#毒林檎

「大丈夫」

そう言って抱きしめて欲しかった。

/毒林檎/






白雪姫の

接吻で

毒が体中を回る


苦い、甘い

ぬるい毒

『約立たずの白雪姫』

















白雪姫は


とある王国に生まれました




「雪の様に肌が白く、


血の様に頬が赤い


美しい女の子を産みたい」







小さな命をお腹に宿った


美しい女王様が言いました









その願いは天に届きました




とても愛苦しい女の子で




王女様はその子を『白雪姫』



そう名付けました










白雪姫は幸せでした


毎日、毎日が


誰よりも充実していました












けれど家族で居れる時間も



さほど永くはありませんでした＿








物心付く前に


お母様は空に行かれました







王妃は、母として新しく


美しい女性と結ばれました









白雪姫は

新しい母親に


毎日痛めつけられました




暴力を振るわれ




挙句の果てには森に捨てました












「どうして愛してくれなかったんだろう」












白雪姫は愛を誰からも


教えて貰えませんでした

















そこで白雪姫は



小さな家を見つけました



中には七人の小人がいて



毎日を楽しく過ごせました







ここで白雪姫は






『生きる事を知りました』






決して贅沢ではない食事も


小人達と一緒なら






『幸せになれました』




小人との生活で






『助け合う事を知りました』







ある日に欠けた一人の小人の亡骸を見て






『命の大切さを知りました』

























「…君はさ」



「僕達が小さい理由は知ってる？」



「…知らないよ」



「そっか」








「実は、

僕達は人間を食料としてるんだ」




「……」




「…だから体が小さいの？」




「うん、人間が食べる物も食べれるけど

それだと栄養価が低いんだ


だから、



…アイツも死んでった」






「あと小人は、

…君みたいな心が美しい人間を食べるんだ」









「世界で一番心が美しいのは

君なんだ、だから＿＿＿」














私が死んだとしても



誰かの役には立てるんでしょう





＿＿私は約立たずだった





たまたま王国の子に生まれて


毎日美味しい食事が出て


綺麗なドレスも着れて


たまたま“将来の女王”だっただけ





森に捨てられたのが約立たずの証拠









君達に逢わなければ

「私はずっとどこか欠けていた」




君に逢えたことで





『生きる理由を知れた』




『幸せを知れた』




『助け合う意味を知れた』




『命の重みを知れた』
















「皆が私を食べることで生きられるなら、」



『私は喜んで引き受けるよ。』




「最後に、皆の役に立てるなら＿＿」














泣きながら差し出された

紅色のりんごを齧って

段々と意識が遠のいてった













「今までありがとう、またね＿＿」






















































「＿＿＿世界で一番、

美しい人間はだあれ？＿＿＿」

毒林檎のように咲く赤い花

その体に呪文を唱えたなら

サンタさんへ

クリスマスプレゼントに

毒林檎をください

それを食べて

私は眠りにつきます

彼からの目覚めの

キスが

欲しいんです

嘘だらけのこの世

潤ったその紅さ

艶やかな甘い蜜が垂れ

貪りたくなる果実

幻惑されたら永遠の眠り

同然のような君の真っ赤な唇

真実の愛が注がれ

今夜も君は眠らない

私がもし白雪姫だったら

王子様が先生じゃないと

目を覚まさないと思う

毒林檎を食べて眠れるなら
幸せな人生だと思うの。
王子様は来なくてもいいから
ただ貴方を思って死にたい。

“君”という毒林檎を
私は食べてしまったかもしれない＿。

なんでかって？
……“君”を好きになってしまったから＿＿

貴方が助けてくれるって
信じてたから

わざと毒林檎に
騙されたのよ

終末への鐘が鳴り響いて
甘い甘い毒林檎を差し出した


噛みきれない感情を頬張って
次第に眩む世界に泪を流す


嗚呼、どうか僕の記憶が
君を蝕む毒となりますように


願っては微笑んで小指を結んだ


ひとつの毒林檎

願いは君の夢の中

どろどろに融けた毒林檎

呆けて何度も口にするのだ。

"毒林檎"だとわかって
口にした




"運命の君"に会えると信じて＿

毒林檎を食べて眠りたい

"毒林檎"を食べたら、

幸せになれるかな。