Arha🍁・2018-10-05
谷川俊太郎
二十億光年の孤独
合唱
二十億光年の孤独
谷川俊太郎
人類は小さな球の上で
眠り起き そして働き
時々 仲間を火星に欲しがったりする
火星人は小さな球の上で
何をしてるか 僕は知らない
(或いは ネリリし キルルし ハララしているか)
しかし時々 仲間を地球に欲しがったりする
それは まったく確かなことだ
万有引力とは
引き合う孤独の力である
宇宙はひずんでいる
それ故 みんなはもとめ合う
宇宙はどんどん膨らんでゆく
それ故 みんなは不安である
二十億光年の孤独に
僕は思わず くしゃみをした
万有引力とは
引き合う
孤独の力である
火星は思いのほか遠くにあって
繋がっているのか定かでない
ぷつりぷつり途切れながらの交信は
かなりの時差で繰り返される
君はネリリし キルルし ハララしているか