夕焼け小焼けのその中にひとりぽつり置いてかれた。
友達は優しく手を握られ、ニコニコしながら帰っていく。
ただ、遠くなっていく友達に手を振る。
さて、今日はどうしよう。
朝になるまで何をしよう。
公園のまぁるいドームで過ごそうか。
寒くて暗いこの中はそれでも家より天国だ。
寒くても、暗くても、痛い思いも辛い思いもしないならそこはまさしく天国だ。
夕焼けは好きじゃない。
友達を家に帰してしまうから。
それでも夕焼け小焼けと歌うのは幼い頃に母が歌っていたからだ。
優しく頭を撫でてくれたのを思い出すからだ。
父と母と手を繋いで三人で歌っていたからだ。
夕焼けの色は好きじゃない。
目の前で二人から赤いものが広がっていたから。
だんだんと冷たくなっていく。
暖かかった二人から命が失われていくその瞬間を思い出すから。
だから、ドームの中でただ震えている。
見たくないと目を瞑り丸くなる。
轢いた人の顔を覚えている。
悔しくて悲しいけれど、責めることができなかった。恨むことができなかった。
その人が家族と笑っているところを見てしまったから。
とても幸せそうに話している。
自分自身、誰かの幸せを奪いたくなかったから。
きっと普通なら恨むのだろう。憎むのだろう。
だけれど、そうできなかった。
自分は薄情なのだろうか。
ただ漠然とした喪失感が押し寄せて。
その後も地獄のような日々だった。
親族は自分のことを押し付け合い、
預かってくれた人たちも無表情で接してきて、
会話なんてろくにできず、冷たい空気。
その人たちの子供たちも自分のことを厄介者として扱う。
楽しいとはどんな感情だっけ。
悲しいとはどんな感情だっけ。
ここ最近は本心から笑うことも泣くことも無くなってしまった。
どうやって泣いていたのか、どうやって笑っていたのか。
それすらもわからなくなってしまった。