空飛ぶメリーゴーランド
あるところに、ふたりの愛し合っている天使がおりました。その国では、人間と、天使が共存して暮らしている国です。しかし、人間の国の王様が、美しい天使を剥製にして、城の壁に飾る文化を作り、大勢の天使達が、人間の手によって剥製にされてしまいました。
そんな中、隠れるように、ふたりの恋人同士の天使が、宝石でできた、ひまわりの花畑で、誰にも見つからないように、密かに落ち合っていました。
天使の国の花畑は、宝石でできており、とても美しいのです。
「綺麗だ……。君は、この世界のどんな美しいものよりもいちばん光り輝いているよ」
彼は、宝石でできた、一輪のひまわりの花を彼女に手渡して、言いました。彼女は、ただ、頬を赤らめて、嬉しそうに、その花をしっかりと胸に抱いて、頬笑んでいました。
そんな幸せな時間も、長くは続きませんでした。
王様の手先が、ふたりの美しい天使の噂を聞きつけて、その宝石のひまわり畑に、ふたりを捕まえにやってきたのです。
彼に恋をしていた、他の女の天使が、彼女と彼の中を妬んで、王様に密告したのです。
ふたりは、手を繋いで逃げました。追ってが迫ってくるひまわり畑の中を、ただひたすら捕まらないように、走って。飛んで。
飛んで。
地上からも、空からも追ってが迫っています。
もう、捕まってしまう。
そんな時、彼は胸ポケットから、大事なそれを取り出して、願いの言葉を唱えました。
大事なそれとは、どんな願いでも叶えてくれる、空飛ぶメリーゴーランドのかけらで作られた、小さな羽のついた、綺麗な綺麗なメリーゴーランドの形をした、小さな空飛ぶオルゴールでした。
「ぼくと彼女がたとえ離れたとしても、あの太陽と月のように、何度だって、ぼくと彼女は愛し合う。どうか、ぼくの願いを叶えて……」
小さな、空を飛ぶオルゴールは、弱々しく、今にも壊れそうなほど、儚い音色を奏でながら、空を飛びました。幸いにも、宝石でできたひまわりの光が太陽に、きらきらと反射して、そのオルゴールの飛ぶ姿は、人間達には見えなかったそうです。
ついに、ふたりは追ってに捕まって、剥製にされてしまいました。
「……このオルゴールは、わたしが生まれたときにわたしのそばに置いてあったみたい」
天使の少女は言いました。
このオルゴールに込められた思いが形になって、少女はこの世界に生まれてきました。
それは。
誰にも見えないたくさんの夢や音色が夜空を羽ばたいていく、そんな夜の出来事でした。