はじめる

#シリーズ

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全127作品・




「病になったのは…その後、暫く経ってからです」



「彼女」は病に冒された枝の葉を


ザワザワと揺らしながら


懸命に痛みに耐える。



痛いはずだ。



人間で言うならば


骨格が曲がり


骨が飛び出すのと


同等なのだから。



ヨイヤミは彼女の痛みを拭うように


時折、彼女の肌を撫で頬を寄せ


そして尋ねた。



「この病を望んだと、言いましたね」


「ええ、だって…大きくなっても大きくなっても迅太さんは戻ってきてくれなかったんですもの。だから私は風さんに頼んで病気を運んできてもらったのです」


「死ぬ為、ではありませんね」


「死ぬ…?とんでもない。私は迅太に帰ってきてもらうために、天狗巣病になったんです」





天狗巣病


植物病害の一種


植物の茎や枝が


異常に密生する奇形症状。


この病害に冒された樹木は


天狗の巣の様な奇形を伴う為


天狗巣病と呼ぶ。



witches' broom


英名では魔女の箒である。






なるほど。


彼女の枝は分かれ分かれて


絡み合い密集して


天狗の巣のようだ。




彼女は笑う。


無理やりに笑う。



「私は迅太さんが帰ってきた時に、巣まで作ったのかとほめてもらうんです、そして迅太さんとずっと一緒に暮らすんです」




何かに怯えるように


何度も何度も願いを口にした。



そこには


得体の知れない恐怖があるようだ。





ヨイヤミは立ち上がった。



そして彼女にとって


最も残酷な言葉を伝える。




「……迅太さんは戻ってはきません」


「…帰ってきます、約束したんです」


「帰りません…それは貴女がよく分かっているはずです」




ヨイヤミの悲しそうな表情に


彼女の目が、大きく見開かれる。


それでも彼女はこう言った。



「わかりません」


「このままではあなたが苦しいだけですよ」


「それでも構いません、私はこれから先も迅太を待ち続けますから」




ヨイヤミは「仕方ないですね」


そう呟くと、ぱちんと指を鳴らせた。


「何を……っ」


「絡み合った記憶を解いてきなさい」




彼女の視界は歪んだ。



【ヨイヤミ-Case One- witches' broom⑥】





「ここは…」


昼の山だ。


さっきまで夜中の山で


藍色の鳶の人と話していたのに。



それにポカポカと暖かい。



私はザワザワと枝を揺らしながら


辺りを見回した。



たんぽぽにつくしんぼう。


蝶々が飛び回る、春だ。




そして、視線がとまる。


息を飲んだ。



目の前の川には



迅太がいたのだ。



迅太が元気に


魚を追いかけていた。



迅太を見つめる私に気がつくと


大きく手を振って、無邪気に笑う。



小麦色の肌。


筋肉質な上半身。


身体が少し小さめなのは


きっと自由に空を


飛び回るため。



背中の鷹翼。


手には大事な扇。


だけど迅太はそれを


魚を捕らえる為の道具として使っていた。




この景色、見たことがある。


この後迅太は


川の石に滑って転ぶのよ。




そう思った矢先、


バッシャーンと大きな音を立てて


「いってえ!」


迅太の声が聴こえた。



どくどく、と嫌な予感が


私の身を掠めていく。





「あーあ、ツイてないや、さくら見てたか?すごく大きいヤマメが居たんだ、この川のヌシかなあ」


濡れた服を搾りながら


迅太は当たり前に私の幹へと腰掛けた。


そして、私を見上げて声を上げる。



「あ!さくら!」


「え、なんですか?」


「お前の頭、花が咲いてる!」



すげえ!そう言って迅太は


あっという間に鷹翼で飛び上がると


私の花を撫で、


私の花に口付けた。




口付けなんてはじめてで


ときめきが止まない。




「やっと、やっと咲いたんだな」


「お前すごいなさくら」


「随分大きくなった、頑張ったな」



私を褒めちぎったあとで


迅太は心臓が止まりそうになる程の


言葉をくれた…。




「なあ、さくら」


私はさわっと花を


揺らすだけの返事を返す。



迅太はごほんと咳払いをして


こう、私に告げた。



「さくら、俺の巣になってくれ」


「え…?」


「さくらが桜を咲かせたその日にって決めてた」



何度聴いても、嬉しくて


涙が溢れる。



私はこの日のために


頑張ってきたんだもの。




これで迅太と


一緒にいられる。



雨でもないのに私の花からは


無数の滴が零れた。




そして迅太は


あの日の種明かしをした。




「さくらが出逢った頃言っただろ?自分が俺の巣になるって…俺あの時照れちまって言えなかったんだけど」


「はい」


「天狗界ではさ、決まった木に巣を作るってのは…婚姻と同じ意味なんだ」


「え…?」


「俺と婚姻の契りを結ぼう」




こんな幸せ


二度とない。




「私で……いいの?」



私は息をつきながら


迅太に尋ねた。




「さくらしかいないんだ」


迅太は私の幹に


ぎゆっと抱きつくと


そう告げて無邪気に笑う。





いかほどの時間を


そうして過ごしただろう。


ひとつに溶け合いそうな時を越えて、


迅太はとうとう、言う。




「さあてと、そうとなれば急ぎたい。巣作りの材料でも集めてくるよ」


行かないで


行っちゃダメ


私はそう叫びたかった。



私は、記憶違いをしていた…。



これは過去だ。


残酷な運命には叶うわけもなく


「気を付けて行ってきてね」


私はそう、笑ったんだ。



【ヨイヤミ-Case One- witches' broom⑥終】

ひとひら☘☽・2020-02-03
幸介
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記憶



「辛いですか」


ヨイヤミは「彼女」の心の内を


読んだか、そう囁くように言った。


彼女は細く枝を揺らすと


「いいえ」と笑う。



「あの日々は…天国でした」



「彼が居ることの幸せ、ですか」



「どうでしょう…私はただ、ただ、楽しかったのです。それまでのどんな日々より、それからのどんな日々より」



さわさわと揺れる枝の擦れる音は


こんなにも優しかったかと


ヨイヤミは顔を綻ばせる。




触れると伝わる、彼女の


迅太への想いとその行方。




「続きを話しても?」


「ええ、聴かせてください」



過去が伝播したとて


話を聴こうとするのは


彼女の心の闇を


救いたいと思うからだ。





【ヨイヤミCase One witches broom④】







「んーー!きっもちいー、あー、ここの水はいい水だなあ」


迅太は素早く服を脱ぐと


その服ごと川の中へ飛び込み


水面に顔をあげてはそう笑った。



「いい居場所があっていいな、な!さくら!」



私の心に迅太の言葉の風が吹く。


私は桜の木だ。


それ以上でも以下でもない。


まして、人間様のように


名などあるはずもない。



なのに、迅太は


私を一直線に見つめて


さくら、と呼んだ。



「さくら…?」


「お前、桜の木だもんな」


「そうですけど」


「名前、あった方が呼びやすいだろ」


歯を見せて、目を細める迅太に


心が熱くなっていく。


何故だかとても照れくさかった。



こんな気持ち…はじめてだ。




「名前があったとて、私を呼ぶ人なんて…」


「んー…俺がいるじゃないか」


「…迅太さんだってそのうち何処かへ行くでしょうし」



行って欲しくない


どこにも行かないでとは


言えなかった


その代わりに私は


可愛くもない強がりで


否定を待つ。



迅太は、いつも


それに乗ってきた。




「俺、ここに骨埋めようかと思ってさ」


「え?」


「里の掟でさ、抜け天狗は一生追われる」



「そんな…、逃げ出さなきゃならないような状況を作ったのは向こうじゃないですか」


「それでもきっと奴らは俺を探してるよ」


迅太は、悲しそうに空を見上げる。


迅太が見つめた空は


どんよりと黒い雲が広がっていた。



「迅太さん…」


「ん、でもさ」


暗く声を落とした私を気遣って


迅太は気を取り直したように


明るく声を弾ませた。


「五つも山越えてここまで来たし、そう簡単に奴らもここまでは来れないさ。ここもいい山だ、時期にいい住処も見つかるだろ」


「天狗はどこに住むんですか?」


「木の上に巣を作るんだ」


「じゃあ、迅太さん、私の上に巣を作りなさいな」


「は!?え!」


おかしな事に迅太は


突然にあたふたと汗を拭って


顔を赤らめた。



「私…何かまずいこと言いましたか…?」


「いやぁ……」


迅太は私を上目で眺めてから


鼻をぽりぽりとかき


そして私を優しく叩いた。



「それもいいかもな」



その照れくさそうな笑顔は


ずっと私の心の中の宝物だ。



「でもさくらは俺を支えるには少しばかり小さいや」



「そう……ですか」



「まあ、大きくなるまで待つからさ、頑張って土ん中の栄養取り込めよ」



迅太がぺしぺしと


私の根を叩きながら、笑う。



私に笑う。



笑いかける。



そして私を待つという。



だから、私は


強く、太く生きようと思った。





私の枝の上に


巣を作ったら


ずっと一緒にいられる


ずっと一緒にいたい


だからこその努力が出来る



その想いの強さを感じた時



ああ、これが


人間様のいう、恋なんだ



そう、私は気づいた。






私は、迅太が好きだ。




【ヨイヤミCase One witches broom④終】

ひとひら☘☽・2020-02-02
幸介
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『席替え』






































































俺は今猛烈に後悔している



時は10分前に遡る___























「席替えするぞー」



先生の一言で教室が一気に騒がしくなる



音声のみなら



動物園と言われてもおかしくない



やっと来たこの時に



テンション爆上がり中のクラスメイト



それと対照的に



テンション爆下がり中の俺



誰が隣とかどうでもいいわ



めんどくさ



絶賛めんどくさがり極め中の俺ってわけ



決め方はくじ引き



席の場所に番号がついていて



引いた紙の番号が次の席になるって感じ



くっそだるくて



1番手前にあるくじを選んだのだが



10分後



それを後悔することになるとは



この時の俺は知る由もなかった















































『ねえ、瀬戸くん!』



『瀬戸くんってさ

なんでそんなに喋らないの?』



『瀬戸くんってもしかして

ツンデレ??塩対応のタイプ??』



隣の席になった藤堂 ゆうか



こいつが信じられないくらいうるさい



『え!!?

瀬戸くん家犬飼ってるの?!』



『意外!!!瀬戸くんって

羊とか牛とか飼ってそうだからさ』



羊とか牛飼う中学生ってどんな奴だよ



てか俺酪農家じゃねーし



『名前は??名前なんて言うの?』



『瀬戸くんがつけたの?』



俺の心の中のツッコミも



藤堂の質問にかき消される



「……むぎ」



『むぎ??むぎって言うの?』



『可愛い!!!』



『瀬戸くんって見た目に合わず

可愛いとこあるんだねえ』



いや、この人失礼極めすぎじゃないか



てかつけたの妹だし



この人の頭に



〝会話のキャッチボール〟って言葉は



存在しないのだろうか



それで表すなら



藤堂がピッチャー



俺がキャッチャーってところか



いや、この人に至っては



もはや俺の存在しない



バッティングセンターレベルとも言える



ホームラン打ちまくりだな



そんなことを考えている間も



藤堂の質問攻撃はやまない



『てかさ、なんでみんな瀬戸くんの事

〝瀬戸〟とか〝瀬戸くん〟って

呼ぶの?下の名前は???』



どんな攻撃にも無表情で耐えてきた俺が



初めて表情を変えた



変えたと言ってもわずかだから



藤堂は気づかないかもしれない



「…なんでもいいだろ」



「俺は俺だ」



下の名前を言いたくなくて



ぶっきらぼうに答える



『……』



あれほどうるさかった藤堂が



急に静かになった



どうしたんだと思ってチラッと顔を見る



目を見開いて



閉じ忘れたみたいに口を開けて



じーっと俺の目を見ている



…すんげえアホ面



初めて人の顔を〝面白い〟と



思ったのもつかの間



『かっこよ…』



「は?」



聞き間違いかと思った



なんだよーとか



そんくらいいーじゃんとか



そんなのを予想してた俺にとって



褒め言葉が返ってくることは



小さな衝撃だった



……てか、名札見りゃ分かるだろ



今更なツッコミに我ながら呆れる



「瀬戸と藤堂か

お前ら2人今日の日直な」



……まじかよ



「瀬戸ー

めんどくせえからってサボるなよー」



先生はエスパーか



でも話題が変わってくれてよかった



ありがと先生



心の中でお礼を言う



一言余計だったけどね



…今のは俺の中で留めておこう



『瀬戸くん!』



『下の名____』



キーンコーンカーンコーン



藤堂の言葉を遮るようにチャイムが鳴る



これは偶然と言えるのか



神様ありがとうございます



藤堂に最後まで言わせないでくれて



心の底から神様に感謝をする



いや、待てよ



神様が居たなら初めっから



俺と藤堂を隣の席にしなかったのでは



悶々と考えている間に



授業が始まった



ま、いっか



考えるのもめんどくせえ



その頃藤堂が



〝絶対に下の名前聞き出してやる〟



意気込んでいるとは



この時の俺は露ほども知らなかった



ー続くー

黒崎 遥馬・2020-03-17
独り言
小説
つづく
続く
安定に意味不
意味不
意味不すぎてもう笑うしかない
いやーーーーやばい
相変わらず意味不を極めておりますがどうか暖かい目でご覧下さい((
席替え
フィクション
創作
シリーズになるとは()
シリーズ
恋愛
かもね()
好きな人
卒業式
卒業
ポエム
片想い
あの時伝えたかったこと
疲れた
席替え
〜席替えシリーズ〜
小説___('-')

これらの作品は
アプリ『NOTE15』で作られました。

他に127作品あります

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ヨイヤミは


「彼女」の声を聴き漏らさぬ様に


目を閉じてその話に聴き入った。



ぼこぼことコブのある


立派な幹に耳をつけ


聲を聴けばそこには


打ち震えるような


愛が存在している。



彼女が


天狗の迅太に恋をしたのは


だいぶ前だろうに


未だ満ち溢れんばかりの愛に


彼女はあえいでいるようだ。



彼女の回想を


ヨイヤミは何も言わずに


笑顔で、聴いた。





【ヨイヤミCase One wit'ches broom③】





俺は、岩間の山の山奥の


天狗の里で生まれ


修行をしてきた天狗だ。



俺ん父ちゃんが


13匹の大年寄天狗を取り纏める


大天狗様だったわけだが


1482歳で死んじまった。



天狗にしちゃあ早すぎる死だった。



その後釜を決める話し合い


俺は大年寄りたちの手にかかり


殴られ、蹴られ、刺され


家族も置いてけぼりにして


ここまで逃げてきたってわけさ。









「ひどい……」

思わずあげた私の声に


迅太は苦く笑って私を見上げた。


「父ちゃんが死んで辛くてさ、大年寄りたちに支えてもらいたかったのに、気持ちってのは伝わらないもんだね」


半ば諦めたような


迅太の言葉が苦しい。



「どうして、そんな事…されたんですか」


「まあ、俺を後釜に据えたくなかったんだろうね」


「……それだけの理由で?」


「あの人たちにとったら、俺の命より対面やら地位やらが大事だったんだろうよ」



そうですかと


聞いてあげられたら


よかったのに


私は迅太の悲しそうな顔が


見ていられなくて


無理をしてまで


笑って欲しくなくて


「でも」


否定の言葉を口にした。



「ん?」


「それじゃあ迅太さんだけが辛いです」


迅太は私の声が

耳に届いた瞬間

動きを止めた。



「私は…そんなの嫌です」


さっき会ったばかりの天狗に


どうしてこんなにむきになるのだろう。


「私は…っ、迅太さんに笑って欲しいです」




どうしてこんなに


恥ずかしい言葉を


伝えたいと思うのだろう。



暫しの時を


だんまりで過ごした迅太は


そして言った。



「なあ、お前、ほんっとに…」


「はい…?」


「声が、キレイだなあ」


「そうですか?」


「ああ、癒される」



私の声に


癒されるなんて


誰が言ってくれただろう。



周りの桜に生い茂られ


体の小さな私は


大きくなれずに


ちいさなこどもにまで


軽々と頭のてっぺんに登られては


枝をポキポキと折られてしまう。


誰にも見向きをしてもらえなかった。


そんな私の声に


癒されると迅太は言う。



「なあ、歌ぁ歌えるかい?」


ふいに迅太が笑顔で聴いた。



「歌、ですか?」


私が尋ね返すと


迅太は少しばかり


眠たそうな声をあげる。


「ああ、あれがいいや…子守唄」


「子守唄なら…一曲だけ……知っています」


「じゃあ一曲、頼むよ」



風の音に乗せて歌う


子守唄。


迅太の心が


僅かでもいい


安らぐように。



夜闇を照らす月に届くような


透き通る声をあげた。





もりもいやがる ぼんからさきにゃ

ゆきもちらつくし こもなくし

ぼんがきたとて なにうれしかろ

かたびらはなし おびはなし

このこようなく もりをばいじる

もりもいちにち やせるやら

はよもいきたや このざいしょこえて

むこうにみえるは おやのうち




歌い終わった頃には


迅太は涙を落としていた。


「なんてかなしい唄だよ…」


「ごめんなさい、これしか、知らなくて…」



優しい風が吹く。



迅太は震える声で


「少し…泣かせろ」


そう告げると、私に触れた。



「何時まででも側にいます」


「恩に…きるよ」



迅太は泣いた。


声を必死に抑えて


う、うっ、と


嗚咽を漏らしながら


こどものように泣きじゃくった。



私はちいさな体を精一杯に伸ばして


一生懸命、枝を重なり合わせた。



せめて私の根元で泣く迅太が


他の天狗や動物たちに


見えぬように、と。




迅太が泣き疲れて眠ったのは


朝靄に山が白む頃だった。





【ヨイヤミCase One wit'ches broom③終】

ひとひら☘☽・2020-02-02
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「あなたは病気ですよ」


「……知っています」


「私が楽にして差し上げましょう」


「いいんです、私は病の私を選んだのですから」



「……話を、聞かせてくれますか」



「長くなりますよ」



花を持たない樹は


そう言って笑った。




【ヨイヤミCase One wit'ches broom①】




あるところに


人ならざるモノの声を聴くという


ヨイヤミという男がいたのだ。



ヨイヤミは黒というより


ネイビーブルーのマントを身にまとい


北はかの有名な大国


南は小さな赤の島国まで


あらゆるところを旅していた。



時に時空も飛び越えているらしい。



その証拠に日本の江戸より古い文献に


藍の鳶を着た男有りと書かれていたし


中国史の古くは


殷王朝時代に書かれた書物にも


同じような記述があった。



それは全てヨイヤミだった。





ヨイヤミは空を飛び


四方八方、人ならざるモノの声を


上手に、聴き分ける。




今日もどうやら


ひとつの声に吸い寄せられ


地上へ向かい、舞うように降りていく。





降り立ったのは


一本の桜の木の側だった。


見つめてみれば


他の木よりどっしりとした桜の樹だが


どうも様子がおかしい。



他の桜の木は小さいながらも


花芽を持ち、花が


咲き始めているものもあるのに


ヨイヤミが見つめるその木は


花芽を持たぬまま、


緑の葉がピョンピョンと


みだれ髪の様に飛び出ている。



至る所には


枝が絡みいったような


箇所もいくつも見えた。




「身体がこんな風では、苦しいでしょう」


「いいえ、私は平気です」


その声は今にも消え入りそうな女のそれだった。


透き通るようで細い声に、ヨイヤミは


「彼女」の幹に触れる。



「あなたは、病気ですよ」


「……知っています」


「私が楽にして差し上げましょう」


「いいんです、私は病気の私を選んだのですから」


「……話を聞かせてくれますか」


「長くなりますよ」



そう笑った花を持たない樹は



「私は…天狗に恋をしたのです」


と、付け加えると


病にかかる枝を


ゆっくりと揺らしたのだった。




【ヨイヤミCase One wit'ches broom①終】

ひとひら☘☽・2020-02-01
幸介
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人ならざる者
ネイビー
歴史
時空
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ヨイヤミは


「彼女」の幹を優しく撫でる。



「彼女」が過去の痛手に


呑み込まれてしまわない様に。



藍のマントに


藍の帽子。


金色の瞳孔と


風貌こそ怪しいが


その瞳に映るものは


優しさであった。




彼女はヨイヤミに促されるまま


その過去をひとつひとつ


宝物のように紡ぎ出した。





【ヨイヤミCase One wit'ches broom②】






私は天狗に恋をしたのだ。


彼は深い痛手を負って


私の居るこの里山まで


逃げ来た天狗だった。





知ってる?


赤い顔なんて嘘。


長い鼻なんて迷信。


天狗は人間と


何ら変わらない。


ただ、鷹のような翼と


扇をもって


歯の高い下駄を履いてる



ただそれだけの違い。



私には


とても好青年のように見えた。




彼はすぐそこに流れる川の水で


赤い血のこびりついた頭を流してから


手を額に当てて大袈裟に私を見上げた。



「おー、桜の木か、生きているかぁ?」


私に話しかけた生き物ははじめてだ。


返事をしようか迷ったけれど


私は彼の綺麗な目に惹かれて


言葉を発した。




「生きています」


「綺麗な声してるなあ、雌樹か」


「はい」


にこやかに笑う天狗は


その辺りのこどもが言う


怖いイメージとは程遠い。


ずっと優しそうだ。



その笑顔を見ただけで


身体中に水分が行き渡り


10年ほど若返った気がした。



どくどくと高鳴る、私の中の「何か」。


どうしてだろう。


何がこんなに騒ぐのだろう。



そんな事を


取り留めもなく考えていると


さっき、拭き取ったばかりの血が


また彼の額に滲み出す様子が見える。



私は、彼を呼んだ。



「天狗さん」


「天狗さんじゃ返事は出来ないな。俺には迅太って名前があるんだ」


「迅太…さん?」


「さんは照れくさいけど、まあいいか。合格点」


迅太は、歯を見せて


目じりを下げた。


そして大きな翼を広げて


ファサッと風を起こした。




その風の心地いいこと


その姿の雄々しいこと



それは今まで私が見た、


どんなものより美しいと感じる。



私はうまれてはじめて


自分の中に流れる時が


止まるのを感じた。



どのくらいの時間を


迅太の立ち振る舞いに


見とれて過ごしたことだろう。



私は我に返り、迅太に告げた。




「迅太さん…血が流れてますよ」


「ああ、いっけねえや、こりゃどうも」


迅太は額から流れた血を


ゴシゴシと拭き取った。



「そんな大怪我、どうしたんですか」


「…聞きてえのか?」


「無理にとは言いません」


「……長くなるぞ」


迅太が少し口を尖らせて


そう呟いたので私は


「時間ならたっぷりありますから」


と、笑った。



迅太は「そうかい」と


息を吐くように言うと


私の木の根に


優しく腰を下ろして


「あのな」と語り出す。



絞り出すような

悲しげなその声は

私の心をぎゅっと締め付けた。





【ヨイヤミCase One wit'ches broom②終】

***


今日はここまで♪


またあしたっす(*´ω`*)


幸介

ひとひら☘☽・2020-02-01
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生きる
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一途
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しとしとと、雨が降る。


「彼女」の涙が降りしきる。


「さくらさん」


ヨイヤミは彼女を撫でた。


彼女の怒りが伝わる。


これは果たして


迅太の生命を


奪った天狗への恨みか


はたまた真実を


見せたヨイヤミへの怒りか




「忘れたかった記憶です……」


「そうですね」


「私は……馬鹿です…苦しい別れだったけど、最期の彼の言葉を、彼の死に様を知っているのは、覚えていてあげられるのは私だけだったのに……」



内なる怒りは、


彼女自身に向けられたものだった。



「都合のいいように作り替えて、あまつさえ、彼が迎えに来てくれないなんて……そんな勝手な」



寂しく、響く声には


絶望がひしめく。



それでは悲しすぎるから…



「さくらさん」



ヨイヤミは


彼女を呼んだ。


彼女がざわっと


音を立てて答えると


ヨイヤミは言った。




「あなたは信じたかっただけだ」



「え…?」



「迅太さんを蔑ろにしたわけではないでしょう」



ヨイヤミの言葉に


彼女の心が浮き上がり始めた。


シャボン玉が空へと飛ぶように


ふわふわと立ち上る。


ヨイヤミは今にも弾けそうな


脆いシャボンの心を必死に守る。



「体、とても痛いでしょう」


ヨイヤミは頭上の天狗巣を


見上げながら彼女に尋ねた。



「はい…」



「苦しいでしょう」



「はい…」



「今まで病に負けず、一心に待ち続けた、あなたはそれほどまでに迅太さんを」


彼女の心を揺さぶる、ヨイヤミの理解。


「愛していたんですね」



彼女の葉から

雫がぽたぽたと舞い落ちる。



ヨイヤミは


とても穏やかで


とても優しげな声で


彼女に告げた。




「もう、楽になりなさい」





ヨイヤミは手のひらで


宙を仰ぐような素振りを


見せたかと思うとそのまま


指をぱちんと鳴らした。




するとどうだろう。


ザザザッと強い風が吹いた。


暖かく心地よい風だった。



まるで天狗のうちわで


扇いだような風だった。



まだ寒い冬だというのに


彼女の枝先の花芽は


あっという間に揺り起こされて


満開の花になった。



彼女が長年苦しみ続け


迅太の帰りを待ち続けた証


天狗巣もさっと無くなった。


体のきしむような痛みは潰えた。



苦しみ、痛みのない体…


夢のような体だと


彼女は心から安堵して


胸をなでおろす。




「体の痛みは消えた、さあ、あなたが今望むものはなんですか」



「…私が……望むものは」



彼女の中には、迅太の笑顔が浮かんだ。




【ヨイヤミCase One wit'ches broom⑧】





どうしたことだろう。


私には足が生えていた。


背中には大きな翼。


まるで迅太のような鷹羽根だ。



手には、私の証…


可愛らしい桃色の花が


たくさんついた桜の枝を持っていた。



白い道が続いている。


光り輝く道だ。


希望はどこにある?


足の向く先にある。


不思議なことにそう、信じられた。


そのうち、気持ちばかりが急く。



歩くことももどかしくなると


私は自然と、翼を動かし飛んだ。



唄をうたった。


迅太に気づいてもらえるように。



喉が張り裂けんばかり声を張り上げ


喉を大きく開いて


今まで歌ったどんな声より


美しい声をあげた。




すると、聴こえた。


確かに聴こえた。



「さくらっ!!」



霞む視界の中で


ひとりの天狗が


私目掛けて飛んでくる 。



翼……治ったんだ。


足も、しっかり


宙を蹴る。



山伏の白装束は


赤く汚れてはいない。


酷い怪我も、ない。


苦痛に歪む顔もない。



知ってる?


赤い顔なんて嘘。


長い鼻なんて嘘。



天狗は

人間と何ら変わらない、


無邪気な顔で笑うの。




私は桜。


川辺りに咲く小さな桜だった。



でも今は、


「迅太さん…っ」


宙を蹴る足がある。



「さくらっ」


欲しいものに伸ばせる手がある。




250年の時を経て


愛しい人と抱き合える身体を持った。






「…会いたかったっ!」


「もう、離さない」



あの辛い経験があったからこそ


私たちはきっとこれから


互いを大切に出来るでしょう。




「好きです、迅太さん…」


「俺も、さくらが好きだ」



かたく、抱き締め合い


迅太さんは私に口付けてくれた。



やっと通じた想いが


そこにはあったのでした。



【ヨイヤミCase One wit'ches broom⑧終】




・・あ・と・が・き・・



急に始まったヨイヤミ


第一回目終了です(●´ω`●)


お疲れ様でしたー♪



書きながらの投稿でしたので


ちょこちょこ修正を加えたり


お見苦しい間違いやらも


あったかもしれませんが


御容赦下さい。



ヨイヤミはシリーズ化して


時間があるときに


今回のようにだーーーっと


載せようかなあと思っています。



次回はどんなお話かな。


お楽しみに!


…してくれてる方いるんだろうか笑



幸介

ひとひら☘☽・2020-02-03
幸介
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羽根
愛してる
言いそびれた言葉
3つの宝物
後悔
幸せ
バネ
好きだから
再会
天の国
独り言
独り言



ヨイヤミは夢へと落ちた「彼女」を


じっと見つめて、立ち尽くす。



するとそこへ


漆黒の翼を持った男が現れた。



「ヨイヤミ、またお節介か」


「イザヨイですか」


「ああ」


静かな声で


イザヨイと呼ばれた男は


ヨイヤミの側へと降り立った。


そして彼もまた


ヨイヤミの見つめる「彼女」に


目を凝らし、そして呟いた。



「この桜…もうとっくに寿命が尽きてるな」


「ええ…」


「幾らお前でも、これは難しいんじゃねえの?」


ヨイヤミは


暫く黙り込んで俯いたが


やがて首を横に振った。



「救う方法は…ひとつではありませんから」


「そうか。まあ、俺は時が来るまで遠くで見守らせてもらうよ」


そう言ってイザヨイは

大きく翼を羽ばたかせて

ヨイヤミの元を離れた。



ヨイヤミは「彼女」の体に触れ


穏やかに、呟く。



「どうか、思い出したくない思い出の中の愛に気付いてください」



ヨイヤミには悲痛な


彼女の心が……思い出が


痛い程に伝わってきていた。





【ヨイヤミCase One wit'ches broom⑦】





時は無情にも過ぎた。


「ちょっと、そこまで」


そう笑って


出かけたはずの迅太は


お昼を悠に過ぎても


帰っては来なかった。



空が橙色の夕暮れに燃えていく。


それでも迅太は帰ってこない。


不安は募る。


「迅太さん…」


私は、祈る。


迅太の無事を。



過去の私と


現在の私が


無事を切に祈ったら


あるいは迅太は笑顔で


帰ってきてくれるのではないか


そう、私は信じた。


迅太が私の場所を


見失わないように


唄を歌い続けた。



迅太の好きな、私の声で。


透き通って空を突き抜けて


どこぞに居る迅太へと届けるように


喉が擦り切れるまで歌い続けた。





そして、満月が


ちょうど真上に昇った頃


予定通り、向こうの茂みが


ガサガサと物凄い音を立てた。



運命が、動き出す…。



転げ出てきたのは


真っ白な山伏の衣装を


真っ赤な血に染めた迅太だった。



腕を抑え、腹を抱え


口の端から血を垂らして


私を目指し来た迅太は


私の根に足をとられ


ばたりと倒れた。


息が荒い。



やがて、コプッと


真っ赤な血を吐いた。



私はこの時ほど


足を持たない自分を


伸ばす手のない自分を


呪った事はない。



「迅太さん…っ、迅太さん!どうしたんですかっ」


迅太は我に返り


這うように私の幹へと辿り着くと

私の木皮に触れ

途切れ途切れにこう告げた。



「さくら、時間が、ない…俺の言うことをよく聞いて」


「何、を…時間が、ないって、何…」


「里の天狗に、、見つかった」



奴らは死ぬまで追ってくる…。


いつか迅太が


悲しそうに呟いた掟を思い出す。


「わ、わたしのうろの中に身を隠して」


迅太が笑う。


苦しそうに笑って言った。


「俺がもう少し…小さきゃあ、な」



私のうろは小さ過ぎた。


迅太を匿うことも出来ない。



どうしよう


どうしよう



答えも出ないのに


同じ事ばかり繰り返す。




迅太は血だらけの手を伸ばし



私を落ち着かせるように


木肌を優しく撫でた。



「半刻もしないうちに…追っ手が、くる」


その言葉

迅太の目

酷い怪我


それは迅太の強い覚悟を感じた。


強く、悲しい決意…


私はこれまでに無いほど


取り乱して風も吹かない夜なのに


花いっぱいの枝を揺らせた。



「やだ、迅太さん、嫌っ」


「さくら、聞け…っ」


初めて聞く、迅太の荒がった声。


思わず震うと、枝がざっと鳴った。


「さくら、いいか…奴らが来ても声をあげるな、俺の名を呼ぶんじゃない、わかったか」


「無理です…迅太さんの名を呼んではいけないなんてっ」


「聞き分けてくれ…頼むよさくら、お前を危険な目に合わせるわけには…」



その時だった。



キーーーーンと

甲高い鳥のような鳴き声。


耳に煩わしく響く。




「もう来やがった…、いいか、さくら、絶対黙ってろよ」


その荒々しい喋り方とは

裏腹に

私に触れる手のひらは


とても優しい。



「さくら、好きだ」


迅太は私の木肌に


小さな口付けをして


とうとう、私から離れ…歩き出す。



待って。


行かないで。


迅太さん…


やだ。





声が、出ない。


迅太の好きな声は


喉に張り付いたように


響くことはなかった。




迅太の翼は折れ、飛べぬのか。


足を刺したか、うまく歩けない。



亀のような歩みの迅太に


13人の天狗たちは直ぐに追いついた。




「はっ、しつけぇなあ、折角幸せにやっていこうと思ってるのにさ…」


「お前に幸せなど訪れはしない」


「父ちゃんの地位なら、くれてやったろ?放っておいてくんないかなあ」


「いつ我らに牙を剥くとも知れん奴を捨ておくわけにはいかん」


「…だろうね」



迅太は諦めた様に笑った。


そして私をじっと見つめた。


私も、見つめ返した。




このまま時が


止まってしまえばいいのに。




「…ごめんな」


迅太は最期のひととき



そう呟いた。



私に視線を送りながら呟いた。



私は…迅太の言う通り


声をあげず、呆然と


ただその光景を見つめる。



全てがスローがかって見えたのに



「その時」は、瞬く間だった。



天狗の一人が


迅太に刃を振り下ろしたのだ。



肩から腹まで一刀両断にされると



迅太は音もなくゆっくりと


崩れ落ち、動かなくなった。




13匹の天狗たちは


迅太を斬り捨てただけでは飽き足らず


立派な鷹羽根をむしりとり


その亡骸を持ち帰った。



迅太を抱えた天狗たちが


飛び去っていくのを


私は見つめることしか出来なかった。



夥しい血と、無数の鷹羽根だけが



私の目の前には残されている。



ああ


私は……、何も



何も出来なかった。




迅太が遺した「好きだ」と「ごめんな」



何度も頭に響き渡る…。




私も、こんなに好きなのに


最期の時に


好きですと笑いかける事も


出来なかった。



こんなに、好きなのに…。




【ヨイヤミ-Case One- witches' broom⑦終】

ひとひら☘☽・2020-02-03
幸介
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天狗
天狗巣病
好きなのに
好き
小説
物語
ポエム
羽根
好きだ
ごめん
3つの宝物
後悔
何も出来ない




『席替え』




























































拝啓 神様

どうか

どうか勘違いであってください

お願いします

敬具


























______視線を感じる



いや、感じない



誰も俺のことなんて見てない



うん。誰も見てない



……と、思いたい



神に祈りながらそーっと横に目を向ける



_____っ



思わず目を逸らす



怖い



怖いぞ藤堂



授業中ってこと分かってないのだろうか



目だけでなく



顔ごと思いっきりこちらを向いている



なんなんだ



俺何もしてねーぞ



「この場合aは何kmになりますかー」



「藤堂」



『……』



…気づかねーのかよ



「おーい藤堂ー」



『っはい!!!』



「お前どんだけ瀬戸のこと好きなんだよ」



クラスに笑いが起こる



こんなこと言われても



藤堂は気にしないんだろーな



そう思いながら



チラッと藤堂の顔を見る



こころなしか



頬が赤いような気がした



『150kmです!』



「うん。元気はいいけど違うなー」



ドっと笑いが起こる



藤堂、絶対話聞いてなかっただろ



藤堂って馬鹿なのか



いや、話聞いてたら勉強できるのかも



藤堂のアホさのおかげで



この授業はみんなテンションが高かった



謎に見られている俺を除いて、だが



























































ー放課後ー





『瀬戸くーん?』



『どしたのーため息なんてついて』



え、俺ため息ついてた?



「…いや……」



たぶん疲れたんだと思います…



『なんだよー暗いなー』



あなたのせいですけどね…



「…さっさとやること終わらして

部活行きましょう」



めんどくさがりがアダとなり



藤堂と日直



放課後教室に2人になる羽目に



『…なんで敬語?』



「え」



普段話さない人と話す時って



敬語じゃねーの?



藤堂の中でタメ口は当たり前なのか



『同クラなんだからさー

タメ口で話すくらいいーじゃん』



「…了解」



『テンション低いなあ』



誰のせいだと…



『ま、いいや』



『私が日直日誌書くから

瀬戸くん窓の鍵の確認お願い』



「了解」



助かった



藤堂と日直とか



どうなることかと思っていたが



思ったより会話などの時間は少ない



というか藤堂は



俺が下の名前言いたがらないとか



テンション低すぎとか



もう気にならないのだろうか



まあ気にされてもめんどくさいから



普通に有難いけど



一通り鍵も確認した



黒板も綺麗にしてある



藤堂も日直日誌を書き終えたようだ



カバンに筆箱をしまっている



やっと部活に行ける



そう思った矢先



『瀬戸くん!カモン!』



……まじかよ



返事をする代わりに藤堂の元へ向かう



『お着席ください』



藤堂が俺の椅子の向きを変えながら言う



仕方なく席に着く



俺と藤堂が向かい合う形になった



『……』



「……」



2人の間に沈黙が走る



外で部活をする運動部の声が



遠くにいるはずなのに鮮明に聞こえた



どれくらいそうしていただろうか



世界中でこの教室だけ



時が止まったかのようだった



……気まずい



呼び出しといて黙ったまま



もう無視して部活行ってもいいかな



立ち上がろうとしたその時



『瀬戸くん』



……くそ、1歩遅かった



返事をする代わりに



目で続きを話すよう促す



藤堂にも伝わったらしい



『下の名前』



……げ



いや待て



〝教えて〟と



はっきり言われた訳ではない



だから言わなくても___



『瀬戸くんの下の名前教えて!!』



狙ってたのかってほど



俺の考えを見事に遮られた



今朝チャイムに邪魔されて聞き逃した事



俺がやり返された気分だ



実際そんな感じだし



「……なんで」



なんでそんなに知りたいんだよ



普通なら今は日直の仕事を終えて



部活に参加できている時間



参加できているはずだった時間



〝怒られたくねーな〟



部活のことばかりある俺の頭は



藤堂の話に集中することを拒否している



『知りたいからに決まってんじゃん』



「…名札見りゃ分かるだろ」



今朝思ったことをそのまま伝える



『だって読み方わかんないもん』



……そう来たか



「呼び方なら〝瀬戸〟でいいじゃん」



「恋人でもない友達なんだから」



『友達だから知りたいの』



……諦めわっる



なんだよ目キラキラさせやがって



悪気とか1ミリもなさそうだなこいつ



「……わかった」



藤堂の顔がぱあっと明るくなる



小学生か。



原因が藤堂とは言え



俺が遅れたって理由で



部員全員怒られるのは気が引ける



俺には苦渋の決断だった



「……か」



『なに???聞こえない』



顔中の血が沸騰したみたいに顔があつい



「……るか」



『ん?』



聞こえなかったのかよ



「……るか。瀬戸はるか!」



……恥だクソ



藤堂からの反応がない



目だけを藤堂に向ける



目を見開いて



閉じ忘れたみたいに口を開けて



じーっと俺の目を見ている



……今朝も見たな。このアホ面



『……冗談?』



ようやく藤堂が口を開く



藤堂はいたって真面目



分かっていても



その無神経さに少し腹が立った



「……るせー」



「本気だっつの」



〝遥か彼方〟の〝遥〟ではるか



〝瀬戸〟って呼びやすい苗字だから



〝瀬戸〟って呼んでる奴もいるけど



〝遥〟って呼んだら



俺が反応してくれないから



〝瀬戸〟って呼ぶ奴が多い



『可愛すぎっしょ!』



『ねえ、はるかって呼んでいい??』



「…いいって言われると思うか?」



『思います!!』



「……藤堂ってもしかして馬鹿?」



『はあ???どこが』



「いや全部が」



俺が間髪入れずに答える



『はるかのバーカ』



「……」



立ち上がって部活に行くフリをする



このまま行ってもいいかな



『ごめんごめん!瀬戸くんごめん!』



つい目を逸らす



一瞬本気で行こうかと思ったけど



本当は笑いこらえてること



ぜってー教えてやんねー



『瀬戸くん?』



「……んだよ」



今度はちゃんと言葉で返事をする



『…っとね』



様子がおかしい



さっきまでの元気はどこへ行ったのか



顔が赤い



わずかにではなく、本当に



茹でダコみたいだな



『あの、私ね____』



ー続くー

黒崎 遥馬・2020-03-17
独り言
Part2だから初見さん前の投稿みてー
小説
席替え
Part2
意味不すぎ
どうか暖かい目でご覧下さい((
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続く
まだ続くとはw
俺がびっくり((は
長すぎ
この写真出すためにかれこれ約50分広告を見続けた遥馬氏()頑張ったw
〜席替えシリーズ〜
小説___('-')



「さくらさん」


ヨイヤミは穏やかな声で


「彼女」を呼んだ。



すると彼女はとうとう


葉の内に溜め込んだ朝露を


ぽとんと落とす。


彼女の涙はなんと美しいことか。


それは月光を取り込んで


白い輝きとなり


地面へと潤いを与えた。




「久々に…呼ばれました、その名」


彼女はゆっくりと呟く。


ヨイヤミは彼女の幹を撫でながら


優しく尋ねた。



「さくらさんが私に巣を作ればいいと行った時、彼が慌てた理由を聞きましたか?」


「いいえ、気にはなったのですが迅太さんも言わなかったし、私も特別聞かなかったのです」


「そうですか」


「何か?」


「いいえ、話の続きを聴きましょうか」



含みのあるヨイヤミの言い方が気になったが


彼女は話の続きを紡ぎ出す。



しかしそれは、


崩れた幸せの姿だった。






【ヨイヤミ-Case One- witches' broom⑤】





「さくら、さくら!」


私の上で昼寝をしていた彼は


突然起き上がり


興奮気味に私を呼んだ。



「どうしたんですか」


「お前、花芽が膨らんできてるぞ!」


「え、もう?」


「こんなに寒いのにすげえや」



無邪気に笑う迅太に


自然と私の頬も綻ぶ。




凍てつく寒さ


ちらつく雪


ぎゅっと木肌を閉じて


皮を固くさせ


寒さに耐え忍ぶ季節。





だけど私は春の足音を


全身でしっかりと


受けとっていて


知らず知らずのうち


花芽を持たせていたのだった。



迅太は私の花芽を


ちょんちょんとつつく。



くすぐったくて


心地よくて


私はくすくすと笑った。



「なあ、いつ頃咲く?」


「4月になったら咲きますよ」


「へえ、そうかい、俺にも見せてくれるかい?」


「迅太さんの為に咲きますよ」


「また恥ずかしいことを…照れるだろ」


「照れた迅太さんも素敵ですよ」


「馬鹿言うな、さくらの声の方が綺麗だ」


「そんなこと…ありません」


私はとても幸せだった。


ふざけ合っておどけて笑って


その中に本音を散りばめて


それを噛み締める。



迅太は私の全てを受け入れてくれた。


迅太は私の全てだった。



迅太が私の元へ


どちらかの命潰えるまで


側にいてくれるように



迅太が私を


もっと信じてくれるように



迅太が私を


もっと必要としてくれるように




私は太い根をぐんと伸ばし


細い根を張り巡らせ


土の中の微生物が作り出した、


山の恵みをいただいた。



周りの木々に覆いかぶされて


日光浴も出来なかった私の体は


迅太と過ごしたその1年弱の間に


驚くほど成長していた。





今年は栄養をたくさんとった。



迅太が楽しみにしてくれている


満開の花もきっと


これまで咲いたどんな桜より


美しく恋の色に燃えるだろう。


私もその時が楽しみだった。




「なあ、さくら」


「はい」


「歌」


「また子守唄ですか?」


「今の気持ちを唄にして聴かせてくれ」


「難しいこと言いますね」


「出来ないかい?」


「いいえ、唄います」




言葉で告げるのは


とても難しいから。


唄に乗せて届けたい。



迅太に、ひとりじゃないと


私がいると伝えたかった。



私は葉をさらさらと風に揺らしながら


透き通るような声を細くあげた。






さくらのはな じんぷうにまう


ひとひらのかべん かぜ ひとつ


したうのは あなたひとり


こいのうたを ここでうたう



ひとりでいきていた


ふたりであったとき


とびら ひらきはじめたよ



ずっとともにいたいよ


ずっとそばにいたいよ



ともにいて


そばにいて







歌っているうち


私の声は涙に掠れた。


こんなに想える者と


出逢えた事が嬉しい。



迅太はゆっくりと


手を打つとこう言った。




「綺麗な歌だ」


「こんな唄でよかったんですか」


「最高だよ、心に染みた」


「よかった」



私は笑った。


迅太も笑った。


二人で笑い合った。





「4月が楽しみだな」


「そうですね」


「早く育てよさくらの花芽ー」



迅太はまるで


眠る我が子を見るような


愛しそうな目で花芽を見つめ


またこちょこちょと


それをくすぐった。




そうして夜は更けて


迅太は私の幹に背を預け



眠った。



眠った、はずだった。



それなのに。









ちゅん、ちゅん



私の上で雀が鳴く。



やけにうるさい。





私は半ば強制的に



眠りから覚めて



混乱状態に陥った。





「や…だ、何、なにこれ」





私の周りには



夥しい血と



鷹のような羽根が



散らばっている。





「迅……っ迅太さ、迅太さんっ!!」



あの優しい声は返らない。



「うそ、うそ!迅太さん…っ」



何度呼んでも


迅太の姿は見えなかった。





目の前に舞う羽根は


迅太のもの?



この血も迅太の、血?


誰に…?


生まれ里の……天狗だ。



全てが繋がる。



だけど、だけど。




「ちがう、ちがうちがうっ迅太さんー…っ」




そうよ、違うはず。


だって迅太は言ったもの。




私の花が見たいって。


いつかさくらに巣を作るって。




待てばきっと必ず


帰ってきてくれる…。



私は身体を大きく大きくしましょう


迅太が帰ってくる、その時まで。




そうしたらきっと、きっと迅太は



「おー、でかくなったな!さあ巣を作ろう」



そう言って無邪気な笑顔を


私に向けてくれるはずだから。



【ヨイヤミ-Case One- witches' broom⑤終】

ひとひら☘☽・2020-02-03
幸介
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「ぐ、ぐへぇ…」


配られた楽譜は

32分音符と16分音符の連符で

真っ黒に埋めつくされていた


まぁ、しょうがない

私、琴里(ことり)は

フルートという装飾専門の楽器の

担当なのだから


『何だ琴里。お前すっげー声出てたぞ』


おかしそうにクスクス笑うのは

サックス担当の

私の幼なじみである冬夜(とうや)だ


「見てよ!この連符の数!」


私はムスッとした顔のまま

彼の目の前に楽譜を突き出した


この楽譜は、

今年の夏に行われる

別称『吹奏楽の甲子園』である

全国吹奏楽コンクールの

今年の私たちが吹く課題曲

…といっても、

私たちは弱小校なのだが……


『うっわぁ…こりゃやべーな……』


「でしょー?どれどれ冬夜のは…うっわメロディばっか!」


『ザンネンでしたー!譜読みしやすくて良いわぁ』


「うっわサイテー」


なんちゃ言って

私といる時の冬夜はこんなんだけど

基本コイツはモテる

根はいい奴で大体優しいし

頭良いしスポーツできるし

オマケに背も高くて顔も悪くない

つまり、完璧人間


……な・ん・だ・け・ど・ね?


私に対しての対応は

かなりガキっぽくて

コイツのどこがモテるのか

まったくもって理解できんのよ


ま、私もコイツといる時は

気楽だから良いんだけどね


まぁ、そうは言っても


『冬夜くぅーん。ちょっと来てぇ?』


ってまぁ、こんな具合で

彼と喋っていると

いつも女子の誰かがチャチャ入れてくる

そして、大抵の場合

その女子はキッと私を睨んで

その後、彼に猫なで声になるんだけど


……はぁ、女子ってホント…


「めんどくさ…」


心の底からそう思う


それでも不思議なことに

こんな風にクドーく

敵意むき出しにされていても

今まで嫌がらせの類は

一切受けたことが無かった


ただ私の何かの運が異常に強いのか

それとももしかすると冬夜が……


とか思ってはみたけど、

まぁそれは無いだろう

あいつは根っから鈍感だ

自分に向けられる好意に

全然気付かない


「冬夜ってモテるよねぇ」


ってなことを話した暁には


『は?お前どっか打った?』


なんて言われる始末

……もう二度と言ってやんねぇよ


とかまぁさておき、

冬夜と私はごく普通の友達で

友達以上の好意はないと思ってた











……あの、本番1週間前までは













その日は、突然やってきた


「無い!無い!私の楽譜が無い!」


あの日、冬夜と見せ合っていた

大事な要点が沢山書き込まれた楽譜が

部室に行くと失くなっていた


別のバインダーとかに

間違えて入れたのかもと思い

2年前の中一の頃の譜面挟みも

すみからすみまで見てみたが

ある気配は無かった


「どうしよう……」


情けなくなって、

グッと唇を噛む


今年は、弱小校ながらに

みんなよく頑張ったと思う


中三の卒業の年になって

ようやく長年埋まっていた

銅賞の沼から脱出できそうな

……そんな希望のある

コンクールだったのに……


そのまま私は

その場に崩れ落ちて

しゃくりあげながら

静かに泣いた


ただ、みんなに申し訳なかった


『きっと琴里ならできるよ!』と

励ましてくれた顧問の先生にも


『絶対金賞獲ろうね!』と

笑いあった仲間にも


そして…


『今年は最後だし、最後まで頑張ろうな』

そう言って笑っていた冬夜にも


私のせいで潰してしまうのかと

ぎゅっと胸が苦しくなった


と、その時


『アハハ!これでアイツもどうなるかなぁ?』


『どーせぐずぐず泣きながら冬夜くんに頼んじゃない?』


『うっわみっともねぇなぁ』


微かに聞こえた

廊下での話し声


そっと音楽室のドアの隙間から

外を覗くと


「……え?あれって…」


彼女たちの1人が手に持っていたのは、

紛れもなく私の楽譜


『これ、どーする?』


『バラバラにして、音楽室のゴミ箱に捨ててやるとか?』


『それべそかきながら拾い集めるんでしょ?』


ケラケラゲラゲラ

可笑しそうに笑う彼女たち


恐怖で、私の身体が震える


『ウザかったんだよ、ホント。冬夜くんの彼女振りやがって』


『冬夜くんも冬夜くんよ。私たちのこと睨んでさー』


『アイツに手出したら許さない、でしょ?』


え、うそ…

アイツがそんなこと言うわけ……


『ん?アンタ、何覗き見してんの?』


ふと、その内の1人が

私と目が合った


最悪だ


気付かれた


気付かれたからには隠れてもいられないので

彼女たちの前に進み出る


「……その楽譜、返して」


私は恐怖心を悟られないように

彼女たちの目を見て言った


『返してもなにも…ねぇ?』


ニヤニヤする彼女たち

正直、私がよく知らない人たちだけど

しつこく冬夜に付き纏っている三人衆


「それがなきゃ困るの……」


『へぇ?どう困るのぉ?』


ニヤニヤした顔が崩れないまま

彼女の手が楽譜の端に伸びる


そして、ゆっくり


それでも、着実に


楽譜は、ビリビリと


まるで見せしめのように


破られていく


「返してっ!」


私が楽譜に手を伸ばしても

彼女たちは、自分たちの手渡りで

ヒョイヒョイとそれを交わす


そして、数分後


「っざけんな……」


散々動き疲れて、

取り返す体力も無くなって

絶望感のどん底にいた


『あれれ?もう終わり?』


その言葉が屈辱だった


あんなに練習頑張ったのに…

みんなに迷惑かけたくない…


色々な思いが交差して

涙が出そうになった


すると、その時


『何してんの?お前ら』


聞き覚えのありすぎる声


「……冬夜ぁ…」


涙でぐずぐずの私の顔を見て

彼は顔色を変えて、私に駆け寄ってきた


そして、さっきまで

私の楽譜をビリビリにしていた人たちを

ギッと睨んだ


彼女たちは、ビクッと肩を震わせる


『お前ら…言ったよなぁ…?』


空気を震わせる冬夜の声が、低い

これまでないほどに、低くて重い

……間違いない

これは…

(冬夜、もしやものすごく怒ってる…?)


そう

あの無自覚天然タラシ冬夜が

自分のことのように

……いや、むしろ

自分のこと以上に

ものすごく怒ってる


『え、えぇっと…その……』


しどろもどろになった彼女たちは

やがてその楽譜のちりを手放して

バタバタ去っていった


『……これ、もしかして』


さっきの声色とうって変わって

いつも通りの落ち着いた声に戻った冬夜


……の、はずなのに


『これって、課題曲の…あれ?琴里、聞いてる?』


やばい

ものすごく優しい声に聞こえる


しかもなんか

ものすごく胸がドクドクいってる


え、何これ?


いや本当に何?


『……とり、琴里?』


「ひぇあっ!はっ、ふぁい!」


うっわなんか変な声出た

最悪…


それに対して、

やっぱりクスクス笑う冬夜


そしてやっぱり、

ちょっとムカッと…あれ?来ない


それどころか…


『アホだなぁ、琴里って』


そう言って笑うアンタに

……ちょっと、ドキドキするなんて














そんなこんなで、1週間後


ついにやってきた

コンクール当日


結局あのバラバラになった楽譜は

器用な冬夜が

パズルのピースみたいに

全てをくっつけてくれた


そしてこの1週間


本番へのドキドキと

冬夜へのドキドキが入り交じって

ずっと緊張しっぱなし


おかげで練習が全然だったけど、

最終確認でバッチリだったし

どうにかなるでしょという

謎の緩さが出てきた

まぁ、ちゃんと頑張るけど


そして本番


課題曲は、三拍子のワルツ


ゆったりとしたオーボエソロから始まり、

フルートの私にそのままソロが引き継がれて

そのまま全体にメロディが移行する

といった少し難易度の高い曲


自由曲にはサックスのソロがあって、

冬夜お得意のハイトーンが

会場に響き渡る



演奏が終わって

ひな壇から楽譜や譜面台を

撤収している途中、

冬夜がふと私の方を見て

ニヤッと笑った


『成功したな』


そう言わんばかりの顔で

私は思わず小さく笑ってしまった


そしてまた、胸が高鳴る


……なんだか、苦しい


大体その正体には気付いていた

…でも、気付かない振りだ

しょうがない

彼は高嶺の花だ


……私は、釣り合わない



コンクールの結果は、

なんと金賞


さすがに支部まではいけなかったけど

何年もはまっていた銅賞の沼から

ようやくの脱出


発表された時、

私たち部員は

みんな泣いて喜んだ




帰りは、会場で解散になった


『一緒に帰らない?』


と、冬夜に誘われて

特に仲良い友だちもいない私は

自分の気持ちを抑えながら

頷いた


しばらく2人で

駅の方へ歩いていると


『…今日お前、無口だよな』


少し、気に食わなさそうな声が

隣から聞こえた


「え?あ、ごめっ……」


『いや…最近ほとんど話さないし、俺なんか悪いことしたのかなって』


声色からして、

結構落ち込んでいるみたい


「……ごめん、冬夜は悪くないから」


『じゃあ何でそんな風に元気なさそうな態度とるんだよ』


今度はイライラしたような声


私の対応は、

冬夜が嫌になるものばかりなんだと思う


……でも


「…しょうがないんだよ」


『え?何が』


「冬夜が助けてくれた日から、私なんかおかしいの…」


やっぱり黙っておけなくて

立ち止まって

顔を上げて、冬夜の目を見る


それに応じるように、

自然と冬夜の足も止まった


私は、自分の頬が紅潮していくのを

感じたけれど

そんなのお構いなしに、


「いつもは何ともなかったのに、急に冬夜の行動とか表情とかかけてくる言葉とかにドキドキして、冬夜のせいで自分が自分じゃないみたいになってるの」


一気に言い切る


対する冬夜は

あまりの私の早口にポカンとしてて

意味がわかってくると、

徐々に顔が赤くなっていった


『おまっ…それって…』


手の甲で口元を抑えて、俯く彼は

みるみる耳まで真っ赤になっていた


「……どうして私より冬夜の方が真っ赤なの」


私が訊くと、耐えられないとばかりに

彼が首を横に振る


『だって…ずーっと片想いだと思ってたのに……』


彼の言葉に、「へ!?」と

すっとんきょうな声が出てしまった


片想いって、もしかして……


「……もしかして、冬夜って私のこと…」


『ずっと前から好きだわ、ばーかっ!この鈍感琴里!じゃなかったら、あの時あんなに怒ったりしねーだろ!』


「はぁ!?鈍感ってなに鈍感って!アンタのが鈍感じゃない!」


ゆでだこみたいに真っ赤な顔で

道の端っこで言い争う中学生2人


傍から見れば、変な光景だろう


ふとそう考えて、

言い争いをやめる


冬夜も自然に

口を閉じた


そのままおもむろに

2人で近くのカフェに入る


「……ねぇ」


カプチーノが来たところで、

私はまた話を切り出した


『何だよ』


それに応える冬夜


「あの3人が言ってたけど…冬夜って、私に手出したら許さない…的なこと言ってたの?」


『!?……ゴホッゴホッ』


思い切り冬夜がむせ込む

……本当だったらしい


「まさか鈍感冬夜があの人たちの私への敵意に気付くとは……」


『お前なぁ…好きな奴に関して敏感にならない奴がいると思うか?』


サラッと『好きな奴』呼ばわりされて

今度は私がむせる


「今のは…反則…」


キッと睨むけど


『そんなことしても可愛いだけだから』


これまた爆弾発言飛んでくる


「……やめて、ものすごく心臓に悪いの」


そんなことを言うと、

テーブル越しに頭を撫でられる


『そういや…付き合うんだよな?俺たち』


「へ!?待って、今年受験だし、多分高校も……」


『受験だろうが高校分かれようが、何年も片想いしてきたこっちからすりゃ全然問題ねーよ』


いつものニヤッとした笑みに

何か甘いものを足したような笑顔の冬夜


……完全に負けた


そう思って、


「じゃあ…よろしくお願いします」


私は、ドキドキを抑えられないまま

小さな声で、そう呟いた

零-Яei-・2020-02-24
小説『バラバラ楽譜が繋いだ糸』
episode0
シリーズ
に、できたらな
吹奏楽コンクール
吹奏楽
フルート
サックス
片想い
独り言
物語
小説
好きな人
彼氏

闇も光も同じ…だって私は私

嘘偽りない表裏一体の同士達

いつだってどこだって、きっと

この世界を歩いて行ける

ーアリスー

ひまたん(。>ω<)ノ@7月低浮上気味・2021-10-12
アリス
なんの
シリーズ
だったんだろう
投稿者
すら
分かってない
ポエム
特別な夜
それは
綾鷹でした

替え歌総選挙!
ランキング発表!!!

皆さんお待たせしました…
永く続いた替え歌の

人気ランキングを発表します。

単体と総合でランキングを分けて

1位の歌詞はフルバージョンを書こうと
思います。

まずは単体からの発表です

単体は贈り物と再投稿分は含みません

最下位ふたりはプリキュア 6

16位プリキュア5gogo、スマイル 7

14位スイート 9

13位プリキュア5、フレッシュ 11

11位ドキドキ 12

10位ハートキャッチ、ハピネス 14
   スプラッシュ        

7位プリンセス 15

6位魔法使い、ティンクル 16

4 位ヒーリング 17

ココまで熱くも無いランキングでした
やっぱり見て見ると最初の方は人気無かった
様に見えますね…

それでは第3位!19票
トロピカルージュプリキュア

まさか…ピカチュウのネタ満載のが
3位になるとは思いませんでした。
因みに本編は見たことありません。

続いて…


第2位!21票

キラキラプリキュアアラモード!

個人的にもコレが1位かな?って思いました。
ホント少しの落差で2位と言う結果に…
この歌詞はノリで書きました。

生えなる…

第1位は!?








ハグっとプリキュア!!21票+贈り物

やっぱりハグは良いですね。
愛を感じます。
1位と2位の落差は贈り物方を優先させて
こちらにさせて頂きました。
替え歌の方は愛も欠片も感じられませんが…


続いて総合です
実はここら辺で心に折れかけてる
投稿者です。
んな茶番はほっといて

最下位ドキドキ 12

16位スイート 14

15位魔法使い、ティンクル 16

13位トロピカルージュ、スマイル 19

11位アラモード、ふたりはプリキュア 21
   プリキュア5

8位スイート 24

7位スプラッシュ 26

6位プリキュア5gogo、プリンセス 30

4位ハートキャッチ 31


単体と比べると全く違う
結果になってきました…
さてさて…

第3位は!
32票!
ヒーリンぐっとプリキュア!

個人的に1番好きなプリキュアシリーズです
替え歌もシンプルにかけてソコソコ
良かったと思いました。

次は第2位…


36票
ハグっとプリキュア!
いやー…ここでも第2位と恐ろしい
位置に付きました。
再投稿分無かったらぶっちぎりの1位でした。

生えなる!

第!

1位は!?





43票!


フレッシュプリキュア!

やっぱりカオス…
リセッシュと掛け合わせて
見ました…
やっぱり狂った歌詞は人気が高かったですね。



というわけで…
ココまで見てくれた皆さん
ホントに、ホントに…

ありがとうございます!

替え歌シリーズはコレから続きますが…

末永くよろしくお願いしますね。



え?






ヤダって?




もうハゲは十分??



いやいや…


今マシンガンドールポエムの替え歌
ネタが出来てるので…


今度からボカロシリーズが始まります!

え?もうお腹いっぱいだって?


大丈夫!大丈夫だよ!

だって






人間、限界突破出来るから!





ホントココまで付き合ってくれて
ありがとうございます






というわけでて

これからもよろしくお願いします。

ひまたん(。>ω<)ノ@7月低浮上気味・2021-10-24
替え歌
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ハゲ
ここら辺で
結び目
だと
思う
ポエム
ホント
ありがとう
また髪の話ししてるの?(´・ω・`)
ハロウィン
ならぬ
ハゲウィン
独り言
です
プリキュア
シリーズ

あの日、

空に恋うて

空を撮って

旅する僕は









空を見上げて嬉しそうに笑う君の姿に、

生まれて初めての恋をしました

零-Яei-・2020-02-24
小説『夏空の下、君に恋う』
最初の1文
シリーズ
にしたい
小説
空を見上げて
ポエム
独り言
好きな人

笑ってる奴が

泣いてる奴を笑うなよ___。

( ・᷄ㅂ・᷅ )_кано・2020-04-18
シリーズ
___໒꒱・

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