はじめる

#幸介

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全911作品・



学校行くだけで偉いんです。


たとえ行けなくても偉いんです。


本当は生きてるだけで


とっても偉いんです。




疲れたあなたに


送ります。



いつもお疲れ様です


今日も頑張りました


生きててくれてありがとう

ひとひら☘☽・2021-05-15
幸介
幸介による疲れた人へのメッセージ
お疲れ様
偉いんです
ありがとう
秘密の愛言葉
独り言
辛い
死にたい
学校
ポエム
好きな人

人間って残酷だなぁと


改めて私は思うのです。



非道な行いがある度に


私たちは心を痛めるし


その行いをする者は


もちろん罰するべきなのですが




ふと気付くと


日常生活の中に潜む


隠れた鬼がいたりするのです。



何故、捨てられた動物が


いるのでしょう。


何故、誰もあの子に


手を差し伸べないのですか。


何故、あの方は自ら生命を


断ったのでしょう。


何故、あの人は非道な行いを


生業としなければならないのでしょう。




そして、その真実を知った時


私たちは口々に言うのです。



信じられない。


そんなこと許せない。


馬鹿だ。クズみたいな人間だ。


いや、人間じゃない。


そんな人間

































そしてまた負のスパイラルがはじまる。



人は人を追い詰めます。


人は元よりもしかしたら


残酷で非道な


生き物なのかもしれません。



だからこそ


私たちは


ひとりひとりの行いと


ひとつひとつの言葉に


責任を持たなくては


ならないのです。

ひとひら☘☽・2021-05-01
幸介
幸介による疲れた人へのメッセージ
思うこと
このままずっと
好きな人
非道
残酷
生き物
責任
言葉
言霊
独り言
ポエム
心が痛い
動物愛護
いじめ
それぞれの心に刻む

死にたい時に


死にたいと叫ぶのは


希望の場所まで


連れて行ってほしいから


そうじゃないですか?



あなたの中の


死にたいを


拭い去って


生きたいに


換えたいから


そうでしょう?



本当は


気づいてるんですよね



死にたいで埋もれた心の


たった一つの小さな本音




どうにかしたいのに


どうにでもなれなんて


そんな事望んでしまう自分が


嫌なだけなんですよね。




死にたい


呟いただけで


救われるなんて


そんなのは言い訳で



本当は


待っているんでしょう?



言葉なんてなくてもいい。



“私”を見守ってくれる誰かを。



何も言わなくていい。



放り投げた背中を


そっと抱き締めてくれる誰かを。





無理なんてしなくていいんです。


笑えなくても好きですよ。


無理して笑う事は


本当のあなたを


隠してしまう事だから。



仏頂面でもいいんです。





傍にいます。


ここに居ます。


汚い気持ちだっていい。


死にたいだっていい。


その裏側の本音を


僅かでも見せてくれるのなら


私たちはきっと分かり合える。





私は


あなたが



知りたいのです。

ひとひら☘☽・2021-04-22
幸介
幸介による疲れた人へのメッセージ
疲れる
死にたい
ポエム
好きな人
独り言
伝えたい
希望
生きたい
死にたくない
本音
あなたが知りたい
辛い
夢を見させて
片想い

これらの作品は
アプリ『NOTE15』で作られました。

他に911作品あります

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「死にたい」というあなたも


「生きろ」というあなたも


理解しているようで


本当は理解していない。



死にたいくらい


辛いことも


生きろという


心情も


生ということも


死というものも


理解していないから


「死にたい」「生きろ」


その争いが無くなることは


無いのでしょう。






死を選ぼうとすること

それは


決して正解ではないのです



正解は


ただひたすらに


生きること。



間違えてもいい


死にたいと叫んでもいい


立ち止まってもいい




生きること。




生きろということは


決して正義ではないのです。



正義は


死にたいという人を


知ることにある



むやみやたらに


生きろということは


言葉の暴力と一緒です



人と人


手と手とりあい


助け合うこと



自分だけが辛いわけではない


いつも羨望する笑顔のあの人


実は並々ならぬ悲しみを


背負っていたりして


自分だけが正しいわけではない


どんなに「正論」を唱えても


枠におさまりきらない想いは


きっと存在するものです。



人と人


まずは


笑ってみましょうか


ぎこちなくてもいい


はじめましてから


はじめましょう



私はあなたを否定しません


私はあなたを知りたいのです


あなたも私を知ってみませんか






はじめまして


私の名前は幸です


あなたのお名前は


なんですか?

ひとひら☘☽・2021-04-24
幸介
幸介による疲れた人へのメッセージ
死にたい
生きろ
生と死
理解
ポエム
夢を見させて
独り言
好きな人


「ご飯食べよ」


君が言う。


「どこで食べる?」


私が聞く。


「中庭」


「ピクニック?」


「いえーす」


君が笑って


私も笑う。



ポカポカ陽気を通り越して


暑いくらいの青空


眩しいのは太陽だけじゃなくて


甘え上手な君だって眩しい。



人目を気にせず


「大好き」


そう言ってくれること。



私が人目を気にすると


私の耳を


両手で包むように塞ぎ


「気にしない、だよ」


そう告げて微笑むこと。



全部が幸せ。



愛しい君と


この時間を過ごせる事が


嬉しくてたまらない。



ずっと抱えてきた、


MTFという性別違和



君もLGBTと


向き合い続けてきた



そんな君と今


心ひとつに笑い合えることは


私の中で奇跡といっても


過言ではないくらい


好きで、好きで、大好きで


ずっとずっと一緒に


生きていきたいと思えるよ

ひとひら☘☽・2021-04-20
幸介
MTF
わたしといばら
幸せ
大好き
LGBT
夢を見させて
恋人
好きな人
独り言
ポエム
Bの彼

たったひとつの生命


ひとひらの恋


たった一人の


君を選んだこと


それが私の誇りです

ひとひら☘☽・2021-05-07
幸介
たったひとつ
彼氏
MTF
MTFを超えて
MTFのわたしとLGBTのBの君
独り言
好きな人
ポエム
わたしといばら
笑顔の魔法


処刑場 LOOK AT ME
~非力という名の罪~
前編


「じゃあお願いしますね」


「わかりました」



私はその日、両親に捨てられた。


どんなに泣いても


どんなに叫んでも


両親は私を見送るでもなく


私が車に乗せられる前に


肩を抱き合い家の中へ


入っていった。



中では妹が


お母さんのお乳を求めて



泣いていた。




お父さん、お母さん


私を見てよ


涙ながらに叫んだけれど



もう二人に声は、届かない




虚しさが込み上げては


絶望になっていく。



虚ろな瞳が移すのは


施設へ向かい走る車の窓外


稲穂の光る秋の夕暮れだった。



「ほら、入りなさい」


施設へ連れてきてくれたおじさんが


私に優しく声をかけた。



不安でいっぱいの中


私は意を決して施設の扉をくぐる。



「え」



そこには見渡す限り


沢山の仲間がいた。


経緯はわからない。


体が痣だらけの子もいた。


目いっぱいの涙を


やっとの事で堪える子もいた。


泣き喚く子もいたし


心がからっぽになってしまったように


ずっと宙を見つめている子もいた。



どの子も傷ついて


どの子も目の色は暗い。


私は今、どんな顔をしているだろう。



疲れ果てて


部屋の片隅に腰を下ろすと


男の子が身を寄せるように


私の隣に陣取った。



「よ、新入り?」


「……うん。君は、長いの?」


「いやぁ、俺も昨日来たばっか」


彼は、眉間に皺を寄せ


やっとこ笑った。


手ひらには火傷の痕が


生々しく残っている。



「その火傷…」


「父さんにやられた。苛立つとどうしようもなくなるみたいで、俺の体にタバコ押し付けるんだよね」


「捨てられたの?」


「家出した」


彼は、ゆっくりと傾いて


私の肩に頭を預けた。


彼の傷みが伝わって


身体中から涙が噴き出る様だ。



「辛かったんだね」


「うん」


うん、なんて


可愛らしい相槌をうつ彼に


心がきゅんと跳ねた。



私も身体の力を抜いてみる。


自然と彼の方に体は傾いた。


彼も私も、


嫌がらなかった。


当たり前のことのように


互いの存在の重たさを受け止める。



深く息衝くと


鼻をくすぐる彼の香りに


嗅ごうと思ったわけじゃないよ


心の中で


そんな変な言い訳をした。


生命が、跳ねる。


鼓動が脈打つ。


私たちは生きていた。



信じていた人に裏切られても


ひどい暴力を受けても


どんなに死にたいと思っても


捨てられても



命は悲鳴を上げるように


拙くも時を刻むように動き続ける。



その鼓動ひとつひとつが


「生きたい」


そう叫んでいた。




きっと、誰より尊い命をもって


私たちはこの世を駆けている。




「ねえ」


「ん?」


「生きようね」


「え」


「このまま幸せになれないなんてさ、悔しいよ。君も私も」


彼は私の言葉を聞くと


大きく息をつき笑った。



「そーだな、生きよう」



生きよう、


生きたいね


彼と私はその約束を


確かめ合うように


幾度も幾度も口にした。

ひとひら☘☽・2021-05-03
幸介
幸介による小さな物語
短編
前編
小説
物語
悲哀
このままずっと
笑顔の魔法
独り言
ポエム
辛い
虐待
捨て子
処刑場lookatme
非力と言う名の罪
好きな人
問題提起作

君と一緒にいる今は


どんな過去より愛しくて


君とひとつに練り上げる想いは


どんなお菓子より甘いよ。



ありがとう


いつも私の側で笑ってくれて。

ひとひら☘☽・2021-05-06
幸介
大好き
MTF
MTFのわたしとLGBTのBの君
笑顔の魔法
彼氏
独り言
ポエム
わたしといばら
好きな人

わたしといばら
幸poem日記



女の子になったら


わがままになったね



男の子の仮面かぶってた頃


相当気を張っていたんでしょう



そんなこと言いながら


私の頭を撫でる君の


その笑顔に救われてる


もっと縛っていいんだよ


何処にも行く気はないんだから



そんなこと言う君の


絶え間ない愛を


身体中に浴びて


今日も私は照れ笑い

ひとひら☘☽・2021-04-22
幸介
MTF
MTFを超えて
夢を見させて
辛い
痛み
独り言
ポエム
ありがとう
今に感謝
好きな人
わたしといばら
大好き
幸poem日記

幸poem日記



俺のこと見てって言うくせに


君の方が私をじっと眺めてる


そんなこんなするうちに


私の方が恥ずかしくなって


ギブアップ。


はい、負けーって


いつからにらめっこに


なったのかな?


罰ゲームは


今日中に私から


キスすることだって。



どうしよう。


そんなこと出来たら


とっくにしてる。


だってほんとは君とちゅー


いつもしたいんだもん。


恥ずかしくって


いつも言い出せないんだよ。

ひとひら☘☽・2021-05-15
幸介
わたしといばら
幸poem日記
キス
ちゅー
突然にらめっこ
にらめっこ
罰ゲーム
心臓、跳ねた
秘密の愛言葉
好きな人
MTF
LGBT
MTFのわたしとLGBTのBの君
独り言
ポエム
ありがとう


「これが……俺?」


「俺、とか言ってていいの?」


「え」


「こんな時の一人称は」



鏡よ鏡鏡さん





魔法使いは


鏡の前でにっこりと笑った。



性と言う名の鳥かごシリーズ
MIRROR´MIRROR~スキナヒト
14話 魔法使い


「ただいまぁー」


「おかえり光琉…あらお友達?」


結局、田辺の強引な誘いを


断りきれなかった俺が


玄関先に佇んでいると


田辺の母親がキッチンから


顔を覗かせた。



「そーそー、部屋あがるから。なんも要らんから放っておいて」


「えー、新しいお友達だし、お母さんも仲間に入れて?」


「無理!」


「そこをなんとかお菓子と引き換えに」


「ダメ!」


「なんでよ」


「テンション高すぎママ恥ずいわ」


上がり框に腰を下ろし


靴を脱ぎ捨てながら笑う田辺を後目に



彼の母親は


こどもみたいに頬を膨らめている。


変わっているが可愛い人だ。


二人の暖かな会話に自ずと頬は緩んだ。


「矢野…真央と言います。夜分にすみません」


挨拶だけはと母に躾られた。


思いたって口にすると、


田辺の母親は柔らかく笑う。


「いいのよ、いらっしゃい。親御さんは大丈夫?」


「すぐにLINE打ちます」


「そうね、それがいいわ。後でお茶でも……」


持っていくわねとでも


言いたげな母親を田辺は一喝する。



「いーらーなーいっ」


「……飲むわねって言いたかったのに」


「うそつけ、ばばあ」


ケタケタと笑いながら


真央行くよ、と田辺は呟いて


俺を手招いた。


脩哉の家とは違う、


真新しく手入れの


行き届いた家だった。



白いままの壁。


くすみの無い家具。


開けっ放しの部屋を


通りすがりに見やると


田辺が描いたものか


小さな子どもの絵が


所狭しと飾ってあった。



母親の明るさや


こういう部屋を見ただけでわかる。


田辺がどれだけ


両親に愛されて育ったか。



俺を自室に通すと田辺は


学生鞄をベッドに投げ捨て


何やら机の中を物色し始めた。


部屋をぐるりと見渡す。


乱雑なところもない。


ほんのりと石けんの香り。


芳香剤にも気を使っている様だ。


清潔感すら感じる。


ふいに脩哉の部屋を思い出した。


脩哉の部屋は


汚くて乱雑で


放っておけば


陽の光さえ当たらない


匂いはいつも


男の、アレの匂い。



普通に考えたら


行きたくもないような部屋だけど


行き届いた部屋に来て尚


あの部屋に還りたいと思うのは


きっとそこに脩哉がいるからだ。


ふとカーテンの隙間からのぞく窓に


映った俺の表情は思いの外


幸せそうで、なんだか少し恥ずかしい。


独りで勝手にはにかんでいると


あーでもないこーでもないと


口にしていた田辺は一際


大きな声をあげた。



「よし、いいよ真央」


「いいって、何が?」


「ここ座って」


そう言って向けられた、


何の変哲もない椅子へ


促されるまま俺は腰掛けた。


すると田辺は俺の目の前に


ズイと近づいてにんまり笑う。


俺は身を引きながら田辺に言った。



「な、何?」


「目閉じて。いい事してやる」


「は!?」


唐突に田辺の口から


脩哉の様な言葉が飛び出て


俺は思わず息を飲んだ。


「お、俺、田辺とはキ、キスとかそういうこと出来ないよ!?」


しどろもどろで


額に汗の玉をたくわえて


俺がやっと告げると



田辺は俺の頭をチョップした。



「い、痛っ!」


「キモイこと言うな」


「だ、だって目つぶつぶ、瞑れって」


「へぇー、真央って大人しそうな顔して、そういう事ヤッてんだぁ」


「ヤッ……!」


「おー?顔真っ赤」


からかわれ通しだ。


俺は僅かに心折れて

ふくれっ面で観念した。


身の置き場に困り


あげく目を泳がせて、田辺に訊ねる。


「何…、すんの?」



田辺はあるものを俺に見せつけ、


豪快不敵に笑んで今一度、告げた。



「さぁ、目を閉じて」














「真央、目ぇ開けてみぃ?」


柔らかい声が俺の耳を撫でた。


ゆっくりと目を開くと


田辺が目の前で手鏡を向けている。


そこに映った俺の顔は


不精に伸びた髭やムダ毛を


剃り落とされて


あまつさえファンデと


チークを施されている。


アイシャドウは


優しいグリーン。


パールの入った嫌味のない、


ピンク色のリップが


俺のぽってりとした唇を


可愛らしく彩っている。



まるでそれは

自分ではないようだった。



まるでその辺の


女の子のようにも見えて


俺は思わず息を飲み込む。




「これが……俺?」


「俺、とか言ってていいの?」


「え」


俺が目を皿のように丸めて


田辺を見つめると彼は


柔らかくにこやかに笑む。


「こんな時の一人称は、私だよ」



鏡よ鏡鏡さん


俺に「私」と言う資格は


ありますか。


私、そんな一人称を


こんなにも口にしたいと


思ったことがあっただろうか。



それでも、切望したその言葉は


喉に張り付いて出てこない。


だって


視線を足元側に移ろわせれば


学生服……男子のそれだった。


似つかわしくもないメイク


深いため息さえ空へ昇る。



田辺はそんな俺を


強情だなぁとあきれ笑い、


やがてこう言った。


「じゃぁ俺の持ち合わせで良ければ、女の子の服来てみる?」


「お、女の子の…服」


「見せてやるよ」


田辺はそう告げるや否や

クローゼットを開く。


内部のハンガーポールには


所狭しと洋服が飾られていた。


誘われるがまま導かれ歩み寄る。



ピアノの鍵盤を


流し弾くかのように


ハンガーを指でなぞると



男性らしい服から


可愛らしい女の子のお洋服


どちらともつかないような


ラフな服装まで…


沢山の彩りに目を奪われた。



「すね毛まで剃る時間ないから、残念だけど今日はズボンかなぁ…あ、でもマキシ丈ならいけるかな」


田辺はまるでアパレルショップにいる、


女子高生のようにはしゃいで


俺に洋服をあれこれと宛てがう。


弾む心が伝播して


俺の心も楽しげに跳ねた。



パステルカラーの


パープルやグリーン


黄色やピンク。


小さな頃


欲しかった、“色”


フラワーショップから


一輪の花を選ぶように


悩んで悩んで指差したお洋服。


大人っぽいカーキ色の


マキシ丈ワンピース。


生まれて初めてブラをつけた。


シリコンバストを入れると


俺の胸には


本当の女の子のような


膨らみさえ生まれた。



「どう?」


姿鏡に映し出された俺の格好は


喉仏がちょっとだけ


大きな女子だった。


先程までのむさ苦しい俺は


どこへ行ったのだろう。



「かわいい……」


見苦しい自画自賛に


田辺は俺の肩を叩き賛同する。


「な!真央は身長低いし、目も大きいから絶対可愛いと思った」


「……田辺、お前、魔法使いかよ」


「神でもいいけど?」


おどけた田辺と俺は


顔を見合わせ笑った。



不思議なものだ。


笑い方までなんだか


淑やかになったみたいで


照れくさい。


夢でも見ているかと思うほど


スイーツみたいに甘い時間だった。

ひとひら☘☽・2021-05-09
幸介
幸介による小さな物語
幸介/性と言う名の鳥籠シリーズ
MIRROR´MIRROR
好きな人
スキナヒト
スイーツ
女装
MTF
笑顔
クエスチョニング
MTF
MTFを超えて
独り言
小説
笑顔の魔法
ごめんね


性と言う名の鳥籠シリーズ
MIRROR´MIRROR~スキナヒト
第10話 確執



「真央ー、ご飯よー」


ベッドに突っ伏したまま


母親の言葉を聞き流していると


父の声が聞こえた。



「真央はどうした」


「具合が悪いのかしら。バイトも休んだって」


「男のくせに軟弱な…俺が言ってやろう」



どん、どんと大きな音を鳴らせて


父が階段を上がってくる。



今日は勘弁してくれ。


脩哉に当たり散らしただけで


もう、ヘトヘトだ。



抗いようもないのに


せめてもの抵抗と


ごろんと寝返りを打って


頭から布団をかぶった。



「真央、お前、具合でも悪いのか」


何も答えずにいたら


眠っているとでも思ってくれないか


息をひそめて、父の様子を窺う。



「寝ているのか」


そう言いつつ、


ドンドンとドアを叩いて


起こそうとするあたり、


父は毒親かもしれない。



近所迷惑と思うほどの


物理音にとうとう俺も応じた。



「……何」


「飯はどうした」


「食欲ない」


「今日はバイトも休んだらしいな」


「うん」


「自分で決めた仕事だろう、どうして休んだんだ」


「腹…痛くて」


あながちでたらめでもない。


帰宅した頃から


胃がキリキリと痛んでいた。


すると父は、


ドア一枚隔てたこちらにまで


聞こえるような大きなため息をつき


一言、苦言を漏らす。



「……弱いな」


父は自衛官だった。


身長が低かったことが


コンプレックスで


その劣等感を埋めようと


人一倍の努力を重ねて


強靭な肉体を手に入れた。


辛い事にも立ち向かい


何事にも負けない精神力を


持っているという自負もある。



父はその自分と生き写しのような、


心の強い“男の子”が欲しかったのだ。



だから、俺に小さい頃から


強い男になることを強要してきた。


だけど、当の俺は


どんなに取り繕っても


心の中は女だったのだから


嘘を取り繕って


嘘の塔が崩れかけて


また取り繕って…


気がつけば


理想と現実の狭間は


どうだ。


渓谷のように深い。



父は言う。


「何があったか知らんが立ち向かえ。それが男だ。自分で決めたことを容易く覆すな。真央の腹痛はきっと精神がしっかりしていれば治まるものだぞ。軟弱な精神を鍛え直すことを考えろ」


矢継ぎ早に次から次に…


反抗心が牙を剥く。


「腹が痛いって言ってんのに、精神って?なんでメンタル病んでるとか決めつけんの?」


「そういう言い訳ばかりのところがダメなんだ」



父の押し付けがましい言葉は

理不尽にも思えた。


溜め込んできた、

尽きることのない怒りが噴き上げる。



「父さんの求めるような強い男にはなりたくない」


男でいたくない。


ヨロイ
この"男"は窮屈だ。


わかってもらおうなんて


思わない。


女になりたいなんて


言わないから…




ただ



「俺は俺だっ」



この生き方を認めて。




願うように紡いだ、


悲痛な想いは父の逆鱗に触れた。




「半人前が偉そうに最もらしいことを語るな!」



たった一つの願いだった。


その願いは俺の心そのものだった。


父の言葉は矢となって


俺という人間を粉々に


打ち砕いた。




「もう、たくさんだっ」



俺はベッドから


跳ね起きると


勢いそのままに


ドアの前の父を


押しのけて


部屋を飛び出した。


「真央!」


「待ちなさい」


両親の怒号と悲叫を耳にしたが


そんなのもう、知ったことか。


俺は裸足のまま家を出る。


足の裏で踏みしめるアスファルト


何故か小学生の時の


徒競走を思い出した。


足を切ると危ないという理由で


裸足で走ることが禁止されていた小学校で


父が異論を唱えた為に俺だけが


裸足で走るはめになった。



特別扱いが嫌で


みんなの冷たい視線が


苦痛でたまらなかった。



それなのに……訴える事もせず


戦うこともせず


涙を流すことさえ諦めた。



俺は生まれてこの方


まるで父の飼い鳥のようだ。



羽根を切られて

鳥かごに入れられ

自由をなくした鳥……




絶望にも似た影に囚われ


駆けていた足が


ゆっくりと止まる。



振り上げていた腕が


自然と力を無くして


太ももに沿うと


コツンと突き当たる…


俺のスマートフォン。



民家の塀に背をこすりつけ


祈るようにスマホを包んだ。



こんな時に


乞うのは


やっぱり脩哉しかいない。



「脩哉……脩哉、助けてよ……」



独白を夜空に投げる。



開いたLINE画面


送信しかけたままの


ごめんな、の一言が


虚しく表示される。



脩哉と会いたい


言葉を交わしたい


笑顔が見たい






結局送れなかった、


ごめんのLINE





届けたい……




「行かなきゃ」



何かに導かれる様に


俺は彼の家に向かい


駆け出し始めた。



たった一つの希望を求めて…。

ひとひら☘☽・2021-04-24
幸介
幸介/性と言う名の鳥籠シリーズ
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MTF
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苦しい
確執
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寂しい

「う……ごめ、かっこわりぃ」


まるで子どものように


泣きじゃくる脩哉に


心が焼けつきそうだった。



「脩哉……っ」


堪らずに俺は脩哉を


抱き締めていた。


どうか脩哉の心が


早く癒えますように


そんな想いを込めて。





性と言う名の鳥かごシリーズ
MIRROR´MIRROR~スキナヒト~
第11話 愛する人




何処をどう走っただろう。

頭の中に描くのは

担任からもらった、

脩哉の家までの地図と


彼の姉と歩いた道。


涙の粒は


アスファルトを踏む足の振動で


目じりから零れ落ち


無理に吹かされた風が


それを攫っていく。



身体を突き動かす、


逢いたい、その想いが


加速して俺は走りきった。




喉の奥に痛みを感じるほど


上がる息。


目の前には愛しい人の家。



脩哉の、家。




「脩…哉」


涙が溢れ、想いが零れた。


逢いたい、逢いたい、逢いたい



いざ、と玄関先の門に近づいた時



「待てよ!」


家の裏からそれは聴こえた。


荒立てたその声は


脩哉のものに似ていて


誘われるように俺は


その声のする方へ


歩み始める。


道角を曲がりかけると


やはり脩哉がそこには居た。


「脩……」


名を呼びかけて


息を飲み


塀の影へ身を潜める。



脩哉は


後ろ姿の女性と一緒にいた。



女性の手首を掴み


真剣な眼差しで


女性を瞳にうつしていた。




脩哉は荒がって訴える。



「…なんでだよ、なんで?」


「決めた事なんだ」


「嫌だよ!ユカが居なくなるなんて嫌だっ」



ユカ……


あの人が、ユカ。


脩哉が俺を抱き締めて


キスをした時に


呟いた名の人物……。



眩暈すら起こし


世界がぐらりと揺れた気がした。



思わず俺が塀から


身を乗り出したその時だった。



「もう。やめてよ、家の中じゃないんだよ?」


そう言って、女性が脩哉の手を


振りほどき脩哉に背を向ける。



その時、俺の目に映ったユカの姿は


いつか俺に笑いかけてくれた、


身なりの整ったナチュラル美人。



…脩哉のお姉さんだった。



「真央くん……」


「ま、真央、お前なんで」



大変な修羅場に居合わせたものだ。


二人のただならぬ雰囲気に


先程まで零れていた涙は


どこかへ引っ込んで


ただ、呆然と脩哉の瞳を


見つめ続けていた。







・・・




「ほい、カフェオレ」


いつもと変わらぬ笑顔で


公園の自動販売機で


買ってきたペットボトルを


差し出す脩哉の目は、


僅かに充血している。


木の生い茂る少しばかり


不気味な公園のベンチで


「サンキュ」


短くそう呟くと俺は


脩哉に手渡されたカフェオレで


喉を潤した。



聴きたいことは山ほどあるのに


頭の中が混乱していてうまく言葉が出ない。


それでも何とか紡いだ言葉。


「脩哉……」


「ん?」


「今日ごめんな」


「なーにがぁ?」


わざとらしく大声で


ベンチから跳ね立つと


脩哉は俺に向き合ってそう言った。



「鞄顔に当たった…痛かったろ」


俺の不機嫌は嫉妬だ。


脩哉の顔が見れない。


脩哉は息をつくと


俺の頭を無造作に撫でて笑う。



「気にすんなー?大丈夫だよ」


こんな笑顔、反則だ。


優しくされるだけ


込み上げた涙と共に


本音が溢れた。



「俺……嫉妬したんだ」


「ん?」


「ユカに」


けらけらと軽い笑い声を響かせて


脩哉はそーなのぉ?とおどける。


でも、分かる。


これでも5年半

ずっと側で彼を見てきたんだ。


分かりやすい、嘘だった。


これは脩哉の無理な笑いだ。


声に乗って伝播した辛さが


膝で握った拳に力を込めさせた。



「ユカって……姉さんだったのかよ」


「まぁね」


ほら、目がマジになった。


虚ろな目で宙を眺める脩哉に


俺の胸は締め付けられる。


「どういうこと?」


「えー?」


「はぐらかすなよ。お前、俺にチューしながら……ユカって姉さんの名前呼んだんだぞ……聞く権利も俺にはないわけ?」


そこまで言わせて


はじめて脩哉は


天を仰ぎ見て独白した。



「血は……繋がってない」


「なんで?」


「俺は母さんの、ユカは父さんの連れ子なんだよ。俺は8歳で向こうは15歳の時に出逢った」


真夏だと言うのに


こんなにも夜風は冷たい。


ザワザワと揺れる木々は


まるで俺の心の様だった。



「中一の時、母さんが男作って出ていった。ユカの父さんは仕事が忙しい人で家に帰って来なかった。中一って言ったら小学生に毛生えたようなもんで、支えてくれる存在ももちろん必要で、だんだんとユカに依存していってさ」


悲哀に満ちた脩哉は

時折、自嘲するように

静かに鼻を鳴らして

微笑を蓄える。



「ユカの父さんが死んだのが中二の時。ユカはファザコンだったから、寂しさもあっただろうし、大学を中退して働く事への不安もあったんだろうね。そこからはなし崩しで、中二の時から約一年、俺ユカと付き合ってたんだ」


俺ユカと付き合ってたんだ


その言葉が頭の中にこだまする。


しかし脩哉は


あー、と唸ると続けた。


「ごめん、言い過ぎたわ!付き合ってなかった、そんな約束してなかった、俺とユカはただのセフレだわ。ユカに血は繋がらなくても姉弟でこんな関係良くないって言われて、1年で終わったけど」

「脩…哉……」


思い返せば脩哉は


中学三年の冬あたりから


女遊びが激しくなった。


それはユカに振られた傷を


癒す為だったのだと


想像するに容易い。



やがて脩哉の目が潤んだかと思うと


あっという間に涙が零れる。


声もなく


笑顔のまま


ぼろぼろと。


壊れかけの水道のように


ぼたぼたと落ちる涙は


公園の地面へと消えていく。



「ユカ……結婚、すんだって」


「え」


「幸せに……なるんだって」


そして、一際大きく


「俺を置いて家を出るんだって!」


脩哉は叫んで泣いた。


まるで小さな子どもが


欲しいものが手に入らず


泣きじゃくるように


何度も何度も涙を拭いながら


悲痛に、泣いた。




「う……ごめ、かっこわりぃ」


我に返ったように


そう呟いたがそんな事


俺は構わなかった。



脩哉の涙なんて


これまでただの1度も


見たことがない。



心が焼けつきそうだ。



何か


何か俺に出来ることは



急いて考えあぐねた俺は




「脩哉……っ」


堪らずに脩哉を


抱き締めていた。


これが正解なのかどうかはわからない。


これで癒されるとも思えない。




ただ痛いほど


脩哉の気持ちが分かる。


愛しい人に置いていかれる寂しさ


失恋した辛さ



今、まさに俺もその時だ。



「脩哉……俺がいるよ、大丈夫、俺がいるから」



いつもチャラけた女好き。



そんな脩哉の秘密は


想うよりもっとずっと苦く


俺の心に広がっていった。

ひとひら☘☽・2021-04-27
幸介
幸介/性と言う名の鳥籠シリーズ
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「……あったけぇ」


「ちょっ、やめ、おい」


脩哉の腕の中で躰ごと


蒸発してしまいそうだ。



「あっためて……おねがいだよ」


そして俺は、小さく聞いた。


「……好きだよ」


涙が滔々と溢れる。


息も出来ないほどに。




次の瞬間


もう、死んでも構わない


そうとすら、思った。





性と言う名の鳥籠シリーズ
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第八話 うわごと



「あがって。そこ突き当たりがシュウの部屋ね」


脩哉の家は思ったよりずっと


おんぼろだった。


つたが這い黒ずんだ壁には、


痛々しくも


至る所にひびが入っている。



家の明かりでも灯っていなければ


空き家と見紛ってもおかしくない。


失礼にも辺りを見回す俺に


脩哉のお姉さんは眉を下げた。



「ぼろぼろでびっくりでしょ?学校では内緒にしてあげてね」


そう言われて気がつく。


五年半も一緒にいたのに


脩哉から家族の話を


一度も聞いた事がない。


今日学校で脩哉の安否を聞いてきた、

女子たちも誰も脩哉の家は知らないと

そう、言っていたっけ。


俺が家に呼ばれないのは


家族に俺との関係を


悟られたくないのだと


勝手に思っていたけれど


あの遊び人の脩哉が


女子も誘わないということは


何か他の事情があるんだろう。



俺はほっとした一方で


脩哉の抱えた闇を案じた。



「おじゃま…しまあす」


修哉の部屋には

のれんのようなカーテンが


引いてあるだけで


ドアがなかった。


中の窓が空いているのだろう


ゆらゆらとカーテンが揺れている。



初めて入る好きな人の部屋


否応なく打ち付ける鼓動をおさめ


いざ、と意気込み


俺はカーテンを掻き分けて


脩哉の部屋に入った。




脩哉はタオルケットに包まれて、

まるで子猫みたいに丸まって眠っている。


自然と口が綻んだ。


そっと脩哉の眠るベッドへと


近付いてしゃがみこむと、


額に汗を浮かべる脩哉の


横顔がそこにはあった。


我ながら相当なイケメンに

恋をしたものだ。


下手をすれば

マスカラをつけた女よりも

長いまつ毛。



今日一日


寂しかった。


今日一日


触れたかった。


触れて欲しくて


たまらなかった。



堪えきれない衝動。


おずおずと躊躇いがちに


手のひらが動いた。


脩哉の額に触れた。



「……あっちぃ、熱一体何度あんの」


焼けつきそうな程の熱さ

気の毒で仕方ない。


変わってやりたい。


だけど


そんな事出来るわけもなく


歯がゆさを噛み潰し


苦し紛れに眉間のしわを

優しく指先でこする。


その時だった。



「んぅー…」


唸り声を上げた脩哉は


事もあろうに俺の手を掴むと


あれよという間に布団の中へ


引っ張りこんだのだった。



「あったけぇ……」


「いや!?お前の方があちぃよ!」


抵抗するも、脩哉は

どうやら寝ぼけているらしい。


後ろから抱きつく形で


俺の首筋に顎を乗せる。


熱い吐息が吹かかると


不謹慎にも俺の体は


脩哉に反応した。


これはまずい。


トキメキなんて


可愛いものじゃない。



「ちょ、やめ、おい」


「このまま、いい…?」


脩哉はうまく回らない口調で


そうお伺いをたて、


俺の腹の辺りに手を伸ばす。



「ほん、とに、やめ」


逃れようと必死にもがく。


病人とは思えない程の力で


羽交い締めているくせに脩哉は


猫が甘えるような声で囁いた。



「あっためて…お願いだよ」


「やだよ、離せっ」


ドアもないのに。


声筒抜けなのに。


脩哉の姉ちゃんが


すぐそこにいるのに。


男同士なのに。



男という鎧で埋め尽くされたこの身が


羞恥心と焦燥感で崩れ落ちそうだった。




「……うっさいよ」



風邪っぴきの脩哉は


寝ぼけながら


上体を浮かすと


あっという間に


俺の口を塞ぐ。



熱を帯びた熱いものが


唇を割って粘膜と絡み合う。


涙さえ零れそうだ。



そして、俺はその最中


小さく、聞いた。



「……好きだよ」


「え……」


脩哉の口から告げられた愛の言葉。


壊れたレコードの様に繰り返される



「好き……好きだよ、好きだ」



零れた涙は滔々と溢れ出る。


息さえできぬ程に。



鏡よ、鏡


これは夢ですか。


喜びで震える胸。


まさか、俺を認識しての言葉なんて


思わないけれどそれでも


淡い期待が身体中を駆け巡る。



血液が沸騰するかと思った。



「脩哉……俺、も」


絆されて“好きだよ”


そう言おうとした瞬間だった。








「好きだ……ユカ」








ユカ……


聞いたことの無い名が


心を劈いた。




好きな男に抱かれて


唇まで奪われて


好きだと言われて絆されて


その告白は


他の誰かへの


脩哉の本音だったなんて。




もう、死んでもいいかな


呆然とそんな事を思って


気を失うように寝入った、


脩哉の腕をギュッと抱いた。

ひとひら☘☽・2021-04-22
幸介
幸介/性と言う名の鳥籠シリーズ
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「俺ん家来て」


「い、いいよ」


「いいから、いいから」


バイト帰り


やんちゃ坊主な顔を


綻ばせ、田辺が言う。



脩哉以外の家なんて


行ったこともない。



俺は困惑していた。




性と言う名の鳥かごシリーズ
MIRROR´MIRROR~スキナヒト
第13話 クエスチョニング



「あああ"おおああー!」


田辺は夜の繁華街を歩きながら


なんとも奇妙な雄叫びをあげた。


「なんだよその雄叫び」


「いやー、初日からこき使ってもらったなぁって?」


「お疲れさん」


俺は白い歯を零して田辺に告げる。


彼は少し長めの髪をかきあげて


まあ、気にするなよとジェスチャーをし


暫しの沈黙の後でこう切り出した。



「あのさー、ぶっちゃけていい?」


「ん?なんだよ」


「俺さ、矢野とずっと話したかったんだよね」


「え、なんで?」


突然の言葉に

俺はその微笑みを訝しく変える。


「すごく変なこと言っていい?」


「だから何?」


「真央ってさ、クエスチョニングじゃないの?」


「クエ?」


「あ、なんだ、違うの?」


「ん?」



会話に落ちる疑問符が


田辺を唸らせる。



彼は、ま、いいか。真央だし。


と呟いてこう告げた。



「クエスチョ二ングてのは、認識性別がわからない、もしくは探し中の人のこと」


「性別がわからない?」


「LGBTって知ってる?」


どくん、と心臓が跳ねた。


女になりたい 病気


中学の頃


ネットカフェのPCで


自分の性自認について


調べたことがある。



性同一性障害。性別違和


性転換症。生物的事故の産物。



トランスジェンダー


トランスセクシュアル


ジェンダーアイデンティティ



数多に目にした言葉たち。


心痛めるものも


多くあった事を覚えている。


その検索結果に田辺のいう、


LGBTも書かれていた。



俺はどうやら


心の中で本当に望むのは


Tと、呼ばれるやつらしいが。



「まあ、うーん…」


なんと答えていいか

決めかねて


どちらつかずな言葉を


曖昧に濁した俺が俯くと


業を煮やしたように


田辺は核心をついた。




「性別違和を抱えた人たちのことなんだけどそん中にクエスチョニングも含まれてんだよね。俺、多分それなんだわ」


「え」


まさかのカミングアウトを


告げた田辺は俺を見据えて


にっこりと笑った。


「好きになる奴も男女問わずだし、日によってファッションも男がよかったり女がよかったり。俺、自分が男なのか女なのかよくわからない」


呆気にとられて


田辺の笑顔を眺めながら、思う。


強い。


悩みなんてひとつも感じさせない。


自分の性別を


根っこから受け入れている彼に


神々しさすら感じて



涙さえ、浮かんだ。




そんな俺を笑顔のまま


見つめていた彼はやがて


俺に視線を合わせるように


腰を折り、一言尋ねた。



「で、真央は本当にノーマル?」



カミングアウトなんて


したことがない。


気付かれたこともない。


好きだと伝えた脩哉さえ


俺はゲイか何かだと


思っているはずだ。



幼い頃


とうの昔に沈めた本音が


むくむくとせり上がる。



「俺は……」


「うん」


田辺の視線が一心に注がれて


変な動悸が耳につく。



ここで言えなければ


一生、俺は男として


生きていかなければ


ならない気がする。


そう思った途端


胸がとてつもなく苦しくなった。



切望していたはずの


男としての性自認は


クエスチョニングだという田辺の


カミングアウトで


脆くも転換していく。



「俺は……男が好きだ」


「ゲイって事?」



やっとのことで吐いた、


蚊の鳴くような声を


田辺はすぐに折り返した。




ズケズケと


心のパーソナルスペースに


入り込んでくる辺り


田辺も脩哉と変わらず


空気が読めない類の人間か。


けれどこれはきっと


辛い事を乗り越えながら


生きているという自信から


来るものなのだろう。


人の顔色ばかり伺いながら


生きてきた俺には正直


その強さが羨ましかった。




「……女に、なりたい」



震えた拳を握りしめ


ギュッと目をつぶって


はじめて、吐露した本音。



田辺は俺の頭を撫でると


「そか!」と相槌をうち笑う。


「そん、だけ?」


「何?なんか言って欲しい?」


人生初のカミングアウトは


あまりに呆気なく受け入れられた。


にわかに信じ難い現状に


俺は思わず問いかける。



「……気持ち悪いとか引くとか」


「ないないない、あるわけねーじゃん」


あっけらかんとそんな事を口にすると


田辺は何やらしたり顔で俺を見やる。


「……なに?」


訝しげに問えば


「そーいえばバイト紹介してもらったんだっけ、礼するから今から俺ん家来て」


そんな突拍子もない事を掲げて


田辺は俺を驚かせた。



「い、いいよ。別に礼なんて」


「いーから、いーから。損はさせないって」



繁華街のネオン


街路樹の下で


やんちゃ坊主な顔を綻ばせ、


少しばかり強引な田辺は、


俺の手を引き颯爽と歩み出す。


「おい、ちょっ、ちょっとぉ!?」


「いーからいーから」


脩哉以外の家なんて


未だかつて行ったこともない。



田辺の有無を言わさない姿勢に


俺はたじろぎながら


引きずられていくしかなかった。

ひとひら☘☽・2021-05-06
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