[捨て猫]
「若いな」
「まぁ、いいだろう」
十五の頃だった。
月が沈みきった朝に家を出たのに
木小屋から出ると月が遠慮がちにいた。
「跡継ぎが欲しかったしな」
その“跡継ぎ”として生きていけるか、
それは分からないが、生きねばならない。
“またね”を叶えるために。
“またね”そんな言葉が大嫌いだった。
大人の言う“またね”は全部嘘だった。
捨てられたようなものだった。
悲しいよりも怒りが込み上げてきた。
この怒りの矛先が
必ずしも良い方向とは限らない。
俺の場合は、もちろん悪い方。
でも、それを悔いたことなんてない。
悪魔だ、死神だ、そう罵られても
悪い気はしなかった。
そう言われることを誇らしげに思う
仕事の跡を継いだから。
俺の相棒は、拳銃だ。
ナイフや毒物なんかより良い。
時にはそれらも使うが、
拳銃の腕が一番上がっている。
「ホーク」
「師匠、何でしょうか」
「見つかったか?」
「はい」
「頼んだ」
師匠は、有名な殺し屋だった。
裏社会じゃ最も恐れられている殺し屋。
“ホーク”
それが師匠の裏ネーム。
そして、跡継ぎの俺がその名を
継ぐことになった。
師匠の一番も拳銃だった。
師匠が打つ様は、
小さな針穴に細い糸を通すよう。
的が止まっていても動いていても
急所を的確に捉えていた。
そんな師匠も体は弱かった。
木小屋は所々、赤黒くなっていた。
跡継ぎを求めていたのも
若い俺を選んだのも
そうだったからなのかもしれない。
古い電話が鳴る。
依頼だ。
「No-Raを頼む」
「了解した」
涙雨 雫玖 ☔︎・2021-03-01 #[捨て猫] #小説 #小説練習¿ #小説☔︎ #どうして君は #殺し屋 #長編 #ご
