はじめる

#新作

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全137作品・

君と私の繋がりが

あるのは、

私と君の間にある

見えない壁のおかげ__

翠齊_.・2021-05-09
見えない壁
笑顔の魔法
わからん
君を探す
新作
おすすめにのりたい



きょうの現場は



アキバから東に1kmの問屋街。



昼休み、



さっそくアキバのタワーレコードまで



まふまふ君の新作買いに行ったよね🍀




前日昼なのに、ちゃんと入荷してた✨



ニューアルバム発売おめでとう💕

ミミィ@歌い手:板谷ミミィ・2019-10-15
私的近状報告
まふまふ
新作
ニューアルバム

さあ、皆様お気づきでしょうか…
NOTE15の「わたし」のページの
メニューを開くと
製作者様の新作があることを…。

柳瀬 櫂理・2022-04-20
新作

これらの作品は
アプリ『NOTE15』で作られました。

他に137作品あります

アプリでもっとみる



甘い恋なんて知らない。


俺の恋はずっと苦いから。


俺の過ちは女に生まれて


来られなかったことじゃなく


きっと……。



性と言う名の鳥籠シリーズ

MIRROR´MIRROR~スキナヒト
第二話







グレイのリボン

セーラー服を羨みながら

袖を通した襟口の硬い学ラン。


僅かながらの

息苦しさに首を伸ばして


登校したあの日


中学の入学式で


俺は脩哉と出逢い


電光石火の恋をした。





小学生の頃どんなに


両親が望むような


“男らしい男”を目指しても


滲み出るモノは隠せなかった。


男から滲む“女らしさ”


小学生は

そういったものに

すぐに反応する。


「お前、なんかキモくない?」


そんな一言から

俺はいじめられた。


ドラマに出てくるような


ひどいものではなかった。


ただ、俺が何か言おうとすると


クスクスと笑い声が聴こえたり


ことある毎に


「オネエ」


そう笑われた。



父親に相談したこともあったけど


男なんだから


自分で解決しなさいと言われ


からかわれる度に


俺はむきになって拳を振り上げ


同級生たちを


追いかけ回す日々だった。



同級生からしたら


いじりだったのだろう。


むきになる俺が


おもしろかったのかもしれない。



それでも小さな心が

悲鳴をあげるには

充分なほど


あれは“いじめ”だった。



そんな“いじめ”は


入学式が終わり、


クラスでのHR前の


数分でも俺に牙をむいた。



「おーい、真央ちゃん」


六年の頃のクラスメイト


矢田晴臣が


俺に話しかけてきたのだ。


「……なんだよ」


「かっこいい人いたぁ?」


「は?なんだよそれ」


あっさりと流そうとした、


俺の反応が気に入らなかったのか


矢田は大きな声で俺を揺さぶった。


「なあー、みんな聞いて。こいつ、オネエなんだぜ」


「ちが、」


「だってほら」


そう言って


机に出していたペンケースの中を


物色し始めた矢田は


俺が隠し持っていた、


可愛いうさぎ柄のケース付きの


消しゴムを見つけた。



「こんな女っぽいの持ってんじゃん」


矢田はつまむように


消しゴムをもつと


高々と掲げる。


背の低い俺はどんなに手を伸ばしても


消しゴムを取り返すことができない。



最悪だ。

入学式初日で

中学三年間


終わった


そう思った時だった。


矢田と頭一個分

更に背の高い男子が

消しゴムをひょいと取り上げ


「あ、これ?俺の」


あっさりとそう笑う。



「え、は?」

呆気に取られる矢田を後目に


そいつは俺に白い歯を見せた。



「ありがとな、見つけてくれて」


「え」


「探してたんだよ、助かった」


そう言葉を重ねウインクのような


目配せをされてはじめて


ああ、俺を庇ってくれたんだ


そう思った。


名札に目を落とすと


そいつこそ、


支倉脩哉だったのだ。




何かの気まぐれだったのか


正義感のかけらだったのか


とにかく脩哉に助けられた俺は


瞬間でこの男に恋をした。



人気者の脩哉は


よく俺を気にかけてくれて


どういったわけか


中学を卒業するまでには


俺たちは自他共に


認める親友になっていた。








「真ー央」


「何」


「やりたい」


「口開けばそれ、猿かよ」


「ウキーッ」


脩哉はおどけて笑い


俺の唇を奪った。


「脩哉」


絶え間ない戯れの隙間から


やがて俺は呟く。



「好きだ」


「あ、それ久々に聞いた。今日はどーした?そういう気分?恋人ごっこする?」


「抱けよ」


「真央くん、大胆」



好きなんだよお前が。


なんて、そんな視線を送ると


涙が浮かんで脩哉の姿が歪む。




何を、間違ったんだろう。



過ちとすれば


女に生まれて来られなかった事じゃない。



きっとあの日


こいつに口を滑らせなければ


こんなことにはならなかったんだ。

ひとひら☘☽・2021-04-15
幸介による小さな物語
幸介/性と言う名の鳥籠シリーズ
MIRROR´MIRROR
好きな人
スキナヒト
新作
小説
MTF
MTFを超えて
君がいない
大切な人
独り言
ポエム
辛い
片想い

今にでも生まれ変われるなら
人間じゃなくて動物がよかった

★sAtOmI★@KaNNo.com・2020-05-20
私の本心
新作
独り言
辛い
苦しい
悲しい
家族が嫌い
モヤモヤ

いつもは、ふざけててダサくて、叱られてばかりの君だけど
ふとした時に、優しくてカッコよくて、笑ってる姿を見せる

そんなの反則だよ、惚れちゃうじゃん

煌之助_k.無浮上・2020-08-04
女子目線
新作
片想い
恋愛












僕のアンソロジー
前編















アンソロジーとは、詩文の美しいものを選び集めた本。原語はギリシア語で花束。
現代ではジャンルにとわず使われている。
















僕は美しいものが好きだ。
正しく言えば美しいものを写真に収める行為が好きだ。
その瞬間の1番美しい時を美しいまま永遠に残る。
シャッター音がなるたび、美しいものが刻まれる快感を覚える。
同時に僕の心もきれいになる気がする。
だから僕は美しいものが好きだ。
















僕の世界は色がない。
ある時から全ての世界が白黒灰色の世界になった。
昔は色付いてたから大体の色は分かるし、濃淡はあるから日常生活になんの支障もない。
ただ、僕の大好きなものはあの時から失った。
生きる活力、生きる希望、生きていく僕の全てを僕は失った。
ある意味、そこで死んだのかもしれない。
僕は惰性で生きている。
惰性で生きててもなお、僕は死にたいわけではない。
きっと僕はまだ希望を持っている。
そんな僕も気づいたら高2でそろそろ惰性で生きていくには厳しくなっている。
将来なんのために生きていくのか、クラスメイトはすでに見つけてそれに向かって進んでいる。
僕だけが止まっているのだ。















"島田。これはどういうことだ。"
おじいちゃんの担任の先生は放課後、帰ろうとする僕を慌てて引き止め、数学準備室へ招いた。
生徒からパパと呼ばれる担任の先生は優しく面倒見がいい素晴らしい先生だ。
紅茶とチョコレートを出したパパは内緒なと言いながら僕の前に腰掛けた。
"わかりません。"
出された紅茶を一飲みしミルクティーなのを確認してから素直に答えた。
少し困ったように僕の真っ白な進路調査の紙をみたパパは立ち上がると棚から沢山の大学や専門学校のパンフレットを出してきた。
"1度目を通して見なさい。何か島田にとってヒントになるかもしれない。"
パパはそれだけ言うと自分の仕事を始めた。
僕はしぶしぶパンフレットを手に取った。
経済、商学、法学、工学、文学…
保育、音楽、芸術、看護、医学…
何を見てもモノクロでピンとこなかった。
ペラペラとパンフレットを流し見しているとパパはまた僕の前に座っていた。
僕が驚いた素振りを見せるとパパは少し可笑しそうに笑い指さした。
"俺はな。島田はここに行きたいと思ってたよ。"
そう言ってパパは僕から1番遠いパンフレットを手に取り僕が見たくもないページを開いた。
圧倒的な青。雨上がりの青空の美しさを最大限に写し出した写真がデカデカと1ページに掲載されていた。
モノクロの世界で僕が唯一色付けることを許されるもの。
僕にとってこの写真は希望で呪いだ。
パンフレットを勢いよく取り上げ閉じるとまたモノクロの世界に戻った。
失礼しますと荷物を持って逃げるように教室を出ようとしたとき、パパが明日も来なさいとだけ言った。














今日もいつもと変わらないモノクロの世界で僕は惰性で生きた。
必ず入っている一眼レフを鞄に沈め、足取り重く数学準備室に向かった。
数学準備室には変わらずいかついパパが紅茶を準備して待っていた。
今日はレモンティーかと確認したところで、数学準備室の扉が開いた。
"パパ!聞いて!今日推しがねー!って、お取り込み中…?"
扉の勢いと同じくらい勢いのいい女の子が大声で入ってきた。
"失礼しますくらい言いなさい。"
落ち着かせるようにパパは言った。
"ごめんなさーい。ごめんね!"
パパに謝ったあと僕にも軽い謝罪が入った。
僕はしぶしぶ体を彼女のほうを見た。
僕は驚いた。
ふわふわした色素の薄い茶色の髪。髪と同じ色した目。短いスカートから伸びる細く白い脚。爪はピンクのマニキュアが塗られていて、細部まで美しい。
僕は色を失ってからあの写真以外で初めて色を見、美しいと感じた。
そして声に出た。
"美しい…"
それ以上の言葉が出なかった僕は彼女をガン見し、ほおけていた。
彼女は引き気味にどーも。と言い、出ていった。
パパはにこにこと紅茶を飲むとごめんなと謝った。
"渡辺はよくここに入り浸っていてな。"
僕は衝撃な出会いと美しいものの名前を知れて小さくガッツポーズした。
"ここに行くならとりあえず成果を出さないとな。"
パパはまだ何も言っていない僕にあのパンフレットを渡した。













パンフレットの色付いた青を眺めながら僕は焦った。
パパに聞かなくてもこの学校の仕組みは十分に理解していた。
全国トップクラスの写真・映像の専門学校は世界的な写真家や映画監督を輩出している。
私立専門学校にしては珍しくお金は公立大学よりもかからない。
多くの有名人が後輩のために寄付しているからだ。
そのかわり将来に有望な人間しか集められない。
つまり高校までに結果を残す必要があるということだ。
僕にはその結果は、ない。
卒業まで1年半。専門学校の願書受付まで約1年。
時間がない。
しかし僕には勝算があった。
写真コンクールはそこそこある。
特に夏にある写真甲子園。
そこで結果を出せば…
僕は色の付いた彼女を想いながら眠りについた。























"僕の被写体になってくれませんか!"
1学年6クラスもある中から僕が彼女を見つけ出したのは放課後だった。
僕は彼女にことの説明をし、誠心誠意お願いした。
"え!めーちゃすごいとこじゃん!やば!え、未来の有名人ってこと!?やばーい!"
彼女の高すぎるテンションに押されつつも彼女の語彙力のほうがやばいのではないかと心配になった。
"んー。なんか面白そうだしいいよー!"
返事は思っていたよりも簡単に簡潔に出た。
僕は礼を述べると鞄から重たい一眼レフを出した。
"え、え、もう撮るの?待って!ちょーと待って!前髪タイム!"
僕がカメラを構えると彼女はスマホを鏡に前髪をイジった。
僕はそんな姿さえ美しくてシャッターを切った。















"具体的にどーするの?"
写真を撮るのに夢中になりすぎて気がつくと学校に人気はなかった。
家が近く徒歩圏内の僕とは違い電車に乗って帰る彼女を駅まで送りながら彼女は僕に聞いた。
"とりあえず、色んな渡辺を撮りたい。僕も久しぶりすぎて忘れすぎているから今はウォーミングアップみたいな気持ちでいてほしい。"
彼女はまるでステップを踏むかのように足取り軽やかに歩いた。
僕は静かにシャッターを切って彼女を追いかけながら答えた。
"ねぇ、今までに撮った写真見せてよ!"
彼女は言った。
"被写体としてカメラマンの腕前、知りたいんだけど?"
彼女はにやにやしながら明日持ってきてね!と言って地下鉄の駅に消えていった。




















次の日、古いアルバムを持ってきた。
僕が幼い頃、父と一緒に撮った写真たちだ。
"わー!きれい!"
僕は色付いてる頃、美しいものを切り取るのが楽しくて仕方無かった。
"これ見たことある!"
そう言って彼女は唯一、このアルバムで色付いた僕が撮ってない写真を指さした。
"これ、父さんが撮った写真なんだ。"
僕は聞かれてもいないのに彼女に昔話を始めた。
父さんは世界的に有名な写真家で僕はそんな父とよく写真を撮っていたということ。
父さんは撮りたいものができると家族もほっといて世界中駆け回ること。
そのせいで母さんは苦労したということ。
"母さんは自殺したんだ…。
父さんに見てほしかったんだと思う。
母さん言ってたから、若くてもっときれいな頃はいっぱい写真を撮ってくれたんだって。
もう一度父さんの目に映してほしかったんだと思う。
…目の前で母さんが死んで、急いで父さんに連絡したんだ。
救急車とか、そういう思考回路にならなくて、父さんに連絡したら父さん、飛んで帰ってきて。
…写真を撮ったんだ。
母さんの亡骸を…"
僕はそこまで言うと彼女は僕を優しく抱きしめた。
彼女の想像よりも冷たい体になぜか涙がとまらなくなった。
"父さんはその後母さんの遺骨を持って出ていった。
僕はその日から色を失くしたんだ。"
"色…?"
彼女はこの話で初めて口を開いた。
僕はさらに説明した。
あの日以来、僕は色を失い、モノクロの世界で生きていること。
そしてカメラをやめてしまったこと。
でもどうしょうもなくカメラが好きなこと。
そして彼女に出会えたこと。
父の写真以外で初めて色付いた美しいものに出会ったこと。
"正直、僕はあまり母さんのことを覚えていないんだ。
母さんと過ごした記憶はあるのに母さん自体がぼやけている感じ。
確かに優しい母だったのに笑った顔すら思い出せない。"
彼女は悲しそうな顔をした。
僕はそれすら美しく感じた。
シャッターが切りたくて仕方無かった。
結局血は争えない。
"話してくれてありがとう。"
彼女は涙を目にいっぱい浮かべて微笑んだ。
"僕こそ聞いてくれてありがとう。"
僕はそう言って彼女の美しいを写真に収めた。

まーみ・2023-08-30
小説
新作
とても長いです
ひとりぼっち
アンソロジー
美しい
シャッターを切る











僕のアンソロジー
後編



















それからたくさんの場所でたくさんの彼女を撮った。
誰もいない放課後の教室で勉強している君を
帰り道の公園でコンビニのアイスを食べる君を
雨の日の帰り道で傘を振り回しながら歩く君を
僕の部屋でご飯を作ってくれた君を
ネモフィラ畑で舞うようにはしゃぐ君を
"ネモフィラの花言葉知ってる?"
彼女は白いスカートを蝶のようにふわっと舞わせた。
"「可憐」"
僕はシャッターを切りながら彼女のことを言うように答えた。
"ふーん。知ってるんだー。"
彼女は少し不服そうに口を膨らませた。
僕はそんな彼女を写真に撮る。
"取り憑かれてるみたい。"
彼女は呆れながらそう言った。
僕はシャッター音で答えた。
"ねぇ、今まで撮った写真みたい!"
彼女はおねだりするように言った。
"まだ現像してないよ。"
僕は1つの被写体に満足するまで撮って、全て撮り終わったものの中から現像するスタイルでやっている。
父と同じやり方、というか父の真似をしたやり方だった。
"…おんなじなのね。"
"なにか言った?"
ファインダー越しの彼女の口元が動いたように見えた。
"んーん。独りごとー。"
日が暮れ、2人で電車に揺られながら帰った。
















テスト前期間に入り、お互い勉強に集中ということで一時解散になった。
僕はまたモノクロの世界になった。
僕は彼女以外、親しい間柄の人間はいない。
ほしいとも思っていなかったし、苦ではなかった。
しかし、色付いた世界を思い出してからは少し息苦しい。
結局、彼女を撮りたい気持ちが強すぎてテストは散々だった。
そして、僕の色を奪った張本人が帰ってきた。















僕がいつも通り親戚が借りてくれたアパートに帰ると、僕の部屋の前に大柄髭面の汚い男がいた。
大っ嫌いなそいつは僕を見るなり不敵な笑みを浮かべた。
"よ、久しぶりだなぁ。"
何年かぶりに再会したそいつは相変わらずヘラヘラとしていた。
"何の用だよ。"
"そろそろ息子に会っとくかと思ってな。"
父さんは悪びれもなくヘラヘラと言った。
僕は鼻で笑った。
"はっ、今更だな。もう来んなよ。"
この空間が気持ち悪すぎてさっさと自分の部屋の玄関を開けようとした時、落ち着く声がした。
"島田君、忘れ物!って、お取り込み中…?"
彼女は僕がに初めて会った時と同じようなセリフを言いながら駆け寄り、僕の学生手帳を渡した。
"明日でもよかったのに。"
"何言ってるの!今晩学割使えないよ?"
"使う用ないよ。でも、ありがとう。"
そんな他愛もない話をしているといつもヘラヘラしている父さんが気味悪がるようにこっちを見た。
彼女もなぜか悲しそうに父さんを見つめていた。
しばらく沈黙の時間が流れた。
"じゃあ、また明日ね。"
沈黙を破ったのは彼女だった。
そのまま消えるように去った。
父さんは僕の肩を掴んだ。
"今のは誰だ!?"
大柄の迫力は凄まじく僕が怯むと父さんは力を抜いて僕の肩から離れた。
"僕のモデルになってもらってる人。
僕、父さんの母校に行くから。"
父さんは少し考えたあといつもの調子に戻り、無理だと鼻で笑った。
そしてひらひらと手を振りながら去っていった。

















テストも終わり夏休みに入った。
あと1週間もすると夏の写真甲子園の応募締切がある。
僕は全てをそこに賭けた。
写真甲子園は部門に分かれていて、僕が出すのはポートフォリオ部門。
何枚かの写真を写真集のようにまとめたものだ。
今日は彼女とポートフォリオに使う写真を選ぶ日だった。
学校のパソコンにデータが入ったUSBを繋ぐ。
すると何百何千枚もの写真データが出てきた。
僕は目を疑った。
彼女はそんな僕を気にせず、ゆうゆうといろんな写真を吟味している。
"この写真好き!"
そう言って1枚の写真を開いた。
雨上がりの青空と空を仰ぐ彼女が水たまりに写っている写真。
のはずなのに…
それは雨上がりの青空が水たまりに写っている写真だった。
他の写真にも彼女は写っていなかった。
確かに写してきたはずの彼女はどこにも見当たらなかった。
絶句している僕を見て彼女は笑った。
"驚いた?"
彼女を見ると儚い顔で微笑んでいた。
なぜか母さんを彷彿させた。
"真はやっぱりあの人の子どもね。"
突然、名字から名前への呼び方変換。
キャピキャピした話し方から落ち着きのある声色。
表情を崩さない美しい微笑み。
そんなわけないのに、聞かずにはいられなかった。
"…母さん、?"
僕は消え入りそうな声で聞いた。
母さんはふわっと優しく抱きしめた。
僕は母さんの胸の中でわんわんと泣いた。
涙でぼやけた視界越しの母さんも美しかった。

















泣いていると知らぬ間にパパが僕たちの隣に座っていた。
僕が大げさに驚くとパパは声を出して笑った。
"渡辺、久しぶりだな。"
"最近、行ってないもんねー。"
"忙しそうにしてるの見てたよ。"
混乱している僕をよそに世間話していた。
そんな僕を見かねてパパは言った。
"渡辺は俺がこの学校に赴任して一番初めに担任を受け持った生徒の1人だよ。"
驚いて母さんを見た。
"ふふ、パパってあだ名をつけたのは私なのよ?"
母さんはおちゃめに言った。
"そして、島田和樹、彼も俺の生徒だった。"
"かっくんもカメラバカだったよねー。"
母さんはあの人から2人の呼び名だったのであろうかっくんに変えた。
"かっくんも真に負けないくらいカメラばっかり!美しい君を撮りたいんだ!って。"
母さんは懐かしむように言った。
幸せそうな顔をする母さんが信じられなくて顔を背けるとパパがあいも変わらず優しく言った。
"渡辺が再び現れたのは1年前くらいだったかな。
数学準備室が突然開いて、パパ久しぶりーって声が入ってきた。
すぐに渡辺だと思ったよ。
声の感じや空気が明るくなった感じが渡辺を決定づけるものだった…姿は見えなかったけどね。"
パパはそう言うと僕に彼女の様子を聞いた。
"学校の制服を着ていて、スカートは短くて、茶色の髪が長くて、爪まで美しい。"
"真は語彙力を身に着けなくちゃだめね。"
母さんが呆れるように言った。
パパは静かにそうか。と呟き立ち上がった。
"島田、ちゃんと話なさい。向き合いなさい。
それがこれから君が生きる力になる。"
パパは言った。
"渡辺、後悔しないようにね。
息子泣かせちゃいけないよ。"
パパは母さんにさようならと挨拶をした。
母さんは涙ぐみながらバイバイ!と言って手を振った。




















パパがいなくなった教室はまた2人になった。
母さんは静かに懺悔し始めた。
"真、ごめんね…。
お母さん真をいっぱい苦しめたね。
真を残して勝手に死んでしまったこと、ずっと後悔してたの。
ずっと後悔して泣いてたら神様がチャンスをくれたのかな。
気づいたらこの姿で、でも誰にも見えてなくて、真を探してたのだけど全然見つけられなくて。
だめな母親ね…。
真が高校生だって気づいたのが1年前くらい前で、母校だったここに来たら、パパが数学準備室に入っていくのが見えてね。
ついつい追いかけちゃった。
入ったらパパが受け入れてくれるんだもん。
びっくりしちゃった。
目が合わなかったから見えてないんだなぁとは思ったけど、会話が成り立ってたから声は聞こえてるんだって思って。
思い切ってパパに真のこと、話したらここの生徒だって事がわかって。
嬉しくて嬉しくて、やっと会えること。
真の教室にこっそり行ったんだけど…私、当たり前に真はカメラを続けてると思ってて、カメラを持ってない真になんて声かけたらいいか分かんなくて、まず声が届くかもわかんないし…"
母さんは俯いて涙を溢した。
"それでも真が元気で生きてるだけで涙が止まんなくて、それからもこっそり真を見てたのよ。
そこであの人が真を置いて行ったこととか、真が1人で暮らしてることとか、苦しんでることとかわかってきて、一か八か真がいるって知ってて、数学準備室に入ったの。
私と目があって嬉しかった。
話せてとても嬉しかったの…。"
またかっくんからあの人に呼び方が変わっていた。
"何も出来なかった分、少しでも取り戻したかった。
どうにかして真と仲良くなりたいと思ってたら真から声かけてくれて、ありがとう。
嬉しかった…。"
"真と過ごせたのが1番楽しかった。
何も出来ないお母さんでごめんね…。
苦しい思いばっかりさせてごめんね…。
深い傷を負わせてしまって本当にごめんなさい…。"
"真っ直ぐに優しく育ってくれてありがとう。
幸せにしてくれて、ありがとう。"
母さんはごめんとありがとうを繰り返した。
僕は終わってしまうことを悟り、母さんの言葉が何も入らなくなった。
僕の様子に気がついた母さんは背中をぽんぽんと優しくさすった。
幼い頃、母さんにやってもらっていたものだった。
僕は母さんにずっと聞きたかったことを聞いた。
"母さん、母さんは父さんのこと、死んでしまうくらい好き?"
残酷な質問だと聞いてから思う。
それでも僕は家族をほってばかりの父さんより僕が愛されていたかった。
1番そばにいた僕を置いて行った真実を知りたかった。
母さんから返ってきた答えは僕の質問より残酷だった。
"好きだった。
好きで好きでたまらなくて、お父さんが家にいなくて寂しくて、かっくんがそばにいるだけで幸せだった。"
母さんは遠い目をしていた。
"きっとあの頃が楽しくて幸せで悲しかった。
結婚して、真が産まれてからは幸せばっかりで、
あの人がまた私達を撮って、3人の時間が穏やかに流れていたから。
でも真が歩けるようになるとまた、さっさと旅に出て、私だけでなく真までほっとくようになった。
それが許せなかった。
あの人に向けるものが愛かわからなくてなって、憎いと思うたび、あの人の写真を見て落ち着けて。
そんなことを繰り返して、私の愛はあの人に向けられたものじゃなく、あの人の写真に向けられたものだと気づいたの。
そして、あの人の愛もまた、私に向けられたものじゃなく、写真越しの私に向けたものだった。"
僕が言葉を失っていると母さんはごめんねと言った。
僕から聞いたのに現実は重かった。
"でもね、勘違いしないでほしいのは、真、あなたを世界で1番愛していたの。
だからこそ、こんな壊れた私達が育てちゃだめだと思ったのよ。
私が死んだらあの人は子育てなんて絶対しないから、信頼できる親戚にお願いしておいたの。
あの人との繋がりが完全に消えないのは誤算だったけど、疎まれても、嫌われても、真にとって私達の存在が害になると思ったの。
…でも結局、こんなにも真を傷つけてるのだから同じよね…ごめんなさい。"
次は僕が母さんを優しく抱きしめた。
母さんはこんなに大きくなったのねと涙を流した。



















"真、ごめんね…"
母さんが謝るのと被せるように僕は言った。
"僕は、父さんに育てられるなんて御免だし、母さんが会いに来てくれて嬉しかった。
母さんの気持ちもわかって前より晴れやかだし、カメラの世界をまた教えてくれた。
父さんは良い反面教師だ。
それじゃあだめかな。"
母さんは笑って最高ね。と言った。
"真って名前はね、あの人がカメラにまつわる名前が良いなんていうから、写真からとって真になったの。
でもね、お母さんは本当はこっちが理由でこの名前にしたの。"
母さんは耳打ちで言った。
"自分の目でみた真実を大事にしてほしい。
たくさんのものを見て感じてそれをたくさんの人と共有できる人になって欲しい。
…真はその名前通り素敵な写真を紡ぐ子になったね。
真の想いが詰まった素敵な写真だ。"
そう言って母さんはまた僕の撮った写真を見つめた。
僕はネモフィラ畑で撮った写真を開いた。
やっぱり、母さんは写っていない。
それでも僕はひらひらと舞う母さんが見えた。
"ネモフィラの花言葉は他にもあるんだよ。"
僕が言うと母さんはキョトンとした。
"「どこでも成功」、「すがすがしい心」、そして、「あなたを許す」"
そう言うと母さんは目を見開いて大粒の涙を流した。
"母さん、僕を産んでくれてありがとう。
愛してくれてありがとう。
僕は僕のやり方でカメラをするよ。"
母さんは最後にもう一度強く僕を抱きしめて大好きよと呟き、消えていった。
光の粒になる美しい母さんを心のカメラに写した。



















"この度、夏の写真甲子園ポートフォリオ部門で大賞に輝きました、島田真さんに1言頂きましょう。"
司会の人がそう言うと僕は壇上に招かれた。
多くの人が僕に注目している。
"この度はこのような素敵な賞に選んで頂きありがとうございます。
この「僕のアンソロジー」は普段の日常を切り取ったどこにでもある写真です。
でも、僕には見えます。
とても大切な人が、全ての写真に写っています。
ありきたりな、見逃してしまうような日常でも、大切な人となら価値のある世界に色づく。
それを皆さんにも感じ取ってもらえると光栄です。"
"ありがとうございました!
島田さんにもう一度大きな拍手を!"
会場は大きな拍手に包まれた。

まーみ・2023-08-30
小説
新作
とても長いです
アンソロジー
ひとりぼっち
愛情
本当に大切なもの
価値のある世界
色づく世界の明日から

たまには、ありきたりになるかもだけど、
女子目線のポエム?を書きたいと思いますw

ネットとか見て書くので見たことあるかもって思うかもw

煌之助_k.無浮上・2020-08-04
新作
女子目線
頑張る!

友達は初めて
うちは2回目のスタバ

新作いちご
めっちゃ美味しかった

謎にいつも飲んでるの見てるだけやから
2人で挑戦してよかった

スタバの店員さんほど
混雑しててもしゃべる人知らない笑

咲かない花・2018-04-14
初めて
2回目
挑戦
楽しかった
新作
今天
中学の友達

思い出したんだ…

好きな詩 大好きの歌

もう一度…君に届けよう

甘酸っぱい好きの意味を…

ひまたん(。>ω<)ノ@長期間低浮上・2022-01-22
大好きだよの歌
新作
決定
花が散る
前に
君に届け
ポエム

あの日に戻れたら
後悔してることを1個でも消したい

★sAtOmI★@KaNNo.com・2020-05-14
後悔
中学生に戻りたい
あの日
学生
独り言
おすすめ
新作



















★sAtOmI★@KaNNo.com・2020-05-23
_助けて_
助けて
辛い
苦しい
消えたい
逃げたい
死にたい
遠くに行きたい
独り言
新作

「未来からの贈り物(仮題名)」

拝啓、朴谷和津(ほうやかづ)様。

この手紙を読んでいる前提で

お願いがあります。

それは貴方の為でもあるんです。

理由はこれから先の文章を読めば分かります。

私は新田雫(にったしずく)と言います。

信じられないかもしれませんが

私は未来の新田雫なんです。

これが無事届いたなら

私の未来を変えて欲しい。

高校生の私は

貴方と同級生なはず。

きっと関わりが今の時点ではないでしょう。

でもいずれ、来ます。

その時

私にこう言って欲しいんです。

"友達になろう"と。

たったそれだけ。


☆☆☆☆


「ん…」

当たりを見渡すと部屋にいた。

窓を開けてみたら、もう外は朝だった。

ー寝過ごした?いや、なんか夢見ていた気がするけど…忘れちゃったや。

「とりあえず起きるか…」

そう思い立ち上がると、ふとベット近くのテーブルを見たら封筒が置かれていた。

「ん?」

怪訝に思いながらも恐る恐る封筒を手に取り、中身を取り出すと2枚の便箋が入っていた。

「なんだこれ?」

ー昨日までなかったぞ、こんなの。

内容を見てみるとこう書いてあった。(冒頭参照)

「俺の名前が書いてある…。」

ー差出人は"新田雫(にったしずく)"

「新田雫って…」

俺のクラスメイトだ。てか未来からの手紙って何かの冗談だろ?

ーでも冗談だとしたらここに手紙がある訳がないし…。

うーんと悩んでいると、

「和津ー?7時半よ、早く起きなさい!」

下から母さんの大きな声が聞こえてきた。

「はーい、起きてますよっと。」

軽く返事をし、身支度を整えてからリビングへ向かった。

リビングに着くと母さんがテーブルに食器を置くところだった。

「もう、やっと起きたの?…ってもう支度したの!?」

「うん、まぁね」

ー支度っつってもワイシャツとズボンを履いて髪整えただけだけどなw
こういう時女子じゃなくて良かったって思うんだよな、だって大変そうじゃん?(和津目線)

「そ、そう。ならご飯食べちゃいなさい、時間ないんだから」

「はーい」

動揺を隠すかのように母さんは台所に消えていった。

ーもう母さんは俺の事なんて思ってるんだか。考えたくねー

そうこうしてるうちに時刻は8時近くになっていた。

「やべっ!行ってきます!」

朝食の食パンを口に含んだまま、近くに置いていたカバンを手に家を出た。

ー( '༥' )ŧ‹”ŧ‹”

「ったく、ついてない!」

ー朝変な夢や手紙見たせいだ!
…新田雫、一応観察しておくか。

そんなことを思いながら俺は学校に着いたのだった。

……To be continued

ゆう・2021-01-21
悒の創作小説
新作
プロローグ
キャラの名前、大丈夫だろうか不安
センスないかもしれん

月が綺麗な夜
煌めく海の底で
あなたは輝いていた
私は心奪われた
恋が始まった

どんどん沈んで
戻れないくらいに
深く深く落ちていく
あなたに落ちていく
それが幸せなの

この広い海では
毎晩新たな命が生まれて
そして死んでいく
命の繋がりは
儚く尊いわ

もしもあなたが
私を地上へ突き返すなら
私は生まれ変わるわ
あなたに愛されるまで
何度だってあなたに恋をする

それでも今この命で
あなたと巡り逢えた奇跡
大切にしたいから
味わっていたいから
まだ夢を見せていてね

呼吸もままならないほど
あなたに溺れてる

秘密さん・2023-08-10
ポエム
詩書きさんと繋がりたい
新作
片思い
この夏出会った好きな人を想って書いた詩
DIVEtoDear

他に137作品あります

アプリでもっとみる

その他のポエム

君に届け
9501件

独り言
1046284件

ポエム
565275件

好きな人
336184件

自己紹介
101749件

トーク募集
93145件

467127件

恋愛
207135件

消えたい
35349件

片想い
237347件

幸せ
55727件

49229件

失恋
112483件

辛い
194797件

片思い
190805件

苦しい
64281件

人生
46794件

好き
201039件

叶わない恋
54397件

寂しい
37070件

会いたい
47263件

すべてのタグ