#私を捕まえていて

カッコ付けた言い回しは大嫌いだ｡
スタンドプレー大好き男は
あたしは嫌い｡




地味で地道な人生を生きてきたつもりだったのに｡
なるべく無口な子でいたいのは変わらないのに｡




生命を賭けて｡
人生を賭けて｡
ほんとうに､
そんな表現を使うしかなくなってきてしまった｡
貴女への大切な想いを背負ったままで
貴女との大切な思い出を抱きしめたままで
ほかの誰かと生きていくなんて絶対イヤだから｡




自分からレズビアン宣言する意味はないし
貴女への想いが尽きないかぎりは､
自分からほかの誰かに目を向けることはない｡
なのに男性からは不可解なくらい近寄られるようになってしまって､ほんとうに困る｡




なるべく一般論で断わりたいのに｡
同性愛者ですとは言いたくないし､
生涯独身を希望ですとも言いたくない｡
先週は初対面の男性と食事した話を書いたけれど｡
できればいっしょに食事とかするのももぅ避けたい｡
とくに大切でもない､ほぼ初対面の男性に､
自分の黒歴史をしゃべらされるのは
かなり苦痛｡
もぅ無理｡
二度としたくない｡




正面で向き合っていても意味はないから｡
背中側に入り込まれても
安心できる人でないと
付き合えないから｡
あたしがこの世でいちばん安心できる､
貴女と生きてゆきたい｡
それが無理ならほんとうに生涯独身を覚悟します｡

貴女に出会う前は
愛された記憶もなければ
現実世界を現実だと思う感覚もなく
人生そのものが破綻していた｡




貴女を失ってしまえば
またもとの『人間ではない』わたしに
戻るしかない｡
自殺願望がすべてだった
あの頃のわたしに｡




貴女への激しい執着は
形を変えた生への執着でもある｡
生きていたい理由があまりにも無さすぎるあたしが､
それでも何とかして生きてゆくための｡




あたしに生命を吹き込んだ貴女が唯一､
あたしの生命を吹き消す権限も持つ｡
あたしは何も後悔しないから､どうぞお好きに｡
あたしの生殺与奪はいまや貴女の手に｡

恋愛市場､結婚市場
っていう考え方がほんとうにキライ｡



どうせ低価格でしか出荷できないあたしは､
ハイスペック男子を狙うとか
そこそこなオトコで妥協するとか
そーゆー話以前に
自分自身が商品にされてしまうのが
そもそも耐えられない｡
オンナはコドモを産んでナンボですから､
種˙付˙けしてくれるオス募集！
っていう世界観がそもそも無理｡


できるかぎりひとりきりで過ごしたいし
結界の内側に入れてもいい相手になんて
そこらへんに転がってるわけねーから！
ああ｡どうしてもあたしは貴女がいい｡
貴女だけが好き｡

ならば貴女は
とてつもなく強い女性
なのだろう｡



いつもはそれが当たり前になっていて
そんなこと気にも留めないけど｡



好き､というのにも勇気がいるし
愛してる､というだけで崖下に飛ぶような気分｡



ヒリヒリするような感触を胸で受け止めながら
全力でポエムを書きつらねる､あたしの日常｡

視界に映っただけのだれかを
好きになることなんて
あたしにはできない｡



視覚映像なんて
それだけではただの幻影だから｡



ビジュアル的評価(ルックス)だけで
恋人を選ぶとか
あたしは絶対しない｡



でもさ､
逆に言って
ひとたび好きになってしまった貴女の
視覚映像には､
やはり惑わされるよね??!?





























今回は｡
視覚映像､とはいっても
ビジュアル的評価=ルックス､美醜の話ではなく
きのうの体験から
ひどくショックを受けたことを｡




愛して愛して愛してやまない貴女の､
もしも､むごたらしい遺体なんかを見てしまったら
きっとあたしは泣き叫んで
ショックで気絶する｡




昨日､隣室の老人が亡くなった｡
ひとり暮らしで誰にも気づかれず
発見されたときには腐乱死体だった｡
異臭がひどくて通報が入り､
臭いだけでは区別が付けられないから
あたしの部屋にも警察が突入した｡




知らない老人が 死˙ん˙で も､
正直に言うが
あたしは別に悲しくはない｡
でもね､
これまた正直に言うけど､
警察に突入された､
つまりあたしがすでに 死˙ん˙で
腐乱死体になっているところを
他人に想定されたことで､
やはり､自分の死について､
想像せずには､いられなかった｡




死､というとき｡
あたし自身の実感としては
それは､この世から去ることであり
純然たる解放｡この世からの解放現象だ｡




でも､この世には遺体が遺ってしまい｡
そのとき貴女から見れば､
それがあたしだ｡
見るに堪えない腐乱死体を
愛するひとに
見せつけてしまう結末だけは
どうしても避けたい｡




貴女があたしのことを
好いているのか嫌っているのかさえ
あたしには定かではないが｡
そうは言っても､
あたしが見るに堪えない遺体になったところを
見たくはないだろう｡
そのくらいならさすがに
あたしでも断定できるし確信できるよ！




同時に､
貴女が遺体になってしまったところを想像して
どうしようもなく怖くなった｡
どうしようもなく､人は必ず死ぬ｡





そんなふうにあたしは､
隣室で死人が出た､
鍵が壊された自分の家で､
死について
遺体について
考えながら
眠れぬ夜を過ごした｡




かつて､わたしにとって
この世の何もかもが絵空事だったのに｡
どうしようもなく好きなひとができてしまって
どうしようもなく人は死ぬ事実に気づかされ｡
貴女の全てを見たいし知りたいけれど
貴女の遺体なんて見たくないし､
あたしの全てを見てほしいし知ってほしいけど
あたしの無惨な遺体を
愛する貴女にだけは見せたくない｡
でも､いつかかならず人は死ぬのだ｡





あまりにもかぎられた
儚い生命を貴女はどう使う？
あたしには､どぅしようもなく､
貴女に愛を捧げる､という答えしか出せない｡

飛びたいのに
足を縛られてて｡


この鎖には
感謝しているよ！？
でもさ､､､､､､


靴を揃えるかわりに､
マグカップを揃えて｡


遺書のかわりに､
ラブレター｡


─────どうかわたしを捕まえていて｡

あいしてるなんて
たしかに言ってるけどさ｡
しぬまで言いつづけるかもしれないけどさ｡
をかしいのはわかってるけどさ｡

つみぶかくて
かわいそうで
まるで子どもみたいな
えがおのあたしの
てをにぎり､
いつまでも
てらしつづけて､
ねむれぬ夜を｡