はじめる

#黒板

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全70作品・



カンカンカン


安くてボロいアパートの


錆びた鉄階段を登る音


リズムは彼の足音。


心臓が跳ねる。


小走りで


玄関先まで迎えに行く。


でも私から扉は開かない。


彼が扉を開いてくれるのを


じっと待つ。



だってバレたら


困るもん。




ガシャガシャ


ガチャン



やっと鍵があいて


扉が開いた。



「た、だ、い……わっ」


覗き込むように


家の中に入ってきた


彼に私は待ってましたというように


ぎゅーっと抱きついた。



驚いた彼はやがて


やれやれと息をついて


私をゆっくりと抱き返してくれた。





-私は二宮紗奈。


高校三年生。



彼は新舘 尊28歳。


職業中学の数学教師。




私は三年前まで


新舘先生の下で数学を学んでいた。



一番初めの授業で


「俺は、数学が好きです。数は不思議です、魅力があります。みんなにもこの魅力をわかってほしい。好きになって欲しいです。」



新任の新舘先生は


目をキラキラさせて


そう言っていた。



小学生の頃、私は


算数が好きではなかった。



中学に入って


算数が数学になって


難しくなるって聞いたその時点で


正直、ギブアップだったけれど



「数学を好きになって欲しい」


そう言った先生の目があまりにも綺麗で


やってみよう、と思えたんだ。



先生の授業は面白かった


数学って大人になって


使うのか使わないのか


分からない公式ばかりだけど


先生は


「平方根が分かると家を建てる時に役に立つんだぞ」

とか

「二次関数の応用で車を運転する時の空気抵抗がわかるからロー燃費になる」

とか


少し話を盛りながら面白おかしく


数学がどう私生活に役立つのか


よくそれを教えてくれた。




分かろうと努力して


問題がひとつわかる度


先生は生徒をよくほめた。



ほめられると嬉しい。


次もまた頑張ろうと思えた。



その分やってもわからない子には


わかるまで根気強く


付き合う。



そんな先生の姿が


自分たちの為に


頑張ってくれているんだという


励みになっていた事は確かだ。




中学の三年の頃には


私たちは口々に言い合った。




「こんなに数学って面白かったんだ」



私は数学を好きになる度


先生の事も大好きになった。





卒業式、土壇場まで

告白しようと思っていたけれど


どうしても勇気が出なくて


「新舘先生すきです」



私は、差出人の名前のない、


そんな言葉を黒板に


小さく残して卒業した。





花の高校生。


仲の良い同級生には


彼氏が出来て



どこでデートしただとか


どこでチューしただとか


とても幸せそうだった。


私も先輩から


告白されたこともあったけれど


頭を下げて、断った。




私は先生の事が


忘れられなかったんだ。



卒業式のあの日


どうして言葉に


出来なかったんだろう。



どうして好きって気持ち


伝えなかったんだろう。



後悔ばかりが心を支配する。


そんな高校二年の春


学校帰りの公園で


ばったりと


先生に再会したのだ。



あれを運命と言わずに


なんと言えばいいのか


今なら本当にそう思う。





「二宮ぁ、綺麗になったな」


先生はそう笑った。



「とってつけたような感じですね」


私がそう笑い返すと


「いや、本当に見違えたよ」


照れくさそうに先生は


鼻の頭をかいた。




サラサラした黒い髪も


白い肌も笑顔も何も


二年前と何も変わらない。



伝えるなら今しかないと


私は先生を喫茶店に誘った。



しばらく悩んでいたが


「元、だし、いいか」


軽い感じでそう言って


「では行こうか」


なんだか堅苦しい感じで


エスコートしてくれた。



古びた喫茶店。



コポコポと


サイフォンで淹れた珈琲を


店主が私たちに振る舞う。



窓際の席で告白するタイミングを


測りながら昔話に花を咲かせる私に


先生はおもむろに目を細めた。


にんまりと笑う先生に


私は顔を顰めたずねる。



「え?なんですか」


「二宮だろ?」


「え?」


「卒業式の黒板」



心臓が跳ね上がる。



「あ……」


「メッセージ読んだよ」


先生は笑顔で、漆黒に輝く珈琲を


こくっと喉を鳴らして飲んだ。



「あ、……あの」



計算違いも甚だしい。


告白するつもりが


ばれちゃっていた。



顔が紅潮していくにつれ


何も考えられなくなっていく。



口も動かない。


拳を握った手のひらは


行き場をなくして


スカートを掴んだ。




「あ、あのっ」


勇気を振り絞った声は


思うより細かった。



「どうした?」


低音の声が

鼓動を加速させていく。



「高校入ってからわかったんですけど」


「うん」


「私、あんなに苦手だった数学クラスでも結構出来る方になってて、私自身も大好きで」


「うん」


「でも、高校の数学楽しくないんですよ」


「どうして?」



先生は


少しだけ寂しそうな顔をしていた。


伝え方、間違えちゃったかな


そう思ったけれど

それは、本当のことだ。



後戻りはもうしない。



大きく息を吸って吐き


私は先生を真っ直ぐに見つめ伝えた。





「大好きな新舘先生がいないからです」



先生は、飲んでいた珈琲で


噎せっ返り



「ごめん、びっくりして」



紙ナプキンで口元を拭いた。




「私の気持ち知っているのに…どうしてそんなにびっくりするんですか…」


頑張ったのに眼中なしか。


中学の頃と比べたら


ずいぶん大人になったつもりだったのに。


ほんの少し泣きそうで


潤んだ目で先生をにらむと



先生は慌ててこう言った。



「まだ好きでいてくれてるなんて、思いもよらなかったよ」


「どうして、ですか?」


「だってほら若いじゃない。その頃って俺は、好きな人ころころ変わってたから」


「先生って…たらし?」


私の口から飛び出た一言に


今度は珈琲を噴き出さん勢いで


先生は笑った。


一頻り笑った後で先生は



「元、たらしかな」


と目を細める。



元、というと、今は違うということ。



誰か意中の人がいるんだ。


そう思ったら悲しくなった。



「あれ、どうしてそんな顔するの?」


「だって今は一途に好きな人いるんでしょ?」


「まあね」


「好きな人に好きな人がいるって悲しいですよ」


私はとうとう


涙を堪えきれなくなって


テーブルに突っ伏した。



「相変わらず、早合点だな二宮は」


優しい声と共に


私の頭に心地いい重みが加わる。


大きな、先生の手が


私の髪を梳いていた。



「その分だと、テストでケアレスミスも多いだろ」


そう言った後で先生は


椅子を立ち上がり体を折り曲げると


私にそっと耳打ちをした。



「……白状しようか」


「え…?」


「新任であの中学に赴任して3年目に俺はタラシを卒業したんだ」


いまいち、先生の言うことがわからない。


突っ伏していた顔をあげると


先生の笑顔がそこにはあった。



「卒業式に書いてくれたメッセージ見てから、ずっと考えてたよ、二宮のこと」



頭より先に


心が理解する。


涙が溢れた。



「え?…え?」


「スポーツは出来ないけど頑張り屋さん、知ってるよ、バスケのフリースローのテストの時、前日の放課後、遅くまで残って練習してたこと。友達が体調の悪い時には保健委員でもないのに保健室に付き添う優しい子。俺が見た生徒の中で一番、勉強熱心。大口開けて笑う笑顔が可愛い。テストが悪いまんまじゃ終わらないのが二宮だ。頑張って次のテストでは必ず巻き返してくる。ポケットの中にリップを忍ばせて、俺たちの目盗んでつけてた。俺、二宮のこと無意識に追いかけていたみたいでさ」



たくさん、たくさん


見てくれていた。


格好悪いところも


頑張ったところも


わかってくれていた。



そして先生は告げる。



「本当に、綺麗になったね」


ひとつ、また涙が零れ落ちる。


ひとつ、息をついてもう一言。



「俺は二宮が好きだよ、二年前から」


「せん、せ……」


驚きと喜び


今までの切なさと


この上ない幸せ


心に入り乱れるたくさんの感情に


返す言葉が見つからない。



そのかわり、


とめどない涙が

私の頬を伝い

テーブルに零れ落ちた。




私の頭をいつまでも撫で続ける、


先生の手のひらが優しかった。



私たちはその日、


元教師と元教え子から


特別な関係になった。






あれから数ヶ月。



私たちしか知らない


ふたりだけの


秘密の恋は続いている。


私はもう高校三年生。


誰に知られても構わないけれど


先生はそうはいかないみたい。



先生が生きがいを持って


打ち込む仕事を


元教え子との色恋沙汰で


辞めさせるわけにはいかない。


だから私は


「高校卒業まではね」


先生のその考えを飲んだ。




友達から


「彼氏出来ないの?」


と言われれば


「いないよ」


と答えるのは


少しだけ寂しい。



友達が彼氏自慢をすれば


羨ましくも感じる。




でも、こうして


合鍵をもらって


こっそり家の中で


先生を待っている間は


とても幸せだ。





「今日も遅かったね、大変だった?」


私は先生の腕に絡みついて彼を労う。


「んーそうだね、でもさあ」


「ん?」


「俺の家で二宮が待っててくれると思ったら教頭の小言にも耐えられたよ」


「あー、教頭先生のことそんなふうに言っていいの?不良教師ぃ、いーけないんだっ」


私は先生の顔を覗き見て笑う。


先生も、照れくさそうに笑っている。



笑顔だって涙だって


好きな人と同じ仕草で


同じ気持ちを共に出来る



それはなんて幸せなことだろう。




「なあ、二宮」


先生はネクタイを外しながら


私にこう聞いた。



「卒業後はどうするの?」


「私、山中大学の教育学科にいくよ」


「お?もしかして、俺と同じ道目指すとか言う?」


「んー」


私は笑って首を振った。


「迷ったけど中学校の教員じゃなくて小学校教諭になりたいの」


「それはどうして?」


「私、小学校の時、算数すごく嫌いだったの。でも先生に会って変わったから、私のような子がいるなら、もう少し早い段階で算数好きにしてから中学にあがってほしくて」


先生は嬉しそうに


「そうか、二宮らしいね」


と告げたあと


ぶつぶつと


何やら呟き始める。



「山中大学か……うーん」


「ん?なに?」


「いや、その距離ならここからでも通えるかなーって思ってさ」


「え…?」


思わぬ言葉に私が驚くと


先生は私をおもむろに抱き締めて


耳元に低い声を届ける。



「高校卒業したら一緒に暮らそ」



息が止まるほどに


ときめいた。




私の3つの宝物は


数学と


新舘先生


そして教師という夢。



「ずっと応援してるよ」



先生がそう笑ってくれるから


私はいつまでも頑張れる。



いつか


「一緒に暮らそう」


その言葉が



「ずっと一緒にいよう」


そうなる日まで


先生の側にいさせてね。


きっと私はこれからも


ずっと先生が好きだから。

ひとひら☘☽・2020-01-31
幸介
幸介による小さな物語
先生
生徒
恋人
秘密の恋
小説
3つの宝物
アパート
物語
アパート
中学校教師
教諭
彼氏
彼女
独り言
合鍵
高校生
中学生
初恋
真実
好き
大好き
愛してる
同棲
一緒に暮らそう
心臓、跳ねた
黒板
ポエム
告白
逆告白

先生への最後のメッセージ

『今までありがとうございました』

黒板にそっと書き

私は教室を出た___

空桜-さよなら-・2019-12-31
卒業式
卒業式後
実話
卒業
小6
友達
先生へ
先生
担任
黒板
教室
ありがとう
さようなら
最高のクラス
最後のメッセージ
メッセージ
優しい先生
面白い先生
友達と一緒に書いた

ただただあなたに会いたいの。

早くこの気持ちに気づいてよ。

.*:+。Haruna。+:*.・2018-09-13
友達
friend
会いたい
黒板
運命の赤い糸
ヘッダー☆°。⋆

これらの作品は
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人生は勉強だ。
頭という黒板に
大事なことを書く。
そして
心というノートに綺麗に
整理する。
こうして
『人生』と言う
大きな1時限目を終える。

隆輝・2018-10-21
人生
黒板
俺論
隆輝ポエム

みんなと最後の黒板を前に

いっぱい笑い合いたかった

Aimy☪︎* 最後にポエム投稿します・2020-04-05
君と見たい景色
もしも魔法が使えたなら
卒業式短縮
最後
コロナ
みんな
卒業
卒業式
黒板
たくさん
笑いたかった
青春
教室
学校
門出
ありがとう
思い出

好きです

Snowdome・2018-09-05
黒板
伝えたいこと
好き

人生は勉強だ。

頭という黒板に大事なことを書き、

心というノートに整理する。

こうして

『人生』という大きな1限目を終える。

隆輝 ( '-' )・2019-07-26
人生
俺論
黒板
ノート

私-君=0

姫りんご。 thank you.・2018-09-06
教室
引き算
黒板
d‥*

Q.私と貴方の距離を求めよ。

紗世・2018-09-15
黒板
September
蒼色の恋
この言葉が伝わりますように

幸福を得て
―――――
不幸を知って
――――――
恐怖に接した
――――――

夢を捨てた少年少女 (元)lovers秘密結社・2020-04-08
loves秘密結社
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                                         九
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                                         ︵
                                         金
                                         ︶
                                                            きみが、、、、好き

さぁや♪♪♪・2018-09-09
黒板
きみが

今日は黒板を消してたら、
H先生が「めっちゃ綺麗やん」
って言ってくれた!!

ずっと他の女の子たちと話してたから
無心になろうとしてたけど
一気にテンション上がった笑

秘密さん・2021-11-05
先生
先生推してる会
黒板

見てくれたかなぁ?


ほら、教室の後ろの黒板。


書いてあったでしょ、キミの名前。


女子の友達の中に交ざって(笑)


『早く会いたい~~!』


ちゃんと見てくれてないと怒るよ~?(笑)

でびる@ありがとうございました・2020-06-11
学校
今日の出来事
黒板
見てくれた?


今日、席替えだった。

席はどこかなと思い黒板を見てると、

君の隣だったーー

新しい席について、横を見ると

眩しいくらいの笑顔とともに

『よろしくな』って言われた

嬉しかった。カッコよかった

これから楽しい日々が始まると思った

これから1ヶ月。

楽しみだなぁ....

桃花・2020-03-05
席替え
きみの隣
1ヶ月
楽しみ
好きな人
カッコよかった
黒板
新しい席
眩しいくらいの笑顔

快楽の果て
―――――
快楽を得て
―――――
快楽を以って
――――――
初めて私は人となる
―――――――――

夢を捨てた少年少女 (元)lovers秘密結社・2020-04-08
loves秘密結社
死ぬ
死にたい
絶望
チャイム
教科書
黒板
古い
怖い
行きたくない
一方通行
規制
男らしく
女らしく
くだらない話
日々
青春
現実
見た目
容姿
小学校
中学校
小中一貫校
思い出
想い出
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想い出話
馴染めない
必死
出会えた
君と僕
僕と私
大丈夫
ヒトコト
ひとこと
一言
幸せ
思う
思うべき
ひとりごと
一人言
独り言
つぶやき
好き下さい
好き頂戴
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