#引退

1年前お別れした私の大切な人達は
今どこでどんなことをしてるんだろう

今年、桜の花が散る頃
そこにもうあなたの姿はない

きっとこれが最後なんだろうなって
心の中で思いながら
友チョコでも本命チョコでもない
私にとって1番特別なチョコを
今年も先輩に渡した

先生と先輩がいたあの頃に戻れるなら
もう一度笑えるのに

入学式で演奏する曲のスネアを
先輩に教えてもらうと約束した
またあの頃みたいに
先輩に教えて貰いながら
演奏できるのは嬉しいのに
この曲で本番を迎える時
もうそこに先輩はいないんだと思うと
苦しい

太陽がないと
先輩がいないと
月は輝けない
私は笑えない

引退式
先輩に笑って
次を、パーカッションのこれからを
託して貰えるように

先輩がそうだったように
力強くてでも優しくて暖かい音で
誰かの心を動かせるような演奏をしたい
でも、私らしい繊細な響きだって
1年半かけて少しずつ作ってきた宝物
中学最後の1年間で
私は私の1番の音を見つけたい
先輩も今までの自分も
超えられるような演奏で
先生にもう一度
私の音を届けられるように
先輩に安心して引退して貰えるように
私自身が最高の形で引退できるように
形に残らなくても
誰かの心に私の音が残るように

誰も傷つけたくない
誰にも傷つけられたくない
だから人と関わらない道しか
選んで来なかった
この吹奏楽部で
強くなれたような気がした
でも違った
先輩が私を
ずっと隣で守ってくれてただけ
私自身の力じゃない
いつも
先輩に置いて行かれないように
必死に努力して
なんとか先輩の隣にすがりついていた
先輩がそこにいてくれるなら
それだけで十分だった
先輩の隣にいられるなら
他のものなんか何もいらない
だからどうか
あの日常を返してください

先生との別れからもうすぐ1年が経つ
先輩との別れがどんどん近づいてくる
それなのに今でも
それを受け入れられない私がいる
先生がいなくなった日から
私の時間は止まっているような気がする
それでも
止まったままのあの日の感情を置いて
私はここまで
先輩だけを頼りにただ必死に進んできた
先輩を本当に失った瞬間
私はどうなっちゃうんだろうって
毎日そんな恐怖から目を背けてる

これからもずっと
同じ場所で
同じ時間を過ごしたかった

人はものすごいスピードで
出会いと別れを繰り返していく
たとえそれが望まない別れでも
みんな当たり前に去っていく
私だっていつかここを去る
絶対その時は来てしまうから
私はせめて、先生みたいに
笑って泣いて悔いなく
卒業引退できたらいいな

1ヶ月後
もうここに先輩はいない

3月生まれの先輩と
8月生まれの私
そのたった5ヶ月の差が
私達の間に
“先輩後輩 ”という壁を
作ってしまったんだ

時間に対して

やだって思って

結局その時まで何も出来なくて

自分を責める負のループ