別れ際
君の口から零れた
「待ってるね」ってその瞬間
君への淡い恋情が
痛く足掻いた
月ヶ瀬 燈理・2022-03-25 #久遠に祈る想い #見透かした透明を一つ。 #蕾が綻ぶ頃 #君の隣 #同性愛 #異性愛 #ポエム #恋 #愛 #片想い #独り言 #好きな人 #大切な人 #君 #人生 #失恋 #ありがとう #叶わない恋 #先生 #辛い #苦しい #寂しい #死にたい #会いたい #詩 #幸せ #タグお借りしました #今宵の糸を抱いてさ、 #同僚 #教員志望 #待っててね #初恋 #学校 #楓のおすすめ投稿
私だってお洒落したい。
頭の中にあるのはいつも
可愛いふりふりのお洋服。
現実は、
代わり映えもしない仕事着。
頭を掠めるのはいつも
綺麗なネイルアート。
現実はガサガサの
荒れた指先。
いつもおしゃれを
我慢してた。
私が選んだ仕事。
だから、仕方がないって
諦めていた。
【ペディキュア】
後輩の伊原。
彼とはウマが合う。
どんなに沈んだ朝を迎えても
休憩中の彼を見ていると救われた。
人を笑わせることが
本職のように
時には自らの身を切って
人を笑顔にさせる彼の事を
私はとても尊敬している。
いつの間にか
休憩中も一緒
呑みに行きたい時も
必ず伊原に
声をかけるようになった。
未だ、嫌な顔はされたことがない。
彼は、私の事
どう思っているのかな。
互いの家まで行き来する間柄になっても
手、ひとつ出されないことが
少しだけ……不満だった。
「伊原はさぁ」
私の自宅で宅呑み。
私はハーフパンツに
ボーダーの半袖。
実にラフな格好で
缶のままの麦酒を呑みながら
伊原を呼んだ。
「えー?なんすかぁ?」
気の抜けた返事。
とろんとした眼差しで
私を見つめる彼が可愛い。
「どんな子が好みなの?」
「んー……尊敬出来る人ってのは絶対条件かなぁ」
「あとは?」
「可愛い人」
もしかしたら尊敬は
されているのかもしれないけれど
可愛い、は、ない。
うちの会社の一番人気
仲本美麗。
可愛いって言ったら
あのへんかな。
酔いも手伝って
私はツマミの枝豆を
口に放り込みながら
彼を質問攻めた。
「気になる子いるの?」
「…えー?なんなんすか」
今、笑って誤魔化された…。
平常心を保ちながら
伊原に食らいつく。
「白状しなさい」
伊原は少しだけ考えて
やがて締りのない顔で笑った。
「います」
「会社の子?」
「…はいっ」
「そう」
やばい。
落胆の色……隠しきれないや。
いつの間に私
伊原のこと
こんなに好きになってたんだろう。
言葉に詰まると
伊原は私の気持ちを
知ってか知らずか
身振り大きく
「あ!」
思い出したかのように
こう言った。
「ね、松山さん、前にネイル、やってみたいって言ってませんでした?」
「あー…言ったかも。でもうちの会社禁止だからね、諦めてる」
「だからね、俺」
ゴソゴソと手元にあった鞄を
漁り始める伊原に興味を唆られる。
麦酒を口に含みながら
横目でそちらを見やった。
「じゃーんっ!」
伊原が取り出したのは
マニュキュアだった。
「なにそれ?」
「え、マニュキュアっすよ」
「それはわかるよ、なんで?ネイルどうせ出来ないよ」
そう告げると
ふっ、ふっ、ふっ、ふっ、
わざとらしく笑い
伊原はチチッと舌を鳴らした。
「松山さん、世の中にはね」
「ん?」
「ペディキュアってものがあるんすよ!」
ペディキュアといえば
足の爪にアートを施すあれだ。
「うん、知ってる」
あっけらかんとそう言った。
すると、伊原は
とんでもないことを言い出す。
「あ、知ってるなら話早いっす。さ、松山さん、足!貸して♪」
元バレーボール部……
ふくらはぎも太ももも
なんなら足首すら太い。
こ、この足を…伊原に差し出せと!?
「さあ、さあ、さあ!」
そんなの、恥ずかしくて
断固拒否に決まってる。
「や、やだ!なんで!」
「やり方動画で勉強したんで!大丈夫です!ドンと来い!」
「やだよ!やだ」
「えー……なんで嫌がるんすかぁ」
「伊原ねぇ、私の足なんか見たら女の子のイメージ狂うから、そんな冒険、やめときなよ」
自分で言いながら
ほんの僅かに悲しくなった。
でも
「せっかく松山さんに喜んでもらえるかと思ったのにな」
何故だか伊原の方が悲しそう。
いつもあんなに笑顔な彼が
まるで怒られて
しゅんとしてるチワワみたいな
顔つきで項垂れた。
こんな顔、反則。
「……まぁ、少しだけなら、塗らせてあげてもいいよ」
気がつけば
母性本能をくすぐられて
そんなこと呟いていた。
「え!?いいんすか!やっっったぁ!」
何が楽しいんだか。
ガッツポーズまで決めちゃって
まるで試合に勝った、
サッカー選手みたいに喜ぶ。
そして、私の足はあえなく
伊原に差し出された。
「ま、松山さんの足って意外と」
「何よ」
「キレイな足っすね」
意外と、は余計だけれど
きれい、その言葉に
心は喜びを隠せない。
とくとく、と
はやる鼓動がうるさかった。
私も知らないような爪のケア
素早く終えた伊原は
ソファに座る私に見下ろされながら
笑顔で尋ねた。
「松山さんはどんな色が好き?」
「……黒」
本当はピンクが好き。
でもこの歳になって
ピンクもないかなって
少し、恥ずかしいなって
せっかく見栄を張ったのに。
「はい、嘘ー!松山さん、ピンク好きでしょ」
会社でも、言ったことがない
私の好きな色を知っているのは
どうして。
何となく聞けない。
口ごもっていると
伊原は一層に笑う。
「ピンク塗っていいっすか」
「……うん」
「松山さんには絶対ピンクって思ったんすよねー…」
そう言いながら
伊原はあっという間に塗りあげて
どこから調達したのか
オーロラフィルムと
ラメ、ストーンチップ
次々と爪にあしらっていった。
彩られていく私の爪。
今までしたくても
出来なかったこと。
諦めていたことを
大好きな伊原が
一生懸命に
やってくれている。
この感動が、わかる?
涙さえ、出そう。
「よし、こんなもんでどうっすか」
最後にトップコートを塗って
伊原は私を見上げるけれど
私にはもう、涙に滲んで
伊原が見えない。
出来上がったペディキュアは
わたあめみたいに可愛くて
きらきらしてた。
「え!?何!?そ、そんなに嫌だった!?」
突然の私の涙に
伊原は焦燥した。
いつもの敬語口調もどこへやら。
タメ口で私に近づく。
「ねえ、ごめん松山さん」
ソファの隣にちゃっかり腰かけて
私の頭まで撫でてる。
「ちがう、ちがうよ伊原」
「え?ちがうの?」
「……嬉しいんだ、ありがとう」
そう伝えると
伊原はこの上なく
嬉しそうに笑う。
ああ、どうしよう。
伊原が欲しいや。
言わないつもりだった。
職場でギクシャクするのも
嫌だったし
伊原が私のことを
どう思っているのかもわからない
年の離れた彼と
やっていく自信もなかった。
でも。
今はそんなの
どうでもいいとさえ思える。
「伊原……」
これは酒の勢いなんかじゃない。
「なんでしょ?」
きょとんと眉をあげて微笑む伊原に
大きく息を吸い込んで私は、告げた。
「私……伊原が、好きだよ」
「……え、マジっすか」
「うん……マジっす」
彼の施したペディキュアが
私の足先でキラキラと
輝いて笑った気がした。
ひとひら☘☽・2020-05-17 #幸介 #幸介による小さな物語 #ペディキュア #あの日に戻りたい #後輩 #先輩 #同僚 #職場 #会社 #ポエム #ネイル #ネイルアート #独り言 #足 #バレーボール #バレーボール部 #マニュキュア #大好き #好きな人 #幸介の短編集 #誰かの実話かもしれない物語 #心臓、跳ねた #ふとした瞬間 #死にたい #ポエム #黒 #伊原モデルibr #恋 #好きな人 #私の本心