‥私side‥
波乱もあったが楽しいご飯を終えた
君に携帯を借りて彼に電話をかける
…ある覚悟を決めて
『はい。』
「私。もう仕事終わってる?」
『…うん。店どこ?』
「……だよ」
『分かった。すぐ行く』
「ありがとう、待ってるね」
電話を終えて、君に向き合う
「今日はありがとう。すぐ来るって。」
『そう。なぁ、○○』
「ん?」
『自分で決めろよ』
「…わかってる」
『ん、じゃあ』
片手をあげて去っていく君
"優しいよね、二人とも"
そんな二人をこれ以上振り回せない
「…答えはもう出てる」
空に浮かぶのは まん丸のお月様
「満月…」
"頑張ります"
月に宣言して彼を待った
暫くして彼がやって来た
『お疲れ、乗って』
律儀に車から降りて
助手席のドアを開けてくれる
でも、
「私の携帯は?」
『…とりあえず乗らない?』
「乗らない」
『○○?』
「私、もう、貴方と一緒に居れない」
息を吸って
「別れてほしい」
"ごめんなさい"
「好きな人が出来たの」
『……うん。やっぱ、そうなるよな』
辛そうに笑う彼
『…俺ね、あの人に最初に会った時から、こうなる気がしてた。』
ひどく優しい目で
『だってさ…俺の知らない○○だったから。知らなかった、○○のあんな楽しそうな顔。一番近くに居ると思ってた。
でも、俺じゃなかった。
○○を一番知ってたのは。』
痛かった、心が…
『そんな顔すんなよ。』
お願い、優しくしないで
『○○の笑顔が好きなんだけど』
"無理だよ"
「…笑えないよ」
『ひとつお願いがあるんだけど』
「…何?」
『まだ好きでいてもいい?』
「っ…」
"どうして、
彼だけを見ていられなかったんだろう"
私は貴方に想われるような女じゃない
「…ダメだよ。
私のことなんて、すぐに忘れて」
『…ごめん。それは約束出来ないかな』
「最後までいい男なのね」
精一杯の笑顔を作った
『最後までいい女だな』
貴方も笑ってくれた
『…はい、携帯』
受け取ろうと伸ばした腕を引っ張られて
ギュッと抱き締められた
今までにないぐらい強く
抱き締め返すことは、出来ない
"愛してた"
貴方の腕に包まれて
貴方と過ごした日々を思い出に変えた
『送るよ』
って言ってくれたけど
そんなことさせられない
「大丈夫。
ここまで来させてごめんね。」
『いいよ、そんなこと』
「…もう行って。」
『……分かった。
○○、幸せになれよ。』
「○○もね」
笑って彼の車を見送った
頬を伝うものを止める気はなかった
"もう無理…もう…"
堪えていたものが一気に溢れた
"大好きだった
本当に、本当に…ありがとう"
彼を想うのは今日で最後にしよう
もうひとつ、やることがある
電話をかけた
『はい。』
「○○」
『…何処に居る?』
「…お店の近くの公園」
『そこ、動くなよ』
思っていたより
ずっと早く君は来てくれた
私の顔を見るなり
『頑張ったな』って頭を撫でる
「…ありがとう、来てくれて」
『何処にでも行くよ、○○のためなら』
"もう、どうなってもいい"
「…好き。
どうしようもないくらい貴方が好き。
…私を彼女にしてください。」
『…その言葉、そのまま返すよ。』
抱き寄せられて、囁かれた
『俺の彼女になってくれる?』
きっと、
君に『お疲れ様です』と囁かれた
あの日から、
こうなることは決まっていたんだろう
私の答えは…
「はい。お願いします。」
fin.
Thank you for reading ...