【幸せと絶望を知った18歳が経験した悩みと記憶】
私は
お父さんと、お姉ちゃんと、お母さんと、笑いながら鍋を食べる美味しさを知っている。
私は
一人、部屋の隅で、泣きながら音を立てずに食べたカップラーメンの味を知っている。
私は、
暖かい陽に包まれたリビングの灯りを覚えている。
私は、
冷えきった暗いリビングを覚えている。
姉と母の
喧嘩が絶えなかった
家では誰かが必ず不機嫌だった
そして
父と認識していたその人は
父ではなかった
そして、父と姉、暖かかったその家は無くなり、
小さな市営住宅に、母と二人で住むことになった。
その時聞いた、父が他にいること、そして、兄がいること
小6の私には少し理解ができない、いや、したくない事だった。
家族の複雑な絡みを知った私は悩み、受け入れられなくて、
悩んで、悩んで、苦しくて。
時間だけが経っていって。
中学二年になった時、私は人格を閉じ込めた。
いや、閉じ込めたと言うよりは、縮こまって泣く私を、誰かが檻に入れて鍵をした。
私はその時、スっと涙が止まった。
1時間ごとに飲んでたロキソニンも、指の皮をむいて出た血も、止まらなかった涙も、収まった。
なんで泣いてたんだっけ。まあ、いいや
その時私は、泣くことを忘れ、笑う事も忘れてしまった。
人間の感情を、本来の私を、守るように、それは私の代わりとなった。
何も信じられなくて、誰も信じられない。
家族の言うことは、それぞれがお互いの悪口ばっかりで
家族ってなんだっけ
そう疑問が浮かんだ時、ふっと笑った。
くだらない。
誰も、信じなければいい。そうすればもう傷つかないんだから。
家族だって所詮他人なんだ。血がなんだって言うんだ
くだらない。
表面の私は決心した。
周りからの情報を一切受け入れまいと、母とも口を聞かなくなった。
学校にも行けず、担任が家に来た。
ああ、私のせいで余計な労力を。
申し訳ないな
本当に自分ってダメだな
死にたい。
消えてしまいたい
そう本気で思っていた。
その時14歳。
とりあえず、16まで、生きよう。
そしたら、頑張ったねって、空が迎えに来てくれるから。
今は、生きよう。
って言い聞かせて、なんとか自我を保っていた。
そこから、私にとって死は救いになった。
そう思うことが救いになっていたから。
そしてある日、負のものに包まれた私の元へ、姉が来た。
母が、私がおかしいと連絡をしたらしい
姉はその日、私を信じて。私と○○(←私の名前)だけは本当の家族だから。
と言った。
その言葉を聞いて、糸が切れたように涙が溢れた。
私の家は一般の家と違って少し違うのかもしれない
私は、同年代の子より、違う経験をした。
塾がだるいだの、弟がウザいだの
でも、たぶんそれが正常。
なんで産まれてきたんだろう
家族ってなんなんだろう
私はこの疑問に長く苦しめられた
勉強もせずに、自作小説に逃げた
小説を書けば、自分の世界に行けた。
楽しかったあの日を、
鍋を囲んだあの日を、
休日には、4人で遠出のドライブをして
お正月には、おせちを食べて、福袋を買って
それが私にとって"普通"だったのに。
普通って何?
ねえ、なんで無くなっちゃったの?
全然、お家に色がないんだよ…
ずっと薄暗い灰色なんだよ…
この時、私はこの家族の仕組みのほんの一部しか知らなくて
馬鹿みたいに悩んで苦しくて悶えていると
もう戻れないんだよ二度と。いい加減わかれよ。
もう一人の私が、"表"の私が呼びかけてきた。
檻の中の私はひたすらに泣いて泣いて、表の私が手をつけられないほどに。
純粋無垢な14歳が、苦しくて泣いていた。
人を、家族を信じている私が泣いていた。
それを、家族を捨てた表の私が嘲笑う
馬鹿みてぇ
そういい鼻で笑ってくる
今だから気づく
私は、人より2つの経験をしてる
人より2つの性格を持ち、それぞれの意見が違っている
だからこそ、出来ることがあるのではないかと
そんな出来事から4年、私は今18歳になった。
消えてしまいたい。その思いは少しずつ薄れてきて
でも死を救いだと思うから、
19歳に、迎えに来てくれないかなって思ったりもする。
でも、4年前と違うのは
少しずつ、心から笑えるようになって
お母さんとも、関係が良くなった。
お父さんとお姉ちゃんとは縁を切って
今2人で支え合いながら、生きている。
あの頃と同じなのは
人を信用しないこと
これがあるから、心が穏やかな気がする。
私の家族は、それぞれの話を、自分のいいように言い換えて話す。
だから、それぞれ話を聞くと、全然内容が違ったりする
それは聞き流してしまえば、なんの問題もない。
信じて聞いてしまうから、苦しくなるんだ。
そう気づいたら、家族の複雑な事情も受け入れられた。
私は今、生きてて楽しい
自分でバイトしたお金で、お母さんにプレゼントを買えることが
何より嬉しい
自分にご褒美を買うことが、何より楽しい
最近は、表だった私の人格が引っ込んできている。
檻の中で時間をかけて強くなった裏の私が、生きている。
凄く心が穏やかなんだ。
まだよく涙が止まらなくなる日もあるけど
それでも、この経験がなければ、今の穏やかさはない。
そう思うと、感謝できる。
生まれてきた意味が、わかる気がする。