はじめる

#なんか今週のタグとめっちゃ合ってる気がする

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全1作品・


〈晴れのち君想う〉
第3話





ザーと強い雨が降っている。


視界がたちまちぼやけて見えづらくなっていく。



「成宮く...なんで...」


『......』



口から思わず声が漏れる。彼は黙ったままで何も言わない。


私も黙り込む。無言の時間が流れる。


でもいつまでもこのままという訳にもいかない。


黙ったまま立ち上がった。立ち上がった拍子に少しバランスを崩してよろめく。


視界がぼやけていて見えづらい。が、そんなことを言ってる場合じゃない。


彼に手を差し出した。彼はピクリとも動かない。


想定内だったので彼の腕を掴んで無理やり立たせた。


そしてそのまま歩く。


繋がった体温が暖かい。


あの時と同じだ。


でもあの時より制服が雨を吸っていて、1歩1歩の足取りも重かった。


掴んでいる彼の手が震えていたような気がしたけど、今振り返って足を止めたら、1歩も歩けなくなりそうな気がして


そのまま気付かないふりをした。












初めて話した時と同じ公園のベンチで手を離した。


彼は何も言わずにベンチに座る。


俯いたままで何も言わない。


髪の毛から雨水がぽたぽたと垂れては地面に染みを作っていく。


カバンの中からタオルを引っ張り出し、彼の頭に被せた。



『...さんきゅ』



小さくそう聞こえた声は掠れてて弱々しげで。



「...ううん」



それしか言えなかった。


またしばらくの時間が過ぎる。


雨は弱まらずに降り続けている。


世界を洗っているみたいだ。


降り続ける雨を見ながらそんな物思いにふける。



『...兄貴が死んだんだ』



ふとぽつりと声が聞こえた。声の主であろう彼に視線を向ける。



『昨日。交通事故で』



雨の音が大きくて声も小さくて、気を抜いたら聞き取れなくなりそうで。


一言も聞き漏らさないように耳を傾けた。



『俺のせいなんだ』



彼の声が少し大きくなった。



「え...?」


『俺がおつかい行ってきて。なんて言ったから...だから兄貴は...っ』


『言わなきゃ良かったあんなこと...俺が言わなきゃ兄貴は死ななかった!俺のせいで...っ』


「成宮くんのせいじゃないよ」



その言葉に成宮くんの肩がピクリと揺れる。



「お兄さんがそうなってしまうなんて、誰にも分からなかった」


「起きてしまったことは、仕方がないよ。言い方、少しきついかもしれないけど」


「おつかいを頼んだ成宮くんのせいでも外に出たお兄さんのせいでも、事故を起こしてしまった運転手のせいでもない」


「誰のせいでもない、不慮の事故だよ」


「だから、自分を責めないで」



彼の肩が震えている。それはきっとこの寒さのせいだけじゃない。


普段後ろから眺めている彼の背中が、一層小さく見えた。


そっと傍にしゃがみこんで背中を撫でる。



『俺...さっき死のうとしたんだ...っ』


「うん」


『兄貴が死んだのは俺のせいだって思って...ぅ...ふぅ...っ』


「うん」



嗚咽混じりにそう話す彼にそっと相槌を打つ。



「そんなこと、お兄さんは望まないよ」



その言葉に彼の嗚咽が一層大きくなる。



『俺...まだ生きててもいいのかな...』


「いいに決まってるよ」


「お兄さんも、成宮くんには生きてて欲しいって思ってるよ」


『...っ...うん...』



彼はしばらくそのままで、私も何も言わずに傍にいた。無言の時間だったけど、どこか居心地が良かった。



「あ...雨、あがった」



ふと気付くと雨はあがっていて



「あ、虹」


「成宮くん、虹出てるよ」



空には綺麗な虹がかかっていた。



『ほんとだ』


「綺麗だねぇ」


『...なぁ、詩音』


「なに?」



振り向くと、彼の真剣な目とぶつかって



『これから...俺の傍にいて、さ。一緒に生きて欲しい』



そう言う彼の顔は少し赤くて


なんだか可愛いと思ってしまった。



「...ふふっ」


『な、何笑ってんだよ...』


「んーん、なんでもないよ」



思わず笑みが零れて。


さらに照れたように顔を少し手で隠す彼が、今はとても愛おしい。



「一緒に生きよう。爽。」



雨上がり。虹と光に包まれた世界で彼と生きることを誓った今日のことを、私は一生涯忘れない。


私が雨を好きになり、彼が晴れを好きになるのは、もう少し先の話。





<終>

榊 夜綴・2020-07-29
晴れのち君想う
これ題材通りに出来たんかな()
出来てなかったらごめんよ
完結しました
雨が好きです
晴れも好きです
爽目線書くか悩む
とりあえず明日のテスト頑張ります←
小説
梅雨
生きる
大切な人
ポエム
独り言
それでも君と
なんか今週のタグとめっちゃ合ってる気がする
まだ見ぬ世界の空の色は

これらの作品は
アプリ『NOTE15』で作られました。

他に1作品あります

アプリでもっとみる

他に1作品あります

アプリでもっとみる

その他のポエム

独り言
1046545件

君からのメッセージ
2993件

ポエム
565558件

辛い
194896件

自己紹介
101820件

好きな人
336316件

467246件

人生
46836件

失恋
112546件

片想い
237422件

49307件

死にたい
102752件

トーク募集
93194件

苦しい
64310件

片思い
190852件

叶わない恋
54420件

消えたい
35395件

君に届け
9525件

恋愛
207189件

疲れた
25782件

しんどい
12512件

すべてのタグ