はじめる

#殺人

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全184作品・

『殺め人の住む屋敷』NO.6

ー罪じゃなくなるその日までー







裏庭



とても綺麗だった



手入れされた花壇



綺麗に咲く花



まるで、先生みたいに輝いていた



どうしよう



先生の事を考えるだけで



心がチクチク痛む



何だか、泣きたい気分だ



くーさんは、そんな私を見て



やっぱり優しく笑ってくれた



本当に、優しい人だ



「あ、そうだ!



なーちゃんにこれ、上げる!」



俯き気味だった私の手を



くーさんは優しく握る



「手開いて?」



何だろ、くーさんめっちゃニヤけてる



何をくれるのだろうと思っていたら



くーさんが恋人繋ぎをして来た



「じゃじゃじゃーん!私の愛ですっ」



そう言って笑うくーさんは



いたずらっ子そのものだった



「あ、愛…受け取りましたっ」



「めっちゃ戸惑ってるけど、もしかして



キモイとか思ったな!?」



いやいやいやいやいやいやいやいや



そら固まるでしょう



と言いたいのを我慢して



「そんな事ないですよ!」



そう言った



本当に、明るい人だな



くーさんと話してると



先生の事を忘れて



心から笑う事が出来た



本当に、感謝でしかないな



「あ、そう言えばくーさん



オーナーの何処に惚れてるんですか?」



ふと、気になった事を聞いてみた



くーさんは一瞬にして顔を真っ赤にして



モジモジしながら言った



「優しい所…とか、受け止めてくれる所



面白い所、少し変わってる所…あと…」



好きな所を言っているくーさんは



乙女そのものだった



「…全て分かってくれる所、かな」



全て、分かってくれる



そう言った時のくーさんは



少し切なそうだった



そして、我に返ったように



言ってきた



「他に質問ある?」



私は、もう1つ気になってる事を



聞く事にした



「オーナーが好きって事



絃さんや神さんややーさんは



知ってるんですか?」



くーさんは一瞬フリーズしてから



こう言った



「あいつらが知ってたら



この世の終わりやん」



確かに、と思ったのは



内緒にしておこう



「…そ、そうなんですね」



「うん、死んでも言わない」



キリッとした顔でくーさんは言った



相当言いたくないんだな



そう察した



「よしっ、あいつらにご飯作ろかっ」



「ですねっ」



今日のご飯は



ハンバーグらしい



丸めて、空気を抜いて



作ってる間はあっという間で



凄く、楽しかった



「…神、汰絃、やーくん、



ごーはーんー」



二階の部屋から



ドタドタ降りてくる三人



待ってました、と言うように



ご飯を飲み込んでいく



「ちょ、喉詰まりますよ?」



一番早く食べている絃さんにそう言うと



「だいじょ…グォッ…」



と言って、案の定詰まらせた



「ほーら言わんこっちゃない



馬鹿なんか絃は」



むせ込む絃さんに水を渡して



背中を摩っているくーさん



The、お母さんって感じだ



「…夢菜、絃みたいにはなんなよ」



神さんがぼそっと耳打ちして来て



少し笑ってしまった



一番早く食べていた絃さんが



むせ終わった頃には



みんな食べ終わっていた



一人静かに食べる絃さんを見て



やーさんは呟いた



「…馬鹿だな」



「ですね」



すんごい顔でこちらを睨む絃さん



「…この本面白いですね!!」



「だ、だろ!!」



やーさんが持っていた本を



二人で読むふりをして



絃さんから怒れる事を防いだ



あっぶな



「…ねぇくー!!



あいつら馬鹿馬鹿言ってくる!!」



くーさんに泣きつく絃さんに



トドメを刺すように言った



「本当に馬鹿なんだから仕方ないね」



「くーまで…!」



それから、一時間



絃さんは部屋の隅で



ずっとブツブツ言うようになって



見かねたくーさんが



アイスを差し出すと



キラキラした目でアイスを頬張った



犬系なのかもしれない



普通に可愛い、と思ってしまった



「可愛いですね、絃さん」



「え、今更?」



「え、遅くね」



「気付かなかったのか…」



みんな口を揃えてそう言った



「可愛くねーし…!!」



一人否定するくーさんを見て



少し笑ってしまった



暖かい、この屋敷は



私の一生の、居場所なのかもしれない




______アトガキ




時間が無い+垢変わった



って事で



少し短くなってしまいました((



えー…絃さんは



背ちっさめの可愛い人イメージしてます



えと、はい( '-' )



垢変わっても



普通に仲良くして下さい((

Raimu 無浮上・2020-06-05
小説
物語
殺人
暖かい
家族
居場所
意味不
殺め人の住む屋敷_罪じゃなくなるその日まで_

『殺め人の住む屋敷』No.7

ー罪じゃなくなるその日までー








朝起きて



久しぶりにスマホを開く



先生との思い出ばかりで



辛いから開けなかった



先生とのLINE



先生と泣きながら撮ったツーショット



先生に送る為に買った可愛いスタンプ



先生との思い出が、ありすぎる



あれ以来、先生と話せていない



どんな感じで話してたっけな



それすら忘れてしまったよ



先生のLINEのアイコンは



奥さんと子供さんと



幸せそうに笑ってる春波先生が写ってる



普通の、家族写真



奥さんの場所が



私、だったらな、なんて



ふとホーム画に戻ると



小説アプリが目に入った



このアプリで私は



小説、書いてたんだっけ



私が日々受けていた虐待の事



先生の事が好きだって事



他にも、色んな事



いわゆる「ノンフィクション」ってやつ



自分と同じ様な環境にいる人



面白いと思って見てくれる人



色んな人が見てくれてた



そういえば、完結出来てないな



実際の結果は



「殺めた」



これ、そのまま書いていいんだろうか



薄々、ノンフィクションだって



気付いた人も居るようだし



「殺めました」なんて書いたら



なんて言われるだろう



考えて考えて



やっぱり「殺めた」と



そう書いた



この物語はそこで終わらせた



久しぶりだから



見てくれる人なんて居ないだろう



そう思っていたけど



投稿して数分で



好きが1000以上来て



「面白かったです!」とか



「泣けました…」とか



そんな感想が来た



その感想一つ一つを見るだけで



凄く嬉しい気持ちになる



読んでくれる人が居るんだなとか



そう実感出来る



ふと時計を見ると



時刻はもう12時を過ぎていた



そろそろご飯かな



そっとスマホを閉じて



下のリビングへと向かう



「……マジかよ」



静かな空間に響くやーさんの声



どうしたんだろうと



やーさんの見つめる先を見ると



「……マジかよ」



私も同じ反応をしてしまった



だって



「…えへへ」



幸せそうに手を繋ぐ



オーナーさんとくーさんが居たから



「…私達、付き合っちゃいましたっ」



弾ける乙女な笑顔のくーさん



少し照れ気味のオーナーさん



ついこの間、オーナーさんの事が



好きだって、そう聞いたばかりで



凄く驚いてる、というか、凄い



「…え、え、



オーナー…くーに何したんすか」



少し引き気味に言う神さんに



「何もしてないわ!」と



つっこむオーナーさん



本当に、何したんだ、オーナーさん



「…いやぁ、何か、可愛いなって



元から思ってたんだよねぇ」



当たり前のように放ったその言葉に



絃さんは



開いた口が塞がらなくなっていた



でも、幸せそうな二人を見てると



こっちまで暖かな気持ちになって



六人で大笑いした



「…いやぁ、おめでとうございます」



「えへへ、ありがと!」



いいなぁ、想いが実って



いいなぁ、幸せそうで



少し複雑な気持ちになった



それでも、笑顔を絶やさなかった



「幸せは平等に来る」と



そんな言葉を聞いた事がある



なら、私の幸せは



いつ来るんでしょうか



叶わぬ恋に打ちひしがれ



殺めざるを得なかったとはいえ



死ぬまで、いや、死んでもずっと



「殺め人」という



ラベルを貼って生きなければならない



そんなのって、「酷」過ぎるでしょ



しばらく話してから



お互いの部屋に戻り



ボケーッとしている間に



一日が終わった



一週間が終わった



また明日もきっと



当たり前が来るのだと



そう思い、眠りについた



朝起きて



快晴な事に喜びを覚える



今日も一日



幸せだな、なんて思っていた



いつも通り下の階に行った時


私は、幸せだなんて思えなくなった



苦しそうに息をするオーナーさんを



泣きながら抱えるくーさんを



見るまでは、幸せだった



_____アトガキ



オーナーさん( '-' )…



オーナーさん…( '-' )((((



オーナーザァァァァンンンン←は



最近上手く書けなくて



NOTE辞めようか検討中←



はい、そして



見てくれる方、本当に有難う御座います



Raimu

Raimu 無浮上・2020-06-11
小説
物語
殺め人
殺人
先生
意味不
カップル
殺め人の住む屋敷_罪じゃなくなるその日まで_

貴方しか居ないと思っていました

今までありがとうございました。

優・2022-07-09
安倍総理
ご冥福をお祈りします
世界
残酷
殺人
ニュース
辛い
安倍晋三

これらの作品は
アプリ『NOTE15』で作られました。

他に184作品あります

アプリでもっとみる

『殺め人の住む屋敷』No.5

ー罪じゃなくなるその日までー






私の恋は、罪だった



「…ここは、分かる?」



中学二年の頃



つまり、今から一年前



妻子持ちの数学の先生



春波先生に、恋をした



勉強をまともにしない私に



放課後、付きっきりで教えてくれた



そして、私が虐待されてる事を



唯一知る先生だった



「…あ、ここ間違ってんじゃーん



ここの解き方、も一回教えるよ」



前のめりになった春波先生と私



距離が近くなる分



ドキドキが深まって



勉強に集中出来ない



「…おい、ちゃんと聞いてる?」



少し不思議そうに見つめてくる春波先生



ずるいですって、先生



そんな顔されちゃ



好きが止められないじゃないですか



でも、先生はそんな事お構い無しに



「…あ、もうこんな時間だ



今日はもう終わりにしよっか



よく頑張ったね」



なんて言いながら



頭を撫でてくるんですもん



泣きたくなるじゃないですか



そんな私に気付いた先生は



「どした?」



眉を下げてそう聞いてくる



「…や、大丈夫です」



でも、可愛くない私は



素っ気なくそう答えるだけ



「そっか、なら、帰ろっか」



「はい」



何処と無く気まづくて



生徒玄関に行くまでの間



一言も喋らなかった



先生



「帰りたくない」って言ったら



「殴られたくない」って言ったら



抱き締めてくれますか?



「…じゃあ、また明日な」



優しく笑う先生に



私は泣いてしまった



「なんか、あんでしょ



言ってみ?受け止めるよ」



春波先生は、ずるい人だった



「帰りたくない」と



「殴られたくない」と



そう告げると



悲しそうな顔で優しく撫でてくれた



「ごめんな、何も出来なくて」



そんな悲しい事言うから



余計、泣いてしまった



その日は、かなり遅くまで話して



渋々家に帰った



「遅かった」と、殴られた



「不良娘」と、罵られた



でも良かった



先生と一緒に居れる時間が



少し、増えたから



二年の終わり



最後のテスト



他の教科はダメダメだったのに



数学だけ、100点満点



テストが返されて



直ぐに先生の元へ走って行った



「…居た、先生!」



珍しく大きな声を出した私に



先生は驚いた顔をしていた



そして



「数学だけ、100点満点でした!」



こう言うと、先生は



本当に嬉しそうに笑ってから



「よっしゃぁぁぁ!!」と



私よりも喜ぶもんだから



私は少し、笑ってしまった



「お、笑顔可愛いじゃん」



サラッとそんな事言うから



顔、真っ赤になっちゃって



先生にからかわれた



「照れてんだ?可愛い」



Sっ気丸出しの先生



ずっと、一緒に居られるって



勝手にそう、思ってた



離任式のお知らせの紙が



私の手元に来た



「…石川先生…春波……せ…」



息が出来なくなった



大好きな、あの人の名前が



離任する先生一覧に載っている



会えなくなる、んだ



その日から数日



ショックでご飯が喉を通らなかった



元から、少ししか当たらないのだけど



「要らない」と言うと



やっぱり、殴られた



でも、痛くなかった



心の方が、何よりも痛かった



等々、最後の日



最後の二人きりの授業をした



「今日で終わり、か」



シーンと静まる教室が



やけに胸を締め付ける



神様、お願いします



時を、止めて下さい



なんて願ったって、神様は居なくて



「…そろそろ、帰りな」



「……は、い」



おずおずと生徒玄関へと向かう



止まらなきゃ、止まらなきゃ



もう会えなくなるんだよ?



止めろ、止めろ



想いを、伝えろ



「………っ」



ダメだ、涙で前が見えない



「…夢菜、泣くな」



なんて、言われたって



泣かない方が可笑しいでしょう



「…ほ、ほら、あれだ



最後に一個、願い聞いてあげるから」



最後、なんだ



そう思うと



余計涙が溢れ出た



最後のお願い



これは、聞いてくれないだろうな



でも、言ってみよう



「…なら、最後に



キス、して下さい」



先生は固まっていた



そりゃそうでしょう



こんなガキから



「キスして」なんて言われるんだから



「…え、ほ、本気…?」



「先生の事、大好きですから」



そう、大好き



ずっとずっと大好き



最後、なんでしょ?



だから、伝えさせてよ



伝えなきゃ、死ぬに死にきれないんだよ



「…なんて、ごめんなさい



嘘ですよ、春波せ…」



笑ったら、誤魔化せるって



そう思ったけど



違ったみたい



「…キス、しよ」



少し火照って顔の先生



でも、先生には奥さんが…



「目瞑って」



言われた通りに、目を瞑る



少しして、先生の唇が



私の唇に重なった



私のファーストキスは



甘くて、悲しくて



良い意味でも



悪い意味でも



忘れられない、キスだった



過去の事を思い出し



ボーッと過ごしていると



いつの間にか夜になっていた



与えられた「私の部屋」で



久しぶりにスマホを開いた



そう言えば



先生との写真、あったはず



そう、あの、キスの後



お互い泣きながら



写真を撮った



その写真が



「あった…」



少し心がチクチク痛む



もし、先生が妻子持ちじゃなくて



もし、先生が同級生でって



そんな、夢ばかり見て



現実に打ちひしがれる



「…なーちゃん!ご飯だよ!」



勢い良く扉が開かれた



ニコニコな顔のくーさん



私は焦って、スマホを後ろに隠した



「い、今行きます!」



「あ、ちょ!今何か隠したよね!?」



やばい、見られてた



「ス、スマホです…っ」



くーさんは興味津々な顔で



私の横に腰を下ろした



「彼氏かな?」



先生と私



二人で撮った写真を見て



くーさんは言った



「…彼氏だったら良かったです」



その一言で何かを察してくれたのか



くーさんはぎゅーっと



抱き締めてくれた



先生、今頃何してるかな



何しててもいいから



幸せで居て欲しいな



もし、幸せじゃないなら



本当に僅かな私の幸せ全て



先生にあげるから



だから、幸せで居て欲しい



本当に、好きだから



くーさんが少しして離れて



一緒にご飯を食べた



優しい優しい味だった



私がポカーンとしてると



くーさんが話しかけて来た



「あ、なーちゃん!



明日一緒に、裏庭行かない!?



季節性の花が綺麗なんだ!」



「行きます!」



私は花が大好きだから



凄く嬉しい誘いだった



先生、私やっぱり



味方、居たよ



誰も味方じゃないとか言ってたけど



此処に、確かに



味方、居たよ…!



_______アトガキ



だいっっじな事を



伝えてませんでした←



夢菜くーさんやーさん絃さん神さんは



中学三年生です←



言い忘れてました( '-' )



はい、今回は



夢菜の恋編でした



先生と生徒の



禁断の恋



いや、切ないな



最近時間が無いのと



ストレスで少し



へんてこな話なってるかも((



それでも読んでくれる方



本当に有難う御座います



貴方達が、心の支えですっ



Raimu

Raimu・2020-06-01
小説
物語
恋編
殺人
先生
禁断の恋
殺め人の住む屋敷_罪じゃなくなるその日まで_




【あの夏が飽和する】












































-あれは、君と過ごした最後の夏の話。
この狭い狭い世界から逃げ出した
ダメ人間の僕と人殺しの君の物語。












「昨日人を殺したんだ。」



6月の雨にかき消されそうな
鳴咽混じりの震えた声で、
確かに君はそう言っていた。



僕の目に映ったのは肩を抱えて
目から大粒の涙を溢す君の姿-
肩まで伸ばした髪と、整った顔立ちの

僕の唯一の『友達』、「紗綾」だ。












そんな記憶から始まるあの夏の出来事。









たっぷり1分くらい経っただろうか。

続いて君はまだ震える唇から言葉を紡いだ。






「殺したのは、、、
となりの席の、いつもいじめてくるアイツ。」



「私、それにいやになって肩を突き飛ばしたんだ。そうしたらアイツ吹っ飛んで机の角にぶつけて、、、、それで、、、、」




「そしたら先生が来て、、私が一方的に殺したみたいになってちゃんと説明したのに、、、、」





「そして自分の親と相手の親が来たけど、、、、全員向こうに味方で同情もされなくて、、、少年院にいくことになって
親からも『なんでそんな事したんだ。この事が表に出たらどうなるかわかるだろうな』ってそれでここまで、、、、」


















10代の少女が人を殺した。

その事実が本来なら思考停止のものだ。










なのに何故だろう。平常心が保てているのは。無論、彼女は


"そんなこと"をするような人ではない。


それでも平常心を保てている理由には、
薄々察しはついていた。









それは、この世界は─、












「平和」と言う名の、残酷な地獄だからだ。











「もう、私には居場所はないんだ。もう、もう、いっそどこかで。どこか遠いところで…」


少しの間。君は無理矢理笑みをつくって、



「─死んでくるよ。」


と、そう口を紡がせた。


そして彼女は走りさろうとしていた。

その時なぜそうしようと思ったのかわからないけど
気づいたら僕は「それじゃ僕も連れてって」
そう言っていた。



彼女は驚いたような顔をしていたが、
すぐに淡い笑みを浮かべた。


ああ、やっぱり一人は寂しいんだな、
なんて思ってみたり。



「それなら準備をしないとね。」


涙を拭いて再び僕に背を向けた君に

「待ってろ」と、言葉を投げた。



勢いよく階段を駆け上がり、
少しして白色のフードつきのパーカーを片手に握って駆け下りてくる。


「これ、貸してやる。気付かれんなよ。」


彼女は「ありがとう」と、短い返事を返し、また背を向ける。


─その顔にはさっきの乾いた笑みとは違い、本当の笑みをこぼしていたことを僕は、彼女すらも気づかなかった。



















『そして僕らは逃げ出した
この狭い狭い世界から。』


















カバンの中には僕の全財産の入ったお財布、



僕が悪いことをしたら『躾』するようのナイフ、


携帯ゲーム、そして少しの勇気。


要らないものはすべて壊した






・笑顔だけ取り繕った上辺だけの家族写真

・親の『躾』について書き綴った日記

それに

・紗綾を虐めていたクラスのやつとそれを見て見ぬ振りをした教師


・ナイフを使って『躾』をした親



すべて捨てて『2人で』









僕たちは当てもなくただ必死に走った。










すぐ発車するバスに乗った。


僕は言った。



「遠い遠い誰もいない場所で2人で死のうよ。」


「人殺しとダメ人間にはこの世界の価値などない。」


「それに人殺しなんてそこら中湧いてるじゃん。」


『だから君は何も悪くないよ』



「うん…」


君は寂しそうな表情を浮かべ、俯いてしまった。


お互いにあまり喋ったりするタイプではなかったが、それにしても重い空気が漂っていた。



































、、、どれくらい経っただろうか。

ゲームの時計を見てみるとまだ30分も経ってない。




すると「次は終点です」というアナウンスが流れた。





僕たちはそこで降りた。


雨は止んでいて空が少し赤みがかっている。



「ぐううう」お腹が鳴った僕は恥ずかしくて笑ってしまった。


すると紗綾も笑った。少し空気が和んだ気がした。





─ぁ。僕は何かを思い出したように間抜けな声を漏らした。



「…リュックに食べ物入れたっけ」


なにも言わない君に背を向け、リュックの中を漁る。

案の定、口にできるものはなかった。



君と目を合わせると、ようやく笑いを堪えているのが分かった。



君はポケットから駄菓子をいくつか取り出した。





「…知ってたろ」





君は尚も笑いを堪えたまま首を縦に動かし、肯定。


こいつ。リアクションを楽しんでたらしい。





近くに公園のベンチがあった

そして僕たちはそのベンチで駄菓子を食べた。

よく食べている駄菓子のはずなのに今日はいつもより少し美味しくて、


いつもと違う味の気がした。




宿泊先忘れやすいものランキング上位の
歯磨きセットをリュックに入れていた
という謎現象に助けられた。



公園内の蛇口を捻り、水を出し、歯みがき粉をつけて歯を磨いた。



もう18時を回っただろうか。

夏だから分かりにくいが、日が落ちてきて、

僕らの影が細長く傾いている。



あまり外に出て遊ぶという経験がなかった僕は、


既に疲れがたまっていた。

そして何かを思い出したように僕は「あっ」と言って立ち上がった。



「夜、どうしようか。」




寝る場所について、小さな会議が始まった。



所持金は5000円、


どこかカプセルホテルに泊まったとしても2泊で終わる。


公園で泊まってもすぐ警察に見つかって終わり。


「うーん」


と考えていると優しそうなおばさんが話しかけてきた。


「あんたたち2人でどうしたん?」


「、、、」


「まさか家出か?」


そして僕たちは少し頷いた。


「そうか泊まるところがないんやな。
じゃあ安心し、
おばさんが1日だけ泊めてあげるわ」


普段ならこういう話は危ないと思うのだが


その時僕たちは疲れていたのと

そのおばさんの優しさが心に染みたから
泊めてもらうことにした。



年期の入った家で、妙な安心感があった。


6畳の和室に案内され、そこに荷物を下ろす。


2人でひとつの部屋、

ということに僕は気づかなかったが、

紗綾は気づいたらしく、少し頬を赤らめた。



「あんたら、ご飯は?」

一応食べたので、

「はi…ぐぅぅー」

「はい」と言おうとしたが
空気の読めない僕のお腹がまた鳴った。


おばさんはにっこりして晩御飯を作るため、

台所へと足を運ばせた。



1分くらいすると味噌汁のいい匂いがしてきた。



おばさんの名前は村田と言った。



紗綾が村田さんの手伝いをしようとしたら

村田さんは


「ええよ。昨日の残りものと味噌汁やし」


と言った。


10分くらいして肉じゃがと味噌汁とご飯が出てきた。



「ごめんな。おばさん1人暮らしやから少なくて」


「いいですよ。こちらこそお邪魔して」


手を合わせてご飯を食べる。

すると頬を伝う何かが机の上に落ちた


「えっ」


僕は泣いていたのだ。


慣れないことをしてとても疲れたのだろう、

すると紗綾は「クスッ」と笑って

みんな笑った。


食べ終わり、また歯を磨いた。

流石に皿洗いくらいは手伝った。



21時を時計の針が回り、
少し早いが布団に入った。


紗綾とは違う布団だったけど、

妙に心臓が高鳴ったのは
きっと知らない人の家で緊張しているのだろう。


寝巻きはおばさんが貸してくれた。

おばさんはまだ起きていた。洗濯をしていた。

するとおばさんはこう言ってきた。



「あんたら服これだけか?」

「はい」

「これ結構汚れてんな」

「おばさん洗っといてあげるわ」

「いえ、そんな」

「ええから、ええから」


そう言っておばさんは洗濯機を回し始めた。


洗濯機の音を何処か遠くに感じながら

2人で布団を並べて横になる。


するとすぐに眠気が襲ってくる。



考えなくてもわかる程、僕らは疲れていた。












嫌いだったけど殺すつもりはなかったのに

運悪く殺してしまったということに、

見たことない場所で

知らない人の家に上げてもらいご飯を頂き、

汚れた服を洗濯までして貰うということに、

これからどうするか、行く宛ても無く、

ただ死に場所を求めて歩いて行くという事に。









寝息ではない息が虫達の鳴き声と共に微かに聴こえる。


まだ紗綾も起きているようだ。


「…紗綾…」


「なに…?」


(特に言いたいことも無く、
ただ無性に君の名前が呼びたかった。)



なんて言えるはずも無く、


「ううん…何でもない」


と言った。








いつの間にか寝ていたようで朝になっていた。






するとおばさんが

「おはようさんよう寝れたか?」


と言って扉を開けた。



「はい、お陰様で」


視界と頭がぼんやりする中で、軽い嘘をつく。


いろんな事があったからか、

少しまだ疲れが残っていた。




本当に、いろいろと。





カーテンの隙間から射し込む太陽光が顔にあたり、

眼鏡も取っていたから余計に眩しかった。



まだ寝ている紗綾を起こし、

そのまま村田さんに別れを告げ、家を出た。

しばらく歩いた時、ふと




「いつか夢見た優しくて、
誰にも好かれる主人公なら汚くなった僕たちも見捨てずにちゃんと救ってくれるのかな?」




と言った。


紗綾は




「そんな夢なら、もう捨てたよ。だって現実を見てよ。『シアワセ』の4文字なんてなかった。今までの人生で、思い知ったじゃん。」





と言った。それもそうだと思った。



「自分は何も悪くないと、誰もがきっと思ってる。」




そのまま、僕たちはまた黙って歩き出した。




─ふと、紗綾の目元に薄いクマができているのに気づいた。


「あんまり寝られなかったのか?」


「うん、ちょっとね。」




嘘をつけない性格故か、

顔も少し悲しそうな─否、

哀しそうな表情になっていた。





紗綾は少し考えると、

歩く速さを少し落として話し始めた。


「私、昨日ちょっと寝付けなくってね。
トイレに行ったんだ。
そしたら1つ前の部屋に明かりがついてたんだ」



紗綾は目をつむって、1拍。また口を紡ぐ。




「案の定、村田さんはそこに座ってたよ。
─仏壇の前にね。そこにはやっぱり、
お祖父さんの写真があって、話しかけてた。
多分、毎日ああやってるんだろうね。
それを見てたら、流石に色々考えさせられたよ。布団に戻ってもモヤモヤしてさ」




彼女の瞳には遠く、空を映した。



そして君は空を眺めたままポツリと呟いた。



「…もうやめにしない?」




僕はその言葉の意味が理解できず何も言えないでいた。



すると紗綾は僕のリュックを取り上げて

ゴソゴソと漁り出した。

なんだろうと思っていたら






























彼女はナイフを手にして言った。




























「私ね、君が…蒼月くんが今まで傍にいたからここまでこれたんだ。」



すると彼女はふっと息を吸って、




「だからもういいよ。もういいよ。」




「死ぬのは私1人でいいよ。」







すると紗綾は手にしていたナイフを

自分の首につきつけ、


僕が止める間もなく自分の首を切った。



僕が彼女に貸していた白いパーカーは既に

彼女の赤い血の色で染まっていた。






1瞬何が起こったのかわからなかった。






紗綾は死に際に笑っていたのだ
まるで映画のワンシーンのようで ─




白昼夢を見ている気がした。
















僕はやっと何が起きたのか理解し

横たわっている彼女に駆け寄った。



「紗綾…なあ紗綾…?」



何度体を揺さぶっても目を覚まさない

溢れる涙が僕の頬を伝わっていった。


「起きろよ…起きろよッッ!!!」



______________________________









それから何分が経つだろうか。

気づけば僕は大人に捕まり、

周りには大勢の人だかりができていた。








君がどこにも見つからなくって、
君だけがどこにもいなくって─











警察から


「何があったの?」


やら


「どこから来たの?」


なんて色々聞かれるけど、


何があったかなんて、言ったって…

どこから来たか言ってしまえば…


僕は紗綾の居ないあの場所に戻されてしまうだろう。






なんて考えられるはずも無く、
















ただただ君の血の色が忘れられなくて、

思い出したくなくて、

でも忘れたくなくて、

矛盾した騒ぐ心を抑えるのに必死で、

何も答えられずに俯いていた。














しばらくして絞り出した言葉が






「どうして、僕らがこんな目にあわなきゃいけないんですか…?」






掌に落ちた水滴が涙とわかるまでに時間がかかった。



警察の人は何も言わなかった。

ただ、僕の頭を優しく撫でてくれた。



本当はもうあんな場所に戻りたくない

紗綾がいない世界なんて…

でもこのままここにいるわけにもいかず、

仕方なく警察にすべてを話した。






「そうか、辛かったね。」







そしてまたゆっくりと僕の頭を撫でた。




また戻ってくることになってしまったこの場所。



色々なことがあった所の為かひどく久しぶりに感じる。




─紗綾が殺したアイツの席には
花が置かれてあった。


______________________________




あの日、紗綾がいなくなった日から2ヶ月が経とうとしていた。



僕はまたあの夏の日のことを思い出して授業中もずっと上の空だった。


ここには家族もクラスの奴らもいるのに

なぜか君だけはどこにもいない。







─ねぇ、紗綾…君をずっと探してるんだ。君に言いたいことがあるんだ。













9月下旬。

花粉症の僕たちは

同じタイミングでくしゃみをしたことがあったよね。





6月は雨の湿った空気を吸いながら

紫陽花を眺めていたあの日を思い出す。






…その時間を、もう2度と君と繰り返して過ごすことが出来ないんだ。




くだらない話で笑いあったあの日。

辛くて泣いたあの夜。

ただただ走ったあの時間。




君の笑った顔は、

君のその子供みたいな無邪気さは、




僕の心を満たしてく。


頭の中を飽和している。







君の存在に僕が救われたことなんて、

君は考えてもいなかっただろう?
















愛してくれなかった家族も、

それを見て見ぬふりした周りも

誰も悪くない。

愛されなかった僕も、

君も悪いはずがないじゃないか。













そう言って欲しかったのだろ…?

なぁ、答えてくれよ…。

[END]

夜影詩空 ヘッダーlook・2021-01-23
あの夏が飽和する
長編小説
暇つぶし
にどうぞ
オリジナル
友と合作
友、7私、3しかやってない笑
私は修正役?みたいな感じだった笑
辛い
苦しい
虐待
人殺し
殺人
小説
ボカロ
その一言だけで
1789.

世界がひっくり返ったら

優しさで溢れる世界に変わるかな。

心瀬 夜葩・2021-06-20
世界
優しさ
反対
ひっくり返ったら
溢れる
変わる
虐待
いじめ
殺人
差別
アンチ
病み
病気
天国
地獄
悲しみ
辛い
悲しい
死にたい
リスカ
自殺
リストカット
幸せ
笑顔
喜び
願い
願い事
星に願いを
ごめんなさい
ありがとう

ヒト
命に他人のも自分のもありません。
ジサ ツ
自分をコロすのも、
タ サ ツ
相手をコロすのも、

どちらも立派な"殺人"です

カミカゼ・2020-08-12
ポエム
独り言
自殺
他殺
殺人
死にたい
生きたい
消えたい
もしも魔法が使えたなら
もしも私が魔法使いなら











この
辛く、哀しい
残酷な世界を

人々は"平和"と呼んだ_。

たぴおかみるくてぃー🧸・2021-02-23
いじめ
差別
集団いじめ
無視
綺麗事
偏見
戦争
核戦争
部落差別
自殺
殺人
暴力
障がい
病気
黒人差別
白人
違うとか違わないとか
公平と不公平
平和と不平和
差別と偏見だけの世界で僕らは。
たぴおかみるくてぃーのおすすめ⸜❤︎⸝

やっぱり誹謗中傷はよくない

誹謗中傷のせいで何人亡くなったの?

芸能人誹謗中傷のせいで結構亡くなったよ?

毎日何千にん産まれて何千人なくなる

それの繰り返し

でも!なくなる何千人を少しでも止めること出来るんじゃないのかな?

事故 殺人 とかそれは止めれるけど止めれないじゃん

でも、自殺は止めれるよね?

みんなで止めたい!

自殺する人を少なくしたい!いや、自殺する人を0にしたい!

りんな♪ ジャニオタ りんなの日記♪ミテネ!タグアルヨ・2020-07-19
誹謗中傷を止めよう
誹謗中傷
誹謗中傷stop
おすすめのりたい
みんなで
自殺
事故
殺人
やめよう
1日何人産まれて何人死ぬの?

自殺は他殺

はるはやて・2021-02-09
病み
ポエム
独り言
殺人




毎朝、流れる殺人やら事故やら。そんなニュースに僕は
ーー ーー
"今日も物騒な世の中"だと呆れるけれど、


君の気まぐれな〔行動〕と[発言]の方が"呆れる"だなんて
キゲンヲソコネテ
言ったら、君は頬を膨らませてしまいそうだから__

白雪 羽惟🥺⊿🥺・2021-05-30
ポエム
独り言
気持ち
好きな人
好き
会いたい
片思い
叶わない恋
愛してる
大好き
大好きな君
ニュース
殺人
事故
物騒な世の中
僕は密かに君の隣を憧れる

ぼくが死んだら
みんなをしあわせにする
恋のキューピットになりたい…

ぼくが死んだら
みんなを笑顔にする
魔法をかけたい

ぼくが死んだら…
みんなをたすけれる
おまじないをかけたい

ぼくが死んだら…

死んだら…

……

みんな…が
いじめをなくすような…
世界を作りたい…

男の人同士…女の人同士…
のカップルを…

いじめない世界を…

ブスだの…デブだの…
言わない

いじめのない世界を…

暴力…殺人…自殺…
かなしいことを…
ぼくが全部…
全部…

なくして…
ぼくだけに…
くるように…
みんなの不幸を…

ぼくが吸い取ってあげたい…
叶わないかも…してない…
おとぎばなしって思うかもしれない…

でも本当に叶えたい…

ぼくなんかでも…
叶えれるなら…

♡yumu♡ ひとこと更新16・2020-10-01
いじめ
殺人
自殺
不幸
おとぎばなし
暴力
世界
男の人同士
女の人同士
死んだら
ぼくが死んだら
恋のキューピット
魔法
なくした世界
笑顔
悲しみ

私が、リスカしたことあるんです。って言うとビックリされる。
自殺したかった。どんな方法で死ぬか毎日考えてた。って言うと驚かれる。
殺人もしてみたいんです。って言うと黙られる。

いつも笑顔の私から想像もつかないんだろうね。きっと。ごめんね。全然違う人で。
もう少し、自分を出したいけど、出せないから。こんな人間でごめんなさい。

メイ・2020-10-30
リスカ
自殺
殺人
笑顔
ごめんなさい
人間

あの怖い化け物は心が優しい

あの優しいおばあさんは殺人犯



あなたは何を信じる?

K.A・2021-05-02
怖い
殺人
優しい
見た目

【注意】
 ・感動とかないです。
 ・少しグロい?っていうか私の本性が出てる。
 ・読んでくれると嬉しいけど、暇な時じゃないと長すぎます。




【登場人物】

狭山 広利_セマヤマ コウリ

未流_ミル










『五感殺人』


桜の花びらがヒラヒラと舞っている。

そんな花びらを睨むように見つめる。

胸いっぱいに空気を吸う。

春の匂いが鼻を掠めた。

僕は春が嫌い。

長い前髪を揺らす生暖かい風が嫌い。

(嫌な季節。)

僕は鼻がいい。

感情、愛情、体質。

人間のことは匂いでわかる。

そして特に季節の匂いには敏感だ。

春と冬の境目は色んな匂いが混ざって吐き気がするほど気持ち悪い。

人のキラキラした感情。

受検にドキドキする緊張感。

気持ちが悪い。

僕には無縁なその感情。

それを煽るように桜が舞っている。

風が吹いている。

着ている制服のネクタイが揺れた。

ネクタイを直しながら僕は学校へ歩く。

通り過ぎる景色はどれもどす黒く淡い色に見えた。

薄紅色の綺麗な桜のはずなのに。

若々しい緑が芽ばえるはずなのに。

僕はみんなのように生きられない。

生きようとしない。

だから僕は今日も死ぬ意味を探している。

だから僕は今日も生きる意味を捨てている。





「1年A組の担任になった……」

入学式。

新しいスタート?

冗談じゃない。

緊張と不安と期待。

僕にとっては地獄でしかない。

人とすれ違う度に吐き気のするような匂いを感じる。

話しかけてくる人ほど匂いが強い。

話しかけてくる人ほど頭が悪い。

一人がいいわけじゃない。

感じ取りたくないだけ。

この最悪な特殊能力を誰にも感じ取らせたくないだけ。

自分の匂いが嫌い。

いつもネガティブ思考。

そして周りに誰にも寄せつけない僕の最も嫌いな匂い。

それが自分。

このくそだりぃ世界が僕は嫌い。

このくそだりぃ学校が僕は嫌い。

「ねぇ広利くん?」

ふわっと甘い匂い。

それに続くほろ苦く刺激のある匂い。

これは“期待”と“愛情”。

僕の嫌いな鼻につく匂い。

「なに。」

冷たく言い払うと甘い匂いが爽やかなミントのような匂いに変化した。

「あっごめん、邪魔しちゃった?」

ミントのような匂いがますます強まっていく。

そうこれは“緊張”の匂い。

ほろ苦い匂いと爽やかな匂い。

これは好意を持っている。

「まじで邪魔。話しかけないで。」

「えっ……あっごめん。」

一気に匂いが変わっていく。

ゴミのような匂い。

これは“不満”、“嫌味”。

僕によく似合う匂い。

「沙織大丈夫?」

「ねぇ顔はいいのにね。」

ヒソヒソと聞こえる声と鼻をかすめるゴミのような匂い。

僕は気にしない。

「おい、狭山。」

この声、この匂い。

僕の担任の山辺先生。

先生はいつも甘い匂いがする。

誰に期待してるのかも分からない。

「馴染めてるか?このクラスに。」

甘い匂いがじとじととした雨の匂いに変化する。

(心配してる。僕に対して雨を降らせてる。)

雨の匂いは“心配”の匂い。

「なんでですか?そんなに僕孤立してますか?」

「あっいや、そういう事じゃなくてね。」

先生の匂いが混ざっていく。

「大丈夫です。僕は先生が思ってるよりこのクラスに馴染めてますから。」

そういうと先生の匂いが甘い匂いに変化した。

「それならいいけど」

そんなに心配か?

別に僕はそんな心配されることしてないけど。

そんな風に思いながら机に突っ伏した。




「いや……私は。」

人の声が聞こえる。

女の子の声。

(次体育だ。行かんとな。)

ゆっくり顔を上げるとボヤけた視界に2人の人が見えた。

「ねぇいいでしょ?未流ちゃん。」

男の方が未流と呼ばれた女の子の手を掴んでいた。

「えっ。ちょっ。やめてくださいっ!離して!」

ジタバタと暴れる未流を男はグッと押さえつけた。

女の子の力なんてすぐに押さえつけられる。

甘い匂いと、ほろ苦い匂いが僕の鼻をかすめた。

(ん?なんか違和感。)

いつもとは違う。

あぁ、未流が嫌がってるのに全くゴミのような匂いがしない。

その代わりに血みたいな匂いと金属の匂いがする。

「なぁ。俺見てんだけど。」

だるそうに言った僕を男は睨みつけた。

「だからなんだよ。」

そう言い放った男は気持ち悪くなるほどの甘い匂いを漂わせながら未流の腕をグッと掴んだ。

「いっ痛い……。」

グッと顔を顰める未流。

僕は立ち上がり、男の胸ぐらを掴んだ。

「おい、いてぇって言ってんだよ。おめぇ最低過ぎ。女子にそんなことして情けなくないん?」

と、言った。

長い前髪の隙間から男の顔がみえる。

僕より5cmほど高い身長に目つきの悪い目。

明らかに悪いことしてそうな顔だ。

「は?女子じゃなければ言い訳?んじゃあお前でもいいんだよ?」

そう言った男は僕に向けて拳を放った。

その拳を左手で受け、未流に手を伸ばした。

「大丈夫?」

未流は驚いた顔をして手を取った。

「うっうしろ……」

「ん?」

後ろを見ると男が僕の首に腕を回し締めた。

「捕まえた」

男は不気味に笑った。

「ちょっと暁羅くん。やめてよ!」

未流が必死に叫んだ。

そんな未流に向けて人差し指を立てた。

目を丸くし僕を見つめる未流。

「ごめん、ちょっと痛くするね。」

僕はそう言ったあと暁羅という男のみぞを思いっきり肘打ちした。

「うおっ」

お腹を押える暁羅。

心配そうに見つめる未流。

僕は暁羅の胸ぐらを掴んだ。

「もう1発行く?」

ニヤリと笑った僕に言葉を失う暁羅。

「お前…サイコすぎ。」

胸ぐらを掴んだ手を振り払い出ていった。

しばらくぼーっとしていた未流は少し震えていた。

「えっと、未流さん?だっけ。大丈夫?」

近づくと血と鉄の匂いが強くなった。

血の匂い。

これは“心の病”

鉄の匂い。

これは“死にたい”ことの表明。

「あっ大丈夫…。ちょっと怖くて。」

不器用で無理矢理作ったような笑顔を浮かべた。

すると

「僕と同じ匂いがする。」
「私と同じ色が見える。」

2人同時に言った。

2人とも驚いた顔をした。

「匂い?」

未流は不思議そうに首を傾げた。

「あ……。気にしないでなんでもないから。体育行かないと。」

たどたどしく誤魔化しながら教室を出ていこうとした。

「待って。」

僕の腕をがっしりと掴んだ。

「匂いが分かるって…。」

「いや、あの、未流さん何に悩んでるのかなって…」

掴まれた腕に自然と力が入った。

「広利くん。私と同じ色してる。真っ黒。だけど少し赤い。私と同じ。死にたいって思ってる。」

未流のボブの髪が揺れた。

(こんなに可愛いのに死にたいとか思うんだ。)

「死にたいって思ってるのに怖くて死ねないんでしょ?広利くんもかっこいい死に方探してる。合ってる?」

図星だった。

僕はもう生きる意味は無いと思っていた。

だけど怖かった。

「色でそこまで分かるんだ。匂いって実際人の考えてることしか分からないから。」

「私ね、前から気になってた。いつも広利くんの席の周りは黒いの。それに誰かが近づいてもその人まで真っ黒に染めちゃう。」

未流の口元がピクっと動いた。

「だからなんな…」

「そうやって!!」

僕の声に被せて叫んだ。

ビクッと驚くと未流がニヤリと笑った。

「周りの人まで真っ黒にしていくんだよね」

匂いが段々変わっていく。

血の匂いから無臭に。

匂いがどんどんなくなってく。

「未流、さん?匂いが…」

「無臭になったって?こんなの初めてだって?」

僕の腕を掴む未流の力が強くなった。

(こいつ、何者だ?)

「そっか。分からないんだ。いつも匂いを嗅いでるから。無臭が何を示してるか。」

僕の心臓がどくどくと高まっていく。

「ふーん。珍しく青が混ざっているね。“不安”か。怖いのか?」

「なぁ未流さん。無臭ってなんなの?」

重く長い前髪の下からじろりと睨んだ。

「知りたい?」

不気味な笑み。

「知りたいから聞いてる。」

「教えてあげるよ。」

そう言った未流は僕の手を離した。

そしてブレザーの内ポケットからカッターを取り出した。

「無臭、無色はね、“殺意”」






“殺意”

そんなのをなぜ僕に向ける?

殺すなら殺してくれ。

これが本音だ。

そんなことを思いながら玄関のドアを開けた。

重たくずっしりとした扉。

その重さが学校の憂鬱を表している。

ポタリと目の前に一滴の雫が落ちた。

昨日の天気予報で今日は晴れるって言ってたのに。

朝から最悪な気持ちになりながら傘立ての傘を一本とった。

いつものように坂の多い通学路を歩く。


家から高校まではそれほど遠くない。

大体1.5kmといったところだろうか。

田舎だからかコンビニもない。

僕は無言で学校まで歩いた。

「おはよ。」

後ろから声をかけてきたのは未流だった。

昨日のサイコパスのような顔とは違い、軽く化粧してある。

頬がほんのりピンク色だ。

「未流さん。おはようございます。今日も匂いしない。僕を殺そうとしてるのか」

我ながらおかしい挨拶だとは思う。

だけど2人の共通の話題なんてそれくらいしかないのだ。

「相変わらず広利くんも真っ黒ね。」

ニコッと笑う笑顔は可愛かった。

(こういう女の子は大体甘い香りとか、桜みたいな花の香りがするのにな。)

なんてそんなことを思いながら靴箱を開けた。

「おっ手紙入ってんの?」

横から覗いてきた未流。

手紙の中を読むと放課後体育館裏に来てくれとの事だ。

「これ、現実でやる人初めてかも。」

未流が僕の思ったことを言ってくれた。

左の方から生臭い匂いが漂ってきた。

これは“嫉妬”

僕と未流が仲良さそうに話してるのが羨ましいのか。

「私離れた方がいいかな?あっちら辺めっちゃグレーだし。嫉妬心エグいね。」

未流も感じとっていた。

「いや、僕の近くにいて。いい虫除けになるから。」

「サイテー」

はたから見たらただのカップル。

だけど本当はドロドロしてる。

不思議な気持ちだ。

ただ未流と一緒にいると気持ちが何となく楽になる。

お互い秘密を知ってるからかな?

「なんだか嬉しそうね。ほんのり黄色が見えるよ?」

「別になんでもないよ。」

心の中を真っ黒で埋めながら必死に隠した。

好きなんかじゃない。

自分のことを殺そうとしてる人に好意なんか持ってない。






放課後。

授業が終わり下校になった。

外は土砂降り。

傘持ってきておいて良かった。

「未流さん、帰らないの?」

未流が自分の席に座り動こうとしない。

「傘忘れちゃった。広利くんも体育館裏行かないの?」

「こんな雨の中行けないよ。」

外を眺めながら言った。

教室にはもう誰もいない。

未流が立ち上がりロッカーの上に座った。

そして僕の前髪を手でどかした。

「かっこいい顔してるのに。なんで前髪で隠してるの。」

サラサラした髪が風になびく。

「未流さん。一緒に帰る?」

「未流って呼び捨てでいいよ。こんな仲良くなったんだし。」

一瞬僕の周りにほろ苦い匂いの風が吹いたような気がした。

そしてそれと同時に未流が驚いた顔をした。

「気のせいか…。」

小さな声でぼそっと言った未流の声を僕は聞き逃さなかった。





(相合傘って僕初めて。)

そんなことを思いながら歩いていた。

二人の肩がくっつきそうなほど近い。

だけど少しでも変なことを思うと全部未流にバレてしまう。

「未流って僕と同じ方面だったんだね。」

できるだけ話題をそらそうと言った。

「あっ知らなかった?」

とぼけた顔をしながら言った。

その頃には1つ目の坂を下り終わった頃だった。

「子供がいる…。」

「こんな雨なのに。」

子供がカッパを着てボールを追いかけている。

(アニメでよく見るよね?トラックに轢かれそうになるやつ。)

そんなことを思っていたら水しぶきを上げトラックが子供に突っ込んできた。

「危ないっ!」

傘と鞄を投げ捨て子供を抱きとめた。

ブレーキ音もしない。

ヘッドライトもついてない。

ただ風に乗って未流から甘い匂いがした。




(生きてる。)

目を開けると真っ暗な天井。

そこに薄く光る豆電球。

身体を起こそうとするけど全く動かない。

「おはよ。」

聞き覚えのある声。

「未流か。これで殺せるかもって期待した?」

「あっバレちゃった?でもねやっぱり自分の手で殺さないと納得できなくてね。」

違う。

未流は嘘ついてる。

だってアルコールみたいな匂いがする。

“偽り”だ。

「嘘つき。」

自然に声が出ていた。

驚いた顔をした未流はニッコリ微笑んだ。

「これで殺せそう。私も私を殺せそう。」

ブレザーの内ポケットからカッターを出した。

カチカチカチ

刃を出し僕の首元に当てた。

「やっと殺してくれるか。」

自分の匂いが変わっていく。

「これで来世は普通の男子として未流を好きになれそうだよ。」

未流の匂いがほろ苦い匂いに変わった。

そして僕の手の甲に涙を落としたあと目の前が真っ赤に染まりそのまま真っ暗になった。

そして大量の血が流れているはずなのに遠のく意識の中感じ取れたのは、ほろ苦く甘酸っぱい青春の匂いだった。





殺してしまった。

後悔が後になって追いかけてくる。

(私も逝く。)

首にカッターを当てた。

自分の色がおかしい。

黒いはずなのに今はピンク色と青い色、そして緑色をしていた。

ピンク色は“好意”

青い色は“不安”

緑色は“後悔”

愛する人の為ならば私は命をも差し出します。

ごめんね、こうちゃん__。




END.

次は2人の初めての出会いについての
小説を書きます。

秘密さん・2021-03-20
小説
長いです
殺人
好きな人
君にさよなら
羽紅の小説

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