言わないけどね。｣

｢なぜ俺なんだ。俺じゃなくてもいいはずだ。お前は変われる。今までもそうだっただろ。変わってきたじゃないか。｣

｢そうだね。変わってきたね。でももう変われない。｣

｢なぜだ？｣

｢失うものが多すぎた。｣

｢それはお前が選んだ道だろ。綺麗事ばかりで全て救えるはずもないだろ。｣

｢僕の理想は崩れた。だからさ、ずっと見てくれてた君に託したい。俺の過ちを繰り返さないためにも。君が今後僕として生きていって欲しい。いなくなる訳じゃないよ。ただ少し休憩するだけ、僕達は対の存在。どちらが欠けてもダメなんだよ。｣

｢俺はお前としては生きていけない。対の存在だとしても俺は歪だ。人を恨み苦しめることしか出来ない。｣

｢それは違うよ。だって僕のことを思って今まで見てくれてたんでしょ。それが君の優しさだよ。｣

｢俺はただ傷つくお前がみたくなかった。俺が表に出てしまえば人を傷つけてしまう。そしたら、お前がまた悲しむじゃないか。｣

｢大丈夫だよ。君ならできるよ。その優しさを人に向ければいい。恨んだり苦しめたりするかもしれない。そんな時はその人に寄り添えばいいんだ。僕は優しすぎるが故に人を傷つけた。多くの人をね。｣

｢俺はそんなに良い奴じゃないぞ。｣

｢それでも僕は他でもない君がいい。だって人を苦しめる気持ちを理解してて、優しく寄り添えるの君以外いないよ。｣

｢それはお前が知らないだけだろ。｣

｢そうかもしれないね。でも、君は自分を大事にできる。僕と違うとこだよ。僕は人を大事にしすぎた。｣

｢お前の望む結果は得られないぞ。それでもいいなら休みなり消えるなり好きにしろ。俺は俺の道を行く。｣

｢それでいいよ。あとは任せた。辛くても《それでも》と足掻き続けて｣


この言葉が最後だった。俺の中にいた。陽は姿を消した。
あの日以来、陰の俺は孤独になってしまった。
俺は上手くやれているのだろうか。問いたくてももうお前はいない。対の存在なのに。どちらがかけてもダメとお前は言ったのに、いなくなるのは反則だろ。だけど俺は前に進む。それでも世界は周り明日が来るから。俺はお前として生き続ける。

完璧な夜を ここに見る
闇に染まる 寂しさをたたえた街
私の愛した 完璧な夜がここにある

主人公っていうのは、
キャラクターも、モデルも、俳優も、
勝手に決められただけ。
ほら、えー、っと、
ふ、福澤諭吉も『天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず』
とも言うじゃん？

誰もがモブ。
いつかは忘れられるし、人の手伝いだってする。
嫌になったって、誰も気付かないさ。




















……そんな綺麗事には関係ない、
モブだって、少しくらいは、『主人公』
って、思わせろよ！
気付かなくてもいい、
嫌になってもいい。
もう、ひとりの世界で、主人公をやっても良いだろ？

どうして僕はと地面に吐いて
握り締めた手の中の
何もないものを投げつけた

自身を持って自由に羽ばたくあなたが羨ましい
先立って導く道を創るあなたが逞しい


護れていないと思っているのは君だけで
諦めなかったのも君で
掴んで離さなかったのも君で

俯きながらも歩くことを止めない君が逞しい
誰かの後押しをする君が羨ましい

いつになったら
ついになれるのでしょうか？