ぷら・2021-08-07
或日の記
この行為に、意味があるのか。
意味がなければ、意義もないのか。
容易くパチンと割れる
薄膜に空気が詰まっただけの
種子を持たない果実を育てる。
そんなものなのだろうと
虚しく思いながらも。
感性と知識を。
言葉と表現を。
実を結ぶか否かではなくて
それらは光合成そのもので。
本を開いて無知を知る。
筆記具の中に地図を見付けて
目的も終着もなく旅に出る。
砂漠に落ちた箒星の燐光を
きっとずっと尋ねて回る。
きっときっとそういうもの。
周りの理解は得られなくても
それは求める理解じゃない。
存在の証明なんて
息を吸って吐けばいい
とろとろに溶けた思考
液状化して、捕まらない
自由だね
形がなくて
何も分からないや
それでいいね
クッキー缶へ大事にしまった
ラムネのビー玉みたいな
あぶく、ぷかぷか、ぱちん
微睡みが割れて弾けるカラフル
目が覚めちゃうわ
螺旋階段を模した書庫は宇宙に似ている。
天井も床も見えない壁は一面全て本で埋まり、踏みつける階段すら背表紙で埋まる本棚なのだった。
始まりも終わりも見果てずに、昇って来たのか降って来たのか、もう判らない。
どこを見てどこを見ていないのか、階段の昇降に倦んだ膝に嘲笑されるまま座りこむも、尻の下に本があると思うと落ち着けずに立ち上がり、本棚の壁に縋り付いてまた彷徨い出す。
膨大な本の中、真実が記されたものは唯1冊だという。私はそれを探しているのだが、
薄々感づいているのだ。
そこに記されたものすら虚構である事を。
何も書けない夜は、ただ長い
秒針の隙間に何もないんだ
喚く声はうるさいのに
なんの言葉にもなっちゃいない
叫び散らかしても、それじゃ意味ないだろ
ただただ眠りたくないだけなのか
空っぽの秒針がぐるりと周る
飽きもせず周って、何周したか知らん
ぐるぐるぐるぐる、舵がぶっ壊れてるんだ
盲目の深海魚は口ばかり大きくて
鬱屈を食いあさっては石を吐く
二枚貝の方が雄弁だろうさ
歯車なんて
もういらないから
砂糖菓子でできた
物語がほしい
好きなものを
ひとつひとつ思い出して
実感を小さな結晶にして
ひとつひとつ小箱にしまいたい
明けない夜の揺り篭
換気扇の音が繋ぐ生活感
秒針の隙間でカチカチ鳴る呼吸
氷を浮かべたしゅわしゅわサイダーの思考散策
粉末にした水晶が光って笑う陽光と風
真っ白なノートにいちから作る地図
目的地のない冒険はあちこちに宝箱があって
開ければ飛び出した星が星座を結んだ
地層を潜れば深海に出て原っぱと森があった
お気に入りのひとつひとつ
取り出してみて、体温を確かめる
あ お い ろ た べ た い