《けけララバイ》[第2章]
『飛び降りたのは誰でしょうか』
ある日いつもどうりのことを終わらせて家路についたとき。
ふと 空を見上げたら ビルの屋上で女の子が下を眺めていた。淡い髪色をしていて肩ぐらいの長さで切られた髪の女の子。
白くてふわふわしたワンピースを着た女の子。
その女の子は私に気がつくと優しく微笑んだ。
___その瞬間_
女の子はその場から 飛び降りた。
優しい笑みを貼り付けたまま墜ちていった。
もちろん下の地面はアスファルト。
夏の暑さで温度が上昇したアスファルト。
ビルの屋上は高くて, 墜ちたら命が助かるか分からなかった。
私は,恐怖と戦いながらすぐさま駆け寄って女の子を探した。
どこにも女の子はいなかった。
どこを探しても
有り得ないぐらい狭い所も
隅々まで探した。
探しまわった。
いなかった。
女の子は夏の暑さに消えていった。
私は状況を読み込めなかった。
だが家の門限が近かったため急いで家に帰った。
罪悪感を覚えながら。
次の日の放課後,同じ時間に同じ場所を訪れた。
が しかし
女の子は見つからなかった。
女の子がいたビルの真下, そこには1束になっている小さな小さな花があった。
ビルはいつできたか分からない廃ビル。
何も噂されていない廃ビル。
女の子は何をしに消えたのだろうか。
それから1週間,2週間と探し続けた。
もちろん見つかるはずなく。
ある日 日課となった女の子探しが行われる場所。
そこに見慣れない人影があった。
私は人見知りなためその人が行くのをずっと待っていた。
そしたら
その人は振り返った。
生暖かい空気が流れた。
男の子だ。
私と同じぐらいの歳だろうか。
『女の子を見ていませんか?』
「え?」
『女の子
淡い髪色をしていて肩ぐらいの長さで切られた髪の女の子。
白くてふわふわしたワンピースを着た女の子。
見ませんでした?』
「み、見ました。3週間ぐらい前に。」
『教えてください。
何をしていたか』
私は女の子とあったこと。
微笑まれたこと。
飛び降りたこと。
探してもいなかったこと。
それからずっと探していること。
細かく,一つ一つ丁寧に男の子に説明した。
『ありがとう。
その女の子…とは知り合いなんだ。』
「え…」
「僕は歩夢(あゆむ)これ,僕の連絡先。気軽に連絡して。」
と紙を渡して男の子は去っていった。
*夜*
連絡してみた
【よろしくお願いします】
[よろしく。急にごめんね。どうしても もう一度会いたくて。探してたんだ。
君も,探してくれてありがとう。]
[君の名前,きいていいかな?]
【私は夢実(かなみ)と言います。
えっと、歩夢(あゆむ)さんって呼んでいいですか?】
[夢実さんか,いい名前だね
是非,べつにさんじゃなくても敬語じゃなくてもいいけど。]
[まぁまた明日同じ時間に探してるから。
おやすみ]
【わかりました
おやすみなさい】
次の日学校が終わって家路についたとき
廃ビルの近くに歩夢がいた
「歩夢さん!」
『あ、夢実さん。
今日も来てくれたの?
ありがとう』
「日課なので。」
『そっか。』
「あの,飛び降りた…その、お知り合いさんはどんな人なんですか?」
『どんな人、かぁ
そうだなぁ。
皆の夢が叶うことを望んでいる。そんな人かな?』
「…とても,いいひとなんですね。」
『うん。』
それからはずっと,何週間も何月も探し続けた。
まだいるかは分からない。
でも,見つけることが出来たら,話してみたいな。
そんな想いを持ちながら私と歩夢さんは探し続けた。
それはけして簡単なことではなく,いつも門限すれすれまで探した。
見つからない。
見つからない。
見つからない。
どこを探しても人に聞いても見つからない。
歩夢は『もういいよ。ごめんね,付き合わせちゃって。
明日からは探さなくていいよ。』
そんなことを言って去っていった。
次の日,歩夢はいなかった。
連絡先もなかった。
ねぇ,教えてよ。
飛び降りた女の子はどんな人なのか。
結局〈皆の夢が叶うことを望んでいる人〉
という事しか分からなかった。
教えてよ。歩夢。
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