◆ずっとあなたが好きでした◆
ええ。
この頃あらためて思うんです。
どうしてこんなにあなたのことを好きになったんだろう?って。
最初はなんでもない出会いだったのに、いつからこんなにも心臓をわしづかみにされてしまったんだろう?って。
何がきっかけだったのかしら。
――その姿、胡蝶の可憐な美しさにも似たる若い一将(吉川英治)
――異常といえるほど眉目秀麗で、女人のように肌が白かった(柴田錬三郎)
あなたを描いた表現はとても印象的で、たぶんこの頃から私は恋に落ちていたのです。
けれども、あの頃のあなたは少々地味で、今ほど世間に知られていたわけではありませんでした。
だから私は、それからずいぶん経ってようやく手にしたパソコンで、毎晩あなたのことを検索してはひとりよがりな妄想に胸を焦がしていました。
そうしてたどり着いたいくつかのサイト。
小説。詩。イラスト。
そこで知り合った同じ趣味を持つ人たちとの交流は本当に楽しくて、あなたのことを語り合い、想いの丈をぶつけ合いするうちに、妄想はどんどんふくらみ、あなたへの想いもどんどん大きく深くなっていったのです。
本当のあなたがどんな人だったのか、わかりません。
もしかしたら、もっと傲慢で独善的な鼻持ちならないヤツだったのかもしれないけれど…。
でも、そんなことは今は考えない。考える必要ないもの。
ずっと長い年月をかけて、私の中ではぐくんできたあなた。それこそが私にとって唯一無二の真実なのだから。
歴史を探求する者としては失格ですね。
でも、私は歴史学者じゃないし。ただの妄想物書きだったら、これくらいのわがままは許してもらえるかな。
もう40年以上も前から、ずっとあなたが好き。
今も、きっとこれからも。
一生あなたを追い続けるでしょう。
姜維伯約さま。
遥か遠いあなたへ。
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