はじめる

#ファンタジー

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全267作品・

ねるねるねるねが
ノンフィクションだと知った時
ファンタジーがリアルになって
私は
自分自身の手で練ることを
決意したのだ。

伊田よしのり・2025-02-18
ポエム
ファンタジー
ノンフィクション
リアル
ねるねるねるね

深夜12時ちょうど。

練るのは、やめ。

ここから先は、別料金。

ねるねるねるねの、色の物語。

伊田よしのり・2025-01-26
ポエム
物語
ねるねるねるね
ファンタジー
深夜

「練るのに失敗したくない」と言って彼女は練ることに慎重だったが、ちょっと慎重すぎたようだ。彼女は、練るチャンスをのがしてしまった。

それでも彼女の表情は穏やかだった。練る義務から解放された彼女は、これからはファンタジーの世界で、自由に練れるのだ。

伊田よしのり・2024-11-25
ポエム
練ること
ファンタジー
ねるねるねるね

これらの作品は
アプリ『NOTE15』で作られました。

他に267作品あります

アプリでもっとみる

空飛ぶメリーゴーランド

あるところに、ふたりの愛し合っている天使がおりました。その国では、人間と、天使が共存して暮らしている国です。しかし、人間の国の王様が、美しい天使を剥製にして、城の壁に飾る文化を作り、大勢の天使達が、人間の手によって剥製にされてしまいました。
そんな中、隠れるように、ふたりの恋人同士の天使が、宝石でできた、ひまわりの花畑で、誰にも見つからないように、密かに落ち合っていました。
天使の国の花畑は、宝石でできており、とても美しいのです。
「綺麗だ……。君は、この世界のどんな美しいものよりもいちばん光り輝いているよ」
彼は、宝石でできた、一輪のひまわりの花を彼女に手渡して、言いました。彼女は、ただ、頬を赤らめて、嬉しそうに、その花をしっかりと胸に抱いて、頬笑んでいました。
そんな幸せな時間も、長くは続きませんでした。
王様の手先が、ふたりの美しい天使の噂を聞きつけて、その宝石のひまわり畑に、ふたりを捕まえにやってきたのです。
彼に恋をしていた、他の女の天使が、彼女と彼の中を妬んで、王様に密告したのです。
ふたりは、手を繋いで逃げました。追ってが迫ってくるひまわり畑の中を、ただひたすら捕まらないように、走って。飛んで。
飛んで。
地上からも、空からも追ってが迫っています。
もう、捕まってしまう。
そんな時、彼は胸ポケットから、大事なそれを取り出して、願いの言葉を唱えました。
大事なそれとは、どんな願いでも叶えてくれる、空飛ぶメリーゴーランドのかけらで作られた、小さな羽のついた、綺麗な綺麗なメリーゴーランドの形をした、小さな空飛ぶオルゴールでした。
「ぼくと彼女がたとえ離れたとしても、あの太陽と月のように、何度だって、ぼくと彼女は愛し合う。どうか、ぼくの願いを叶えて……」
小さな、空を飛ぶオルゴールは、弱々しく、今にも壊れそうなほど、儚い音色を奏でながら、空を飛びました。幸いにも、宝石でできたひまわりの光が太陽に、きらきらと反射して、そのオルゴールの飛ぶ姿は、人間達には見えなかったそうです。
ついに、ふたりは追ってに捕まって、剥製にされてしまいました。
「……このオルゴールは、わたしが生まれたときにわたしのそばに置いてあったみたい」
天使の少女は言いました。
このオルゴールに込められた思いが形になって、少女はこの世界に生まれてきました。
それは。
誰にも見えないたくさんの夢や音色が夜空を羽ばたいていく、そんな夜の出来事でした。

にじりぼん・2022-08-29
オリジナル小説
短編小説
創作小説
小説
メリーゴーランド
ファンタジー

朝起きたら
すごいこと起こってないかなって
願いながらいつも寝てる

𝑚𝑖𝑦𝑜𝑎・2022-11-21
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特別
物語
主人公
ヒロイン
ファンタジー
願い
流れ星


人間様の心に潜む深い闇

それは、容易く消え去るものではない



しかし

あらゆる考えを巡らせ

人を赦し、己を赦し

強く繋がれた絆に気付くことで

闇に光が差すこともある



今日も、人間様の心の闇を取り払うべく

私は風と共に降り立った




はずだった……



「……あれ?」

人間界の景色とは明らかに何かが違う




〝琴葉〟

どこからともなく、虹色の雨に紛れ

声が聴こえた


「はい」

〝……おやまぁ〟

「あの……ここって……」

〝はい、獣人界へ降り立ったようですね〟

「……いや、いやいやいや

おかしいですって!」

〝はて?どうしてですか?

心の闇は人間様ばかりではありませんよ〟



確かに人間様だけではないのかもしれない

……が、しかし!

なんせ獣人の心の闇に触れることすら

初めてだ



〝あぁ、怪しまれぬように

あなたの姿も

獣人に見えるようにしておきましょう〟

「……ちなみに何ですか?」

〝兎です。……なんとも可愛らしいですね〟

「……完全に楽しんでますよね」


変な冷や汗と共に緊張感が増す



綺麗に整備された街には

様々な獣人が行き交っていた



獣人界の獣人は、そのほとんどが

人間界で生涯を終えた動物たちだ

もちろん、獣人界で産まれた者もいる



ここに、どんな闇を持った獣人が

居るのだろう


ふと、ショーウィンドウに映った姿に

思わず二度見する


白く長い耳と、丸い尻尾

毛並みの良い着ぐるみを纏ったかのような

自分の姿がそこにあった



「わぁお……」

戸惑いながらも

まじまじとショーウィンドウを

見つめていたその時だ



「風邪ひきますよ」

その声に振り返ると

若い雄犬の獣人が傘を差し出している


「あ、ありがとう」

「……良かったら使って?

俺は家すぐそこだから走って帰るし」



優しく笑みを浮かべる獣人だが

私はすぐさま闇を察知した



それは、色濃く

鼻の奥を刺激するような深い闇



人間様の愛情を知らないわけではない



だけどそこには

人間様に対する恐怖や悲しみ

憎しみまでもが

入り混じっている



「……あなたは、ここでかつての主を

待ってるの?」

「……そう見える?」

「そう見えるわけではないけど

複雑な感情は読み取れるかな」



俯く彼の表情は悲しげだ


「俺ね、人間界でペットとして

暮らしてた時は

すごく可愛がってもらったんだ」

「うん」

「本当に幸せだった」

「……うん」



幸せに暮らしていた彼は

ある日突然

見知らぬ男に誘拐されたと言う



「数時間かけて

どこの山かも分からない場所に

連れて行かれてさ……

酷い動物虐待を受けて

そのまま山に置き去りにされた」

「酷い……」



優しい人間様の元で育った彼は

その時初めて

激しい恐怖を味わったのだろう



「優しい家族の元に帰りたくて

何日も、何日もかけて山を降りたよ」

「うん」

「でも、疲れちゃってさ……」


酷い怪我を負っていた彼は

山の麓まで降りたところで

とうとう息絶えたのだ



「気付けば、ここに居た」

「うん」

「他の仲間たちは

いつか天寿をまっとうしたご主人様が

会いに来てくれるかもしれないって

嬉しそうに話したりするけど……」

「うん」


押し黙る彼の睫毛が僅かに震えている


「怖いんだ」

「うん」

「家族とまた笑いたいのに

人間が怖い……」

「……そうだよね」

「それに……、家族はもう

俺の事なんて忘れてると思う」



その言葉とは裏腹に

〝忘れないで〟と彼の心は叫んでいた



「……家族の様子を

見てみたらどうかな?」



獣人界には、前世の自分や

人間界にいる家族を映し出す鏡がある


しかし彼は

人間界での死後

その鏡を覗いたことは一度もない



首を振る彼は

今にも泣きそうな顔を見せた


「だって、嫌だよ

俺の事なんて忘れて

新しいペットでも飼ってたらって

思うと……」

「……そうね」



彼が誘拐されてから五年が経っている

そう考えるのも無理はないだろう


「いっそのこと……

記憶なんてなくなればラクなのにね」


彼が声を震わせ呟けば

闇は一層深くなるようだった



私は彼の胸に手を当てる

「どうか、その心で声を聴いて」

「……え?」



〝嫌だよ、リク〟

〝ごめんね、リク〟

〝ずっと一緒だからね、リク〟

〝大好きだよ、リク〟



「っ……、こ……れは……」

「人間界で、あなたの亡骸が

見つかった時

あなたは家族の元に帰されたの」

「え……」

「だってあなたの家族はずっと

あなたを必死で探していたんだもの」



そう、リクの家族は

動物愛護団体をはじめとして

様々な機関へ問い合わせ

彼の情報を求めた



溢れ出る涙が彼の頬を濡らす



そんな彼を

私は魔法の鏡がある広場へと

連れて来た


「さぁ、覗いてみて?」


ゴクリと喉を鳴らす彼は

鏡を見た次の瞬間

大粒の涙を流し泣き崩れる



〝リク、おはよう〟

〝リク、行ってくるね〟

そんな言葉と共に映し出されたのは

家族の変わらない優しさだった



彼の写真の周りには

たくさんの花とおもちゃ

そして愛用していたリードや首輪


五年間毎日欠かさず

食事やおやつ、水が用意されている



「あなたは今も変わらず

家族に愛されてる

あなたの家族は誰一人

あなたを忘れたことはないわ、リク」



人目もはばからず

嗚咽を漏らし、彼は

家族の名前を呼んだ



どんなに痛かっただろう

どんなに怖かっただろう

どんなに家族の元へ帰りたかっただろう



「リク、あなたには

忘れられないつらい記憶がある

でもね、あなたを愛してくれる家族との

幸せな記憶も確かにあるでしょう?」

「うん……、うん……っ」



彼の心の闇が、少しずつ静かに

溶けていく



それはまるで

暖かい木漏れ陽に

包まれているかのように





〝琴葉〟

どこからともなく

雨上がりの虹に乗って

声が聴こえる


「はい」

〝獣人界はどうでしたか?〟

「人間様も、獣人も

皆、心は同じなのですね」

〝そうですね〟

「……お師匠様」

〝なんですか?〟

「お師匠様は、動物になるなら

何になりますか?」

〝カマキリですかね〟



……それは最早動物ではなく

昆虫です、お師匠様



〝さぁ、一度帰ってきなさい〟

「はい」

〝いつまでもそこに居ると

犬のおまわりさんに

見つかってしまいますよ〟

「……はい」



生命ある者には心がある


つらく、悲しい出来事は

人間様に限らず

その心に闇を落とすのだ



でもそれは

強く結ばれた絆によって

また光を見ることも出来る



信じてほしい


信じられる者たちの想いを




きっと、明日を生きる力に

なるはずだから

Mari・2022-06-29
物語&小説/from:Mari
小説
KOTOHA
ファンタジー
獣人
想い
光と闇
独り言
ポエム
好きな人



第一章-五話「時戻り」





 赤い花が広がった。


 数時間前、金属バットで親父を殴った。親父はまだ生きている。そのことに僕は安心するわけでもなく、救急車を呼んだ込山って男を恨むわけでもなかった。何故かはっきりと残念とは思えなかった。


 下しか見れない。警察官が、硬く丈夫そうな手で僕を外に連れていく。その制服の厚い生地が背中にあたって、現実感が増す。拳銃、暴発しないかななんて考える。


 春夏秋冬、母さんがしんだ時も、通ったいつもの出入口が、とてつもなく嫌に感じた。



    *




「藤竹!」



そう云って赤い光の奥から大きく手を振りながら近づいてくる人影の一人は、摩訶不思議株式会社営業課、込山さんだった。最初に会った時と同じスーツ姿だ。思わず藤竹と私は「えっ」と声を揃えて驚く。



「ねえ、なんで込山さんいるの」



 分かるはずもないのに混乱して藤竹に訊く。



「さ、さあ……俺なんか怖い」と、この寒さからか少しの怖さからか自分の腕を抱いて目を細める藤竹。



 ここは県内、摩訶不思議株式会社の本社もこの県内にあると藤竹から聞いた。単なる偶然だと思う。というか、あちらの込山さん側からすれば、黒装束という怪しい格好をしている藤竹を見つけられない方が変か。



「込山さんはあんたのストーカーとかじゃなく同期さんでしょうが。ただの偶然でしょ」


「同期っていうか俺あんま出勤してないから会った回数少ないし……」



 車内でも同じようなことを言っていた気がする。込山さんはいつも藤竹に心の距離をとられている。そんなことは露知らず込山さんは駆け足のスピードを緩めながら、切れ長な目を細めて笑っている。



「それでもあっちは気にかけてくれてるってことじゃないの。前に家まで来てくれたし」


「藤竹! なんでここに?」



 膝に手をついて少し息を切らしながらも笑顔を崩さず込山さんは云う。走ったことによるものとは別で、疲れているように見えるのは気のせいだろうか。その後ろから眼鏡をかけた同じくスーツ姿の女性が早足でやってきている。



「あー、知り合いに会いに来たってとこかな?」と、藤竹は分かりやすく込山さんから目線を外して誤魔化す。


「へえ……あっ、あの時の! 藤竹のお友達ですよね!」


「ええ……まあ」



 込山さんが私に気づき、〝お友達〟なんて余計なことを云う。実は藤竹の家で込山さんと初めて会った時、本人が寝ているのをいいことに、調子に乗って自分のことを込山さんに『藤竹の友達です』なんて説明をしてしまったのだ。



「ちょ、込山に俺と友達って言ってくれたの!?」


「うっさい!」


「理不尽」



 嬉しそうな顔をする藤竹に、完全な否定はできなかった。



「ふっ」



 いつの間にか込山の隣にいた、眼鏡の女性が静かに笑う。向き合ってくだらない会話をしていた私と藤竹が同時にその女性を見る。



「あ、この人は最近入ってきた人でね。でも年齢的には俺の二個上の」


「蓮見鷹世といいます。どうぞよろしく」



 女性ではあるけれど、中性的な人だった。一見すると自分で切ったかのような長めのショートカット。前髪が右目を隠していて、残りの前髪を左耳にかけている。ずり落ち気味の半月型の眼鏡の奥に、三白眼の目が力強くあった。怖い印象の見た目だが、その落ち着いた声を聞くと不思議と怖いとは思わない。けれど哀しい雰囲気を漂わせていた。



「藤竹骨です! 一応込山と同期です」


「一応って言うな。あっ、馬瀬千寿子と申します。私は、こいつの……えっと」



 なんと言うべきか考えてしまって言葉に詰まる。



「お友達、ですよね」



 耳から垂れ下がった前髪をひっかけ直しながら、微笑んで云われた。年上の、大人の余裕だろうか。一応私も成人済みだがそれでもどこか遠く感じた。



「……まあ、正確には隣にいるだけというか。〝見つけてもらった〟というか。家がお向かいさんってだけで。今も、連れてこられただけですし。その、違いますけど。一応そんな感じです」



 恥ずかしさと、〝思い出してしまう〟つらさを、抑え込もうと早口になる。顔が熱い。



「一応って言うなよーっ!」



 言い返されてしまった。



「ところで、二人はこの夜中に何を? 正直言って隈すごいけど」



 真面目な声になって訊く藤竹。だが深く被った黒装束のフードに隠れてその横顔が見えない。車の中でも感じたようにいつもだけれど、こういう時の藤竹はどこか既視感があって。


 確かに藤竹の言う通り、二人の目の下には隈がくっきりとあった。瞼も半分落ちきっている。どことなく言葉も消え入るようで心配だ。



「あーやっぱ分かる? 残業ってやつだな。時間も忘れてそこらじゅう訪ねてた。それにあんま寝てねえんだ」


「だろうね。睡眠は大事だよ」



 無理はしていない様子だが、明らかに声がかすれている込山さん。藤竹は返答が早く、いつの間にか二人を観察するような目をしていた。



「そうだよな……。しかもこんな寝てない状態で限定品売りまくっちまうし。俺クビかなあ」


「限定品を粗末に売るのは、開発に携わった人間としていただけないけど。クビにはならないと思うよ」



 〝限定品〟それを二人はこの夜中に売っていたようだった。私から見ても駄目ではあると思うが、ボロボロな二人を見て責める気にはなれなかった。というかほぼ初対面だし。藤竹もそれほど怒ってはいないようだ。



「お前優しいな。ほんとごめんな。あーこんままさっきのこと忘れられそう」


「さっき?」と私に問われ、込山さんは顔をさらに暗くして、背後のマンションやパトカーを振り返って見た。



 それにつられ、蓮見さんも目を細め、黙って振り返る。四人のデコボコの影が、薄く長く伸びている。



「限定品である〝時戻りの石〟を、さっき訪問販売で売ってたんですよ。熊川緑郎って中学生の男の子に。まあこれも若干だめだったと思うんだけど」



 静かに込山さんが語り出す。



「家に上がらせてもらって商品説明しててさ。俺蓮見さんの所謂教育係っていうか。だから一緒に行動してたんだけど。時戻りの石買ってもらって、さあ帰ろうって時に蓮見さんが見ちゃって。その……倒れて気を失ってる緑郎くんのお父さんを」


「うわあ」と、藤竹は無意識に声を出しているようだった。


「混乱したけど、緑郎くんに訊いたら『僕がやりました、殴りました』って言うもんだからさ。警察呼んどいた方がいいよねってことになって。蓮見さんに通報は頼んで、俺は緑郎くんが逃げないように腕掴んでたんだけど。何故か緑郎くん逃げようとも隠れようともしないし。暴れたりもしなくて」


「あのパトカー込山たちが呼んだの!?」



 注目するところがおかしい。その緑郎という男の子が父親を殴ってしまった方よりも、パトカーを込山さんと蓮見さんが呼んだことに驚いている。やはり藤竹は時々ずれている。



「ああ。緑郎くんのお父さん幸いにもまだ息があって、さっき救急車で運ばれていったよ。緑郎くんはまだ家ん中。俺たちさっきまで色々警察に訊かれててな。正直言って疲れてる。寝たい。ただでさえ寝不足なのに」


「それはしんどいな。お疲れ。蓮見さんもお疲れ様です」


「いえ」と、どこか遠くを眺めていた蓮見さんが、向き直って藤竹に少し頭を下げた。


「というか、その時戻りの石? ってなんなんです」



 純粋な疑問が口に出ていた。なんだか一人置いてけぼりな私に、藤竹が私に云う。



「ああそれはな」



・・・



 藤竹と摩訶不思議株式会社が共同開発した期間限定販売の商品であることなど改めてざっと、〝時戻りの石〟についての説明を受けた。



「ああ、さっき車の中で言ってたやつがこれか。なんだか難しいな。私には無理。名前まんま時戻りできるものってことだけ頭に入れとく」


「ああ、それでいい。まあ馬瀬は俺の作るもんに興味ないもんな!」


「覚えたって無駄っちゃあ無駄かな」


「おおい、なんてこと云うんだ! 覚えといて損はないぞ? 事前知識ありで誰かが時戻りするのを見てると、他の人とは違って時間が改変されても記憶を失わないんだぜ! しかも記憶があることで行動に関しても改変の影響を受けず、その日の行動がなかったことにはならないで、自分や物がどっかに消えたりせず、立ってる場所も変わらずだ」


「あー……でもだんだん事前知識ってやつを持ってる人が増えると記憶を保持できちゃう人が増えるわけだから、時戻りの石の意味がなくなってきそう。あ、だから期間限定?」


「そうなんだ。ここが難所でね。今の俺の技術じゃこの部分が取り除けなかった。意外と難しかったんだ。思えば今まで作ってきた商品たちは、使用者個人の身体や内面に焦点を当てるようなものが多かった気がする。だが、過去へ意識が飛んで行くタイムリープをするこの時戻りの石は、改変などで周りに大きな影響を及ぼす。こういうのを作るのは苦手分野かな。悪用される可能性も増えちゃうしさ。まあ期間限定だからこそ、この商品は輝くのかもしれないね」



 藤竹は嬉しそうに語る。



「出てくるぞ」と、込山さんがマンションの方向を指差した。



 見ると、警察官に肩を掴まれて俯きながら出てくる少年の姿があった。部屋着のような姿だ。胸が痛む。それは熊川という少年やその父親への同情の気持ちなのかは分からなかった。



「嘘だろ、下駄少年」



 藤竹の一言で分かった。今すぐそこで連行されている熊川緑郎と、藤竹を呼び出した下駄少年は同一人物だと。



「え、何知り合いだった?」


「俺らをここに呼んだ、少年だよ」


「は? え、藤竹と馬瀬さんは緑郎くんに呼び出されたって? ……まじか」



 込山さんは混乱した様子で、髪の毛をわしゃわしゃと掻く。



「……まずいな」



 藤竹が視線を逸らさないまま、身構えた。


 私にはその意味がよく分からなかったが、込山さんも蓮見さんも何かを察したように、じっと少年を見ていた。


 熊川少年が、ズボンのポケットから何かを取り出す。桃色の、石のような塊だ。それを自分の口に運んだ。


 藤竹が叫ぶ。



「くそ、時戻りだ!!」









(終わり)

















































-登場人物-


●馬瀬千寿子

読み:ませ ちずこ

主人公「私」。女性。少し下向きな性格。二話から藤竹に借りた大きいパーカーを羽織っている。藤竹と友人の仲。藤竹のことを「変人」「馬鹿」と言うことが多い。だがなんだかんだで一緒にいる。

太陽が出ている時間のことを夜と呼ぶ。


●藤竹骨

読み:ふじたけ こつ

謎が多い男性。推定二十代?少々天然(馬鹿)。だが薬を開発するほどの頭脳は持ち合わせている。

摩訶不思議株式会社営業課所属(だが幽霊社員)。それとは別に星屋という看板を掲げ、自身で開発した不思議な薬を夜な夜な売っている売人。運転免許取得済。

昔、昼夜の概念が今とは逆だったと言い、自身も太陽が出ている昼に起きて月が浮かぶ夜に寝る。この説はこの世界ではおかしい、そんな藤竹を周りは変人と呼ぶ。


●熊川緑郎

読み:くまがわ ろくろう

一話で主人公「僕」だった「下駄少年」。男性。中学二年生(成長期)。わりと冷静で達観しているけど、少し精神的に不安定。サンダル感覚で下駄を履く。父親が嫌い。

一人だけ友達がいる。その友人はオカルト好きで「昔は昼と夜が逆だったんだよ」と藤竹のようなことを言う、そこらをフラフラしているような人間らしい(一話参照)。

馬瀬と同じく、太陽が出ている時間のことを夜と呼ぶ。


●込山蛇蓮

読み:こみやま じゃれん

摩訶不思議株式会社営業課勤務の男性。年齢不明。藤竹とは会社の同期。だが藤竹にはそんなに仲良いとは思われてない。そのことは込山本人は知らない。

蛇っぽい顔らしい。


●蓮見鷹世

読み:はすみ たかよ

摩訶不思議株式会社営業課所属。女性。番外編「転機」で主人公だった。年齢は番外編冒頭の描写からして少なくとも三十は越えている。

眼鏡をかけている。



































-あとがき-


ここまで読んで下さりありがとうございました!


毎回振り返れるように登場人物まとめてるけど、ちょっと長いからもっと短くしないとな。


この小説が昼夜の概念逆な世界観なのは、ファンタジー感を出したかったからです。普通の私たちが住んでいるような世界の中で藤竹みたいな奴がいては違和感がすごいので。いやどちらにせよ変な人だから違和感すごいか。


ちなみにですが、この次の投稿で、とあるキャラクターの心情のポエム?詩?を書きました。タグからも飛べます。誰の話なのかは秘密です。いずれ分かるようにしてあります。


最後に。もし良ければですが、感想をいただけたら幸いです。六話はまた投稿すると思います。そちらも良ければ見てください。ありがとうございました。

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街を一望出来る高台の小さな神社


人々に忘れ去られ

手入れの行き届いていないそこは

神様が祀られているにも関わらず

暗く重い気の流れを感じる

まるで淀んだ空気の巣窟のようだ



「……あなたも、自分の役目が

分からなくなったの?」



小さな鳥居に手を当て

自分と古びた神社を重ね見る



人間様の闇を取り払うべく

任務を遂行してきたが

目の前で一人の人間様が

自ら生命を絶ったあの日から

私はまだ任務に戻れずにいた



心と身体が離れる時の

人間様の虚無感や絶望感

悲痛な心の叫びが

全身に流れ込んでくる感覚が

忘れられない



察知する闇より

透視するつらい過去より

深く、重い、傷みだ



街の灯りが

人間様の生命の灯火のようにも見える



なんて綺麗で

なんて儚いんだろう



「琴ちゃん」

月明かりを背に

目の前に降り立ったのは

仲間の一人、月影だ



「月影……」

「こんなところにいた」

「長らく留守にしてごめんね」

「ほんとだよ、みんな心配してるよ」

「うん」

「まぁ、お師匠様だけは

〝心配せずとも大丈夫ですよ〟って

ゆったり構えてるけどね」

「……お師匠様らしいね」

「まぁね」



月影は私の顔を覗き込むと

困ったように眉を下げて笑う



「まだ、心は闇の中だね」

「……闇、か」

「まぁ、無理強いはしないけどさ」



そう言うと、月影は神社に目を向け

呪文を唱え始めた

光の粒が月影の周りに集まり

辺り一帯の暗く重い気の流れが

サラサラと光に吸い込まれ消えていく



「……さすがだね」

「放っておくと、

悪さし始めるだろうからね」

「うん」

「琴ちゃんのことも

放っておくと、本当に

帰ってこなそうだしさ、心配だよ」

「心配症だなぁ」



月影が隣に腰を降ろすと

心地良い風に包まれた気がした



月明かりは辺りを照らし

煌々と輝く



「琴ちゃん」

「うん?」

「光に照らされて道が見えていても

その道を歩き出す一歩が

踏み出せなければ

前には進まないんだよ」

「……うん」

「踏み出すための勇気と

立ち止まった時の支えとなるものが

人には必要なんだ」

「うん」



月影は優しく微笑んだ

それはまるで

〝大丈夫だよ〟と言わんばかりに



「踏み出す勇気は、琴ちゃん次第」

「うん」

「琴ちゃんが立ち止まった時は

俺たちも、お師匠様も

琴ちゃんを支えるよ」

「うん」

「だから、恐れずに

いつでも飛び込んでおいで」

「うん」

「よし、じゃあ俺は任務に戻るよ」



そう言って私の頭を撫でると

月影は優しい風と共に

月の光の中へと姿を消した



「踏み出す勇気か……」



道が見えていても

踏み出さなければ前には進まない

月影の言葉が

心の中いっぱいに染み込んでいく



この世界は、闇だらけだ



私利私欲に溢れ

そこから生み出される悪で犇めき

貶められる人間様は

抵抗する意欲を失っていく



今こうしている間にも

闇を抱えた善良な人々の心は

傷み、叫んでいるのだ



「……任務」



失われた魂は

帰ってこない



そうなる前に、やるべきことは

ただ一つ



〝琴葉〟

木々は揺れ、優しい夜風に乗って

どこからともなく声が聴こえる



「はい」

〝踏み出す勇気を持てたようですね〟

「はい」

〝そろそろ私が赴くところでした〟

「ご心配をお掛けしました」

〝一つ任務を終えたら

その足で帰ってきなさい〟

「はい」



月明かりに照らされ

真っ直ぐに前へと進む道を

私は一歩、また一歩と

踏み出した

Mari・2024-06-03
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