もう何回目だろう
いつものことだけど
待ち合わせしてる訳じゃない
ただ、待ってるだけ
たぶん、どころか絶対来ない
わかってるけど
カフェでカフェ・オ・レ
飲んでた
ケータイに目を落としてたら
前の席に人が立った
へっ?
顔を上げると…まさがいた
なんで?
待ってるって言ってたよね
そうだね
モゴモゴ、口の中で言って
前の席をすすめた
カフェ・オ・レを
一口飲んで気を落ち着かせる
今どうしてるの?
うぅぅん
新しい仕事してる
そうなんだ
ミクちゃんと住んでるンでしょ?
ミク?
私の呼び名
十五の春の子
もう二十歳過ぎたんだね
他人の話かな?
あぁ、そうだね
まさの顔は
ちょっと皮肉に笑う
なんてことない話をして
そろそろ
って立ち上がる
まさは私の名前を
一回も呼んでくれなかった
カフェの扉を
当たり前のように
開けてくれるまさの
脇を抜けて外へ出る
じゃあ
手を上げて後ろを向く、まさ
私は意を決して
後ろから背広にしがみつく
ミクちゃんも
後ろだけなら良いよね
一回でいいから
百合って呼んで
まさの匂いがする
昔の思い出が
どんどん蘇る
駅前の広い歩道で
二人は立ち尽くす
晩秋の冷たい風が
二人を包んでいた