#追憶の残り香

凍った時間が再び時を刻むことはない

心の底に封じたまま未来永劫

もし涙の向こうがわに

幸せが見えていたなら

怖がる必要はなかった

漆黒の空を彷徨う星の欠片

青き星に魅せられた彼は

ありったけの光で愛を唄う

あの日あの時君と出逢ってなければ

現在という時は生まれていなかった

花はいつか枯れてしまうけど

この想いはけっして枯れはしない

たとえ逢えなくても

抱きしめた時の温もりは

消えやしない

それは心という糸でつながった

なにより強固な絆だから

机の上に丁寧に広げられた便箋

そこにはありがとうの五文字に

清楚な白い花が添えられていた

背中あわせの愛と哀

時には幸せいっぱいに

時には涙に暮れて

清しい風にゆれる楓

ほんのり頬を朱に染めた

君の面影がかさなる想い出の秋

秋はなんとなく儚げで寂しいけれど

なぜか惹かれるんだ

きっと君を想い出すからかな

君を前にすると臆病になってしまう

いつもなら言える台詞が言えなくて

笑った顔を向けても心は凍ったまま

時がとまった心の深層で

発掘を待って眠りつづける記憶の化石

心が凍える夜は

暖炉の火も

暖めてはくれない

そんな夜は

君の声が聞きたくなる

時の彼方に埋もれたとしても

今あざやかによみがえる

君と出逢ったあの日の空

君とふざけあった

あの頃が懐かしい

たまにしか逢えなくなった今

あの笑顔は心の中に

大切にしまってあるよ