#追憶

『追憶』




バスに揺られながら、またひとり、
下車する客をなんとなく眺める。

満員だったこのバスも、次第に色を変え、
今では残り4人になった。

窓からの生ぬるい風、
静寂の中、鳴る機械音、
めまぐるしく揺れる景色。
あぁ、またひとり帰路につく＿







































君がいなくなってもうすぐ1年が経つ。
未だに君が居てくれたらなんて…
もう遅いけど
私を置いていくなんてずるいじゃないか
また意味のない後悔を重ねる








































ほんのり、青くなった風、
さっきと同じ機械音、
視界をすり抜ける景色。
残りは2人だけ＿







































バスに乗っていた大勢の帰省者は、仮面を被っているんだと独り考える
笑うことも泣くこともせず、
表情は皆同じ。
そこから日常を窺い知ることはできない。

私もまた仮面を被って生きている








































無表情な風が吹く。
また機械音が鳴る。
嘲笑うかのように景色がまわる。
次は私の番＿
































君との日々を思い返す
色で溢れた日々
記憶の中で風化し、いつかは色褪せる
わかっていても、消すことはできないのだ

宙で君が星になってしまったのなら、
その輝きを邪魔することがないように、
君を包む暗闇になろう
そこに君がいるのなら、
夜の間は生きていられる
だから、夜には姿を消して＿
















































辺りが冷たくなる
1日が終わる
静寂の中、鳴る機械音。
闇に包まれる



さぁ、家に帰ろう
もうすぐで君とも会える

もうここにはいないあなたに

届きますように






君にシオンの花束を＿

愛が消えても

哀が死んでも

紫苑は咲き誇るから

この世は幻影にすぎないからね


浮世の浮き沈みに一喜一憂する夢は幻
あたしが愛して愛してやまない貴女は
はたしてこの世の存在なのか


貴女と結ばれるものかどうか
気にかけていても浮かばれない
考えるだけ時間の浪費


それでも
狂˙お し い ほどの愛が
あたしのなかであたしを焦がす

幻影にすぎないこの世が消えても､愛は消えない
地獄にすぎないこの世に愛はなく､
愛を知ってしまったあたし､ここにはもぅいられない
愛に連れ去られこの世の外へと｡

目を閉じて、ふと無心になる…

浮かんでくるのは、故郷…

遠い昔の記憶…

まだ、無邪気でいた頃…

少女という名に相応しい姿…

冬の情景に、まだ死という概念が
なかった幼き私…

貴方とハナレバナレになってから

幾年が過ぎたのかな

今でも忘れられない貴方への追憶

ときめいて
燃えて
切なく
心に刺さる氷柱(ﾂﾗﾗ)の涙
遠ざかりし恋の記憶は
褪(ｱ)せた深い緑の
春夏秋冬…

さようなら、大好きだった君
どうか体はお元気で
そして心は少し綻(ﾎｺﾛ)びていて
出会ったあの頃の様に…

♪緑の風の中このまま
目を覚ましたくない…♪

そろそろ現実世界に帰らなきゃ…

# 深い緑の遠い記憶 (完)

わかっているのに泣ける夜がくる

"さよなら"だけが、
あなたとわたしの道だった。
追憶の二人
忘れ得ぬ想い
何度巻き戻してみても＿＿

狂い咲く季節が 止めどなく溢れる
また いつかと同じ 繰り返す戯れ

何処か 彼方を目指し
過ぎた記憶 足蹴に
悲しい訳じゃなく
でも 嬉しくもない

まるで 回るmerry-go-round
痛み忘れ巡り行く
まだ たどり着く場所
見当たらず進む

蔦は絡まり 身は朽ち果てて
思い出の欠片 土に帰り
また 花となるでしょう
like a merry-go-round & round
また 春に会いましょう

急ぎ 廻れ 砕けても
果敢無(はかな)く散るが故にも
今を待たずに
まわれ Hurry merry-go-round
生き溺れても
また 春に会いましょう

春に会いましょう
春に会いましょう


ー hied with Spread Beaver
『HURRY GO ROUND』 ー

さらば赤い髪のエイリアン
君の作ったロケットに
愛を込めて アディオス

アディオス アミーゴ

ー 布袋寅泰 『ROCKET DIVE』 ー

人の心はそこにあるのか

追憶は｢現在｣の

もっとも清純な証なのだ。

愛だとかそれから献身だとか、

そんな現実におくためには

あまりに清純すぎるような感情は、

追憶なしにはそれを占ったり、

それに正しい意味を索めたりすることは

できはしないのだ。


＿花ざかりの森/三島由紀夫

昔、寝込んだ時

お前が一輪の花を

持って見舞いに

来てくれたことあった


「きれいでしょ？」

笑うお前の顔が

今も目に浮かぶ


「食えねーじゃん」

そう言って笑った俺に

むけた膨れっ面が

可愛いと思ったこと

今も心に焼き付いてる


花一輪持って

お前んとこ行くから

「食えんじゃん」

そう言って笑ってくれん？

冬ざれも、目下の腫れも早く去れ

折り合った恋螢の面影に

泪沈んで微睡みゆく

仄見えてしまった

睡る輪郭を抉る涙痕