#引退

夏が終わって秋になり、

青々しかった葉っぱも

だんだんと寂しさを纏い始め、

部活引退までの期限を告げている。

1年前お別れした私の大切な人達は
今どこでどんなことをしてるんだろう

今日が終われば、

貴方と一緒にいられるのもあと23日。


着々と近づいてくる引退に、

もう少しだけ目を逸らさせて。

あの夏の部活終わり
校庭の木の下に立って
3人でどうでもいい話をした
そんなことを思い出して
季節が巡り満開になった桜を
私は1人眺めてます

人はものすごいスピードで
出会いと別れを繰り返していく
たとえそれが望まない別れでも
みんな当たり前に去っていく
私だっていつかここを去る
絶対その時は来てしまうから
私はせめて、先輩みたいに
笑って泣いて悔いなく
卒業引退できたらいいな

どれだけ学校が嫌でも
頑張って行ったら
週5で先輩に会える
だからこの2年間
1日も休まず学校に行った
でも、もういない
水曜日、廊下で偶然会って
週5が週6になるなんて特別も
もう訪れない
きっと、今年1回くらい来てくれて
それっきり、会うこともなくなる
そんなの嫌だよ
先輩と会いたい、話したい

1ヶ月後
もうここに先輩はいない

｢早く高校生になりたい｣
いつもそう言っていた先輩が
引退式のあの日
｢引退したくない｣と呟いたこと
私、嬉しかったんです
｢早く高校生になりたいんじゃ
なかったんですか？｣
私がそう聞いたら
｢そうなんだけどさ｣って
答えられなくなった先輩
あの時、私だけじゃなく先輩も
笑いながら涙目になっていたこと
ちゃんと気づいてましたよ
いつでも遊びに来てください
その時は約束通り
いつもの笑顔で歓迎しますから

これからもずっと
同じ場所で
同じ時間を過ごしたかった

一週間後にはもう貴方の姿が
見られないなんてね

この幸せに終わりが来るなんて
あの頃は想像もしなかった

先輩の歌を聴けるのは
先輩の隣で笑えるのは
先輩が私の演奏に合わせて
ドラムを叩いてくれるのは
あと何回だろう
必ず最後の時はやって来る
でも、それがいつになるかなんて
私には分からないから
｢これが最後かもしれない｣って
その一瞬を噛み締めながら
私は今日も先輩の隣で生きる

引退式まで、まだあと1週間くらい
残ってるような気がしてたのに
先輩が戻ってきてからの1ヶ月が
あまりにも楽しくてあっという間で
一緒に過ごす時間が
あと2日しかないなんて信じられない
急いで先輩への手紙を書いてるけど
思い出が多すぎて
何を書いたらいいのかも分からないし
考えると涙がこぼれてきて
全然手が進まない

一人じゃここまで来れなかった
きみに出会えてよかったよ

ありがとうありがとう
ケンカもしたけど
いつも味方だってわかってた
ありがとうありがとう
これからもずっと
その笑顔で見守ってて

この2年間
先輩がいることが当たり前で
先輩の隣にいる時間が私の宝物だった
終わりが、明日が来ることなんて
一度も想像しなかった
分かっていたのに
考えようとはしなかった
気が弱くて臆病だった私を
いつも傍で守ってくれた
私が1人で歩いて行けるようになっても
一歩引いたところで見守って
困った時には誰よりも先に助けてくれた
そんな、先輩がいなくなって
自分が最上級生になることが不安だった
誰よりも大好きで
私にとって1番特別な人がいなくなること
それが何よりも怖くて苦しかった
それでも先輩は前を向いて進んでいく
だから私もせめて最後くらいは
その後押しをしたい
私はもう十分すぎるくらいに
たくさんのものを貰ったから
私も前を向いて
先輩がいないことが
当たり前になった日常を
先輩とは違う未来を
強く進んでいく