#心象風景

カーテンから漏れる

朝の陽射しが心地よく

私は、瞼を開けました

カナリアが、おはようの歌を歌いながら

笑っています

「よく眠れた？」

白鳩が枕元で訊ねます


おはよう

ええ、もう今日は大丈夫よ

いい気分

そうだ♪♪♪

今日は、新しい壁紙のカタログを

一緒に見ない？

夜中に、私、すっごく可愛いの見つけたのよ


見る見るー♪♪♪

カナリアが飛んできました


じゃあ、先に朝ごはんにしましょう！

ボーダーに、小さなバラ柄の壁紙の写真

見たら、きっと２羽とも大喜びね



フランソワ


2020年3月28日　7時11分

今日、私は縫い物をしていました

透けるように薄い

ふわふわの綿ローンに

幅の違う柔らかな白いレースを付けて

ミシンで、カタカタカタカタ……



カナリアは、興味津々

可愛いものが大好きなのです


でも、この前

お宮参りのベビードレスを、欲しがって

大笑いされたので、警戒しているの


おずおず、やってきて

｢フランソワ、何、縫ってるの？｣


｢うん？｣

わざと、私は、じらします


ワンテンポおいてから

｢女の子のワンピースよ

可愛いでしょ？赤いリボンを付けるのよ｣


｢あなたの分も作ってあげましょうか？｣


｢私が、着ても可笑しくない？｣

よほど、この前、恥ずかしかったみたいで

今日は、慎重なカナリアです


｢大丈夫よ｡リボンの色使いやデザインで

大人の人だって、着られるわよ｣


カナリアは、目を輝かせて

｢ホント？！私の分も、作ってくれる？！｣

｢もちろん、いいわよ

リボンの色、何色がいいかしらね？｣



白鳩は、どうしているかと言うと

さも、興味がないかのように

窓から外を見ています


でも、私にはわかっているの

鳩も、白いワンピースが欲しいのです

だって、さっきから

チラチラこっちを見ていますもの


私は、言いました

わざと、大きな声で

｢ああ～、困ったわ、困ったわ

布が、中途半端に少しだけ、余っちゃう

ねえ(と、鳩に向かって)

あなたも、ワンピース要らない？

いい布なのに、もったいないのよ｣


鳩は、すぐに飛んで来ました

｢あなたは、体が白いから

どんな色のリボンが、いいかしらね？

カナリアと一緒に

リボン、見てきたら？｣


嬉しそうに、頷いて

飛んで行き

２羽で、沢山のリボンを

鏡の前で、選んでいました


私は、クスッと笑ってから

また

幸せな気持ちで

カタカタカタカタ……

ミシンをかけていました


可愛いドレス

作ってあげるわね




フランソワ



*

今日、夕暮れた後

カナリアが、

じっと空を見上げていることに

気が付きました


私も、窓辺に行きました

冷たい空気、冴え渡った空に

こうこうと輝く月がありました


お月さまと、お話していたの？

私が訊くと

ううん、ただ、見てただけ


そうなの？

本当にきれいな月ね


うん

と、答えたカナリアの目に

きらりと、お月さまの光を映す

涙がありました


今夜は冷えるわ

暖かい部屋の中に入りましょう


カナリアは、珍しく

部屋の中に入ってからも、無口でした





フランソワ




*

昨日、私は

とても豪華で、可愛い絹織物で

服を作っていました


カナリアは

もちろん、すぐにやって来て


すごいね！この布！

お姫さまの、ドレスみたいにきれい！

素敵～💕


カナリアは

自分の服も欲しいのですが

布がぎりぎり１着分しかなくて

ムリなのが

裁ちくずが

小さな細切れしかないのを見たら

わかるのです


ちょっと残念そうに

しょんぼりと

寝てしまいました



可哀想に……

私は、作業を終えて、片付ける時に

細切れの裁ちくずを、手にし

一生懸命、何か作ってやれないものか……

考えてみました


これだけじゃねぇ……

あっ！！そうだわ！！


ひらめいた私は

裁ちくずの中にあった

バラの模様や、撫子の模様のところを

まぁるく切り取って

ワッペンのようにして

あしらいに合わせた

ピンクのシルクも使い

斜め掛けにする

ポシェットを二つ作りました


そして

まるで、チェーンのように見える紐を

二種類用意しました

金色と、銀色の


二羽は、起きてくると、すぐに

豪華なポシェットを見つけました


カナリアは、金色の紐を

白鳩は、銀色の紐を

選びました


鏡を見ながら、長さを決め

ポシェットに付けてやりました


カナリアったら

喜び過ぎて

朝ごはんの時も

着けたままなのよ


今もまだ、鏡の前で

あっちを向いたり、こっちを向いたりして

嬉しそうにしています





フランソワ




*

今日は、早めに仕事を切り上げて

たくさんの物を整理しています

カナリアは

私の頭に乗ったり

肩に乗ったり

興味津々です

だって、カナリアの大好きな

可愛い物や、綺麗な物が

たあ～くさん、出てくるんですもの


でも、さっき

白銀の帯と、白い羽二重の布を見つけ


あっ！これで、花嫁衣装ができるね

白い打ち掛けと、綿帽子！！


言ってしまってから

カナリアは、ぎゅっと口をつぐんで

窓辺へ、飛んで行ってしまいました


ほら、来てごらんなさい

可愛い花柄の絹と、リボンよ！

と、私が、呼びかけても

うん……と

振り向きもせずに

返事をするだけ

涙声で


恋は

思い出しちゃ、いけないわ

悲しくなるだけよ

忘れましょう




フランソワ




*

今日は、久しぶりに

カナリアと鳩を連れて

お買い物に出かけてきましたよ

こざっぱりした、薄紫色の

初夏のワンピースを着て


近所の方に

「あら～っ！！可愛いっ！！」って　

褒めて頂いて、嬉しくなっちゃいました



雑貨屋さんで

私が、物を入れるかごや袋を

見ていたら


お店を、飛び回っていた

カナリアが、興奮して

帰ってきました


「ねぇ、ねぇ、フランソワ！

私、すっごくいい物見つけたの！！」


？？？


何事？


カナリアが、嬉しそうに

飛んで行く方に、付いて行きました




ええ～っ！？

私は、呆れてしまいました



カナリアったらね


ふふふ

あのね、カナリアったらね




重ねてある

大～きな、プラスチックの

メガホンの上に、ちょこんと座り

得意満面

いいの見つけたでしょ？って顔




驚いて、私は、尋ねました


「あなた、野球の応援に行きたいの？

連れて行ってあげてもいいけれど

あなたには、こんな大きなメガホン

持てないと思うわよ？」



そうしたら

カナリアは、目をキラキラさせて

明るく元気に、にこにこと

答えました



「違うのよ

フランソワ

メガホンはね

ベランダの手すりの

糸電話んとこに、付けるの！」




カナリアは、嬉しそうに

続けます


「お月さまにね

私の話や歌が、良く聞こえるように

糸の先の手すりのところに

これ、付けるのよ！！

きっと、10倍良く聞こえるわ！！」



これを……？

付けるの……？

ベランダの手すりに……？

外向きに……？


カナリアは、私が訊く度に

得意満面の笑みで、頷きます
　



「ねーーっ！！買って！！買って！！」

「ねーーっ！！付けて！！付けて！！」



根負けしてしまい

私は、カナリアが止まっていた

大ーきな、黄色いメガホンを

買いました



カナリアは

帰りの車の中でも

鼻唄混じりで、終始ご機嫌♪♪♪



カナリアにとっては

お返事が、来なくても

お月さまに、話しかけたり

歌ったりすることが

幸せでならないのです






フランソワ




2019年5月27日　16時50分

*

昨日、私は

突っ走った2～3ヶ月の緊張が

ゆるんだのか

一日中と言っていい程

眠っていました


夕飯の時に

白鳩とカナリアが

くすくす、くすくす

笑っています


なあに？

２人で、笑ったりして？


そしたら、２羽は

ひっくり返る程、大笑い


何？？？


やっとのことで鳩が


フランソワ、寝言いっぱい言ってた


そういうと、また、２羽は

笑い転げるのです


ウソウソ～～！

私、夢もみてなかったのに～～！


そう？じゃ、何も言わなかった…

と、言うことで


と、白鳩が言うと

２羽は、顔を見合わせて

また、吹き出すのです


やだ～～！

私、何て言ったの？


何も言ってない、何も言ってない

(笑)(笑)(笑)と、２羽は、大笑い


完全に立場が普段と逆で

すっかり、からかわれてしまいました

私、何て言ったのかしら？




フランソワ



*

部屋の中に

「可愛いコーナー」や

「お洒落コーナー」を

作りましたよ

ちょっぴり壁紙を変えたり

お気に入りの額を飾って

そこだけ「素敵コーナー」に

カナリアや、鳩は

その前にとまって、おすまし

モデル気取りです

「はあ～い♪決まってますよ～♪」と

声をかけて、写真を撮ってやると

ご機嫌♪♪♪

すぐに飛んできて、写真を見ています

私の部屋の模様替えは

こんな風に進んでいます



フランソワ


2020年4月7日　10時47分

今日は

久しぶりに

カナリアと鳩を呼びました


も～！！

フランソワったら

ちっとも、かまってくれない～！！

と、ちょっとふくれぎみで

でも、嬉しそうなカナリア


もう大丈夫なの？

と、心配顔の白い鳩


ごめんね

午後は少し

横になったりしないといけないけれど

お出かけしても、いいんですって！


わ～！！

どこか行くの～！？


ええ、ドライブに行きましょう


良い気候の中

片道、一時間ちょっと

車の運転が好きな私には

いい気分転換になりました


もちろん

ご機嫌な音楽をかけて


３人で歌を歌いながら

行って来ました


カナリアなんて

踊って歌って、はしゃぎ過ぎ！！


帰りは、疲れて

助手席で、お昼寝していました






フランソワ





*

今日、私がどうしていたか？


私は

カナリアと鳩を呼び出して

あれや、これやと

布選びをしていました


クリスマスと、お正月の

洋服と着物を作る準備です


私は、たくさんの布を、持っていますが

カナリアや鳩のための薄い布となると

数が、限られてきます


それでも、和布４枚と

洋服用の布はたくさん、見つかりました


鏡の前で

どの布にしようかな？と

一緒に迷って、あれこれと


カナリアの選んだのは

薄い絹の白い花柄の上等の布で、ドレス

薄い絹の赤い花柄の上等の布で、着物


白鳩が選んだのは

薄い絹の薔薇柄の上等の布で、ドレス

薄い絹の薄紫の鼓柄の上等の布で、着物


ふう～、２羽とも

この頃、見る目が高くなって

いいのから、順に選びます



後は

テーブルの上で

おしゃべりしながら

デザインを決めて

お裁縫をしながら

穏やかに、過ごしました





フランソワ




*

あれこれと

荷物をまとめて

バッグに詰めていると

カナリアと鳩が

やってきて、訊きました


どこかへお出かけするの？


ええ、そうよ

明日は新幹線に乗るのよ


フランソワ、もう大丈夫なの？

鳩が、訊きました


ええ、すっかりとは、言えないけれど

出かけないと

仕事なのよ


フランソワ、もう歌えるの？

カナリアが心配してくれます


大丈夫、明日は歌わないのよ

それよか

明日はきちんとしたなりで行かなくちゃ

私は、この紺のワンピースで行くわ

あなたたちも

服を選びましょう


２羽は、久しぶりの遠出に

すっかり嬉しくなった様子で

あれこれ、鏡の前で服を選んでいます


ねえねえ！

前に作ってもらったお揃いのポシェット

持って行ってもいい？


カナリアが訊きます


そうね、素敵ね

パーティーだから

見映えがしていいと思うわ


私は、新幹線の窓べりで

カナリアが冷えないように

ビロードのショールを

私のコサージュと一緒に

鞄に入れました


きっと、ずっと

カナリアは

外を見ているでしょうから




フランソワ




*

おふとんの中で



私は、まだ

うつら、うつら


耳元で

きれいなカナリアの歌


目を開けると


もーっ！！

フランソワったらーっ！！

いつまで寝てるの！？


私が

ごめん、ごめん

もう起きるわ

と、起き上がろうとすると


ゆっくりしてた方がいいわ

と、鳩


大丈夫よ

もう、起きても

そうだわ！！

針仕事をおふとんの上で

しようかしら？

と、言うと


二羽が、声を揃えて

ブッブー！！

それは、ダメ！！


そうよね？

それは、ダメよね？

危ないわね





フランソワ




*

初秋の昼下がり

すっかり涼しくなった

気候に誘われるように


私は

きれいな花柄の

アンティークレースの端を

ちくちく縫っています


フランソワ

何してるの？

わぁ～～！きれい～～！


カナリアが

テーブルに飛んで来ました


来た、来た

心の中で、くすりと笑いながら

答えました


可愛いでしょ？

私のドレスに付けるのよ


ええ～～！？いいなー！！


(言うと、思った！😆)


あなたにも、分けてあげるわよ

お揃いね

こっちのお花や、リボンも欲しい？


うん！！欲しい！！


さあ、どんなドレスになるかしら？

明日はスタジオで、撮影よ

あなたたちも、いっしょに

きれいに写りましょうねぇ


鳩も近くに呼び寄せて

似合う花飾りを探したり

色の合うリボンを探したりして

準備をしています




フランソワ



*

湖の真ん中の

小舟にいる私のところへ

真っ白な白鳥が

静かに泳いできたの

私は絹のリボンを

白鳥の首に結び

ゆっくりと岸に向かう

薔薇の花びらのベッドの枕元には

一輪の真っ白な薔薇の花

香りをかいだ後

私は花を胸に抱く

高い塔の私の部屋に

挿しておきましょう


朝の鐘が、遠くで鳴り始めたわ





フランソワ



2019年9月18日　7時00分


*

目覚めれば

小さな小舟の中にひとり居て

鏡のような波のない

広い湖の真ん中


澄んだ水は冷たく心地よく

どこまでも美しい


小舟には、ふかふかになる程の

薔薇の柔らかな花びら

ああ、いい香りはそのせいだったのね


もう、明るく耀きだした

柔らかな朝の光の中

私は清浄な空気を胸に吸い込んで

歌い始めるの


悪夢の嵐は去って

新しい私がまた、生まれている




フランソワ




2019年9月18日　6時45分


*